会議で発言しない人の心理:黙っている理由は大きく三つ
会議で発言しない人は、意見がないから黙っているとは限りません。何を求められているのか分からない、言っても大丈夫か分からない、話す間がない。原因は本人の性格より、会議の作り方の側にあることが多いと私は考えています。この記事では、会議の冒頭で伝えるひと言と、発言の入口を増やす工夫、進行役の聴き方を紹介します。
話を振ると目線を下げる。何か言いかけて、口ごもる。周りの顔色を見ながら、当たり障りのないことを言う。気づくと、話が本題からそれていく。セミナーでは、こうした会議を「お通夜のような会議」と呼んでいます。
黙っている理由は、大きく三つあります。
一つ目は、何を話せばいいか分からないこと。 会議のゴールや問いがぼんやりしていると、参加者は何を答えれば役に立つのかが分かりません。「何か意見はありますか」と聞かれても、範囲が広すぎて言葉が出てきません。
二つ目は、言っても大丈夫か分からないこと。 的外れだと思われないか、上の人の考えと違っていないか、後で評価に響かないか。こうした迷いがあると、人は様子を見ます。
三つ目は、話す間がないこと。 話す人がいつも決まっていて、議論が速く進むと、考えがまとまった頃には次の議題に移っています。
| 会議でよく見る様子 | 本人の中で起きていそうなこと | 進行役ができること |
|---|---|---|
| 話を振ると、目線を下げる | 何を答えればいいか分からない | 問いを小さく、具体的にする |
| 何か言いかけて、口ごもる | 周りへの遠慮、的外れへの不安 | 「途中の考えで大丈夫です」と添える |
| 当たり障りのない話をする | 本音を言っても大丈夫か、様子を見ている | 懸念や反対の意見こそ聞きたいと、先に伝える |
| 話が本題からそれていく | 会議のゴールが共有されていない | ゴールを書いて、全員から見える場所に置く |
表の真ん中の列は、あくまで「起きていそうなこと」です。同じ様子でも、理由は人によって違います。私は、発言しないことを個人の性格や意欲の問題として見るより、会議の作り方の問題として見る方が、手を打ちやすいと考えています。人の問題にしてしまうと、打てる手は「もっと発言してください」と頼むことくらいしか残らないからです。
会議で意見が出ない原因は、会議の前にある
会議で意見が出ないと、進行の仕方に目が向きがちです。ただ、行動につながらない会議を並べてみると、その多くは始まる前に勝負がついています。セミナーでは、次の五つを挙げています。
- 翌日から動けるTodoが決まらない
- 建設的な意見が出てこない
- 何を決めたいのか、ゴールがはっきりしない
- 資料の事前配布など、準備が足りていない
- 参加者に当事者意識がない
五つはつながっています。ゴールがはっきりせず、資料も当日配られる会議では、参加者はその場で読んで理解するだけで精一杯です。意見を考える時間がないので、建設的な意見は出にくく、Todoも決まりません。
会議の前にやっておきたいことは、三つです。
- 何を決める会議かを、一文で書く。 「来期の販促施策を三つに絞る」のように、終わったときの状態で書きます。
- 資料は前日までに配る。 当日は読む時間ではなく、考えを出し合う時間にします。
- 誰に、何を聞きたいかを決めておく。 呼んだ理由がはっきりしていれば、本人にも事前に伝えられます。
五つ目の「当事者意識がない」は、参加者の側の問題に見えます。ただ、自分がなぜこの会議に呼ばれたのか、何を期待されているのかが伝わっていない、というだけのことも多いのかなと思います。当事者意識は外から渡せるものではありませんが、持ちやすい状態をつくることはできます(関連:当事者意識とは?持たせるには、上司の問いかけを変える)。会議そのものの組み立ては、ウェビナー「業績が上がる経営会議」でも扱っています(ウェビナーの経営管理シリーズ)。
冒頭のひと言:「お一人ずつ、意見を伺います」
準備ができたら、会議の冒頭で次のように伝えます。セミナーで、参加者に当事者意識を持ってもらう「魔法の言葉」として紹介しているひと言です。
「今日はお一人ずつ、きちんと意見を伺う時間を取りたいと思いますので、心づもりをしておいてくださいね」
このひと言が効く理由は、二つあります。
一つ目は、考える時間ができること。 急に指名されると、多くの人は無難な答えを返します。最初に予告しておけば、ほかの人の話を聞きながら、自分なら何を言うかを考えておけます。
二つ目は、聞き手から参加者に変わること。 自分にも順番が回ってくると分かった時点で、会議は「誰かが話すのを聞く場」から「自分も意見を出す場」に変わります。
一人ずつ聞くときは、順番にも気を配ります。立場の上の人や、声の大きい人が先に話すと、後の人はその意見に引っ張られやすくなります。経験の浅い人や、まだ話していない人から先に聞くと、意見の幅が広がりやすくなります。
