ファイブフォース分析とは|5つの力で市場を見る

ファイブフォース分析は、経営学者のマイケル・ポーターが提唱した分析手法で、自社を取り巻く5つの競争圧力から、市場の儲けやすさ・儲けにくさを判断します。ポイントは、競合を同業他社だけに限らないことです。顧客に同じ価値を提供する代替品や、新しく参入してくる会社も含めて、競争環境を広く見ることで、市場の本当の厳しさが分かります。

仕入先と顧客との力関係も、利益を左右します。仕入先が1社に偏れば価格交渉で不利になり、大口の顧客に依存すれば値下げ圧力を受けます。5つの力が弱い市場ほど儲けやすく、強い市場は価格競争に陥りやすいと考えます。市場や業界、競合の調べ方は、中小機構のJ-Net21にもまとめられています。

5つの力と、チェックする項目
5つの力見ることチェック項目
業界内の競争同業他社との顧客獲得競争の激しさ競合の数と力関係/差別化できるか/撤退しにくい会社が多くないか
新規参入の脅威新しい競合が入ってくる可能性初期投資の大きさ/許認可・資格の難しさ/既存企業の反撃の力
売り手(仕入先)の交渉力仕入先・協力会社が持つ優位性仕入先が少数に偏っていないか/その仕入が欠かせないか/仕入先が直接顧客に売る可能性
代替品の脅威同じ要望を別の方法で満たす商品・サービス価格に対する性能/乗り換えのしやすさ/技術革新による置き換え
買い手(顧客)の交渉力顧客が価格やサービスに持つ優位性売上が少数の顧客に集中していないか/顧客が相場や原価を知っているか/顧客自身の収益性

魅力的な市場と、そうでない市場のパターン

5つの力の組み合わせから、市場の性格が見えてきます。一般的な類型として、次のようなパターンがあります。業種の優劣を示すものではなく、自社の市場がどれに近いかを考えるための整理です。

魅力的な市場と、そうでない市場の主なパターン
パターン市場の性格
技術革新の恩恵成長市場で、技術の優位性による先行者の利益が得られる
規制が味方許認可や資格に守られ、安定した収益を長く確保しやすい
地域密着の聖域地域での信頼が参入の壁になり、大手が入りにくい
顧客とともに成長顧客の事業の成長と一緒に伸び、乗り換えのコストが大きい
見た目は華やか、実は消耗戦参入が容易で、代替品が多く、価格競争になりやすい
大手の草刈り場資本力が必要で、規模の勝負になる
顧客に有利で、企業が苦しい顧客の力が極めて強く、価格競争になる
今は有利、もうすぐ過当競争成長期は有利でも、参入が殺到して競争が激しくなる

使えない分析と、使える分析の違い

ファイブフォース分析を書いても、意思決定に使えない分析があります。教科書的に「中程度の脅威」と並べるだけの分析、事実を並べるだけで「だからどうする」がない分析、すべてを「強い」として悲観的に終わる分析です。

使える分析には、3つの書き方があります。1つ目は、数字と期限で語ることです。たとえば「設備投資に5億円と許認可の取得に2年かかるため、今後3年は新規参入に安全」と書けば、次の行動が決まります(仮の例)。2つ目は、変化を先読みすることです。現在の状況だけでなく、技術革新で3年後に参入の費用が下がる、といった時間の変化も分析します。3つ目は、自社の視点で機会を見つけることです。大手が参入しない規模の市場、自社の特注対応が代替されにくい点など、脅威を自社の強みで機会に変えられないかを考えます。

  • 各項目に、数字と期限を入れた
  • 現在だけでなく、2〜3年後の変化も見た
  • 「だからどうする」という行動まで書いた
  • 自社の強みで、不利な点を補えるかを考えた

市場の変化に気づけない5つの理由

分析をしても、市場の変化に気づけない経営者は少なくありません。変化を見逃す理由には、次の5つがあります。成功体験にとらわれ、過去の方法に固執する。社内や同業者との情報交換ばかりで、顧客の生の声や業界外の動きを知らない。日々の業務に追われ、市場を俯瞰する時間がない。売上の減少を景気や季節のせいにして、構造的な変化と捉えない。変化を認めると今の事業の否定につながるため、現実から目をそらす。

完璧な市場を探すより、「不完全な市場で勝つ方法」を考える方が現実的です。5つの力に不利な点があっても、自社の強みと合っていれば、勝つ余地は残ります。