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法務の要点と出題範囲

本試験 10問程度初級 36問中級 54問上級 30問

法務は10問程度の出題が想定されています。会社法・民法・労働法などの基礎と、秘密保持・表明保証・クロージング条件といったM&A特有の契約条項が中心です。弁護士・司法書士等の独占業務に触れないための線引き(非弁行為)も重要です。法令は令和8年3月末時点です。

M&Aの流れのどこで法務を使うか
  1. 秘密保持契約情報を開示する前に、秘密にする範囲と義務を決める秘密保持契約(法務)M&A実務:秘密保持契約
  2. 仲介・FA契約支援の範囲、手数料、専任条項・テール条項などを決める仲介・FA契約(法務)M&A実務:アドバイザリー(仲介・FA)契約
  3. 意向表明・基本合意条件の大枠を確認する。法的拘束力を持たせる条項は一部に限られる意向表明・基本合意(法務)M&A実務:意向表明/基本合意
  4. 法務DD株式、契約、労務、許認可などの法的なリスクを調べる法務DDM&A実務:DD(個別)
  5. 最終契約表明保証、補償、解除などでリスクの分担を決める最終契約(法務)M&A実務:最終契約
  6. クロージング株式の譲渡、代金の支払、登記などを行うクロージング(法務)M&A実務:クロージング

法務基礎は、どの工程でも使う前提知識です。白いリンクはM&A実務のページの対応する分野です。

1. 法務の基礎:会社法・民法・労働法など

M&Aは、株式や事業を移す取引です。株主総会の決議、契約の効力、従業員の雇用など、取引の土台になる法律の基本を押さえます。

法務基礎

練習問題 36問(初級 11・中級 16・上級 9) | この分野を演習する

出題範囲:各種法律に関する基礎知識

図解|法務基礎

M&Aでは、場面ごとに関わる法律が違う

株式・契約・従業員・競争・個人情報・支援業務に、それぞれ別の法律が関わる。

中小M&A
  • 会社法譲渡制限株式の譲渡承認、事業譲渡の株主総会特別決議
  • 民法事業譲渡で契約・労働契約を移すには相手方・労働者の承諾
  • 労働契約承継法会社分割では承継事業に主に従事する労働者等に書面で通知
  • 独占禁止法一定規模の株式取得は事前届出。受理から30日は取得できない
  • 個人情報保護法事業承継に伴う個人データの提供は第三者提供に当たらない
  • 弁護士法弁護士でない者が報酬目的で法律事務を取り扱う業を禁止
出典:会社法、会社法、民法(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)委任・準委任遺留分インサイダー取引規制営業秘密解雇予告解除(解約)外為法株券発行会社株式の共有と権利行使者株式併合株主総会株主名簿株主リスト簡易合併・略式合併簡易手続(事業譲渡等)官報公告企業結合の事前届出議決権ほか88語

株券発行会社の株式は株券を渡さないと譲渡できないしなければならない

定款で株券を発行すると定めた会社(株券発行会社)の株式は、株券を相手に交付しなければ、譲渡の効力が生じないとされています。

くわしい解説を読む

株式譲渡によるM&Aでは、譲り渡し側の株主が持つ株式を譲り受け側に移します。会社法は、定款で株券を発行すると定めた会社(株券発行会社)について、株券の交付を譲渡が成立するための条件(効力要件)としています。株券を渡さずに代金だけ払っても、株式は移りません。一方、株券を発行しない会社(株券不発行会社)では当事者の合意で譲渡の効力が生じ、株主名簿の書換え(名義書換)は、会社やほかの人に「自分が株主だ」と主張するための条件(対抗要件)になります。なお、非公開会社である株券発行会社は株主から請求があるまで株券を発行しないことができるため、定款に定めがあるのに株券が手元にない中小企業もあります。

覚えておく事実

  • 株券の発行前にした株式の譲渡は、株券発行会社に対しては効力を生じない(会社法128条2項)。
  • 株券不発行会社では、取得者の氏名・住所を株主名簿に記載しなければ、会社その他の第三者に譲渡を主張できない(130条1項)。
  • 株券発行会社では、株主名簿の記載が必要になるのは会社に対して株主だと主張する場面に限られる(130条2項)。
  • 公開会社でない株券発行会社は、株主から請求がある時まで株券を発行しないことができる(215条4項)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「定款に株券発行の定めがあっても、株券を発行していなければ株券不発行会社として扱う」は誤り。株券を発行させ、交付を受ける必要がある。
  • 似た用語との違い株券発行会社の株券交付は「効力要件」、株券不発行会社の名義書換は「対抗要件」。名義書換をしないと当事者間でも無効、は誤り。
  • ひっかけに注意「株券の発行前の譲渡も会社に対して効力を生じる」は誤り(会社法128条2項)。

出典:会社法、会社法

株主名簿の書換えは原則として売主と買主が共同で請求するしなければならない

株式を取得した人が株主名簿の書換えを会社に求めるときは、原則として名簿上の株主(譲り渡した人)やその相続人と共同で請求します。

くわしい解説を読む

株主名簿は、会社が誰を株主として扱うかを決める帳簿です。株式を会社以外の人から取得した人(株式取得者)は、会社に対し、自分を株主名簿に記載するよう請求できます。ただ、取得した人が一人で「買いました」と言うだけで書き換えられると、本当の株主の権利が害されるおそれがあります。そこで請求は、原則として名簿に載っている株主か、その相続人など(一般承継人:相続や合併で権利をまとめて引き継いだ人)と共同で行います。また、譲渡に会社の承認が必要な株式(譲渡制限株式)は、会社の承認を受けていなければ、原則として名義書換を請求できません。

