ワークショップとは:会議や研修との違い

ワークショップの進め方は、導入、知る活動、創る活動、まとめの四つの流れで組み立てるのが基本です。ただ、流れを整えても、場が盛り上がらないことがあります。その原因の多くは、最初に投げかける「問い」にあるのかなと思います。この記事では、ワークショップの基本の流れと、問いの作り方の三つのステップを紹介します。

ワークショップは、普段とは違う視点から発想し、対話を通じて学びながら、何かを創り出す方法です。安斎勇樹さん・塩瀬隆之さんの『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』(学芸出版社、2020年)では、その特徴として、日常から少し離れた設定で考えること、一人の専門家に頼らず多様な人の掛け合わせから生まれるものを大事にすること、立場の上下を持ち込まないこと、正解を用意せずに場の中で答えを探ること、が挙げられています。

会議や研修と並べると、違いが分かりやすくなります。

ワークショップ・会議・研修の違い
項目ワークショップ会議研修
目的対話を通じて、新しい考えや合意を創る情報を共有し、決める知識やスキルを身につける
答え用意しない。場の中で探る選択肢の中から決める講師が持っている
主役参加者どうしの対話決める人と、判断の材料講師と教材
進行役の役割問いと時間と場を用意する議題を進め、結論に導く教える、確かめる

私がワークショップを大事にしている理由は、答えを渡さず、ともに作るやり方だからです。コンサルタントの仕事を続けてきて感じるのは、人から提案されたことは、本人があまり考えていないので、なかなか実行されないということです。参加者が自分たちで考えて創った答えは、その後の行動に移りやすいと私は考えています。

チームビルディングのワークショップ:使いどころと、開いてはいけないとき

チームビルディングにワークショップが向いているのは、たとえば次のような場面です。

  • プロジェクトを立ち上げたが、メンバーどうしが遠慮して本音で話せていない
  • プロジェクトの方向性が、メンバーの間でそろっていない
  • 新しいアイデアが要るのに、これまでのやり方から抜け出せない
  • 施策がまだ粗く、このままでは後でもめそうだ
  • メンバーの当事者意識が低い

ワークショップを開くと、本音どうしがぶつかる場面が出てきます。一時的にチームのまとまりが揺らぐこともありますが、その衝突を越えると、まとまりはかえって強くなります。逆に、ぶつかる機会がないまま進むと、プロジェクトはだんだんとだれていきます。セミナーでは、この違いを一枚の図で説明しています。

ただし、ワークショップを開かない方がよい場面もあります。

ワークショップを開かない方がよいとき
開かない方がよいとき理由代わりにやること
プロジェクトのオーナーが開くことを認めていない下からの進め方なので、オーナーを巻き込まないと成果が生かされない先にオーナーと目的をすり合わせる
解決したい課題が、まだぼんやりしている論点がないと、長い沈黙や愚痴の言い合いになりやすい課題を事前に整理し、問いを一つに絞る
チームの人間関係に、すでに亀裂が入っている対話の場が、ぶつかり合いの場になる1on1で、一人ずつ話を聴く
メンバーが「ワークショップ=研修」と思い込んでいる教わるつもりで来るので、自分から考えない開く前に、何のための場かを伝える

三つ目の場面では、全員を集めるより、一人ずつ話を聴く方が先です(関連:1on1ミーティングとは?目的と進め方、意味がないと言われる理由)。プロジェクトの体制や進め方そのものを見直したい場合は、事業計画の策定体制とは?プロジェクトの進め方と、失敗しやすい6つの型も参考にしてください。

ワークショップの進め方:四つの流れとファシリテーターの役割

ワークショップは、大きく四つの流れで進めます。時間の配分は目安です。

ワークショップの4つの流れと時間の目安
流れやること時間の目安
① 導入趣旨と進め方を説明する。自己紹介などで緊張をほぐし、関係をつくる全体の10〜20%
② 知る活動事前の調べものや、これまでの振り返りを共有する。言葉の意味や知識のレベルをそろえ、話し合いの土台をつくる20〜30%
③ 創る活動4〜5人ほどのグループで対話し、新しい考えを創る。頭だけでなく、手や体を動かす30〜40%
④ まとめグループごとに成果を発表し、ほかのグループからの質問を受けて考えを磨く10〜20%

③の創る活動には、目的に合わせていくつかのやり方があります。

  • ブレインストーミング(考えを広げる):一つのアイデアから連想して、発想を膨らませます。質より量を大事にし、出てきたアイデアを否定しません。
  • KJ法(考えをまとめる):文化人類学者の川喜田二郎さんが考えた方法です。アイデアを書き出し、似たものをまとめ、まとまりどうしの関係を図にし、最後に文章にします。ブレインストーミングと組み合わせて使います。
  • ブラウン・ペーパー分析(考えを深める):いまの仕事を工程ごとに分け、それぞれの問題を書き出します。その問題を「なぜ」と繰り返して原因まで掘り下げ、対策を考えます。

ファシリテーターの仕事は、中身の答えを出すことではありません。問いを用意し、時間を区切り、全員が話せる場を保つことです。グループの話し合いが止まったときも、答えを言いたくなる気持ちを抑えて、問いを言い換えるか、ひとつ前の流れに戻ります。ファシリテーターが答えを持ち込むと、参加者は考えるのをやめてしまいます。

