1on1ミーティングとは

1on1ミーティングとは、上司と部下が一対一で、定期的に短い対話を重ねる取り組みです。主役は部下で、目的は仕事の進み具合を確かめることではなく、部下が自分で考え、次の行動を決められるように支えることにあります。

似た場面に、人事評価の面談や、仕事の打ち合わせがあります。違いを並べると、次のようになります。

1on1ミーティング・評価面談・仕事の打ち合わせの違い
項目1on1ミーティング評価面談仕事の打ち合わせ
主役部下会社(評価の基準)仕事・案件
目的部下の気づきと行動を後押しする期間の成果を確かめ、評価を伝える進捗を確かめ、段取りを決める
話の中心部下が話したいこと、めざす姿、迷っていること目標に対する結果期限、課題、次の作業
上司の役割聴く、問いかける評価を説明する指示する、判断する
頻度短く、定期的に半期・年に1〜2回必要なときに

whymeという社名は、コーチングの仕事で「Why me?(なぜ私なのか)」と問われることが多く、それが印象に残ったことから付けました。人それぞれが自分の使命を全うできるよう支えたい、という想いを込めています。私自身、これまで300人以上のマネージャーに1on1コーチングをしてきました。その経験から、1on1も、部下が「なぜ自分がこの仕事をしているのか」「この先どうなりたいのか」を、自分の言葉にしていく時間だと私は捉えています。

1on1ミーティングの目的

1on1の目的は、ひとことで言えば、部下の行動が変わるきっかけをつくることです。コーチングでは、対話を通じて相手に気づきを促し、目標に向けた行動を後押しします。1on1は、上司がその関わり方を日々の仕事の中で使う場だと考えると分かりやすいかなと思います。

部下の話をきちんと聴くと、部下の側に大きく二つのことが起きます。

一つ目は、自分は周りに影響を与えられる、という感覚(自己効力感)が育つことです。自分の考えを聴いてもらえた人は、もっと自分を表現したい、新しいことに挑戦したい、と感じやすくなります。主体的に動く人は、こうした経験の積み重ねから生まれます。

二つ目は、話しながら、自分で考えが整理されることです。人は相手に話しているようで、実は自分自身の話を聴いています。コーチングの世界では「オートクライン」と呼ばれる働きです。頭の中で考えているだけでは見えなかった気持ちや選択肢が、自分の口で話すことで見えてきます。

逆に、話を聴いてもらえない状態が続くと、部下の中には次のような思いが積もっていきます。

  • 「自分が一生懸命やっている仕事は、実は重要ではないのかもしれない」
  • 「この職場では、自分はあまり大切な存在ではないのかな」
  • 「自分はこの会社にいてもいいんだろうか」

言葉は少し強いですが、部下の話を聴かないことは、その人の存在を認めていないのと同じように受け取られます。1on1は、そうならないための、いちばん手軽な仕組みです。

1on1は意味がない?そう言われる三つの理由

「1on1をやっているけれど、意味があるのか分からない」。管理職の方からも、部下の側からも、こうした声はよく聞きます。うまくいっていない1on1は、大きく三つの形に分かれるのかなと思います。

一つ目は、進捗確認の場になっていること。 「キャリアの話をする場のはずが、目の前の仕事の話ばかり」という状態です。上司は部下の話を聞きながら、「この話は早めに切り上げて、この前頼んだ仕事の進み具合を聞かないと」と考えています。部下にはそれが伝わるので、本音の話は出てきません。

二つ目は、上司が一方的に話していること。 助言のつもりでも、話している時間の大半が上司なら、部下にとっては「指導の時間」です。考えを整理する機会がないまま、1on1が終わってしまいます。

三つ目は、部下の要望を聞いて答えるだけの場になっていること。 1on1の場で、部下から待遇や人員、仕事の進め方への要望が次々に出てきて、上司が「全部に答えないといけないのか」と疲れてしまうケースです。要望を聞くことは大切ですが、それだけでは部下の行動は変わりません。

三つに共通しているのは、上司自身が1on1やコーチングを受けた経験がなく、「何が正解か分からない」まま始めていることです。これは管理職の方の責任というより、やり方を学ぶ機会がなかったことの方が大きいと私は考えています。

