バリューチェーン分析とは|価値と利益を生む工程を見える化する

バリューチェーン分析は、経営学者のマイケル・ポーターが示した考え方で、顧客に届けるまでの全ての企業活動を工程ごとに分け、どこで価値と利益を生んでいるかを見える化するものです。工程は、価値を直接生む主活動と、それを支える支援活動に分けます。

分けた工程のどこに、経営資源を重点的に使うかを見極めることで、差別化の要因をつくります。中小機構のJ-Net21にも、競合より優れた点を明確にして、顧客が自社を選ぶ理由を説明する「優位性」の考え方が載っています。

バリューチェーンの工程(主活動と支援活動)
区分工程主な活動
主活動購買・仕入原材料の調達、仕入先の管理、在庫の管理
主活動製造・開発商品の製造、サービスの開発、品質の管理
主活動出荷・物流在庫の保管、配送の管理、受注の処理
主活動営業・販売営業活動、販売促進、顧客の開拓
主活動サービス保守サポート、顧客対応、アフターケア
支援活動全般管理・人事労務・技術開発・調達経理・総務・経営企画、人事・労務、研究開発など

分析の3つのポイント

バリューチェーン分析で押さえたいのは、次の3点です。1つ目は、「儲けの源泉」を数字で確かめることです。企画、仕入、販売、サポートなどの業務に、いくらコストをかけ、どれだけ売上や利益に貢献しているかを調べると、儲かっている業務と足を引っ張っている業務が分かります。

2つ目は、「顧客の本音」と「自社の思い込み」を照らし合わせることです。自社は品質が強みと思っていても、顧客は対応の速さや相談のしやすさで選んでいることがあります。3つ目は、「選択と集中」です。全ての業務を自社で抱える必要はありません。競合に劣る業務は外に任せ、優位性のある業務に集中する考え方もあります。数字での確かめ方は、付加価値生産性の記事で解説しています。

顧客の評価と、自社の評価を照らし合わせる

たとえば、自動車部品を加工する会社を考えます(仮の例)。社長は「高精度の加工技術」が強みだと考え、医療機器の分野に進出しようとしました。ところが、認証や管理の仕組みに時間とコストがかかり、受注は伸びません。工程ごとに顧客の評価を確かめると、顧客が評価していたのは、技術の高さよりも、提案の的確さ、融通の利く納品、相談のしやすさ、長年の信頼でした。

高精度の加工は、顧客から見れば「当たり前」で、参入の障壁にはなりませんでした。技術は必要条件にすぎず、選ばれる理由は別のところにあったのです。このように、工程ごとに自社の評価と顧客の評価を並べると、本当の強みが見えてきます。

工程ごとの自社評価と顧客評価の照合(仮の例)
工程自社の評価顧客の評価読み取れること
開発・設計普通提案が的確顧客の意図を理解する力が強み
製造高精度当たり前技術は参入の障壁になりにくい
品質管理良好安心感がある長年の無事故の実績が信頼になっている
納品普通融通が利く緊急の対応力が評価されている
アフター最小限相談しやすい長年の関係が強みになっている

経営者が、自社の強みを見誤る5つの理由

強みの見誤りには、共通する理由があります。

  • 内側の視点にこだわる:社内では「できて当たり前」のことが、顧客には特別な価値になっていても気づけない
  • 過去の成功体験に固定される:創業時に通用した強みを、市場が変わっても更新しない
  • 顧客の本音が届かない:営業担当は悪い話を伝えにくく、顧客も直接は言いにくい
  • 競合との比較が足りない:自社の技術や品質を、絶対評価で「高い」と思い込む
  • 願望と現実を混同する:「こうありたい強み」と「実際に評価されている強み」を区別できない

業種のタイプ別に見る着眼点

工程のうち、どこを見るかは、事業の性格で変わります。次の4つのタイプで、収益を左右する要素が異なります。自社がどれに近いかで、分析の優先順位を決めます。

業種のタイプ別の着眼点
タイプ例着眼点
労働集約型飲食、医療・介護人件費が最大のコスト。スタッフの生産性の向上が鍵
資本集約型製造、物流設備の稼働率が収益を決める。固定費の回収と、自動化・省力化の投資判断が重要
知識集約型IT、コンサルティング人材の質が競争力。属人化のリスクの管理と、ノウハウの組織化が課題
在庫型小売、製造在庫の回転率が資金繰りに直結する。需要予測の精度と、不良在庫の処理費用が課題