場が盛り上がらない理由は「問い」にある

ワークショップの冒頭で、次のような問いかけをよく見かけます。

  • 「新しい事業を立ち上げるために、自由にブレストしてみましょう」
  • 「これまでにない新製品のアイデアを考えてください」
  • 「制約は設けないので、何でもいいので話し合ってください」

どれも自由に考えてほしいという善意から出た言葉ですが、自由すぎる問いでは、考えも対話も深まりません。どこから考えればいいかが分からず、最初の一言が出てこないからです。

『問いのデザイン』では、良い問いと悪い問いの違いが整理されています。私なりに要点をまとめると、良い問いは、分かりやすく、正解が一つに決まらず、専門知識がなくても考えられ、参加者が自分のこととして考えられる問いです。逆に、はい・いいえで答えが終わる問い、答えが透けて見える誘導的な問い、責められているように感じる問いでは、対話は広がりません。

問いを直すと、たとえば次のようになります(仮の例です)。

問いの直し方の例(仮の例)
直す前の問い直した問い直したところ
この施策に賛成ですか?この施策で、いちばん喜ぶのは誰で、いちばん困るのは誰でしょうか?はい・いいえで終わらないようにした
なぜ目標を達成できなかったのでしょうか?目標に近づいた月は、いつもと何が違ったでしょうか?責める問いを、前向きな問いにした
DXの推進方針について、意見をください毎週の仕事で、いちばん時間をとられている作業は何ですか?専門知識がなくても答えられるようにした
新規事業のアイデアを、自由に出してくださいいまのお客様が、私たちに頼めずに他社へ持っていっている仕事は何でしょうか?考える対象を絞った

問いの作り方:三つのステップ

セミナーでは、問いを次の三つのステップで作ってもらっています。

① 問いで考えてもらう対象を決める

問いの対象は、「個人か、組織か」「過去か、未来か」の組み合わせで、四つに分けられます。

  • 組織の過去:会社やチームの歴史に向き合う
  • 個人の過去:自分の経験を振り返り、自分ごとにする
  • 個人の未来:自由な想像から、自分が何をしたいかを引き出す
  • 組織の未来:チームとしてのビジョンを練り上げ、合意をつくる

ワークショップでは、この順に進めると話が深まりやすくなります。過去の事実から入ると、誰でも話しやすいからです。

② 問いに制約を付ける

制約がない問いは、考える範囲が広すぎます。あえて条件を付けて、考える方向を決めます。

問いへの制約の付け方の例(仮の例)
制約の付け方問いの例
付ける前この不採算事業を黒字にするために、どんな対策を打つべきか?
数字や期限を付ける年10億円の赤字の事業を黒字にするために、この2年間でどんな対策を打つべきか?
気持ちが動く言葉を付ける「プロジェクトX」のように、この事業を劇的に変えるには、どんな対策を打つべきか?
思いもよらない条件を付けるこの事業を黒字にするために、プロジェクトのオーナーがいちばん嫌がる対策は何だろうか?

最後の「いちばん嫌がる対策」は、意外と本質に近い案が出てきます。言いにくかったことを、問いが代わりに言ってくれるからです。

③ 段階を踏んで、問いを具体的にする

大きな問いを、いきなり投げても答えは出ません。手前に小さな問い(ステップ・クエスチョン)を置き、少しずつ具体的にしていきます。

  1. 「前の中期経営計画で掲げたスローガンを、100点満点だと、あなた自身はどのくらい達成できたと思いますか。その理由は?」
  2. 「そもそも、そのスローガンは、社会にどんな影響を与えるものだったのでしょうか。掲げていた頃を思い出してください」
  3. 「では、これからの3年間で、どんな影響を社会に与えたいですか?」

点数をつける問いから入ると、誰でも答えられます。理由を話しているうちに考えがほぐれ、最後の大きな問いにも言葉が出てきやすくなります。

役を演じてみるのも、ワークショップの一つ

ワークショップというと、付箋や模造紙を思い浮かべるかもしれません。ただ、役を演じてみるロールプレイも、日常とは違う視点から考える一つのやり方です。

私は、事業承継を支援するAI「アトツギ・ナビ」を開発していたとき、税理士と経営者の会話をストーリーにしました。そのうえで、私がアドバイザー役、相手の方に「意地悪な経営者」役をお願いして、ロールプレイをしました。開発を進めるなかで、最後に大事なのは、アドバイザーが経営者の背中をどう押すか、意思決定をどう促すかだと分かりました。この開発では、関係者に話を聞いて、機能を削ぎ落としたこともあります(関連:スコープクリープとは?原因と対策、成果物と作業の2つのスコープ)。

役を演じると、机の上で機能や手順を並べているだけでは出てこない一言や、言葉に詰まる場面が見えてきます。正解を用意せずに、場の中で答えを探る。これはワークショップの考え方そのものかなと思います。

ワークショップの主役は、ファシリテーターではなく参加者です。進め方の型や問いの作り方は、そのための道具にすぎません。whymeの人材開発・企業研修でも、リモート・ワークショップの形で研修を行ってきました。実際のプロジェクトやチームの課題を題材に、問いの作り方から一緒に考えることもできます。