プロジェクトマネージャーの役割とは

プロジェクトマネージャーの役割とは、プロジェクトの目的を達成するために、計画・人・関係者をまとめ、最後まで責任を持ってプロジェクトを導くことです。プロジェクトマネジメントの国際的な知識体系である『PMBOKガイド』でも、プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの目標を達成する責任を持つチームを率いるために、組織から任命される人と位置づけられています。

役割を分けると、大きく三つあります。

  1. 目的をはっきりさせる。 何のためのプロジェクトかを言葉にし、メンバーが同じ方向を向けるようにします。
  2. 人と体制を整える。 誰に何を任せ、誰が何を決めるのかを決めます。
  3. 関係者の期待をそろえる。 オーナー、相手先、関係部署の期待と不安をつかみ、ずれが小さいときに埋めます。

似た言葉に、プロジェクトリーダーやプロジェクトオーナーがあります。会社によって呼び方も分担も違いますが、一般的には次のように分けられます。

プロジェクトオーナー・PM・PLの違い
項目プロジェクトオーナープロジェクトマネージャー(PM)プロジェクトリーダー(PL)
責任を持つ範囲プロジェクトを立ち上げた目的と、最終的な判断プロジェクト全体の目標の達成担当するチームや工程の成果
主な仕事目的・予算・優先順位を決める、後ろ盾になる計画を立てる、体制を整える、関係者と調整するメンバーを率いて作業を進める、課題を上げる
見ている時間軸プロジェクトの先にある成果立ち上げから終わりまで目の前の節目(マイルストーン)

小さなプロジェクトでは、PMとPLを一人が兼ねることもよくあります。

私は豊田自動織機で物流エンジニアリングのSEとして働いた後、コンサルタントに転じ、これまで15年以上、40社以上で延べ100件以上のプロジェクトを支援してきました。PMP(プロジェクトマネジメントの国際資格)も取得しています。その中で感じるのは、プロジェクトマネージャーの仕事は、計画を管理すること以上に、人が動ける状態をつくることだということです。人の心が動かないと、チームも成果も変わりません。

プロジェクトマネージャーに求められるスキルの広がり

かつてのプロジェクトマネージャーに求められていたのは、主に計画どおりに進めるための管理の力でした。スケジュール、費用、品質、課題を管理し、遅れがあれば手を打つ。いまもこれが土台であることは変わりません。

ただ、私のセミナー資料では、いまのプロジェクトマネージャーに求められる力を、次の四つに広げて考えています。

  • プロジェクトコントロール:計画、進捗、課題、リスクを管理する
  • チームビルディング:集まったメンバーを、同じ目的に向かうチームにする
  • ファシリテーション:会議やワークショップでアイデアを引き出し、意思決定を進める
  • コーチング:1on1などを通じて、メンバーの考えと成長を引き出す

プロジェクトマネジメントの国際団体であるPMIも、プロジェクトに関わる人に求める力を「働き方(Ways of Working)」「パワースキル(Power Skills)」「ビジネス感覚(Business Acumen)」の三つで示しています(PMIタレント・トライアングル、2022年に改訂)。管理の技術だけでなく、人と関わる力や、事業を理解する力まで含めて考える流れは、世界的にも同じだと言えます。

求められる力が広がった理由は、変化が速くなり、最初に決めた計画どおりに進むプロジェクトが少なくなったからかなと思います。計画が変わるたびに、プロジェクトマネージャーがすべてを把握して指示を出すのは難しい。メンバーが自分で考え、動ける状態をつくる方が、プロジェクトは前に進みます。

私のセミナーでは、この違いを『選ばれるプロフェッショナル』(ジャグディシュ・N・シース、アンドリュー・ソーベル著、英治出版)の考え方を借りて、「雇われエキスパート」と「信頼されるアドバイザー」という言葉で説明しています。専門知識を提供して答えを出す人から、相手の話を聴き、良い質問をして、一緒に答えにたどり着く人へ。私も、人から提案されたことは、本人があまり考えていないので、なかなか実行されないと考えています。プロジェクトマネージャーも、答えを渡すより、メンバーや相手と一緒に答えを作る方が、決めたことが動き出します。

プロジェクトマネージャー7つの心得

役割とスキルを、日々の行動に落とすと、次の7つになります。私がセミナーで「プロジェクト・マネージャー7つの心得」としてお話ししているものです。

1. 明確な目的や意義を持たないプロジェクトは失敗する

プロジェクトは、特定の目的のために人が集められる臨時組織です。お互いを知らないところから始まり、価値観もばらばらです。オーナーの思いつきで立ち上がり、何をするかは決まっていても、何のためにやるのかがはっきりしないこともあります。だから、プロジェクトマネージャーの最初の仕事は、目的をはっきりさせ、プロジェクトの「大義」をつくることです。目的が言葉になると、チームに求心力が生まれます。臨時組織が燃えやすい理由は、プロジェクトが炎上する原因と立て直し方で詳しく書いています。

2. プロジェクトの成果の半分は「人選」で決まる

メンバーは、推薦で決まることが少なくありません。「経営幹部の候補だから」「部下から人望があるから」「毎回プロジェクトに選ばれているから」。どれも推薦の理由としては筋が通っていますが、プロジェクトが求める役割や専門性と合っているとは限りません。目標を実現するためには、メンバーの変更も辞さない気概を持つことが大切です。

