2026年10月5日、相続不動産の評価から相続対策の提案、不動産鑑定評価書の下書きまでをAIで支援する、税理士・不動産鑑定士のための不動産相続OS「カンテイ・ナビ」(α版)をリリースしました。あわせて、α版を実務の目線で試していただく税理士・不動産鑑定士のテスターを募集します。
この記事の冒頭の動画(2分18秒)では、登記簿の読み取りから、相続税評価額と時価の目安の比較、鑑定評価書の下書きまで、5つの工程に沿って主な機能を紹介しています。
開発の背景
相続税申告で最も手間がかかる作業のひとつが、相続税の土地評価です。登記事項証明書の内容を転記し、路線価図や用途地域を調べ、不整形地や地積規模の大きな宅地などの補正を財産評価基本通達に沿って1筆ずつ検討します。判断がベテランの経験に頼りがちで、税務調査で根拠を問われたときに資料を集め直すことも少なくありません。評価に追われ、生前の相続対策や鑑定評価の活用まで提案する時間が取れないという声も聞いてきました。
不動産鑑定士の側でも、相続に関わる鑑定では、登記簿・公図・法令上の制限・地価公示・取引事例を案件ごとに一から集め、規準・比準・積算の表と本文を作成する負担があります。
制度の面では、令和8年度税制改正により、相続開始前5年以内に取得した一定の貸付用不動産を、通常の取引価額に相当する金額で評価する見直しが行われます。国税庁は2026年9月18日に「貸付用不動産の評価について」の法令解釈通達(案)を公表し、10月18日まで意見を募集しています。相続税評価額と時価の関係を確かめる場面は、今後さらに増えると当社は考えています。
出典:財務省「令和8年度税制改正」、e-Gov「「貸付用不動産の評価について」の法令解釈通達(案)に対する意見公募手続」
カンテイ・ナビは、こうした不動産相続の業務を、同じ公的データを使ってひとつの流れにつなぐために開発しました。税理士が相続税評価に使う登記簿・位置・用途地域・地価公示などのデータを、不動産鑑定士の鑑定評価にもそのまま使えるようにしています。
カンテイ・ナビでできること
受任から鑑定評価書の作成まで、13のステップで業務を進めます。
税理士の方:相続税の土地評価から相続対策まで
- AI読み取り:登記事項証明書・固定資産評価証明書のPDFをAIが読み取り、項目ごとに信頼度を表示します。担当者が確認してから次へ進みます。
- 位置の特定と公的データの取得:14条地図で地番から筆を特定し、用途地域・容積率、地価公示、取引価格、傾斜、災害区域をまとめて取得します。
- 15項目の減額判定:不整形地、間口狭小、セットバック、地積規模の大きな宅地、貸家建付地など15項目について、AIが参考通達と根拠を付けて判定します。採否は税理士が承認・却下して決めます。
- 評価額の算出:路線価方式・倍率方式で相続不動産の評価額を算出し、補正・持分・特例の内訳を確認できます。小規模宅地等の特例は、分割案(取得者と要件)に基づいて試算します。
- 不動産相続対策:課税遺産総額、特例、次の打ち手、申告などの期限を一画面で確認し、税額軽減や分割の試算ができます。
- 相続税評価額と時価の目安の比較:相続税評価額と、近くの地価公示・取引事例から求めた時価の目安を並べて差を示します。時価の目安が上回る土地は生前対策の検討に、相続税評価額が上回る土地は鑑定評価による申告の検討につなげられます。
- ご家族向け提案書:ヒアリング内容から、提案書と業務見積の下書きをAIが作成し、Wordで出力します。
不動産鑑定士の方:資料収集から鑑定評価書の下書きまで
- 公示価格を規準とした価格:対象地の近くの地価公示3地点と、その標準地の鑑定評価書の要旨を表示します。
- 試算価格の計算:取引事例と格差率を入力すると、比準価格・規準価格・積算価格を自動で計算します。取引事例の選定と補正の判断は鑑定士が行います。
- 鑑定評価書の下書き:全13章の不動産鑑定評価書の下書きをAIが作成し、Wordで出力します。当社のデモ案件では、約1.6万字の下書きの生成にかかった時間は約2分でした。
共通:財産評価基本通達ナビ
財産評価基本通達を検索し、改正・廃止の履歴を、時点を指定してさかのぼって確認できます。
AIは支援、判断は専門家
- AIの読み取りや判定は、税理士・不動産鑑定士が確認・承認してから次のステップへ進む手順にしています。
- 減額判定ごとに、財産評価基本通達の該当番号と判断の根拠を表示します。
- データは事務所ごとに分けて管理し、他の事務所からは参照できません。
- 読み取り・判定・承認などの操作を記録し、AIを使う前に送信する内容を示して同意を得ます。
α版について
α版は、実務でお使いいただきながら機能と画面を磨き込む段階の版です。ご意見をもとに、機能や画面を予告なく変更することがあります。また、14条地図による位置の表示は現在東京23区が対象で、順次拡大していきます。画面に表示する時価は取引相場の目安としての参考値であり、鑑定評価額に代わるものではありません。
税理士・不動産鑑定士のテスターを募集します
α版を実際の業務の目線で試し、使い勝手や評価結果、出力される書類へのご意見をお寄せいただけるテスターを募集します。
- 対象:相続税申告で土地評価を行う税理士・税理士事務所の方、相続に関わる鑑定評価を行う不動産鑑定士の方
- お願いしたいこと:α版を操作していただき、業務の流れに合っているか、判定や評価額の根拠が分かりやすいか、出力される提案書や鑑定評価書の下書きがどこまで使えるかについて、ご意見をお聞かせください。
- お申し込み:お問い合わせページで「カンテイ・ナビ(α版)テスターへの応募」を選び、ご所属・資格と、相続税申告や相続関連の鑑定の取扱件数の目安をご記入ください。
ご利用の期間や条件は、お申し込みの内容を確認したうえで個別にご案内します。
カンテイ・ナビの出力は、専門家の判断を支援するための参考資料です。個別の評価や申告、鑑定評価の内容は、税理士・不動産鑑定士の責任のもとでご判断ください。当社は今後も、不動産相続に携わる専門家の皆さまが、ご家族との対話と判断に時間を使えるよう、サービスの改善を続けてまいります。
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