KPIは達成したのに、業績が落ちるのはなぜか

KPIの間違いで、よくあるのが、KPIは達成したのに、業績が悪くなる状態です。ある地域の食品スーパーの例を考えます(仮の例)。「地域の高齢者に優しい店」という戦略を部門ごとに展開し、高齢者の来店率、地元産品の比率、宅配の件数をKPIにしました。毎月の会議では、「来店率は58%でした」「あと少しだな」「頑張れ」というやり取りが続きます。

1年後、KPIは達成されたのに、売上は前年を下回り、利益は大きく落ちました。高齢者を優先するあまり、若い家族連れが他の店に移っていました。割高でも地元産品を仕入れて、原価率が悪化しました。少額の注文でも配送して、配送の費用が増え、ドライバーが疲弊しました。数字を追うことが目的になっていたのです。

モニタリングとマネジメントの違い
モニタリングマネジメント
目的数値を確認する数値を改善する
姿勢受け身で、見ているだけ能動的に、改善策を講じる
焦点過去と現在現在と未来
行動報告して終わる原因を分析して、対策を実行する

よくあるKPIの間違い8つ

KPIの間違いは、次の8つに整理できます。自社に当てはまるものがないか、点検します。

KPIの8つの間違いと、直し方
間違いどんな状態か直し方
結果指標をKPIにする売上や利益のような結果を、そのままKPIにしている結果を生む過程を測る(新規の獲得数、既存顧客の購買頻度、単価の上昇など)
思い込みのKPI「訪問を増やせば売上が上がるはず」と、検証せずに置いている過去のデータで、指標と成果の関係を確かめる
他力本願のKPI市場シェアのように、自社の努力だけでは変えられない指標を置く自社でコントロールできる指標(新規獲得数、解約の防止率など)にする
測れない(机上の空論)KPI測定に費用や手間がかかりすぎる指標を置く測りやすい代替の指標(リピート購入率、紹介件数など)にする
縦割りのKPI部門が自分の指標を達成しても、全社では損失になる全体の最適につながる指標(営業は粗利額、製造は品質・コスト・納期の総合)にする
手段の目的化日報の提出率のように、形式を整えること自体が指標になっている成果につながる指標(日報から生まれた改善提案の数と実行率など)にする
多すぎて焦点がぼやける1つの部門に、10個以上の指標がある最終の成果との関係が強い、上位3つほどに絞る
短期の成果に偏る今月の売上だけを追い、値引きや無理な販売が起きる中期・長期の指標(移動平均の成長率、顧客生涯価値など)も組み合わせる

KPI同士が、足を引っ張り合うとき

KPIを達成しても、別の指標が悪化することがあります。上のスーパーの例のように、高齢者の来店率を上げると若い家族連れが減る、地元産品の比率を上げると原価率が上がる、宅配の件数を増やすと配送費が増える、といった関係です。

対策は、KPIを決めるときに、相互の影響を確かめておくことです。影響があるときは、目標値を調整する、別の施策で補う(高利益の商品とあわせて販売する)、最低の注文金額を決める、といった対応をします。KPIの目標値は、固定せず、状況を見て見直します。計画を計画どおりに実行するために、環境の変化に応じて見直す姿勢が必要という点は、中小機構のJ-Net21でも指摘されています。

KPIを点検する質問

自社のKPIを、次の質問で点検します。

  • KPIを達成したのに、業績が変わらない指標はないか
  • 結果ではなく、過程を測る指標になっているか
  • 自社の努力で変えられる指標か
  • 現場が負担なく測れるか
  • 各部門のKPIが、全社の利益と矛盾していないか
  • 1つの部門に、指標が多すぎないか
  • KPIの数字を見たとき、「なぜ」を話し合う場があるか