覚えておく事実

  • 名義書換を請求できるのは、株式を発行した会社以外の者から株式を取得した人(株式取得者)である(会社法133条1項)。
  • 譲渡制限株式の取得者が名義書換を請求できるのは、譲渡承認を受けた場合、指定買取人である場合、相続など一般承継で取得した場合など(134条)。
  • 共同請求の例外は、利害関係人の利益を害するおそれがないとして法務省令で定める場合に限られる(133条2項)。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点相続など一般承継で譲渡制限株式を取得した人は、会社の譲渡承認がなくても名義書換を請求できる(会社法134条4号)。
  • ひっかけに注意「譲渡制限株式の取得者は、承認がなくても単独で名義書換を請求できる」は誤り。承認が前提で、請求も原則は共同。
  • 似た用語との違い株券不発行会社の名義書換は、会社その他の第三者への「対抗要件」。譲渡の「効力要件」と入れ替える選択肢に注意。

出典:会社法、会社法

株主名簿は会社が作成して本店に備え置くしなければならない

株式会社は株主名簿を作り、本店に備え置かなければなりません。M&Aでは株主が誰かを確かめる基本資料として、法務の調査で必ず確認します。

くわしい解説を読む

株主名簿は、株主の氏名・住所、持っている株式の数、取得した日などを記載する帳簿です。M&Aで株式を譲り受ける側は、譲り渡す人が本当に株主なのか、ほかに株主がいないかを確かめる必要があり、その出発点が株主名簿です。会社法は、株主名簿の作成と本店への備置きを会社の義務とし、株主と会社の債権者(会社にお金を貸している人など)に閲覧・謄写(写しを取ること)を請求する権利を認めています。中小企業では名簿が作られていなかったり内容が不正確だったりすることが多いため、法務DD(譲り受け側が行う法務面の調査)では、譲渡承認の議事録や契約書など株式の移動を示す資料とあわせて確認します。

覚えておく事実

  • 株主名簿の記載事項は、株主の氏名(名称)・住所、株式数、株式を取得した日、株券発行会社なら株券の番号(会社法121条)。
  • 株主は会社に対し、自分についての株主名簿記載事項を記載した書面の交付を請求できる(122条1項。株券発行会社を除く)。
  • 閲覧請求は理由を明らかにして行い、権利の確保・行使に関する調査以外の目的などの場合は会社が拒める(125条2項・3項)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「株主名簿は本店に備え置く必要がなく、株主・債権者に閲覧請求権はない」は誤り(会社法125条)。
  • よく問われる点株主の異動は株主名簿だけで判断せず、譲渡承認の議事録や契約書など株式移動の証拠資料とあわせて確認する。

出典:会社法

譲渡制限株式の譲渡承認は原則、取締役会か株主総会が決めるしなければならない

譲渡に会社の承認が必要な株式は、定款に別の定めがなければ、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会の決議で承認するかどうかを決めます。

くわしい解説を読む

中小企業の多くは、定款で「株式を譲渡するには会社の承認が必要」と定めています(譲渡制限株式)。株式譲渡によるM&Aでは、この承認を得る手続が欠かせません。株式を譲り渡そうとする株主も、すでに取得した人も、会社に承認するかどうかの決定を求めることができます(譲渡等承認請求)。決定は、定款に別段の定めがない限り、株主総会、取締役会を置く会社(取締役会設置会社)では取締役会の決議で行い、会社は決定の内容を請求者に通知しなければなりません。承認する機関を取り違えると譲渡の有効性が問題になるため、定款と機関設計(会社にどの機関を置いているか)を必ず確認します。

覚えておく事実

  • 承認請求では、譲渡する株式の数、譲り受ける人の氏名(名称)、不承認なら会社か指定買取人による買取りを求めるかを明らかにする(会社法138条)。
  • 株式を取得した人からの承認請求は、原則として名簿上の株主またはその相続人等と共同で行う(137条2項)。
  • 定款に別段の定めがあれば、株主総会・取締役会以外の方法で承認を決めることもできる(139条1項ただし書)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い取締役会がない会社は株主総会、取締役会設置会社は取締役会が原則。「代表取締役が単独で決める」は定款の定めがない限り誤り。
  • ひっかけに注意「取締役会設置会社では株主総会の特別決議で承認する」は誤り。原則は取締役会の決議。

出典:会社法

第三者割当増資は、非公開会社では株主総会の特別決議で決めるしなければならない

新しく株式を発行して特定の相手に引き受けてもらうとき、非公開会社では発行条件(募集事項)を株主総会の特別決議で決めます。

くわしい解説を読む

第三者割当増資は、会社が新しい株式を発行し、特定の相手に引き受けてもらう方法で、M&Aでも使われます。既存の株主から見ると、持株の割合が下がったり、安い値段で発行されて株式の価値が薄まったりするおそれがあります。そこで会社法は、発行する株式の数、払込金額(1株と引換えに払い込む額)、払込期日などの「募集事項」を株主総会の決議で決めるとし、その決議を特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上が賛成)としています。払込金額が引き受ける人に特に有利な金額(有利発行)のときは、取締役が株主総会でその金額にする理由を説明しなければなりません。株式の全部または一部に譲渡制限がない会社(公開会社)では、有利発行を除き取締役会が決めます。

覚えておく事実

  • 株主総会は特別決議で、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社は取締役会)に任せることができる(会社法200条1項)。
  • 決定を任せるときは、発行できる株式数の上限と払込金額の下限を定めなければならない(200条1項)。
  • 募集事項は、募集ごとに均等に定めなければならない(199条5項)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い非公開会社は株主総会の特別決議、公開会社は有利発行を除き取締役会決議。決定機関を入れ替えた選択肢に注意。
  • 義務か・望ましいか特に有利な払込金額で発行するときは、取締役が株主総会でその理由を説明「しなければならない」(会社法199条3項)。
  • 数字を覚える募集事項の決定を任せる総会決議は、払込期日が決議の日から「1年以内」の募集に限り効力がある(200条3項)。

