振り返りのフレームワークとは
振り返りのフレームワークとは、仕事の結果を見直し、次に何を続け、何を変えるかを決めるための型です。代表的なものに、KPT(ケプト)とGood & Moreがあります。型があると、話が「何が悪かったか」だけに偏らず、短い時間で次の行動までたどり着けます。
この記事では、よく使われる三つを紹介します。
- Good & More:良かった点と、さらに良くしたい点を出す。いちばんシンプルな方法
- KPT:Good & Moreに加えて、次に試すことまで決める方法
- 4行日記:一人で毎日、短く振り返る方法
三つの使い分けは、誰と、どのくらいの時間で、何を決めたいかで考えると選びやすくなります。一人で毎日続けたいなら4行日記、チームで短く済ませたいならGood & More、次の行動と担当まで決めたいならKPTです。
セミナーでは、振り返りを「自分と対話する仕組み」と呼んでいます。忙しいと、仕事は次から次へと流れていきます。立ち止まって自分の行動を見直す時間は、仕組みにしておかないと取れないものです。仕組みといっても、重いものでなくて構いません。決まった時間に、決まった型で、短く振り返る。それだけで十分です。
振り返りと反省の違い
振り返りと反省は、似ているようで、目を向けるところが違います。
| 項目 | 反省 | 振り返り |
|---|---|---|
| 対象 | 失敗や間違い | 失敗にも成功にも |
| 目を向けるところ | できなかったこと、課題 | 良かった点と、改善できる点 |
| 気持ち | 後ろ向きになりやすい | 次を考えやすい |
| 終わったあとに残るもの | 「次は気をつけます」 | 次に試す、具体的な行動 |
反省がいけないわけではありません。失敗を認めることは、次に進むための出発点です。ただ、課題にばかり目を向けると気持ちが沈み、前向きに動けなくなります。「次は気をつけます」で終わる振り返りが多いなら、それは振り返りではなく、反省になっているのかなと思います。
Good & Moreとは:いちばんシンプルな振り返り
Good & Moreは、Good(良かった点)とMore(さらに良くしたい点)を、それぞれ3つほど出す方法です。両方をバランスよく出すのがポイントです。
セミナーでは、営業会議の進行をテーマにした例を使っています。
- Good:会議の前に決めたゴールに届いた。ある人の発言を別の人につないだら、新しい販促の案が出てきた
- More:時間がないことを理由に、発言したそうな人を流してしまった。一人の長い話を止められず、会議が予定より延びた
Moreを「悪かった点」ではなく「さらに良くしたい点」と呼ぶのには意味があります。同じ出来事でも、悪かった点として書くと反省になり、さらに良くしたい点として書くと、次の工夫を考え始めます。言葉の選び方ひとつで、振り返りの向きが変わります。
Goodがなかなか出てこないときは、「予定通りにできたこと」でも構いません。当たり前にできたことを書き出すと、これからも続けるべきことが見えてきます。
KPTとは:Keep・Problem・Tryで次の行動まで決める
KPT(KPT法)とは、Keep(続けたいこと)、Problem(うまくいかなかったこと)、Try(次に試すこと)の三つで振り返る方法です。Good & Moreに、次の取り組みを考えるTryが加わっています。行動まで踏み込んで考えるので、行動が変わりやすくなります。
書くときの注意は四つあります。
- Keepには、うまくいった理由を一言添える。 「なぜうまくいったのか」が書いてあると、別の仕事でも同じやり方を使えます。
- Problemは、人ではなく出来事や仕組みで書く。 「〇〇さんの確認不足」ではなく、「提出前に確認する手順がなかった」と書くと、Tryが出てきやすくなります。
- TryはProblemとつなげる。 出てきたProblemのどれを解くためのTryなのかが分かるようにします。
- Tryは、次の1回で試せる大きさにする。 「意識する」「徹底する」ではなく、誰が、いつから、何をするかまで書きます。
KPTの具体例(仮の例:営業チームの月次の振り返り)
| Keep(続けたいこと) | Problem(うまくいかなかったこと) | Try(次に試すこと) |
|---|---|---|
| 週1回の案件共有で、困っている案件を早めに出せた | 見積もりの提出が、お客様と約束した日に間に合わないことがあった | 見積もりは提出日の2日前に、担当以外の1人が確認する(全員・来月から) |
| 初めてのお客様へのお礼の連絡を、訪問した当日に送れた | 月末に報告書の作成が集中し、訪問に使える時間が減った | 報告書は訪問した当日に下書きだけ残す(全員・来週から) |
