なぜ、現場を巻き込んで計画をつくるのか
事業計画の策定体制を決めずに、経営者の周りの数人だけで進めると、どうなるでしょうか。次のような場面を考えます(仮の例)。社長が専務と営業本部長だけを社長室に集め、週末に来期の事業計画を作りました。売上150%、新規開拓は月10件、原価率3%削減。「現場を巻き込むと時間がかかる。完成してから降ろせばいい」という判断でした。
計画を受け取った現場の課長たちは、設備は古いままで限界だ、今の人数では既存客の対応で手一杯だ、と感じます。「また上が勝手に決めた」という声が出て、数か月後の実績は目標に届きません。ある若手のマネージャーは、「なぜこの目標なのか、どんな議論があったのか、何も知らされず、ただやれと言われても」と辞めてしまいます。
この例が示すのは、事業計画は、つくるプロセスにも価値があるということです。透明性のある議論、現場の巻き込み、納得感が、「絵に描いた餅」と「実行される計画」の分かれ目になります。中小企業の経営計画の策定の実態は、中小企業庁の小規模企業白書でも取り上げられています。
プロジェクトとは|失敗しやすい6つの型
プロジェクトとは、通常の業務では実現できない特別な目的を、チームを組み、期限を決めて達成する取り組みです。特別な目的、期間限定、臨時組織の3つがそろいます。目的があいまいだと、活動が正常に進みません。
プロジェクトが失敗しやすいパターンを、6つの型に整理します。原因は目的の不明確さだけでなく、オーナーの不在や、準備の不足なども含まれます。自社の計画づくりが、どの型に近づいていないかを確かめます。
| 型 | どんな状態か |
|---|---|
| 空中分解型 | 既存の業務が忙しく、途中で終息・解散してしまう |
| もみ消し型 | その場しのぎで立ち上げ、こっそり終わらせる |
| オーナー不在型 | 責任者がおらず、部門間の対立を解消できない |
| 見切り発車型 | 目的・予算・人員が足りないまま始めて迷走する |
| 丸投げ型 | ゴールが不明確なまま、現場に任せきりにする |
| ダボハゼ型 | 思いつくままプロジェクトを増やし、手が回らなくなる |
臨時組織だから起きる6つの問題点と対策
プロジェクトは臨時の組織なので、通常の組織にあるルールや決まりがありません。仕組みを先に決めておかないと、人間関係のもつれで足元をすくわれます。次の6つの問題が起きやすく、それぞれに対策があります。
| 起きやすい問題 | 必要な対策 |
|---|---|
| 暗黙のルールがない | 前提条件・制約条件を確認する |
| 業務の進め方が決まっていない | プロジェクトの作業計画をつくる |
| 月次や決算のような納期がない | 納期とスケジュールを明確にする |
| 意思決定者が決まっていない | オーナー(最終的に決める人)を明確にする |
| 関係者が複雑に絡んでくる | 関係者への配慮を計画に入れる |
| 情報の伝え方が決まっていない | 連絡の経路とルールを決める |
プロジェクトの体制と6つの役割
体制を決めるときは、プロジェクトのオーナーとマネージャーの役割を分けて考えます。オーナーは、プロジェクトの方向性を決める人で、通常は経営者が務めます。マネージャーは、品質・スケジュール・採算を管理する、実行の責任者です。経営者がマネージャーも務めると、日々の管理に追われ、方向性を決める判断が遅れることがあります。小規模な会社で兼務せざるを得ないときも、役割を分けて考え、誰がどの判断をするかを決めておきます。
| 役割 | 主な仕事 |
|---|---|
| プロジェクトオーナー | 最終的な責任者。関係者の利害を調整し、節目の意思決定をする |
| ステアリングコミッティ | 主要な関係者による監視と支援。対立の早期解消に協力する |
| プロジェクトマネージャー | 計画を立て、進捗を管理し、品質・納期・コストを達成する。定例会議を主催する |
| 事務局 | 後方支援。議事録・開催通知・情報発信、論点の整理を支援する |
| 分科会リーダー | テーマごとの実行責任者。詳細な計画を立て、メンバー間のタスクを調整する |
| 分科会メンバー | タスクの確実な推進。進捗や問題を正確に報告する |
巻き込む順番と、停滞する時期の乗り越え方
全員を一度に巻き込む必要はありません。イノベーター理論では、新しい取り組みへの反応を、積極的に挑戦する人(約2.5%)、効果を自分で判断して協力する人(約13.5%)、信頼する人が勧めたら協力する人(約34%)、周囲が取り組んだら協力する人(約34%)、変化に慎重な人(約16%)の5つに分けます。whymeの講座資料では、プロジェクトでは、効果を自分で判断して協力する層(アーリーアダプター)までを巻き込み、それ以降は、計画の実行と成果を通じて広げる考え方を勧めています。
メンバー選びでは、実績が評価されている中心人物に加えて、役職の影響力は小さくても、人のつながりが広く、対立の緩衝材になれる人を入れると、チームの結びつきが強まります。特定の社員をそう決めつけるのではなく、役割として考えます。
どのプロジェクトにも、解決の糸口が見つからない時期が来ます。厳しい現実に直面し、抵抗にあい、意欲が下がる時期です。この時期に、小さな成功をつくってチームの手応えを取り戻し、リーダーが方向を示し続けることが、乗り越える手がかりになります。
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