プロジェクトの炎上とは
プロジェクトの炎上とは、納期・品質・費用(QCD)のどれか、または全部が計画から大きく外れ、いつもの進め方では収まらなくなった状態を指す言葉です。正式な用語ではありませんが、メンバーが残業で穴を埋め、相手からの指摘や問い合わせが増え、誰も全体を見渡せていない。そんな炎上プロジェクトの光景は、業種を問わず見られます。
なぜプロジェクトは燃えやすいのか。それは、プロジェクトという働き方そのものに理由があります。プロジェクトには、二つの特徴があります。
- 特定の目的:何かを実現するために立ち上げられる。目的があいまいなままでは、正常に動けません
- 臨時組織:目的に応じて人が集められ、終われば解散する
ふだんの部署なら当たり前にあるものが、臨時組織にはありません。そこを意識して補うことが、プロジェクトのマネジメントの出発点になります。
| 臨時組織にないもの | 補うためにやること |
|---|---|
| 暗黙のルール | 前提条件と制約条件を、最初に言葉にして確かめる |
| 決まった業務の流れ | プロジェクトの作業計画を作る |
| 月次や決算のような、決まった締め切り | 納期とスケジュールをはっきりさせる |
| 決まった意思決定者 | 最終的に判断するオーナーを決める |
| 単純な関係者の構図 | 関係者を洗い出し、それぞれに情報を届ける |
| 決まった連絡の経路 | 誰と誰が、どの場で、何を伝え合うかを決める |
私は、炎上を担当者一人の力量の問題として見ない方が良いと考えています。臨時組織は、もともと燃えやすい。そう前提に置く方が、早めに手を打てます。
プロジェクトが失敗する原因
プロジェクトが失敗する原因は、大きく五つあります。
- もともと難易度が高い。 プロジェクトは、まだ誰も解いたことのない課題に取り組むために立ち上がります。
- オーナーの当事者意識が薄い。 思いつきで立ち上げられ、言い出した人が途中から関わらなくなることがあります。
- プロジェクトマネージャーが、マネジメントの専門家ではない。 実際には、業務に詳しい人がそのまま任されることが多くあります。
- メンバーを選ぶ権限がない。 集められたメンバーとの関係づくりから始めることになり、そこでつまずきます。
- 選ばれる人がいつも同じ。 頼りにされる人ほど、いくつものプロジェクトを掛け持ちし、手が回らなくなります。
立ち上げ方の失敗にはいくつかの型があり、事業計画づくりを例にした事業計画の策定体制とは?プロジェクトの進め方と、失敗しやすい6つの型で詳しく書いています。
五つのうち、プロジェクトマネージャーが自分で変えられるものは多くありません。その中でいちばん手を打ちやすいのは、体制と役割をはっきりさせることかなと思います。オーナー、プロジェクトマネージャー、各チームのリーダー、事務局。それぞれが何に責任を持ち、何を決めるのかを最初に書き出しておくと、「誰が決めるのか分からない」という止まり方を防げます。役割の決め方は、RACI図とは?責任と権限の決め方にまとめています。
私もPMP(プロジェクトマネジメントの国際資格)を持っていますが、知識体系を学ぶだけでは、炎上は防ぎきれません。最後にプロジェクトを動かすのは人と人との調整だと考えています。
出典・制度の確認先
炎上プロジェクトあるある:燃えやすい二つの時期と兆候
プロジェクトが燃えやすい時期は、大きく二つあります。飛行機の離陸と着陸にたとえると分かりやすいかなと思います。
立ち上げ時(離陸)
- 相手との関係ができておらず、連絡の行き違いが起きやすい
- まだ成果物が出ないので、相手の期待が膨らんだり、不安が募ったりする
- チームの中で意思疎通ができておらず、要件と違う作業をして手戻りが出る
終わり際(着陸)
- 納期・品質・費用の条件を満たせず、残業で埋めるしかなくなる
- 相手が思い出したように要件や仕様を追加してくる
- 連絡が足りていなかった関係者から、想定外の指摘が入る
相手の組織の中の事情が、炎上の火種になることもあります。窓口の動きが止まって話が進まない。オーナーに意見を言える人がいない。オーナーとほかの関係者の意見が対立していて、外から来たこちらが橋渡しをすることになる。どれも、プロジェクトの外からは見えにくいものです。
炎上の兆候は、数字より先に、チームの様子に出ることが多いかなと思います。次のような光景が見えたら、早めに手を打つ合図です。
- 課題やタスクを書いたホワイトボードや一覧が、何日も更新されていない
- 朝会に緊張感がなく、同じ課題が毎回持ち越されている
- プロジェクトの部屋の机に、資料が散らかったままになっている
- 会話や冗談が減り、チームの雰囲気が暗い
立ち上げ時の炎上を防ぐ:フロントローディング
立ち上げ時の炎上を防ぐには、相手とのやりとりと、チームの中のやりとりの両方を、最初に設計しておきます。
相手とのやりとり
- 少なくとも週に1回は定例会を開き、スケジュールと進め方、特に相手の要望と優先順位を確かめる
