大手の真似が、失敗しやすい理由

ランチェスター戦略は、軍事の戦闘理論を経営に応用した考え方で、小さな会社が大きな会社に勝つための戦い方として知られています。弱者の戦略を知る前に、総花的な戦略(何でもできる戦略)が失敗しやすい理由を確かめます。

たとえば、ある地域の電気設備工事会社を考えます(仮の例)。大手のセミナーで「総合力で勝つ」という話に感銘を受け、取り扱う工事の種類を一気に増やし、「何でもお任せください」と宣伝しました。ところが、新しい分野では専門業者との価格競争に負け、必要な知識も足りず、トラブルが続きます。本業の評判まで揺らぎ、長年の顧客から「手広くやっていて、かえって不安だ」と言われます。大手の総合力は、圧倒的な資本力があって成り立つものです。

総花的な戦略が失敗する5つのパターン
パターンどんな状態か
過去の成功体験への固執かつての「総合力で勝つ」モデルから抜け出せない
撤退の決断ができない「伝統の事業」などの理由で、赤字の事業を続ける
中途半端な投資全事業を維持しようとして、どれにも十分な投資ができない
専門特化した競合に負ける各分野で、専業の会社に敗れる
シナジーの過大評価事業間の相乗効果を期待しすぎ、実際は寄せ集めになる

強者の戦略と、弱者の戦略

ランチェスター戦略では、資源の多い強者と、少ない弱者で、勝つための戦い方が違うと考えます。強者は、資源を生かした物量で戦います。弱者は、狭い範囲に集中して戦います。弱者の戦略として、中小機構のJ-Net21でも、規模を追わず、顧客や商圏を限った範囲で強みを深掘りし、大手との価格競争を避ける考え方が紹介されています。

強者の戦略(物量作戦)と弱者の戦略(ゲリラ作戦)
強者の戦略内容弱者の戦略内容
広域戦広い範囲で、薄く広く展開する局地戦狭い地域や市場に集中し、そこでは負けない
確率戦大量に打って、当たりを狙う一騎打ち競合を分散させ、1対1の関係に持ち込む
遠隔戦直接会わず、大量に処理して効率を出す接近戦顧客との距離を詰め、きめ細かさで勝負する
総合戦フルラインで、取りこぼしを防ぐ一点集中あれこれやらず、一つに資源を集中する
誘導作戦業界の基準をつくり、自分の土俵に引き込む陽動作戦大手が対応しにくい、素早く変則的な動きで攪乱する

足場ができたら、どう広げるか

弱者の戦略で足場ができたら、事業を広げます。方法は3つあります。同心円拡大は、現在の強みを生かして、隣の市場を順番に取っていく方法です。一度に複数の市場に出ず、強みが生きる市場だけを選び、コア事業が十分に固まってから次に進みます。M&Aは、時間を買う方法で、自社の勝ちパターンが確立していて、買収先にも同じ戦略を当てはめられることが条件です。段階的な多角化は、最もリスクが高く、第二の創業として、既存事業が安定してから、別組織で進めます。

多角化の方法は、中小機構のJ-Net21にもまとめられています。判断の基準や、撤退の目安は、事前に決めておきます。

自社の戦い方を点検する

弱者の戦略の5つの型を、自社に当てはめて確かめます。

  • 場所:どの地域・市場に集中するかを決めた(局地戦)
  • 相手:競合を分散させ、顧客と直接の関係をつくった(一騎打ち)
  • 距離:大手にできない、きめ細かな対応で顧客に近づいた(接近戦)
  • 対象:あれこれ手を広げず、一つに資源を集中した(一点集中)
  • 動き:大手が追随しにくい、小回りの利く動きを使っている(陽動作戦)