3. 関係者の期待と不安をコントロールし、ベクトルを合わせる

プロジェクトが進むほど、オーナーの期待は高まりがちです。一方で、関係部署などのステークホルダーは、何が起きているか分からないことに不安を募らせます。オーナーには事実を控えめに伝え、目標の達成には多くの困難があることを丁寧に説明する。関係者には進捗をこまめに伝え、不安を下げながら信頼を積み上げる。この両方が必要です。関係者との関わり方は、ステークホルダーマネジメントとは?(第2弾・未作成)で詳しく書きます。

4. プロジェクトで取り組むすべてのテーマが成功することはない

いくつもの分科会やテーマを並行して進めると、期待以上の成果が出るものもあれば、途中で行き詰まるものも出てきます。最初の段階で「成果を最大にするために、途中でテーマを見直すことがある」と伝えておき、行き詰まりそうなテーマからは労力を引き上げて、伸びそうなテーマに回します。範囲の決め方は、スコープクリープとは?にまとめています。

5. メンバーの能力を引き出すのは、動機付けと権限移譲

メンバーを奮い立たせるのは、プロジェクトの意義と、プロジェクトマネージャーからの期待です。仕事を任せるときは、次の三つの順で伝えます。

  • Why(なぜ):「今回のプロジェクトは、お客様のこれからの成長を左右すると言ってもいいものです。業界でも初めての取り組みなので、影響も大きい」
  • Want(私の想い):「私は、このプロジェクトをどうしても成功させたい。成功すれば、業界をリードする取り組みになる」
  • What(任せること):「Aさんは分析の切り口が鋭いので、市場と競合の分析を任せたい。節目を意識しながら、進め方はAさんの裁量で決めてもらっていい」

任せ方は、後継者への権限移譲と育成|任せ方を変える最初の90日も参考になると思います。

6. プロジェクトを成功させるために、頼れる人材はすべて使う

関係者の期待に応えようとして、自分の残業で穴を埋める。クセの強い相手の説得を、一人で抱え込む。プロジェクトの成功をいちばん阻んでいるのは、プロジェクトマネージャー自身のプライドかもしれません。力が足りないときは上司に頼み、人が足りないときは人員の追加を相談し、考えが行き詰まったら第三者に壁打ちをしてもらう。頼ることも、プロジェクトマネージャーの仕事です。

7. プロジェクトで起きた出来事は、すべてプロジェクトマネージャーに責任がある

覚悟を決めた瞬間から、リスクへの感度が上がります。誰かのせいにできる余地を残していると、小さな兆しを見過ごしてしまいます。

7つの中で、私がいちばん大事だと考えているのは7つ目です。ほかの6つは、この覚悟があって初めて動き出すものだと思っています。

プロジェクトマネージャーに向いている人の特徴

プロジェクトマネージャーに向いている人を、性格や能力で分けることはしない方が良いかなと思います。向き不向きは、日々の口癖や態度、つまり行動に表れます。私のセミナー資料から、成功しにくいプロジェクトマネージャーと、成功するプロジェクトマネージャーの口癖を並べてみます。

成功しにくい口癖と成功する口癖
成功しにくい口癖その裏にある態度成功する口癖その裏にある態度
「上司からの指示だから、残業で対応できないかな?」自分の責任から逃げている「責任を取るのは私だから、皆は心配しなくていい」すべての責任を引き受ける
「みんな苦しいんだから、一緒に頑張ろうよ」暗く、解決策を打ち出さない「どうせ大変なら、面白がってやろう」前向きで、機嫌がいい
「仮説が正しいか分からないけど、とりあえず最善を尽くそう」結果に責任を持たない「ごめん、私の仮説が間違っていた。やり方を見直したい」素直で、変化を受け入れる

右側の三つに共通するのは、自分を守ることより、プロジェクトを前に進めることを選んでいる点です。中でも、私は三つ目をいちばん大事にしています。伸びる人は、謙虚で素直です。謙虚さは学ぶ機会を生み、素直さは吸収する力を生みます。自分の仮説が外れたときに、それを認めて方向を変えられる人は、プロジェクトの途中で何が起きても立て直せます。どれも、経験と意識で身につけられる行動です。

プロジェクトマネージャーがしんどいと感じる理由

「プロジェクトマネージャーはしんどい」という声は、よく聞きます。その理由は、大きく三つあるのかなと思います。

一つ目は、責任の重さに比べて、権限が小さいこと。 プロジェクトの目標には責任を持つのに、メンバーを選ぶ権限も、相手先の組織を動かす権限もないことが多くあります。

二つ目は、板挟みになりやすいこと。 オーナーの期待、相手先の要望、メンバーの負荷。立場によって求めることが違い、その間に立つのがプロジェクトマネージャーです。

三つ目は、一人で抱え込みやすいこと。 任された責任感が強い人ほど、弱音を吐けず、自分の時間で穴を埋めようとします。

一つ目と二つ目は、プロジェクトという働き方の性質なので、なくすことはできません。最初に体制と役割を書き出し、誰が何を決めるのかをはっきりさせておくと、板挟みは少し軽くなります(RACI図とは?責任と権限の決め方)。三つ目は、7つの心得の6つ目で変えられます。責任をすべて引き受けることと、すべてを一人でやることは違います。覚悟は一人で決めて、仕事は周りに頼る。そう切り分けると、しんどさの多くは減らせるはずです。