| 先輩の商談に同行し、断られたときの受け答えを学べた | 会議で発言する人が決まっていて、新しいメンバーの意見が出なかった | 会議の最初の5分は、新しいメンバーから順に一言ずつ話す(進行役・次回から) |
この例では、Tryの最後に担当と始める時期を添えています。ここが空いたままだと、次の振り返りで「結局やれなかった」となりやすいところです。
振り返りの書き方と、振り返りシートの項目
振り返りは、次の順番で書くと進めやすくなります。
- テーマと期間を決める。「先月の営業活動」「今回の展示会」のように、何を振り返るのかをはっきりさせます。
- 起きたことを、先に事実で書く。 評価や気持ちは後にして、何があったかを並べます。
- 良かった点から書く。 先に良かった点を出すと、改善の話も前向きに進みます。
- うまくいかなかった点は、理由を一段だけ掘る。「なぜそうなったのか」を一度聞くだけで、仕組みの問題が見えてきます。
- 次に試すことを、一つか二つに絞る。 担当と期限を決めます。
- 次の振り返りの最初に、前回のTryを確かめる。 やってみてどうだったかを見ることで、振り返りが1回ずつで切れずにつながります。
振り返りシートを作るなら、項目は次のくらいで十分です。
- テーマと期間
- 起きたこと(事実)
- Keep(続けたいこと)
- Problem(うまくいかなかったこと)
- Try(次に試すこと・担当・期限)
- 前回のTryの結果
シートは紙でも、表計算ソフトでも構いません。大事なのは、前回のTryと今回の結果が並んで見えることです。前回のTryが見えないシートだと、毎回まっさらな状態から振り返ることになり、同じ話を繰り返しがちです。
一人で毎日続けたいときは、Self-Expanding Programのノウハウとして知られる「4行日記」もあります。事実・発見・教訓・宣言の4行を短く書く方法で、少ない時間で続けやすいのが特長です。
チームでKPTを進めるときのコツ
チームで振り返るときは、書き方だけでなく、場の進め方で結果が変わります。気をつけたいことは、大きく四つあります。
一つ目は、話す前に、一人ずつ書き出す時間をとること。 いきなり話し合いから始めると、声の大きい人や、立場が上の人の意見に引っ張られます。付箋やチャットに数分で書き出してから共有すると、全員の考えが並びます。
二つ目は、上司が最後に話すこと。 上司が先に「今月はここが良くなかった」と言うと、メンバーはそれに合わせた意見しか出しにくくなります。上司の意見は、メンバーの考えが出そろってからで十分です。
三つ目は、人を責める場にしないこと。 Problemが特定の人の失敗の話になると、次から本当のことが出てこなくなります。進行役は「誰が」ではなく、「何が起きたか」「どの手順で起きたか」に話を戻します。
四つ目は、Tryをメンバーに決めてもらうこと。 上司がTryを決めて配ると、それは振り返りではなく指示になります。ここは、答えを渡さず、ともに作る場面です。メンバーが自分で決めたTryの方が、次の振り返りまでに手がつきやすいかなと思います。
同じProblemが毎回出てくるときは、Tryが大きすぎるか、担当が決まっていないことが多いものです。その場合は、Tryをもう一段小さくして、次の1週間で試せる形にしてみてください。
反省で終わらせない:失敗の方が多いから、速く回す
会社員時代、IR資料で重大な数字を間違えたことがあります。配布先に、1社ずつ電話をかけて謝罪しました。
大きな失敗のあとは、自分を責める反省で止まりやすいものです。ただ、反省だけでは、同じ失敗を防ぐ仕組みは変わりません。こうした失敗をKPTで振り返るなら、Problemに「確認が足りなかった」と書いて終わるのではなく、Tryに「誰が、いつ、何を確かめるか」まで書く。そこまで決めて、ようやく次に生かせます。
失敗のあとに自分やメンバーに投げる問いも、少し変えてみてください。「なぜ失敗したのか」だけで終えず、「次に同じ状況になったら、何を変えますか?」「今回、それでもできていたことは何ですか?」まで聞く。問いを変えるだけで、反省が振り返りに変わります。
もう一つ、私が大切にしていることがあります。仕事は、うまくいくことより、失敗の方が多いものです。だからこそ、振り返りを速く回し、うまくいきそうな施策に寄せていく。1回の振り返りを重くするより、短く、回数を多くする方が、次の手を早く打てるかなと思います。月に一度の大きな振り返りに加えて、週の終わりに10分だけ、KeepとTryを一つずつ出す。そのくらいの軽さでも、試す回数は増えていきます。
うまくいきそうな施策に寄せるには、何がうまくいったのかを見ておく必要があります。KPTのKeepや、Good & MoreのGoodを飛ばさないのは、そのためです。反省だけの振り返りでは、この部分が抜け落ちます。
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