PDCAは古い? 古くなっているのは「回し方」です

「PDCAは古い」「PDCAサイクルはもう時代遅れ」という声を聞くことがあります。ただ、古くなっているのはPDCAという考え方そのものではなく、年に一度の計画と反省会だけで「回している」ことにしてしまう、回し方の方です。

PDCAサイクルは、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の四つを繰り返し、仕事を少しずつ良くしていくマネジメントの手法です。品質管理の分野で広まり、いまでは営業、開発、管理部門まで、多くの職場で使われています。

「計画を立てる → 実行する → 行動を評価する → 行動を改善する」という流れ自体は、とてもシンプルです。それでも、胸を張って「うまく回っている」と言える職場は多くありません。

私は会社員時代、豊田自動織機で物流エンジニアリングのSEとして働き、その後、事業管理や業務改善の仕事に携わりました。そこからコンサルタントになった今まで一貫して、計画は作って終わりではない、日々の行動と成果につながって初めて意味がある、と考えています。PDCAが古いかどうかを論じる前に、自分たちの計画が日々の行動につながっているかを確かめたい。それが私の立場です。

PDCAが回らない四つの理由

PDCAの「あるある」を並べると、次のようになります。

  • 「PDCAを速く回せと言われるけど、具体的にはどうしたらいいの?」
  • 「事業計画づくりには時間をかけているけど、毎年、計画倒れ……」
  • 「やみくもに行動しているだけ。結果の振り返りをしていない」
  • 「PDCAって時代遅れじゃない? OODA(ウーダ)とか新しい手法もあるし」

ここから見えてくる、PDCAが回らない理由は、大きく四つあるのかなと思います。

一つ目は、回す間隔が長すぎること。 計画を年に一度つくり、次に振り返るのは期末、という職場では、サイクルは一年に一周しか回りません。計画とのずれに気づいたときには、取り返す時間が残っていない。これが「毎年、計画倒れ」の正体です。

二つ目は、Check(評価)が抜けること。 計画を立て、実行もしている。けれど、やったことが目標に効いているかを確かめないまま、次の作業に移ってしまう。「やみくもに行動しているだけ」という状態です。PDCAではなく、PDPDと回っている、と言い換えてもいいかもしれません。

三つ目は、Act(改善)が決まらないこと。 振り返りの会議はあっても「来月も頑張りましょう」で終わり、次に何を変えるのか、何をやめるのかが決まらない。振り返っても行動が変わらなければ、サイクルは前に進みません。

四つ目は、回す人が決まっていないこと。 「みんなで回そう」と決めたサイクルは、実際には誰も回しません。振り返りの場を開き、数字をそろえ、決めた行動がその後どうなったかを確かめる人がいないと、忙しい時期から順に振り返りが飛ばされていきます。年ごと、月ごと、週ごとの振り返りそれぞれに、回す人を一人、名前で決めておくことが大切です。

四つとも、PDCAという手法の欠陥ではなく、CheckとActを「どの頻度で、誰が、どう回すか」を決めていないことから起きています。計画づくりに時間をかけるほど、計画そのものが目的になり、CheckとActは後回しになりやすい。PDCAが「古い」と言われてしまういちばんの原因は、ここにあると私は考えています。

PDCAが回っている状態とは

PDCAをダイエットに当てはめると、分かりやすくなります。目標の体重や体型を決め、いまとの差を見える化して、運動と食事の計画を立てる(Plan)。筋トレと食事制限を毎日続ける(Do)。体重や体型の変化を日々見て、どの取り組みが効いているかを確かめる(Check)。効いていれば取り組みを強め、足りないところはメニューや食事を見直す(Act)。

体重を年に一度の健康診断でしか測らない人は、ダイエットをうまく進められないと思います。毎日体重計に乗るから、食事や運動を早めに調整できます。仕事のPDCAも同じです。

では、ビジネスでPDCAが回っている職場では、どんなことが起きているのか。段階ごとに並べると、次のようになります。

PDCAが回っている職場で見られること
段階PDCAが回っている職場で見られること
Plan(計画)リーダーが目標の背景を丁寧に説明している/チームで管理できる範囲で、数字で確かめられる目標になっている/メンバーが分かる単位まで、目標やタスクが分けられている
Do(実行)アクションプランやToDoリストに沿って動いている/予定どおりにできないとき、メンバーから自然に声が上がる/リーダーがメンバーの様子を見て、こまめに声をかけている
Check(評価)結果をありのままに見ている/達成できたかどうかを、シンプルに確かめている/やり方について、良かった点ともっと良くできる点(Good & More)を具体的に振り返っている
Act(改善)次の行動が具体的に決まっている/効果の出ない取り組みは、見直すかやめるかを判断している/リーダーが施策ではなく、目標の達成にこだわっている

見落とされがちなのが、Actの最後の「施策ではなく、目標の達成にこだわる」です。一度決めた施策を続けること自体が目的になると、効いていない施策をやめられなくなります。

目標を数字で確かめられる形にする方法はKPIの設定方法|SMART、目標をタスクに分ける方法はアクションプランとは?書き方と作り方で紹介しています。

PDCAとOODAの違い|PDCAに代わるものはあるのか

「PDCAに代わるもの」として、よく名前が挙がるのがOODA(ウーダ)ループです。観察(Observe)、状況判断(Orient)、意思決定(Decide)、行動(Act)の頭文字を取ったもので、戦闘機のパイロットの意思決定から生まれた考え方です。