出典:会社法、会社法、会社法

普通決議と特別決議の成立要件の違いしなければならない

普通決議は出席株主の議決権の過半数、特別決議は3分の2以上の賛成で成立します。どちらも原則として議決権の過半数を持つ株主の出席が必要です。

くわしい解説を読む

株主総会の決議には重さの違う種類があり、日常的な事項は普通決議、合併や事業譲渡など会社の基礎に関わる事項は特別決議で決めます。成立には2つの条件があります。1つは定足数で、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席することです。もう1つは賛成の割合で、普通決議は出席した株主の議決権の過半数、特別決議は出席した株主の議決権の3分の2以上です。特別決議の定足数は定款で3分の1まで下げられますが、それより下げることはできません。賛成の割合は定款で引き上げられます。

例議決権1,000個のうち600個が出席し420個が賛成すれば、出席議決権の3分の2である400個以上なので特別決議は成立します

覚えておく事実

  • 普通決議の定足数・賛成割合は、定款で別段の定めをすることができる(会社法309条1項)。
  • 役員を選任・解任する決議は普通決議だが、定足数は定款でも議決権の3分の1未満にはできない(341条)。
  • 監査役の解任や、累積投票で選ばれた取締役の解任は特別決議が必要(309条2項7号)。
  • 特別決議では、決議要件に加えて「一定数以上の株主の賛成」などの要件を定款で定めることもできる(309条2項後段)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意特別決議の「3分の2」は出席株主の議決権が基準。「総株主の議決権の3分の2」とする選択肢は誤り。
  • 数字を覚える特別決議の定足数は議決権の過半数が原則で、定款で下げられるのは「3分の1」まで。

出典:会社法、会社法

M&Aで特別決議が必要になる主な場面しなければならない

合併・会社分割・株式交換などの承認、事業譲渡の承認、非公開会社の募集株式の発行などは、株主総会の特別決議が必要です。

くわしい解説を読む

M&Aの手法の多くは会社の基礎を変えるため、株主総会の重い決議である特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上が賛成)が求められます。会社法309条2項は特別決議が必要な場面を列挙しており、組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付)の承認、事業の全部や重要な一部の譲渡の承認、特定の株主から自己株式を取得する決定、株式の併合、非公開会社での募集株式の発行などが含まれます。一方、取締役など役員の選任と、取締役の解任は原則として普通決議です。どの手続が特別決議で、どれが普通決議かという区別がよく問われます。

覚えておく事実

  • 組織再編(会社法第5編の手続)で株主総会決議が必要な場合は特別決議(309条2項12号)。
  • 事業譲渡等の承認(467条1項)は特別決議(309条2項11号)。
  • 特定の株主からの自己株式の取得、相続人等への売渡請求、株式の併合も特別決議(309条2項2号〜4号)。
  • 役員は株主総会の決議でいつでも解任できるが、正当な理由がなければ解任された者は会社に損害賠償を請求できる(339条)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い取締役の解任は原則として普通決議、監査役の解任は特別決議。「取締役の解任は原則特別決議」は誤り。
  • ひっかけに注意「事業の全部の譲渡の承認は普通決議で足りる」は誤り。特別決議が必要。

出典:会社法、会社法、会社法

取締役の善管注意義務・忠実義務と利益相反取引の承認しなければならない

取締役は会社のために注意深く忠実に職務を行う義務を負い、会社と利益がぶつかる取引をするときは、重要な事実を開示して承認を受ける必要があります。

くわしい解説を読む

会社と取締役の関係は、民法の委任(仕事を任せる契約)の規定に従います。そのため取締役は、善良な管理者として通常求められる注意を払って職務を行う義務(善管注意義務)を負います。さらに会社法は、法令・定款・株主総会の決議を守り、会社のため忠実に職務を行う義務(忠実義務)を定めています。取締役が会社と同じ種類の事業を自分のために行う取引(競業取引)や、会社と利益がぶつかる取引(利益相反取引)は、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)で重要な事実を開示し、承認を受けなければなりません。中小企業では、オーナー社長が会社に不動産を貸す、会社からお金を借りるといった取引が見られ、M&Aの前に承認の有無を確認します。

覚えておく事実

  • 利益相反取引には、取締役が会社と直接取引する場合と、会社が取締役の債務を保証するなど第三者との間で利益が相反する場合がある(会社法356条1項2号・3号)。
  • 承認を受けた利益相反取引には、民法108条(自己契約・双方代理の禁止)は適用されない(356条2項)。
  • 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う(民法644条)。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか競業取引・利益相反取引は、重要な事実を開示して承認を「受けなければならない」(会社法356条1項)。
  • よく問われる点オーナー社長と会社の間の不動産賃貸や貸付金は利益相反取引にあたりうる。承認の有無は法務DDの確認事項。

出典:会社法、民法

事業譲渡等で株主総会の特別決議が必要になる行為しなければならない

事業の全部や重要な一部の譲渡、他の会社の事業の全部の譲受けなどは、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議で契約の承認を受ける必要があります。

くわしい解説を読む

事業譲渡は、会社の事業(設備・取引先との契約・従業員などのまとまり)をほかの会社に譲る手法です。会社の基礎に関わるため、会社法467条1項は、一定の行為について、その効力が生じる日(効力発生日)の前日までに、株主総会の決議で契約の承認を受けなければならないとしています。対象は、事業の全部の譲渡、事業の重要な一部の譲渡、一定の子会社株式の譲渡、他の会社の事業の全部の譲受け、事業の全部の賃貸や経営の委任などです。決議は特別決議で、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し(定足数。定款で3分の1以上の割合まで下げられる)、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。

