事業承継計画と事業計画は、何が違うか
事業計画は、どの顧客に何を提供し、どのように売上・利益・資金を生むかを具体化します。事業承継計画は、その事業を誰が経営し、株式や権限、顧客との関係、技術をどう引き継ぐかを整理します。両者は別々に作って終えるものではありません。
たとえば後継者が新しい販路を開拓する方針なら、その投資資金だけでなく、既存事業を支える幹部の役割も必要です。株式取得や先代への退職金を予定するなら、承継後の運転資金と投資余力に反映します。会社の未来と引き継ぎの条件を、同じ前提で検討します。
制度・手続きの確認先
計画を書く前に、決まっていることを確かめる
株主名簿、決算・借入・保証の資料、主要契約を集め、社長が担う判断や顧客対応も棚卸しします。そのうえで先代の希望と後継候補の意思を別々に確認します。候補者の意思が未確認なら、就任日を先に確定させず、確認の場を計画に入れます。
資料が不足している項目は、仮定で埋めず「未確認」と記載します。確認先と期限を付ければ、未確認事項も作業に変えられます。各専門家に違う数字や方針が渡らないよう、使用した資料の対象期・更新日を揃えます。
計画に記載したい六つの項目
次の表は、自社の計画を考えるための記入例です。役職変更や株式移転には、会社の決議、契約、税務等の確認が別途必要です。表を埋めるだけで必要な手続きが完了するわけではありません。
「後継者を育てる」「金融機関と相談する」といった大きな言葉は、完了したか判断できる仕事に分けます。株式の移転日だけでなく、引き継いだ後に経営が動く状態を記載します。
| 項目 | 記載する内容 | 完了条件の例 |
|---|---|---|
| 承継の方針 | 方法・担い手・残す価値・代替案 | 本人の意思と検討条件を記録 |
| 事業の将来像 | 収益源・投資・事業計画・資金繰り | 承継後の資金の見通しを共有 |
| 経営と組織 | 権限・幹部・後継者の実務経験 | 決裁範囲を合意し現場へ周知 |
| 株式と資産 | 所有関係・移転方法・家族への配慮 | 専門家と権利・税務の論点を確認 |
| 資金と保証 | 取得・納税・退職金・借入保証 | 金融機関へ条件と必要手順を確認 |
| 知恵と関係 | 技術・値決め・顧客・取引先 | 後継者と担当者が実務を再現 |
時系列だけでなく、前後の依存関係を書く
株価の試算、資金調達、株式移転、役員変更などには、先に確認すべき条件があります。実行日から逆算し、誰の回答を待つのか、何が決まれば次へ進めるのかを記載します。一方で、現場同行や技術の記録など、並行して進められることもあります。
たとえば「主要顧客の窓口を移す」なら、先代と後継者の同行、担当幹部との情報共有、後継者による対応、結果の振り返りを段階に分けます。担当、期限、確認する人を定め、先代が関与する期間も合意します。
- 何をするか・担当者・期限・完了条件を一行で書く
- 着手前に必要な合意・資料・審査を記載する
- 未成立の場合の代替案と、見直す時期を決める
- 業績や本人の意思が変わったときは、前提から更新する
税制の「特例承継計画」と混同しない
経営を引き継ぐための事業承継計画と、法人版事業承継税制の特例措置に関する特例承継計画は、目的と手続きが異なります。社内で承継計画を作成しただけで、税制上の提出や認定、申告が済むわけではありません。
納税猶予等の利用を検討する場合は、対象・期限・提出先・継続要件を税理士等と確認します。制度に合わせて経営方針を無理に固定せず、利用しない場合の資金負担や将来の売却・再編の可能性とも比較します。
月次の対話で、計画を実際の経営につなぐ
定期的に先代・後継者・幹部で、完了したこと、止まっていること、今回決めたいことを確認します。遅れの理由が本人の経験不足なのか、権限がないのか、資金や手続きの問題なのかを分ければ、必要な支援が見えてきます。
whymeは事業と人の両面から、承継後の経営と実行するチームを考えます。専門家向けのアトツギ・ナビでは、企業情報の整理、承継シナリオ、計画書・実行スケジュール等の作成を支援します。出力を完成形とせず、当事者の意思と最新の資料に照らして確認します。
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