PDCAは計画から始まり、目標に向けてやり方を少しずつ改善していく考え方です。OODAは観察から始まり、状況が刻々と変わる場面で、すばやく判断して動く考え方です。どちらが優れているというより、向いている場面が違います。手探りで新しい市場を探っている時期にはOODAの考え方が合い、目標と道筋がある程度見えている仕事にはPDCAが合う、という使い分けもできます。

PDCAとOODAの生い立ちや違いは、whymeのウェビナー(経営管理シリーズ「PDCAか、OODAか」)で詳しく解説しています。→ ウェビナー一覧

私は、どちらの名前を使うかより、どれくらいの間隔で振り返り、次の行動を決めているかの方が大事なのかなと思います。OODAに切り替えても、振り返りがなければ、同じところでつまずきます。

PDCAとよく並べて語られるデミング博士は、Check(評価)ではなくStudy(学ぶ)を強調したPDSAサイクルを唱えました。計画の成否を確かめるだけでなく、予測と実際の結果を比べて学ぶことを重んじたためです。名前はどちらでも、振り返りから学ぶことが中心にある点は変わりません。

振り返りの頻度を上げる|ショート・インターバル・コントロール

CheckとActの頻度を増やすほど、目標を達成できる見込みは高まります。この考え方を「ショート・インターバル・コントロール」と呼びます。

月次だけで振り返ると、目標と実績の差に気づくのは月末です。その時点で差が大きく開いていれば、翌月に取り返すのは大変です。週次、日次と間隔を短くすると、差が小さいうちに気づき、小さく手を打てます。一回ごとの効果は小さくても、積み重なると月末の着地が変わってきます。

ポイントは、頻度ごとに確かめる中身を変えることです。毎日、月の目標の話をしても疲れるだけです。

月次・週次・日次で何を確かめるか(仮の例:法人営業のチーム)

振り返りの頻度ごとに確かめること(仮の目安)
頻度確かめること決めること場と時間の目安
月次月の目標(受注額など)に対する実績と、その差。効いた施策と効かなかった施策来月に力を入れる施策、見直す施策・やめる施策月初の会議で1時間ほど
週次週の行動目標(商談の件数、提案書の提出など)の進み具合。月の目標に届くペースか来週の行動の配分、手助けが必要な案件週の初めに30分ほど
日次昨日やったこと、今日やること、困っていること誰が誰を手伝うか、朝会の後で話し合うこと朝会で15分

※頻度や時間は、チームの仕事に合わせて変えてください。

月次で「結果」を、週次で「ペース」を、日次で「行動と困りごと」を見る、と分けると、それぞれの場が短く済みます。

新しい施策は、やってみないと効くかどうか分かりません。私は、施策はうまくいかないことの方が多いと考えています。だからこそ、振り返りを速く回し、うまくいきそうな施策に寄せていく。最初の計画の正しさより、直す速さの方が成果を左右します。事業計画を日々の行動につなげる仕組みは、事業計画の作り方と実行管理で詳しく書いています。

朝会の進め方|デイリー・スクラムを使う

日次の振り返りに使いやすいのが、デイリー・スクラム(朝会)です。ソフトウェア開発の手法「スクラム」で使われている、毎日の短い打ち合わせです。

朝会の目的は二つあります。月末の目標や節目(マイルストーン)に向けた進み具合を確かめ、問題を早く見つけること。そして、チームのコミュニケーションを良くし、判断を速くすることです。

ルールは三つです。

  1. 毎日決まった時刻に始め、15分で終える。 時間は延ばしません。
  2. 話すことを絞る。 「昨日やったこと」「今日やること」「困っていること」「解決したこと」だけを共有します。
  3. 困りごとの詳しい話は、朝会では議論しない。 朝会の後に、関係者だけで話します。

会話の例を見てみます(セミナー資料より)。

ファシリテーター:おはようございます。今日もデイリー・スクラムを始めましょう。15分を意識して、一人2〜3分で状況を共有してください。

スタッフA:昨日でデータ分析が終わりました。今日は結果を報告資料にまとめる予定ですが、データの量が多いので、Bさんに手伝ってもらいたいです。

スタッフB:昨日で担当分の報告資料ができました。今日は次の開発の準備をするつもりでしたが、Aさんの話もあるので相談させてください。

ファシリテーター:Aさんから協力の依頼がありましたので、朝会の後に15分ほど、Aさん、Bさんと私で進め方を話しましょう。では、今日もよろしくお願いします。

ファシリテーターは、AさんとBさんの相談をその場で掘り下げず、朝会の後に回しています。ここで議論を始めると15分では終わらず、ほかのメンバーの時間を奪ってしまいます。朝会は問題を解く場ではなく、問題を見つけて、誰と話すかを決める場です。

もう一つ大事なのは、「困っていること」を言いやすくすることです。困りごとを口にした人が責められる朝会では、誰も本当のことを言わなくなり、問題が見つかるのが遅れます。困りごとが出てきたら、まず「言ってくれてありがとう」と受け止める。朝会が続くかどうかは、このひと言で決まるのかなと思います。

また、朝会のために報告資料を作らせると、準備が負担になって続きません。仕組みは重くするほど、行動は一歩進みにくくなります。朝会は口頭で十分です。