覚えておく事実

  • 事業の一部の譲渡でも、譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1(定款でより低い割合も可)を超えなければ、総会の承認は不要(会社法467条1項2号)。
  • 子会社株式の譲渡は、帳簿価額が総資産額の5分の1を超え、かつ効力発生日に子会社の議決権の過半数を持たなくなる場合に承認が必要(467条1項2号の2)。
  • 事業の全部の譲受けでも、対価として渡す財産の帳簿価額が自社の純資産額の5分の1以下なら、原則として総会の承認は不要(468条2項)。
  • 契約の相手方が特別支配会社(総株主の議決権の10分の9以上を持つ会社)であれば、総会の承認は不要(468条1項)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える「重要な一部」の基準は総資産額の「5分の1」超。承認の期限は効力発生日の「前日」まで。3分の1や2週間前とする選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意「他の会社の事業の重要な一部の譲受けにも総会承認が必要」は誤り。譲受けで承認が必要なのは事業の「全部」の譲受け。
  • よく問われる点特別決議の「3分の2以上」の分母は、出席した株主の議決権。議決権の総数の3分の2とする計算は誤り(会社法309条2項)。

出典:会社法、会社法、会社法

合併・分割・株式交換で権利を手放す側の総会承認と略式・簡易しなければならない

吸収合併で消える会社、吸収分割をする会社、株式交換で完全子会社になる会社は、効力発生日の前日までに株主総会の決議で契約の承認を受けます。略式・簡易の場合は不要です。

くわしい解説を読む

吸収合併・吸収分割・株式交換では、権利義務や株式を手放す側の会社(消滅株式会社等)の株主への影響が大きいため、会社法783条1項は、効力発生日の前日までに株主総会の決議で契約の承認を受けなければならないとしています。決議は原則として特別決議です(309条2項12号)。ただし、相手方(存続会社等)がその会社の特別支配会社、つまり総株主の議決権の10分の9以上を持つ会社であれば、総会の承認は不要です(略式手続、784条1項)。また吸収分割では、相手方に承継させる資産の帳簿価額が分割をする会社の総資産額の5分の1以下なら、総会の承認は不要です(簡易手続、784条2項)。

覚えておく事実

  • 吸収合併・株式交換の略式手続でも、対価に譲渡制限株式等を含み、消滅株式会社等が公開会社で種類株式発行会社でないときは、総会の承認が必要(784条1項ただし書)。
  • 簡易手続の基準の「5分の1」は、吸収分割をする会社の定款でより低い割合を定めることもできる(784条2項)。
  • 公開会社である吸収合併消滅会社・株式交換完全子会社の株主に譲渡制限株式等を渡す場合、決議は議決権を行使できる株主の半数以上で、その議決権の3分の2以上の賛成が必要(309条3項2号)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い権利を手放す側で簡易手続があるのは吸収分割だけ。吸収合併の消滅会社や株式交換の完全子会社には簡易手続がない。
  • 数字を覚える略式手続の基準となる特別支配会社は、総株主の議決権の「10分の9」以上を持つ会社(会社法468条1項)。
  • 似た用語との違い分割をする会社の簡易は「承継させる資産の帳簿価額÷総資産額」、存続会社側の簡易は「交付する対価÷純資産額」で5分の1以下かを見る(796条2項)。

出典:会社法、会社法、会社法

合併・会社分割の債権者保護手続は公告と個別の催告しなければならない

合併や会社分割では、異議を述べられる債権者のために、官報での公告と、知れている債権者への個別の催告を行い、1か月以上の異議期間を設ける必要があります。

くわしい解説を読む

合併や会社分割では、会社の財産や債務がほかの会社に移るため、お金を貸している人などの債権者は、返済を受けられるかどうかに影響を受けます。そこで会社法は、債権者が異議を述べる機会を与える債権者保護手続を定めています。対象は、吸収合併で消える会社の債権者や、吸収分割の後に分割をした会社へ債務の履行を請求できなくなる債権者などです(789条1項)。会社は合併等をする旨などを官報に公告し、会社が把握している(知れている)債権者には各別に催告します(同条2項)。異議を述べた債権者には、弁済・相当の担保の提供・財産の信託のいずれかをします。ただし、合併等をしてもその債権者を害するおそれがないときは不要です(同条5項)。存続会社側の債権者にも同じ手続があります(799条)。

覚えておく事実

  • 官報に加え、定款で定めた方法(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙か電子公告)でも公告すれば、各別の催告を省略できる(会社法789条3項)。
  • 吸収分割で、不法行為によって生じた分割会社の債務の債権者への各別の催告は、二重に公告しても省略できない(789条3項かっこ書)。
  • 異議を述べられる期間内に異議を述べなかった債権者は、合併等を承認したものとみなされる(789条4項)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える債権者が異議を述べられる期間は「1か月」を下ることができない(会社法789条2項ただし書)。
  • ひっかけに注意「日刊新聞紙等でも公告すれば、吸収分割の不法行為債権者を含め各別の催告を省略できる」は誤り。
  • 似た用語との違い事業譲渡には、官報公告と催告による債権者保護手続がない。債務を移すには債権者の個別の同意で対応する。

出典:会社法、会社法、商業登記法

組織再編では契約内容などを本店に備え置いて開示するしなければならない

合併・会社分割・株式交換をする会社は、契約の内容などを効力発生前から本店に備え置く事前開示と、効力発生後に承継した権利義務などを記載した書面を6か月間備え置く事後開示を行います。

くわしい解説を読む

組織再編は、株主や債権者の権利に大きく影響します。株主が総会で賛否を判断したり、債権者が異議を述べるか考えたりするには、情報が必要です。そこで会社法は、吸収合併で消える会社などに、契約の内容などを記載した書面または電磁的記録を本店に備え置くよう求めています(782条)。備え置きを始める日は、総会の日の2週間前の日、債権者への公告・催告の日などのうち、いずれか早い日です。存続会社側も同様です(794条)。効力が生じた後は、承継した権利義務などを記載した書面等を作り、効力発生日から6か月間、本店に備え置きます(事後開示、791条・801条)。株主や債権者は、営業時間内いつでも閲覧などを請求できます。

