非上場株式の新評価法はいつから?もう決まったのか

2026年10月18日時点で確認した国税庁の公表資料では、取引相場のない株式の評価方法の見直しが有識者会議で議論されています。会議は9月16日の第6回が最新で、会議の一覧に第7回以降の開催は載っておらず、第6回の議事要旨は作成中と表示されています。適用開始日や取りまとめの時期は示されていません。第6回資料も検討論点を示したものであり、そこで示された案を、そのまま現在の申告に使える確定した評価方法として扱うことはできません。

ニュースを読んだ際は、公表日、会議での提案、正式に公表された通達、適用時期を分けて確認しましょう。検討の進展は国税庁の会議資料や議事要旨で確認できます。この記事も上記の確認日時点の整理です。

何が変わる?現行の評価方法と見直し案の違い

現在、同族株主などが取得する非上場株式は、会社を大会社・中会社・小会社に分け、類似業種比準方式(上場している同業種の株価と、配当・利益・純資産を比べる方法)、純資産価額方式、またはその併用で評価します。8月20日の第5回資料は、この規模による区分をなくして共通の方式とすること、類似業種比準方式の存置は難しいことを、問いかけの形で示しました。

代わりに軸として検討されているのが残余利益方式です。帳簿上の純資産に、株主が通常期待する収益を上回る利益(残余利益)の数年分を加えて評価する考え方で、9月16日の第6回資料では、法人税申告書の数値と過去5年の正常利益を使う案が示されています。次の表は、現行制度と、会議資料で示された見直し案の主な違いです。見直し案はいずれも検討中で、確定したものではありません。

非上場株式の評価:現行制度と見直し案(検討中)の主な違い
項目現行制度見直し案(第5回・第6回資料)
会社の規模による区分大会社・中会社・小会社で評価方式が異なる区分をなくし、共通の方式とする方向
原則となる評価方式類似業種比準方式・純資産価額方式・その併用残余利益方式を基礎とする方向。類似業種比準方式は存置が難しいとされた
純資産の見方純資産価額方式では、土地などを相続税評価額に置き換える帳簿上の純資産(法人税申告書の数値)を基礎とする案
利益の見方類似業種比準方式で、自社の利益を同業種の上場会社と比べる過去5年の正常利益から、5年分の残余利益を計算して加える案
資産管理会社など土地保有特定会社・株式等保有特定会社などは純資産価額方式資産管理会社や開業後5年未満の会社などは、純資産価額方式などで評価する案
少数株主配当還元方式配当還元方式は残しつつ、対象や算式を見直す方向(第7回以降の論点)

第6回有識者会議(9月16日)で検討された主な論点

第6回資料は、残余利益方式で使う数値と計算の細部、残余利益方式によらず純資産価額方式で評価する「特定の評価会社」を検討事項として整理しています。どの項目も「〜としてはどうか」という提案の段階です。

次の表は、資料で示された主な案と、自社で確認しておきたいことの対応です。純資産価額方式の計算、還元率の算出方法、少数株主向けの配当還元方式は、第7回以降の論点とされています。計算の考え方は、残余利益方式の解説記事で詳しく整理しています。

第6回資料の主な論点と、自社で確認しておくこと
論点資料で示された案(検討中)自社で確認しておくこと
計算に使う数値会計帳簿ではなく、法人税申告書に基づく純資産と利益を使う直近と過去5期分の法人税申告書
加算する期間残余利益は5年程度とし、課税時期前5年の正常利益から計算する。6年目以降は加算しない5期分の利益の推移と、大きく動いた年の理由
一時的な損益オペレーティングリースによる損益や一時的な役員退職金を除いた正常利益で評価する特別な損益の内訳と、その発生理由
含み損のある資産一定の要件の下で減損を反映する(含み益を考えないこととの整合は今後整理)帳簿価額より価値が下がった資産の有無
子会社株式完全支配関係にある子会社の株式は、帳簿価額によらず適正な価額に修正するグループ会社の持株関係
従業員持株会一定の要件を満たす場合は固定価格で評価し、他の株式の評価で調整する持株会の規約、取得・退会時の価格
特定の評価会社資産管理会社、組織再編直後、開業後5年未満、開業前、休業中、清算中の会社は純資産価額方式などで評価する保有資産の構成、開業・組織再編の時期

