習慣化のコツは、小さく始めて、意志のせいにしないこと
習慣化のコツは、大きく二つです。きっかけと報酬を小さくして始めること、そして、続かないことを自分の意志の弱さのせいにしないことです。新しい挑戦が続かないのは、多くの場合、意志の問題ではなく、始め方と続け方の仕組みに無理があるからです。
新しい挑戦について、次のような声はよく聞きます。
- 「年初に目標を立てるものの、ほとんど達成したことがない」
- 「成功の秘訣は『小さく始めること』と言うけれど、それすらできない」
- 「スマホの通知で忘れないようにしているのに、それでも続かない」
- 「自分は、続ける意志が弱いのかな」
最後の一言に、続かない人の多くがたどり着きます。ただ、意志の強さで続けようとするほど、続かなかったときに自分を責め、次の挑戦にも手が出にくくなります。
職場でも同じことが起きます。whymeの人材開発でも、「研修を受けても、職場で続かない」は、最初に挙がる課題の一つです。研修で学んだときはやる気があっても、翌週には日々の仕事に押し流されてしまう。これは受講した人の意志の問題というより、学んだことを試し、振り返る仕組みが職場にないことの方が大きいと私は考えています。問題は、個人より職場の風土や仕組みとして見る方が、打ち手が見つかります。
習慣化に必要な期間の目安
習慣になるまでの期間は、何を習慣にするかで変わります。習慣化コンサルタントの古川武士さんは、習慣を三つの種類に分け、それぞれの期間の目安を示しています。
| 習慣の種類 | 例 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 行動の習慣 | 勉強、日記、読書 | 約1か月 |
| 体のリズムの習慣 | 運動、早起き、禁煙 | 約3か月 |
| 考え方の習慣 | 前向きに考える、筋道立てて考える、完璧主義をやめる | 約6か月 |
あくまで目安で、人によって違います。ただ、この表から分かることがあります。考え方の習慣は、行動の習慣よりずっと時間がかかるということです。
管理職研修で「部下の話を聴く」を学んでも、聴く姿勢が身につくまでには、半年ほど試し続ける必要があるかもしれません。1か月で「研修の効果がなかった」と判断するのは早いのかなと思います。まずは「1on1で、部下より先に話さない」のような行動の習慣から始め、それを続けるうちに考え方が変わっていく、という順番で考えると無理がありません。whymeの人材開発も、12週間をかけて、現場で試すことと、コーチングで振り返ることを重ねる形にしています。
習慣化の3つの壁:反発期・不安定期・倦怠期
古川武士さんは『30日で人生を変える「続ける」習慣』の中で、新しい習慣が身につくまでの道のりを三つの段階に分けています。それぞれの段階に、挫折しやすい壁があります。
| 壁 | 時期の目安 | 起きること | 乗り越え方 |
|---|---|---|---|
| ① 反発期 | 始めてから1週間ほど | 本能的に抵抗し、やめたくなる | 時間や難しさを小さくして始める。やったかどうかだけを簡単に記録する |
| ② 不安定期 | 2〜3週目ごろ | 急に忙しくなるなど、予定外のことが起きて途切れる | 忙しい日の「最低限これだけ」を先に決めておく。途切れても、翌日に戻ればよいと決めておく |
| ③ 倦怠期 | 3週目以降 | 同じことの繰り返しに飽き、マンネリになる | やり方や場所を少し変える。続ける理由を思い出す |
一つ目の反発期は、いちばん挫折しやすい時期です。新しいことを始めると、体も気持ちも「いつも通り」に戻ろうとします。ここでは、やる量を思い切って小さくします。「毎日30分勉強する」なら、「毎日テキストを開く」まで小さくして構いません。
二つ目の不安定期は、予定外のことで崩れる時期です。出張が入った、急な仕事が重なった、体調を崩した。こうした日は誰にでもあります。崩れること自体は防げないので、崩れたときにどうするかを先に決めておきます。
三つ目の倦怠期は、慣れてきたからこそ飽きる時期です。同じことを同じやり方で続けるより、少し変化をつけた方が続きます。
三つの壁を知っておくと、「やめたくなった」「途切れた」「飽きた」ときに、自分が弱いのではなく、いまはこの壁に来ているのだ、と捉えられます。それだけで、やめずに済むことも多いかなと思います。
大きな変化を、脳は「怖いもの」と受け取る
なぜ、小さく始めることがそれほど大事なのでしょうか。予防医学者の石川善樹さんは、論文「継続とは『小さな問い』を立てること」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー)で、脳の働きから説明しています。