覚えておく事実

  • 事前開示の書面は効力発生日後6か月を経過する日まで備え置く。ただし吸収合併で消える会社は効力発生日まで(会社法782条1項)。
  • 新設合併・新設分割・株式移転の事後開示は、設立した会社の成立の日から6か月間備え置く(811条・815条)。
  • 書面の謄本・抄本の交付を請求するときは、会社が定めた費用を支払う必要がある(782条3項ただし書)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える事後開示の備置期間は効力発生日から「6か月間」。合併等の無効の訴えの提訴期間(効力が生じた日から6か月以内)と同じ長さ。
  • よく問われる点総会の承認が必要な場合、事前開示を始める日の一つは「株主総会の日の2週間前の日」(会社法782条2項1号)。

出典:会社法、会社法、会社法

変更登記は2週間以内、登記前は善意の第三者に対抗できないしなければならない

会社の登記事項に変更が生じたら、2週間以内に本店所在地で変更登記をします。登記すべき事項は、登記の後でなければ事情を知らない第三者に主張できないとされています。

くわしい解説を読む

M&Aのクロージング(取引の実行)の後には、役員の交代、商号(会社名)の変更、本店の移転など、登記された事項が変わることがよくあります。会社法915条1項は、登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならないとしています。登記は、取引の相手が会社の状況を確かめるための仕組みです。そのため908条1項は、登記すべき事項は、登記の後でなければ、その事情を知らない第三者(善意の第三者)に主張(対抗)できないとしています。登記の後であっても、第三者が正当な事由によって登記を知らなかったときは同じ扱いです。

覚えておく事実

  • 故意または過失で事実と違う事項を登記した者は、それが事実と違うことを善意の第三者に対抗できない(会社法908条2項)。
  • 登記すべき事項に株主総会の決議が必要なときは、登記の申請書にその議事録を添付する(商業登記法46条2項)。
  • 総会決議が必要な登記の株主リストは、議決権割合の上位10名と、割合の合計が3分の2に達するまでの人数のいずれか少ない人数分(商業登記規則61条3項)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える変更登記の期限は、変更が生じた時から「2週間以内」。1か月とする選択肢は誤り(会社法915条1項)。
  • ひっかけに注意「総会決議が必要な登記には、原則として株主全員分の株主リストを添付する」は誤り。全員分が必要なのは株主全員の同意が必要な場合。

出典:会社法、商業登記法、商業登記規則

合併・会社分割・株式移転の登記の期限しなければならない

吸収合併・吸収分割は、効力が生じた日から2週間以内に登記します。新設合併・新設分割・株式移転は、総会決議の日などのうち最も遅い日から2週間以内に設立の登記をします。

くわしい解説を読む

組織再編では、会社が消えたり新しく生まれたり、登記事項が変わったりするため、登記が必要です。吸収合併では、存続する会社が効力発生日に消える会社の権利義務を引き継ぎ(750条1項)、効力が生じた日から2週間以内に、消える会社の解散の登記と存続する会社の変更の登記をします(921条)。吸収分割も、効力が生じた日から2週間以内に、分割をした会社と承継した会社の変更の登記をします(923条)。一方、新設合併・新設分割・株式移転は新しい会社をつくる手続です。株主総会の決議の日、債権者保護手続が終わった日、会社が定めた日などのうち、いずれか遅い日から2週間以内に設立の登記をします(922条・924条・925条)。

覚えておく事実

  • 吸収合併で消える会社の解散は、吸収合併の登記の後でなければ第三者に対抗できない(会社法750条2項)。
  • 新設分割で設立する会社は、その成立の日に、分割をした会社の権利義務を新設分割計画に従って承継する(764条1項)。
  • 株式移転で設立する完全親会社は、その成立の日に、完全子会社の発行済株式の全部を取得する(774条1項)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い吸収型の登記期限は「効力が生じた日」から2週間以内。新設型は総会決議の日や債権者保護手続終了の日などの「いずれか遅い日」から2週間以内。
  • ひっかけに注意「吸収合併の登記は存続会社の変更登記だけでよい」は誤り。消える会社の解散の登記もする(会社法921条)。

出典:会社法、会社法、会社法

2. 工程ごとの契約と法務

M&Aでは、工程ごとに契約を結びます。それぞれの契約が何を約束し、どこまで法的な拘束力を持つかを、工程の順に確認します。

秘密保持契約(法務)

練習問題 8問(初級 2・中級 4・上級 2) | この分野を演習する

出題範囲:秘密保持に関する法律知識

図解|秘密保持契約(法務)

NDAは、守る情報・外れる情報・開示先を決める

詳しい情報を開示する前に、秘密保持を確約する契約(NDA・CA)を結ぶ。

秘密情報
  • 取引の検討・交渉に関連して相手方から開示を受けた情報
  • 契約締結の事実と契約の存在・内容
  • 交渉の経緯・内容に関する事実
除外される情報
  • 開示時点で既に公知の情報
  • 開示時点で受領者が既に正当に保有していた情報
  • 開示後に受領者の責めによらず公知となった情報
  • 正当な第三者から秘密保持義務なく入手した情報
  • 秘密情報を使わず独自に開発した情報
開示できる相手
  • 自己の役員・従業員(合理的に必要な範囲)
  • 弁護士・税理士・FAなど秘密保持義務を負う者
  • 裁判所・規制当局等の公的機関(事業承継・引継ぎ支援センター含む)
  • 経営者の個人保証を相談する金融機関等
終了・違反時
  • 返還請求があれば写しも含め速やかに返還
  • 違反者は弁護士費用を含む損害を賠償する
  • 義務は有効期間満了後3年間存続(サンプル)
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.3、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.4(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)守秘義務秘密情報営業秘密個人情報保護法個人データの第三者提供重要事実秘密保持契約(NDA)不正競争防止法

