強みの育て方|強みは、見つけるものではなく育てるもの

強みの育て方を考えるときに、まず確かめたいのは「強み」のイメージです。強みというと、特許技術のような特別なもの、業界一のもの、画期的なもの、誰が見ても分かるものを想像しがちです。しかし実際の強みは、狭い範囲のちょっとした優位性、長年続けた面倒なこと、説明しにくいなんとなくの信頼、地味で当たり前の積み重ねであることが多くあります。

つまり、強みは、既にあるものを見つけるだけでなく、時間をかけて育てるものです。whymeの講座資料では、3年ほどをかけて、次の5ステップで磨く考え方を紹介しています。期間は目安で、会社の状況によって変わります。

強みを磨く5ステップ
ステップ狙い進め方
1 希少性最も着手しやすく、効果が出やすいニッチな市場に特化し、競合が少ない領域をつくる
2 耐久性揺るがない基盤をつくる顧客との関係を深め、時間をかけて信頼を積む
3 模倣困難性真似されにくくする積み重ねた要素を複雑に組み合わせ、独自の仕組みにする
4 移動困難性個人の力を組織の力にする属人的な強みを、チームや仕組みの強みに変える
5 代替困難性顧客が離れられない仕組みの総仕上げ顧客の成功に欠かせない存在になる

ステップごとの手法の例

各ステップには、3つずつ手法があります。以下は、説明のための業種別の仮の例です。自社の業種に置き換えて考えます。

5ステップの手法の例(仮の例)
ステップ手法例
1 希少性超ニッチな市場に特化するWeb制作会社が、税理士事務所専用のホームページ制作に特化する
「3つのNO」に応える印刷会社が、「今日中・少部数・特殊な紙」の注文に応じる唯一の存在になる
地域×業種で唯一になる社会保険労務士が、特定の地域の特定の工場に絞って、外国人雇用の支援を行う
2 耐久性御用聞きから相談役へ進化するOA機器販売が、機器の販売から、ITの何でも相談へと役割を広げる
顧客の歴史を共有する写真館が、家族の節目を一貫して撮影し、長期のアルバムを管理する
「○○といえば」を長く守るパン屋が、流行に乗らず、無添加といえばこの店、という位置づけを貫く
3 模倣困難性要素を掛け合わせた独自の仕組み清掃会社が、早朝清掃×写真付きの報告×備品の補充を連動させる
失敗の記録を資産にする害虫駆除業が、過去の失敗事例のデータベースを蓄積する
顧客ごとのカスタマイズを蓄積する業務システム会社が、導入先ごとの機能追加の実績を積み上げる

属人的な強みを、組織の強みに変える

強みが特定の個人に頼っていると、その人が辞めたとき、強みも失われます。移動困難性を高めるには、個人の力を組織の力に変えます。次の3つの手法があります。

属人的な強みを組織の強みにする3つの手法(仮の例)
手法例
中心人物を、チームの要にする設計事務所が、1人の建築士に頼る体制から、若手を加えたチームに変え、中心人物は最終確認を担う
暗黙の連携を、仕組みにする金型工場が、週1回の「気づき共有会」を開き、職人の暗黙の連携を部分的に共有する
顧客の情報を、組織の記憶にする法人営業の会社が、担当者の趣味、過去の要望や苦情、決裁の傾向などを顧客カルテに記録し、担当が替わっても対応を引き継ぐ

最後に|顧客が離れられない仕組みへ

最終段階の代替困難性は、顧客が他社に替えにくい状態をつくることです。複数の業務をまとめて請け負う、顧客の生産や運営の一部に組み込まれる、長く使うほど特典が積み上がる、といった方法があります。

ただし、顧客を縛るだけの仕組みでは、信頼を損ないます。顧客にとって価値があるから離れにくい、という状態を目指します。また、5ステップは順番に完了するものではなく、並行して進めることもあります。まず、自社がどの段階にいるかを確かめます。強みを見つけ、競合との差別化に生かす考え方は、中小機構のJ-Net21にもまとめられています。

  • 自社の強みの候補を、5つの要素(希少性・耐久性・模倣困難性・移動困難性・代替困難性)で見直した
  • 着手しやすい希少性の施策を、一つ選んだ
  • 強みが特定の個人に頼っていないかを確かめた
  • 顧客にとっての価値を、仕組みの前提にしている