ごく簡単にまとめると、次のような仕組みです。
- 理性や意志を担う脳は、「大きく変われ」と指令を出す
- 感情を担う脳は、大きな変化を「怖いもの」と判断し、変化を拒む
- 習慣を担う脳は、繰り返してきたことを、考えずにこなせるようにする
そのため、「大きく変わろう」と意気込むほど、脳の別の部分がブレーキをかけます。続かないのは、きっかけと報酬が大きすぎるからです。そこで、小さなきっかけで行動を始め、小さな報酬で終える。これを繰り返すことで、脳に怖さを感じさせずに、行動を習慣の側へ移していきます。
資格の勉強を例にすると、次のようになります(仮の例です)。
- きっかけ:「毎朝5時に起きて、1時間勉強する」ではなく、「朝、コーヒーを入れたら、テキストを開く」
- 行動:「問題集を毎日1章ずつ解く」ではなく、「問題を1問だけ解く」
- 報酬:「半年後に試験に受かる」ではなく、「1問解いたら、カレンダーに印をつける」
報酬は、遠い先の大きな成果ではなく、その日のうちに感じられる小さな手応えにします。カレンダーの印が並んでいくのを見るだけでも、脳にとっては十分な報酬になります。
続ける仕組みをつくる、習慣化のコツ
石川さんは、習慣を定着させるための心得を十か条にまとめています。私なりに要点をまとめると、大きく三つになります。
一つ目は、減らすこと。 選ぶことが多いと、それだけで疲れて続きません。いつ、どこで、何をやるかを先に決めて、毎回迷わないようにします。あれもこれもと同時に始めず、余白を残しておくことも大切です。
二つ目は、ゆるめること。 完璧にやろうとすると、一度崩れたときに全部やめたくなります。日によってやることを変えてもいい。きちんと寝る。飽きたらいったんやめてもいい。続かないことを、意志のせいにしない。続けるためには、思っているより、ゆるい方がうまくいきます。
三つ目は、意味と仲間を持つこと。 何のために続けるのか、その理由を探しておく。そして、一人で始めないことです。誰かと一緒に始める、誰かに宣言する。それだけで、続ける力が変わります。
この中で私が特に大事だと思うのは、「何のために続けるのか」です。
私は2020年ごろから独立を考えていましたが、踏み出せないまま3年迷いました。その間に、プログラミングやコーチングの資格を取りました。学ぶこと自体は続けられたのです。ただ、やがて痛感したのは、スキルを身につけることと、稼ぐことは別だということでした。資格を取れば事業になるわけではなく、順序は「ビジネスモデルありき」でした。そこに気づいて、2023年4月にwhymeを設立しました。
学ぶことを続けるのは、悪いことではありません。ただ、何に向かって続けているのかが曖昧なままだと、続けること自体が目的になってしまいます。習慣は、めざす姿とつながっていて初めて意味を持ちます。めざす姿の考え方は、ビジョンと目標の違い(第2弾・未作成)で書いています。
職場で新しい挑戦を続けるために、上司ができること
部下の新しい挑戦を職場に定着させるために、上司ができることは三つあります。
- 行動を小さく決める。 研修の後や1on1の終わりに、「来週までに、何を一つやってみますか?」と聞き、部下が自分で決めた小さな行動を確かめます。大きすぎる行動は、次に話すときまでに手がつきません。問いかけ方は1on1ミーティングとは?で紹介しています。
- 振り返りの間隔を短くする。 月に一度の振り返りでは、壁に当たったことにも気づけません。うまくいかないことの方が多いので、振り返りを速く回し、うまくいきそうなやり方に寄せていきます。進め方は振り返りのフレームワーク|KPTとPDCAは古い?で書いています。
- 一人にしない。 新しい挑戦を、部下一人の頑張りに任せないことです。チームで取り組みを共有したり、上司がときどき「あれ、どうなりました?」と声をかけたりするだけで、続きやすくなります。
続かない部下を見て、「意志が弱い」と決めつけないことも大切です。その前に、きっかけが大きすぎないか、忙しいときの逃げ道があるか、続ける理由が本人の言葉になっているかを確かめてください。
私は、新しいことは小さく始めて、どんどん磨いていった方がいいと考えています。最初から完璧な形を作ろうとすると、一歩が出にくくなります。whymeの人材開発・企業研修では、担当している仕事を題材に、現場で試し、コーチングで振り返ることを繰り返しながら、学んだことを日々の行動に移していきます。
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