営業秘密の使用の差止請求は3年・20年で消滅する

営業秘密を不正に使う行為をやめさせる請求権は、侵害と行為者を知ってから3年、または使用が始まってから20年で、時効により消滅します。

くわしい解説を読む

M&Aの検討では、秘密保持契約を結んだうえで相手に事業の情報を開示します。開示した情報が不正に使われたとき、不正競争防止法は営業秘密の保有者に、侵害の停止や予防を求める権利(差止請求権)を認めています。ただしこの権利は無期限ではありません。相手が使用を続けている場合に、営業上の利益を侵害された(またはそのおそれがある)保有者が、その事実と行為者を知った時から3年間行わないとき、またはその使用行為の開始から20年を経過したときは、時効で消滅します。侵害に気づいたら、期間内に権利を行使する必要があります。

覚えておく事実

  • 期間制限の対象は、営業秘密を「使用する」行為に対する侵害の停止・予防の請求権である(不正競争防止法15条1項)。
  • 3年の起算点は、営業秘密保有者が侵害の事実と行為者を知った時(15条1項1号)。
  • 20年の起算点は、その使用行為が始まった時(15条1項2号)。
  • 同じ期間制限は、限定提供データを使用する行為に対する差止請求にも準用される(15条2項)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える知った時から「3年」、行為の開始から「20年」。「知った時から5年」とする選択肢は誤り。

出典:不正競争防止法

情報共有の仕組みに備え、契約で秘密保持義務の除外を手当てするしなければならない

情報共有の仕組みに参加する仲介者・FAは、譲り受け側・譲り渡し側との契約で、情報を共有できるよう秘密保持義務の除外等を行い、その前に内容を説明することが求められます。

くわしい解説を読む

不適切な譲り受け側(経営者保証を移さないまま会社の資産を回収するなど)の情報を業界内で共有する仕組みについて、中小企業庁は令和7年2月に一例となる骨子を示しました。仲介者・FAが顧客の情報を運営主体に報告すると、契約上の秘密保持義務に反するおそれがあります。そこで参加者は、譲り受け側との契約で、登録事由に当たる場合に運営主体と他の参加者へ共有できるよう、秘密保持義務からの除外等の対応を行う必要があります。その前に、登録事由の内容、共有の範囲、共有される情報の利用目的を説明することが求められます。また、譲り受け側からの異議申立てで運営主体が譲り渡し側の情報を確認する場合に備え、譲り渡し側との契約でも同様の手当てと事前の説明が必要です。

覚えておく事実

  • 参加者が譲り渡し側を支援するFAの場合、譲り受け側と契約を結んでいないため、その参加者からの情報共有は難しい点に留意が必要。
  • 情報の共有範囲には、公的相談窓口である全国の事業承継・引継ぎ支援センターも含める必要がある。
  • 運営主体は、譲り受け側から異議申立てがあれば登録事由への該当性を再確認し、相当の理由があれば登録を抹消する必要がある。
  • 共有を受けた譲り受け側との取引停止を参加者に強制すると、独占禁止法上違法となる可能性があるため、取引の可否は参加者が自ら判断する。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点秘密保持義務の除外等の対応を行う「前に」、登録事由の内容・共有範囲・共有情報の利用目的を説明する。
  • ひっかけに注意「秘密保持義務の除外は譲り受け側との契約だけでよい」は誤り。異議申立ての確認に備え、譲り渡し側との契約でも手当てが必要。
  • ひっかけに注意「譲り渡し側のFAである参加者も、譲り受け側の情報を容易に共有できる」は誤り。譲り受け側と契約がないため難しい。

出典:不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて(2025年2月) p.3、不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて(2025年2月) p.1、不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて(2025年2月) p.2

秘密保持契約でも開示が認められる相手べき・求められる

秘密保持契約を結んでいても、役員・従業員、専門家、公的機関、経営者保証の相談先の金融機関などには、必要な範囲で開示できます。

くわしい解説を読む

秘密保持契約は、M&Aの検討で知った情報を第三者に漏らさない約束です。とはいえ、社内の担当者や専門家に一切話せないと検討が進みません。そこで中小M&Aガイドラインの契約書サンプルは、例外として、取引のために合理的に必要な範囲で、①自社の役員・従業員、②弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・FA(助言をする専門業者)などのアドバイザー、③裁判所・規制当局などの公的機関(事業承継・引継ぎ支援センターを含む)、④譲り渡し側の経営者が会社の債務に付けている個人保証について、その扱いを相談する目的での保証先の金融機関等、への開示を認めています。④はM&A成立前の相談も含みます。

覚えておく事実

  • 秘密保持契約書サンプルでは、アドバイザー等への開示は、受け取る人が同等の秘密保持義務を負う場合に限られる。
  • アドバイザー等が義務に違反した場合は、その人に情報を開示した当事者が自ら責任を負う。
  • 法令等に基づき公的機関に開示するときは、原則として事前に相手方へ通知する(難しければ開示後できるだけ速やかに)。
  • 仲介契約書サンプルにある個人保証の相談のための開示規定は、譲り受け側との契約では不要とされている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意個人保証の扱いを金融機関に相談するための開示は「取引成立後の相談に限る」は誤り。成立前の相談も含む。
  • ひっかけに注意「役員・従業員には必要性を問わず全て開示できる」「公的機関への開示は相手方への通知不要」はどちらも誤り。
  • よく問われる点開示できる公的機関・団体には、事業承継・引継ぎ支援センターも含まれると明記されている。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.3、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.4、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.9

依頼者が専門家に相談できるよう秘密保持の対象から外すべき・求められる

依頼者と支援機関の秘密保持契約では、依頼者が専門家等に意見を求められるよう、その相談先を秘密保持の対象から除外することが求められます。

くわしい解説を読む

M&Aでは、依頼者(売り手や買い手)が支援機関と最初に秘密保持契約を結びます。しかし、この契約で「誰にも話してはいけない」と定めると、依頼者は支援機関の提案が妥当かどうかを、他の専門家に確かめることもできなくなります。そこで知識・スキルマップは、依頼者の希望に応じて、士業等専門家、事業承継・引継ぎ支援センター、保証や担保の解除をする金融機関等から意見・助言を求められるよう、これらの相談先を秘密保持契約の対象から除外することを求めています。

