事業計画書でチェックされるのは何か

事業計画書のチェックでは、書いてあることだけでなく、書いてあることがつながっているかが問われます。日本政策金融公庫は、融資の審査について、これまでの業績、これからの事業見通し、業界の動向、申込みの内容から総合的に判断するとしています。提出する事業計画書に加えて、決算書や会社案内などの参考資料も求められます。

whymeの事業計画診断では、事業計画書を次の3つの観点で見ています。自分で見直すときも、この順に確かめると、直す場所が絞れます。

事業計画書をチェックする3つの観点
観点確かめること見落としやすい点
必要項目提出先と目的に必要な章・項目が揃っているか融資・補助金・社内で求める内容が違うのに、同じ計画書を使い回している
ストーリー現状→課題→戦略→施策→数値が一本につながっているか課題は書いてあるが、施策と数字に反映されていない
蓋然性売上・費用の根拠、計算、資金と返済、実行体制があり、計画どおり進むと言えるか売上目標を先に決め、積み上げの根拠がない

観点1:必要項目が揃っているか

最初に、提出先と目的を決めます。金融機関への融資、補助金の申請、社内の経営計画では、求められる項目が異なるためです。融資では提出先の様式があることが多く、補助金は公募ごとに様式と審査項目が決まっています。書き始める前に、様式や公募要領を確かめます。

一例として、日本政策金融公庫が公開している事業計画書の様式(認定経営革新等支援機関と作成するもの)には、次の項目があります。現況と課題、課題を踏まえた具体策、前期実績から今後数期分の損益、借入金の期末残高の推移、計画終了時の定量目標と行動計画です。自社の計画書に同じ内容が揃っているかを見ると、抜けが分かります。

  • 提出先の様式や公募要領を、書き始める前に確認した
  • 現況と、解決したい課題が書かれている
  • 過去の実績と、今後数期分の損益・借入金の計画が揃っている
  • 計画終了時の数値目標と、そこへ向かう行動計画がある
  • 決算書、見積書など、添える資料が揃っている

観点2:ストーリーが一本でつながっているか

項目が揃っていても、つながっていない計画書は読み手に伝わりません。現状の分析から課題、戦略、施策、数値計画までが、順に説明できる状態にします。

よくあるのは、強みを書いたのに戦略で使われていない、課題に挙げたことに施策がない、施策の効果と費用が数値計画に入っていない、という切れ目です。会社のWebサイトや決算書と、計画書の説明が食い違っていないかも確認します。読み手は、計画書の外の情報とも照らして見るためです。

  • 課題ごとに、対応する施策がある
  • 施策ごとに、担当・開始時期・必要な費用が決まっている
  • 施策の効果と費用が、数値計画に反映されている
  • 市場や競合の説明に、出典や根拠がある
  • 会社の公開情報や決算書と、説明が食い違っていない

観点3:数字に根拠があり、計画どおり進むと言えるか

最後に、数字を確かめます。売上は、客数×単価や契約数など、要素に分けて根拠を示し、過去の実績の伸びと比べます。急な伸びを見込むなら、受注や契約などの裏付けを添えます。費用は、売上が増えると必要になる人件費、仕入れ、広告費が入っているかを見ます。

計算は、合計や比率が合っているか、前の期の期末と次の期の期首がつながっているかを検算します。利益が出る計画でも、返済や投資、税金の支払いで資金が足りなくなることがあるため、利益と現金は分けて確認します。経済産業省のローカルベンチマークは、売上増加率、営業利益率、労働生産性、EBITDA有利子負債倍率、営業運転資本回転期間、自己資本比率の6つの指標で財務を見ます。過去と計画で並べ、急に大きく変わる指標があれば、その理由を説明できるようにします。

数字の確認ポイントと、指摘されやすい例
確認する数字確かめ方指摘されやすい例
売上客数×単価などに分け、過去の伸びと比べる根拠のない右肩上がりで、過去の実績と大きく離れている
費用売上の増加に伴う人件費・仕入れ・広告費を入れる売上だけが増えて、費用が変わっていない
計算合計、比率、期のつながりを検算する内訳の合計が、本文の数字と合わない
資金返済・投資・税金を入れた月次の資金残高を見る黒字なのに、返済の時期に資金が足りない
実行施策の担当・期限・指標が決まっている誰がいつ実行するか、書かれていない

返済や資金繰りに不安があるときは

計画の数字を見て、返済や資金繰りが厳しいと感じるときは、計画書を整えるだけでなく、早めの相談が必要です。中小企業庁は、認定経営革新等支援機関の支援を受けて計画をつくる早期経営改善計画策定支援などの制度を案内しています。金融機関や顧問の税理士、認定支援機関とも、早めに状況を共有します。

提出前の確認リスト

ここまでの内容を、提出前の確認リストにまとめます。すべてにチェックが付かなくても、付かなかった項目が、直す場所です。

  • 【必要項目】提出先の様式・公募要領に沿った項目が揃っている
  • 【必要項目】実績と今後数期分の計画、数値目標がある
  • 【ストーリー】現状→課題→戦略→施策→数値が一本でつながっている
  • 【ストーリー】施策の担当・時期・費用が決まっている
  • 【蓋然性】売上の根拠が、過去の実績や裏付けと合っている
  • 【蓋然性】費用が、売上の増加に合わせて見込まれている
  • 【蓋然性】合計や期のつながりを検算した
  • 【蓋然性】返済と投資を含めて、資金が足りる時期を確かめた
  • 【蓋然性】実行する人と期限が決まっている

AIで事業計画書を診断する:できることとできないこと

確認リストで直す場所が見つかっても、自分で読み返すと見落とすことがあります。whymeの「事業計画書 AI診断」は、事業計画書のPDF(20MB・100ページまで)をアップロードすると、1〜3分ほどで、必要項目・ストーリー・蓋然性の3つの観点から課題を示します。観点ごとに「十分・おおむね・不十分・記載なし」を判定し、6軸のレーダーチャートとA〜Eの総合評価で表示します。利用目的は、社内利用、融資用、補助金申請、社外説明用から選べます。

一方で、融資や補助金が通るかどうかは分かりません。審査は、計画書以外の情報も含めて、金融機関や審査機関が行うためです。事業内容の良し悪しも断定しません。診断結果は、計画書を見直すときの手がかりとして使い、提出先の最終確認は金融機関や専門家に相談してください。