1on1ミーティングの進め方:6つのステップ

コーチングの対話は、次の6つのステップで進めます。1on1でも、この流れを意識するだけで、話が散らかりにくくなります。

1on1ミーティングの6つのステップと問いかけの例
ステップやること問いかけの例
① 場をととのえるこれから1on1を始めることを確かめ、話しやすい雰囲気をつくる。前回からの行動を振り返る「前回から今日までに、どんなことに取り組んできましたか?」
② 今日のテーマを決める部下が話したいテーマを確かめ、終わったときにどうなっていたいかを決める「今日はどんなことをテーマにしたいですか?」「終わる頃に、何がはっきりしていると良いですか?」
③ めざす姿を言葉にする部下がどんな状態になりたいのか、それは何のためかを話してもらう「具体的に、どんな状態をめざしたいですか?」「それは何のためですか?」
④ いまとの差を確かめるすでにできていることと、めざす姿との違いを整理する「いま、すでにできていることは何ですか?」「めざす姿といまとでは、何が違いますか?」
⑤ 次の行動を決める差を埋めるやり方を出し合い、部下が自分で選ぶ「ほかの人なら、どうすると思いますか?」「どれから始めますか?」
⑥ 振り返る1on1で気づいたこと、はっきりしたことを部下の言葉でまとめてもらう「ここまで話してみて、気づいたことは何ですか?」

③〜⑤は、コーチングでよく使われる「GROWモデル」(Goal=目標、Reality=現状、Options=選択肢、Will=意思)と同じ流れです。

ステップの中で、問いかけの言葉を少し使い分けると、話が前に進みやすくなります。前半は「なぜ」「何を」「どうやって」で、考えを広げます。後半は「誰が」「いつまでに」「どこで」で、行動に落とします。最後に「では、来週の火曜日までにやってみますか?」のように、はい・いいえで答えられる問いで確かめると、行動が決まります。

⑤で決める行動は、三つの方向で考えると出てきやすくなります。

  • 始める:「めざす姿に近づくために、明日から始めたいことは何ですか?」
  • 変える:「チームにもっと良い影響を与えるために、変えたいことは何ですか?」
  • やめる:「新しいことに時間を使うために、まずやめたいことは何ですか?」

最後の「やめる」は意外と大事です。時間は増えないので、何かを始めるなら、何かをやめる必要があります。

1on1で上司が気をつけたいこと

話を聴く環境をととのえる

周りに人がいる席や、電話が鳴る場所では、部下は本音を話しにくくなります。オンラインでも、上司が別の画面を見ながら聞いていると、意外と伝わるものです。時間と場所を決めて、その時間は部下の話に集中します。

先入観で聴かない

経歴、年齢、身なり、これまでの評判。上司は知らず知らずのうちに、部下にレッテルを貼っています。「この人はこういう人だから」と思いながら聴くと、部下の話の中にある新しい考えを聞き逃します。

話の途中で、次の展開を考えない

部下が話している最中に、「次は何を聞こうか」「どう助言しようか」を考え始めると、聴くことがおろそかになります。沈黙が続いても、部下が考えているなら待つ。それも上司の役割です。

答えを渡さない

1on1でいちばん難しいのは、ここかもしれません。部下が迷っていると、上司はつい答えを言いたくなります。ただ、コンサルタントの仕事を長く続けてきて感じるのは、人から提案されたことは、本人があまり考えていないので、なかなか実行されないということです。部下の場合も同じです。上司が答えを渡すほど、部下の行動は変わりにくくなります。

仕事の進め方を教える場面(ティーチング)が必要なときもあります。その場合は、「ここからは1on1ではなく、仕事の相談として話しますね」と区切ると、1on1の時間が守られます。

1on1を続けるために

1on1は、1回で何かが劇的に変わるものではありません。コーチングには「相手の行動が変わるまで、続けて関わる」という考え方があります。毎回のステップ①で前回決めた行動を振り返ることで、1on1が1回ごとの雑談で終わらず、つながっていきます。

続けるうえで、私が大事だと考えていることは三つです。

  1. 主語を部下に置く。 何を話すか、何をやるかは部下が決める。上司は問いかけと確認に徹します。
  2. 小さな行動で終える。 「来週までに、〇〇さんに一度相談してみる」くらいの大きさで十分です。大きすぎる行動は、次の1on1までに手がつきません。
  3. 上司も1on1を受けてみる。 自分が聴いてもらう側になると、話しやすい問いと話しにくい問いの違いがよく分かります。

1on1に正解の形はありません。部下によって、話しやすい時間の長さも、テーマも違います。最初に決めた進め方にこだわらず、部下の様子を見ながら、少しずつ自分たちの形に磨いていけばいいのかなと思います。whymeの人材開発・企業研修では、担当している仕事や部下との関わりを題材に、コーチングで振り返りながら実践を重ねます。