例社長が、顧問税理士にセカンド・オピニオン=別の専門家の意見を求める場面です。

覚えておく事実

  • 依頼者・支援機関間の秘密保持契約では、秘密情報の定義・範囲、秘密保持の期間、違反時の扱いを、依頼者の希望も踏まえて明確に示すことが求められる。
  • 秘密保持契約に専任条項やテール条項などの重要事項が入るときは、契約前の重要事項説明に準じた対応をすることが望ましい。
  • 秘密保持契約の締結方法(双方押印、差し入れ型)は、情報漏洩を防ぐ観点から適切な方法を選ぶことが求められる。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点除外する相談先は「士業等専門家」「事業承継・引継ぎ支援センター」「保証・担保の解除をする金融機関等」。
  • 義務か・望ましいか重要事項を含む秘密保持契約で重要事項説明に準じた対応をするのは「望ましい」。「しなければならない」は誤り。
  • ひっかけに注意「依頼者・支援機関間の秘密保持契約は支援機関のひな形どおりでよく、依頼者の希望を踏まえる必要はない」は誤り。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.25

売り手・買い手間のNDAは原則として直接結ぶべき・求められる

譲り渡し側と譲り受け側候補の間の秘密保持契約(NDA)は、秘密保持の観点から、原則として両者の間で直接締結すべきとされています。

くわしい解説を読む

マッチングの段階では、譲り受け側の候補先が譲り渡し側の詳しい情報を受け取ります。その前に結ぶのが秘密保持契約で、NDA(Non-Disclosure Agreement)やCA(Confidential Agreement)とも呼ばれます。知識・スキルマップは、この契約は秘密保持の観点から原則として譲り渡し側と譲り受け側の間で直接締結すべきとしています。締結の方法には、双方が押印する方法と「差し入れ型」(一方が相手に差し出す形式)があり、情報漏洩を防ぐ観点から適切な方法を選ぶことが求められます。

覚えておく事実

  • 売り手・買い手間のNDAには、秘密情報の定義・範囲、秘密保持の期間、違反した場合の扱いなどを明確に記載することが求められる。
  • 知識・スキルマップでは、売り手・買い手間のNDAの作成・締結はマッチングのプロセスの業務に位置づけられている。
  • 中小M&Aガイドラインの秘密保持契約書サンプルは、譲り渡し側と譲り受け側が直接結び、相互に開示する情報を対象とする形式である。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「売り手・買い手間のNDAは原則として仲介者を介して間接的に締結する」は誤り。原則は当事者間での直接締結。
  • よく問われる点締結方法は双方押印と差し入れ型の2つ。「依頼者の事務負担が軽い方法で選ぶ」は誤りで、情報漏洩防止の観点から選ぶ。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.58、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.9

NDAの実効性を高める工夫べき・求められる

NDAを形だけにしないため、破談時に情報を回収できる体制づくりや、違反時の損害賠償責任の明文化が求められます。

くわしい解説を読む

秘密保持契約(NDA)は、結んだだけで守られるとは限りません。締結しても金銭の支払義務は発生しないため、相手が軽い気持ちで締結してしまうおそれがあるからです。そこで知識・スキルマップは、秘密保持の実効性を高めるため、契約に違反した場合には損害賠償責任が生じることを適宜明文化することを求めています。また、案件が途中で破談すると、開示した情報の返却を求められることもあります。その場合に備えて、外部のアドバイザーが持っている情報も含めて回収できる管理体制を作っておく必要があるとしています。

覚えておく事実

  • 秘密保持義務は、依頼者が士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センター等から意見・助言を求められる内容とする方向で調整することが求められる。
  • 情報を共有できる先として、不適切な譲り受け側の情報を共有する仕組みを運営する業界団体等を追記することが望ましい。
  • ガイドラインの秘密保持契約書サンプルでは、違反による損害賠償の範囲に合理的な範囲の弁護士費用も含まれる。
  • 同サンプルでは、相手方から返還請求があれば、秘密情報を写しも含めて速やかに返還する。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか損害賠償責任の明文化は「求められる」、業界団体等を情報の共有先に追記するのは「望ましい」。
  • ひっかけに注意「不適切な譲り受け側の情報共有の仕組みを運営する業界団体等は、共有先として追記すべきでない」は誤り。
  • よく問われる点破談時の情報回収は、外部アドバイザーが持つ分も含めて回収できる体制が必要。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.58、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.10

基本合意書は網羅的・明確に書き、譲渡額は暫定と説明するべき・求められる

基本合意書には、合意した内容を網羅的・具体的かつ明確に記載することが求められます。また、基本合意の譲渡額は暫定的で、その後の調整で変わりうると双方に説明しておく必要があります。

くわしい解説を読む

基本合意書は、交渉で概ね合意した条件を、DD(デュー・ディリジェンス:譲り受け側が行う詳しい調査)や最終契約の前に書面にまとめるものです。合意した内容があいまいだと、基本合意の後に同じ点を再び調整することになります。そのため知識・スキルマップは、合意した内容を網羅的・具体的かつ明確に記載することを求めています。また、基本合意の段階の譲渡額は暫定的なもので、基本合意後の調整によって変動します。支援者は、その点を譲り渡し側・譲り受け側の双方に説明しておく必要があります。あわせて、記載内容のうちどこまでに法的拘束力(守らないと責任を問われる法的な効力)を持たせるか、その範囲を明確にすることも求められます。