聞くときの問いは、小さく、具体的にします。「何か意見はありますか」より、「この案で、いちばん気になる点はどこですか」「現場で一つ困りそうなことを挙げるとしたら何ですか」の方が、答えやすくなります。
発言の入口を増やす:チャット、書き出し、二人で話す
人前で声に出して話すのは、思っている以上にハードルの高いことです。そこで、声に出す以外の入口を用意します。
私はオンラインのセミナーや会議で、「顔も出さなくていいから、チャットでどんどん質問を入れてください」とお願いし、入った質問にはすべて答えるようにしています。声に出すのはためらう人でも、文字なら書けることがあります。そして、書いたものに一つずつ答えていくと、「書けば拾ってもらえる」ということが周りにも伝わり、次の質問が入りやすくなります。
入口は、チャットのほかにもいくつかあります。
| 入口 | やり方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| チャット・付箋に書く | 話す前に1〜2分、各自で書く。書いたものを順に読み上げる | 意見が割れそうなテーマ、オンラインの会議 |
| 二人で話してから全体へ | 隣の人と数分話し、二人の意見として出してもらう | 人数が多い会議、立場の差が大きい会議 |
| 一人ずつ順に回す | 一人ひと言で回す。考えがまとまらない人は後回しにしてよい | 全員の考えを一度そろえたいとき |
| 質問から入る | 意見ではなく「分からなかった点」を聞く | 新しいテーマ、説明を聞いた直後 |
どの入口も、最初に一人で考える時間をとる、という点が共通しています。いきなり話し合いから始めると、先に話した人の意見に場が引っ張られます。書き出してから話す進め方は、振り返りの場でも役に立ちます(関連:振り返りのフレームワーク|KPT)。
進行役の聴き方:全体を見渡し、言葉を拾って返す
会議の最中、進行役は議論の中身だけでなく、参加者全員の様子を見ています。見るところは、大きく三つです。
- 表情やしぐさ。 何か言いたそうな人、首をかしげている人のサインを見逃さない
- 発言の量のバランス。 話している人が偏っていないか、全体を見渡す
- 議論の流れ。 参加したそうな人がいれば、アイコンタクトで促したり、話の向きを変えたりする。ときには長い発言を区切る
発言が出てきたら、その人が「言ってよかった」と思えるように受け止めます。使える返し方は三つです。
| 返し方 | やること | 言い方の例 |
|---|---|---|
| 反復 | 相手の言葉を、そのまま繰り返す。周りに「大事な点だ」と伝わる | 「いま、Aさんがおっしゃった〜という意見ですが…」 |
| 同調 | 相手の発言に同意を示す。味方を得たように感じて、話しやすくなる | 「おっしゃる通り、Aさんの意見は大事ですね」 |
| 要約 | 発言を短くまとめる。発言の要点がはっきりする | 「Aさんのお話をまとめると、〜ということでしょうか」 |
私も会議では、相手の言葉を拾って返すようにしています。「いま、いいキーワードをいただきました」と一言添えるだけで、発言した人の表情が変わり、ほかの人も続きやすくなります。進行役は、参加者と向き合う審判ではなく、参加者の側に立つ仲間だと示すことが大事かなと思います。
会議で発言が思いつかない、的外れが怖いとき
ここまでは進行役の側の話でした。参加する側にも、「会議で発言が思いつかない」「的外れなことを言いそうで怖い」という悩みはよくあります。
発言が思いつかないときは、意見を言おうとしなくてかまいません。会議に加わる方法は、大きく三つあります。
- 質問する。 「〜というのは、〇〇という意味で合っていますか」。理解を確かめる質問は、ほかの人の疑問を代わりに聞くことにもなります。
- 前の人の発言に、一つ足す。 「Aさんの意見に加えて、〜という点もあると思います」。ゼロから考えるより言いやすくなります。
- 自分の現場の事実を言う。 「私の担当では、〜ということが起きています」。意見ではなく事実なので、的外れになりにくい発言です。
的外れが怖いという気持ちも、よく分かります。ただ、アイデアを広げる段階では、的外れに見える意見が、誰も考えていなかった論点を開くこともあります。進行役の側も、「その視点はありませんでした」と受け止めるだけで、場の空気は変わります。
「発言しない人は、会議にいらない」という声を聞くこともあります。私はそうは考えません。意見が違うのは健全なことで、全員の意見が最初からそろっている方が心配です。会議で言いにくいことがあるなら、1on1で個別に聴く方法もあります(関連:1on1ミーティングとは?目的と進め方、意味がないと言われる理由)。話しやすい場は、参加者の性格を変えることではなく、場の作り方を変えることで生まれます。
whymeの人材開発・企業研修では、管理職のチームづくりを研修テーマの一つとして扱っています。実際に担当している会議を題材に、進め方を見直すこともできます。
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