経営戦略と事業戦略の違い

経営戦略と事業戦略は、決める範囲が違います。経営戦略は、会社全体としてどの事業領域で戦い、経営資源をどう配分するかを決めるものです。「何をやるか」にあたります。事業戦略は、個別の事業でどう競争に勝ち、利益を生むかを決めるものです。「どう勝つか」にあたります。

事業が一つの会社では、二つが重なって見えることもあります。それでも、「この事業を続けるのか、広げるのか、やめるのか」という判断と、「この事業で、どの顧客に、どの価値で勝つのか」という判断は、別々に考えると整理しやすくなります。

経営戦略と事業戦略の違い
項目経営戦略事業戦略
決めることどの事業領域で戦うか(何をやるか)個別の事業でどう勝つか
主な内容事業の選択と撤退、ヒト・モノ・カネの配分、事業間の相乗効果、企業理念との整合既存事業は市場での立ち位置の強化と収益性の向上、新規事業は参入方法と成長の道筋
考える単位会社全体事業ごと

戦略とは何か|3つの問いで考える

戦略とは、自社が一番になれる土俵を見つけ、そこで勝ち続ける方法を決めることです。次の3つの問いに答えられると、戦略として機能します。

「誰のために」は、全ての顧客を狙わず、自社の強みを最も生かせる顧客層に絞ることです。「何を提供するか」は、競合ではなく自社が選ばれる理由を、機能的な価値(品質・価格・納期)と情緒的な価値(安心感・共感・憧れ)の両面で言葉にして約束することです。「なぜ選ばれるのか」は、他社が真似できない、または真似しようとしない強みを磨くことです。技術、ノウハウ、企業文化、人的なネットワークなどが当てはまります。

  • 誰のために:特定の顧客層と、その人の課題が言える
  • 何を提供するか:機能面と気持ちの面で、選ばれる理由が言える
  • なぜ選ばれるのか:他社が簡単に真似できない強みが言える

戦略がぼやける5つの原因

戦略が決まらない会社には、共通する原因があります。成功体験にとらわれる、総合力を捨てられない、改善は得意でも事業の転換は苦手、戦術の積み上げを戦略と思い込む、決断を先送りする、の5つです。

たとえば、技術力に自信のある部品メーカーを考えます(仮の例)。主要取引先の生産が海外へ移り、受注が減りました。値下げ、営業の増員、品ぞろえの拡大を順に試しましたが、新規の受注は伸びません。社員から「うちは結局、何を売りにしているのか」と問われ、顧客からも「技術は素晴らしいが、何が強みか分からない」と言われます。技術力という手段にこだわり、どの市場で、誰のために、どう勝つかを決めていなかったのです。

計画の課題を調べた調査もあります。タナベコンサルティングが2022年に行ったアンケート(有効回答215件、複数回答)では、長期ビジョン・中期経営計画の課題として「目標数値を掲げているが具体的な戦略が不足している」を選んだ企業が60.0%でした。回答数が限られる調査なので、日本企業全体の割合ではありませんが、数字の目標があっても、戦略が言葉になっていないという悩みは珍しくないことが分かります。

  • 「良いものを作れば売れる」という成功体験にとらわれている
  • 「何でもできる」という総合力を捨てられない
  • 現場の改善は得意だが、事業の転換は苦手
  • 売上目標の割り振りや前年踏襲を、戦略と思い込んでいる
  • リスクを避け、決断を先送りしている

迷走から抜け出す6ステップ

戦略の迷走から抜け出すには、完璧な地図をつくるより、現実を直視するところから始めます。whymeの講座では、次の6ステップで整理しています。

戦略の迷走から抜け出す6ステップ
ステップやること
1 現実との対話自社の本当の強みと致命的な弱みを、数値と事実で直視する
2 ありたい姿の言語化10年後に実現したい顧客の成功体験を描き、全社員が同じ方向を向ける羅針盤にする
3 ブランドプロフィールで検証全社員が語れる戦略のストーリーを、短い文章にする
4 撤退の決断「やめることリスト」を優先して、経営資源を集中する領域を絞る
5 実験的な経営失敗を学習の機会にして、すばやくPDCAを回す
6 共創型の戦略現場の中心人材と一緒に、実行力のある戦略をつくる

自社の戦略を30秒で語る|ブランドプロフィール

戦略が言葉になっているかを確かめる方法が、ブランドプロフィールです。次の文章の【 】を埋めて、30秒で説明できるかを試します。

「【ブランド名】といえば【コアバリュー・トーン】な【カテゴリー】です。【シンボル】をシンボルとして、【メインターゲット】の人々に【ユーザーが得る利益】を提供してくれる【人にたとえた性格】のような存在です。なぜなら、【根拠となる事実】という事実があるからです。」

書けない項目は、戦略が決まっていない部分です。その項目が、次に取り組む課題になります。まず自社の分を一度書いてみて、幹部にも書いてもらうと、認識のずれが見えてきます。

  • ブランド名と、カテゴリー(何の会社か)
  • コアバリューと、トーン(どんな価値を、どんな雰囲気で)
  • メインターゲットと、その人が得る利益
  • シンボルと、人にたとえた性格
  • 選ばれる根拠となる事実