株価は上がる?下がる?影響を受けやすい会社

机上の天秤の片皿に蔵の鍵と土地の証文、もう片皿に積んだ銭が載り、手代が傾きを確かめている墨絵
利益が期待を上回るか下回るかで、評価の向きが変わる。

残余利益方式では、利益が「株主が通常期待する水準」を上回る会社は帳簿上の純資産より高く、下回る会社や赤字の会社は純資産より低く評価されます。第6回資料には、加算期間5年・還元率8%と仮定し、1,378社の申告データで計算した試算が載っています。しんしゃく率を0.8とした場合、現行の申告評価額以下になる会社の割合は、小会社で67.9%、中会社で42.2%、大会社で24.2%でした。評価額の中央値は、大会社で現行比71.7%上昇、小会社で21.8%低下しています。

仮の条件による試算であり、還元率やしんしゃく率が決まれば結果は変わります。会社の規模だけで判断せず、次のような点に当てはまるかを確かめると、自社で何を確認すべきかが見えてきます。

  • 現在は大会社・中会社で、類似業種比準方式の割合が大きく、利益水準が高い
  • 利益が少ない、または赤字の年が続いている(純資産より低い評価になりやすい)
  • 役員退職金やリース取引などで、特定の年の利益を下げてきた(正常利益への修正が論点)
  • 土地や有価証券の含み益・含み損が大きい(帳簿上の純資産を基礎とする案)
  • 資産管理会社や開業後5年未満など、特定の評価会社に当たりそう
  • 子会社や従業員持株会がある

自社への影響を考えるために、揃えたい資料

まず、手元の株価資料がいつ、誰の取得を前提に計算されたものかを確認します。以前の株価だけが残っていても、株主構成や会社の資産が変わっていれば、その数字だけでは承継の判断ができません。

次に、決算書と申告書、株主名簿、保有資産、借入の資料を揃えます。顧問税理士には「現行制度での評価の前提」「不足している資料」「見直しが進んだ場合に再確認する項目」を分けて相談すると、次に何を準備するかが明確になります。

  • 現在の株主と持株数、誰にどの株式を渡す予定か
  • 直近と過去数年の決算書・法人税申告書、過去の株価計算資料
  • 一時的な利益・損失と、継続して見込める収益の違い
  • 土地・有価証券などの保有資産と、会社の借入・保証
  • 承継の希望時期と、先代・後継者・家族の意向

評価額と、実際に用意する資金を分けて考える

畳に離して置いた二つの銭箱に、番頭が銭を分けて入れ、脇に仕入れの荷と印鑑が置かれている墨絵
評価額と、会社と個人それぞれが用意する資金を分けて整理する。

株式の評価額が、そのまま納税額や売却価格になるわけではありません。相続・贈与の税額には、株式以外の財産や取得する人の状況なども関わります。会社の現預金と、株主個人が納税や株式取得に使える資金も分けて整理します。

税務の試算は税理士と確認し、その結果を経営の計画につなぎます。会社には運転資金、設備投資、借入返済が必要です。承継に伴う支出と将来の事業資金を並べ、会社と後継者の双方が無理なく進められる順序を検討します。

無料診断で確認できることと、専門家に確認すること

whymeの「会社の価値 無料診断」は、相続・贈与や売却の観点から、自社の状況を整理する入口です。入力内容と対応範囲に応じた参考試算であり、すべての会社や株式について評価額を出せるものではありません。個別確認が必要な場合は、その点をご案内します。

評価見直しに関する機能は、仮の条件による独自の試算です。国税庁の最新案の再現、将来の増税額の予測、申告に使える正式評価を提供するものではありません。診断をきっかけに疑問を整理し、具体的な評価・税額・制度の適用は税理士と確認してください。

株式の準備を、経営の引き継ぎまでつなげる

株式を渡す時期だけを決めても、後継者が経営を担える状態になるとは限りません。先代が続ける役割、後継者に渡す判断、幹部との分担、承継後の収益と資金の見通しも必要です。

whymeは、経営者・後継者との対話を通じて現状と課題を整理し、承継計画、後継者育成、現場での実行と振り返りを支えます。税務・法務の判断は専門家の確認を交え、決めたことを誰が、いつ、どの順序で進めるかに落とし込みます。