経営理念の作り方|まず、目的と構成を確かめる

経営理念の作り方に入る前に、目的を確かめます。経営理念は、経営する上での重要な指針で、企業の根本的な価値観を示すものです。中小機構のJ-Net21では、「このように経営していく」という企業の決意表明と説明されています。

理念には4つの役割があります。進むべき方向を示す羅針盤、社員の気持ちをそろえる求心力、迷ったときの判断基準、顧客に選ばれる理由の説明、の4つです。この記事では、経営理念と企業理念を区別せず、経営理念として説明します。経営理念は経営者の信念や方針を軸に、企業理念は企業が主体となって行動指針などを定めたもの、と分けて使う場合もあります。

経営理念の3つの構成要素
要素問い内容
ミッション(存在意義)なぜ我々は存在するのか社会に対して果たす使命。事業を通じて解決したい社会課題
ビジョン(めざす姿)我々はどこへ向かうのか5〜10年後に実現したい理想の状態。具体的にイメージできる将来像
バリュー(行動指針)我々は何を大切にするのか日々の判断や行動の基準。社員全員が共有する価値観

良い経営理念の4条件|シンプル・具体的・自社らしい・誇れる

良い経営理念には、4つの条件があります。シンプルで覚えやすいこと、具体的で情景が浮かぶこと、自社らしいこと、社員が誇れること、の4つです。次の例は、説明のための仮の例です。

良い例と悪い例(仮の例)
例理由
良い例水漏れで困る家庭をゼロにする(配管工事会社)短く覚えやすく、存在意義が明確
良い例100年先も、この町の慶弔に寄り添う(老舗の和菓子店)地域での役割と覚悟が伝わる
良い例中小企業の非効率をなくし、社長を本業に集中させる(IT企業)ターゲットと提供価値が明確
悪い例社会の発展に貢献する優良企業を目指すどの会社でも使え、個性がない
悪い例最高品質・最低価格・最速納期でNo.1全部は実現できず、社員がリアリティを感じにくい
悪い例売上100億円を達成し、業界トップ企業になる会社の都合だけで、顧客にとっての価値が見えない

ステップ1|経営者の想いと、現場・顧客の声を集める

理念づくりは、現状を共有するところから始めます。経営者の想いは、原体験のインタビューで言葉にします。なぜこの事業を始めたのか、最も嬉しかった顧客の声は何か、絶対に譲れない価値観は何か、10年後にどんな会社にしたいか、を聞きます。あわせて、どうやって勝つのか、誰を幸せにしたいのか、競合にない強みは何かという戦略も整理します。

次に、現場の実感を集めます。顧客から感謝された瞬間のベスト3、この会社の誇れること・恥ずかしいこと、なぜ競合ではなく自社を選んでもらえるのか、を現場に聞きます。顧客にも、なぜ自社を選んだか、自社がなくなったら何に困るか、改善してほしい点は何かを聞きます。

  • 経営者:なぜこの事業を始めたか/最も嬉しかった顧客の声/譲れない価値観/10年後の姿
  • 現場:顧客から感謝された瞬間/誇れること・恥ずかしいこと/競合ではなく自社が選ばれる理由
  • 顧客:自社を選んだ理由/なくなったら困ること/改善してほしい点

ステップ2|ワークショップで、想いを統合して言葉にする

集めた材料から、経営者と現場に共通する価値観を見つけます。ワークショップを3回に分けて行う方法があります。第1回では、社長が大切にしたいことと現場が大切にしていること、理想の姿と現実の姿のギャップを可視化します。第2回では、共通の誇りを見つけます。第3回では、未来の約束、つまり何で選ばれ続けるか、なぜ存在するのか、迷ったとき何を優先するかを決めます。

言葉にしたら、3つの視点でチェックします。

言葉を確かめる3つの視点
視点確かめること
経営者の視点自分の想いと戦略が反映されているか
現場の視点日々の仕事の意味が見えるか
顧客の視点自社が選ばれる理由が伝わるか

ステップ3|使えるかを検証し、全員で合意する

言葉ができたら、使えるかを検証します。次のような問いで、理念が判断の基準になるかを試します。利益は出るが理念に反する仕事が来たらどうするか。理念どおりだが赤字になる仕事はどこまで受けるか。競合が真似してきたらどうするか。

その後、1か月ほど試験的に運用し、困った事例や迷った事例を集めて、使いにくい表現を直します。理念に基づいて判断し、顧客が喜んだ小さな事例も共有します。最後に、全社員の前で経営者が宣言し、各部門長が「うちの部門ではこう実践する」と発表します。

  • 利益は出るが理念に反する仕事に、どう答えるかが決まっている
  • 理念どおりでも赤字になる仕事の、受ける基準が決まっている
  • 1か月ほど試験運用し、使いにくい表現を直した
  • 経営者の宣言と、部門ごとの実践の発表の場を設けた