- 相手の近くで作業する場所を用意してもらうなど、ふだんの何気ない会話を増やす
- ワークショップや勉強会を開き、相手と目指す方向をそろえる
- 関わりそうな関係者を洗い出し、どう巻き込むかを相手と相談する
チームの中のやりとり
- 体制と役割をはっきりさせ、それぞれが当事者意識を持てるようにする
- 毎日の朝会を、やりとりの要にする
- タスクと進み具合を管理する仕組みを作り、抜けや遅れを防ぐ
- メンバーが「まずいかもしれない」と気軽に言える雰囲気をつくる
あわせて大事なのが、フロントローディングの考え方です。プロジェクトの序盤に、あえて手間をかけます。限られた情報から課題を抜き出し、仮の答えで相手と方向性をすり合わせ、関係をつくる。中盤以降は、対話の時間を増やして細かい部分を詰め、優先順位を確かめながら作業量を調整します。序盤に相手と目線を合わせないまま進めたプロジェクトほど、後半で苦しくなります。
私が序盤を大事にするのは、後半に「一緒に作り上げた」という感覚が生まれるからです。人から提案されたことは、本人があまり考えていないので、なかなか実行されません。プロジェクトも同じで、相手を序盤から巻き込むほど、後半の手戻りは減っていきます。
炎上プロジェクトに送り込まれたら、最初に確かめる5つのこと
途中から炎上プロジェクトに入ることになったら、最初にやるのは、何かを変えることではなく、状況を多角的に確かめることです。見るものは五つあります。
| 確かめること | 見るポイント |
|---|---|
| ① 体制図 | メンバーと役割ははっきりしているか。求められる仕事と、メンバーの経験や得意分野が合っているか |
| ② スケジュール | スケジュールは更新されているか。直近の節目(マイルストーン)と、そこで出す成果物ははっきりしているか |
| ③ タスク(WBS) | タスクごとに、中身・担当・期限が決まっているか。要件や仕様の変更が記録され、タスクに反映されているか |
| ④ 課題の一覧 | すべての課題が一覧になり、原因と対策が書かれているか。対応の状況と優先順位がはっきりしているか |
| ⑤ 相手との合意 | 相手のいまの要望と期待は何か。最終的に判断するのは誰か。要望の一覧と優先順位を、相手と共有できているか |
五つのうち、どれかが空欄だったり、更新が止まっていたりすれば、そこが最初に手を打つ場所です。
私は、この段階で犯人探しをしないことが大事だと考えています。炎上の原因が特定の誰かにあるように見えても、多くは仕組みの抜けから起きています。最初の数日で責める空気をつくると、メンバーは悪い知らせを隠すようになり、状況はかえって見えにくくなります。
炎上プロジェクトの立て直し:3つのステップ
状況が見えたら、立て直しに入ります。進め方は3つのステップです。
STEP-1 チームの雰囲気を変える
まず、メンバー一人ひとりに話を聞きます。問題や不満を吐き出してもらい、気持ちを前に向けてもらうためです。「いま、いちばん困っていることは何ですか」「このプロジェクトで、本当はどうしたかったですか」のように、責める響きのない問いから入ると、本音が出やすくなります。そのうえで、仕切り直しの「再キックオフ」を開き、メンバーの気持ちを切り替えて、目指す方向をそろえます。相手には、立て直しの対策を示して再出発を伝え、まずは安心してもらいます。
STEP-2 問題の対策を考え、相手との落としどころを探る
問題を「スコープ」「品質」「納期」「工数」「外注」などの区分に分け、それぞれの原因と対策、優先度を一覧にします。仮の例で言えば、次のような整理です。
- スコープ:相手に言われるまま範囲を広げてしまった → 要望を一覧にし、分類して優先度を決める
- 納期:残りの期間では終わらない見込みなのに、定例会でそのリスクを伝えていなかった → 相手の要望を優先しつつ、納期の延長を相談する
- 工数:仕様をすり合わせきれず、手戻りが続いている → 優先度の低い機能の作業を止める
相手の要望と、こちらの状況を並べたうえで、両者の落としどころを探ります。範囲が広がり続ける問題は、スコープクリープ(第1弾・未作成)の記事で詳しく書いています。
STEP-3 タスクと工数を細かく見積もり、日単位で計画を引き直す
立て直しの計画(リカバリー計画)は、ふだんの計画と作り方を変えます。
- 再延期は難しいので、タスク・工数・担当を細かく見積もり、スケジュールに落とし込む
- ふだんの計画には余裕(バッファ)を持たせるが、立て直しの計画には持たせない
- ふだんは週単位までタスクを分けるが、立て直しでは1日単位まで分ける
1日単位まで分けておくと、毎日進み具合を確かめられ、少しずつでも納期を詰めていけます。
三つのステップのうち、私がいちばん大事だと考えているのはSTEP-1です。計画をどれだけ精密に引き直しても、動くのは人です。人の心が動かないと、チームも成果も変わりません。
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