覚えておく事実

  • 秘密保持義務は、依頼者が士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センター等に意見・助言を求められる内容とする方向で調整することが求められる。
  • 基本合意書の作成・アドバイスは非弁行為に当たる可能性があるため、個別のケースで必要に応じ弁護士に確認することが求められる。
  • クロージング条項は、許認可の取得や重要な契約の更改など、満たされないと成約できない重大な事項について、基本合意の段階で合意を形成するために設ける。
  • 譲り受け側が上場企業の場合、基本合意書の締結で適時開示が必要となる場合があるため、締結すべきかを確認しておく必要がある。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本合意で定める譲渡額は確定額で、DDの結果によっても変わらない」は誤り。暫定的なもので、その後の調整で変動しうる。
  • 義務か・望ましいか譲渡額が暫定である点は、譲り渡し側・譲り受け側の双方に説明しておく「必要がある」とされる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.75

秘密情報には契約した事実や交渉の経緯も含まれる

M&Aの秘密保持では、相手から受け取った情報だけでなく、契約を結んだ事実や交渉の経緯・内容も「秘密情報」に含まれます。

くわしい解説を読む

中小M&Aガイドラインの契約書サンプル(仲介契約書・秘密保持契約書・基本合意書・株式譲渡契約書)は、秘密情報を共通して3つに分けて定義しています。(i)取引の検討・交渉に関連して相手方から開示を受けた情報、(ii)その契約を結んだ事実と、契約の存在・内容、(iii)取引の交渉の経緯・内容に関する事実です。M&Aを進めていることが取引先や従業員に意図せず伝わると、トラブルになり、M&Aが頓挫することもあります。そのため、契約や交渉があること自体も守る対象にしています。

覚えておく事実

  • 秘密情報は、相手方の事前の書面による承諾がなければ、第三者に開示してはならない。
  • 秘密情報は、その契約の目的以外の目的で使ってはならない。
  • 秘密保持契約書サンプルの有効期間は締結日から2年間で、満了までに解約の申出がなければ1年ずつ延長される。
  • 秘密保持契約書サンプルでは、秘密保持の義務は、別段の定めがない限り、契約の有効期間満了後も3年間続く。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点「契約を締結した事実」や「交渉の経緯・内容」も秘密情報に含まれる。相手から受け取った情報に限られない。
  • ひっかけに注意第三者への開示に必要なのは相手方の「事前の書面による承諾」。「口頭又は書面」は誤り。
  • ひっかけに注意秘密保持契約書サンプルで「秘密保持の義務は有効期間満了と同時に消滅する」は誤り。別段の定めがない限り満了後3年間存続する。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.3、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.9、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.10

アドバイザリー(仲介・FA)契約(法務)

練習問題 14問(初級 4・中級 6・上級 4) | この分野を演習する

出題範囲:アドバイザリー(仲介・FA)契約に関する法律知識

図解|アドバイザリー(仲介・FA)契約(法務)

仲介・FA契約の3つの縛りは、範囲と期間を限る

依頼者を縛る条項には一定の合理性があるが、範囲と期間を限定する必要がある。

専任条項直接交渉の制限テール条項
何を制限するか他のM&A専門業者への並行した依頼専門業者を介さない候補先との交渉・接触契約終了後のM&Aでも手数料が発生する
ねらい重複打診による候補先の心証悪化や情報拡散を防ぐ交渉の窓口を一本化し、交渉を円滑にする手数料を逃れるための契約終了に備える
対象の範囲可能な限り限定し、セカンド・オピニオンは許容すべき紹介を受けた候補先・M&A目的の交渉に限定すべき関与・接触し紹介した譲り受け側に限定すべき
期間の目安契約期間は最長でも6か月〜1年以内を目安とすべき仲介契約・FA契約が終了するまでに限定すべき最長でも2年〜3年以内を目安とすることが望ましい
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.103、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.104、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.105(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)委任・準委任自己契約・双方代理商人の報酬請求権(商法512条)責任(免責)条項善管注意義務仲介者の禁止行為(5類型)中途解約仲立人非弁行為報告義務

委任を受けた人は必要な費用を依頼者に請求できる

仕事を任された人(受任者)は、その仕事に必要な費用を支出したとき、依頼者に費用と支出日以後の利息の返還を請求できます。

くわしい解説を読む

仲介契約やFA契約は、M&Aの支援という仕事を任せる契約で、民法の委任の規定が基本になります。民法650条は、受任者が委任事務(任された仕事)を処理するのに必要と認められる費用を支出したとき、依頼者(委任者)にその費用と支出の日以後の利息の償還を請求できると定めています。必要な債務を負ったときは代わりに弁済するよう求めることができ、過失なく損害を受けたときは賠償を請求できます。一方、報酬は特約がなければ請求できません。M&A支援の実務では、実費の負担や、着手金・中間金・成功報酬との関係を契約で明確にしておくことが大切です。

覚えておく事実

  • 受任者が必要な債務を負担したときは、委任者に代わりに弁済するよう請求でき、弁済期前なら相当の担保を求められる(民法650条2項)。
  • 受任者が委任事務の処理のため自分に過失なく損害を受けたときは、委任者に賠償を請求できる(650条3項)。
  • 受任者は、特約がなければ委任者に報酬を請求できない(648条1項)。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点償還を請求できるのは「必要と認められる費用」と、その支出の日以後の利息(民法650条1項)。
  • 似た用語との違い費用の償還(650条)と報酬(648条)は別のルール。報酬は特約がなければ請求できない。

出典:民法

紛争解決の支援は非弁行為になりうると契約前に説明するしなければならない

仲介者・FAは、役務がクロージングまでならその後の支援は難しいこと、役務の範囲にかかわらず紛争解決の支援は非弁行為に当たりうることを、契約前に依頼者へ説明します。

くわしい解説を読む

中小M&Aガイドラインは、仲介契約・FA契約の締結前に、提供する業務の範囲を明確に説明するよう求めています。その一つがクロージング(取引の実行)後の支援です。契約上の役務がクロージングまでなら、その後の役務提供は難しい旨を説明する必要があります。さらに、役務の範囲にかかわらず、当事者間で生じた紛争の解決に向けた支援は、非弁行為(弁護士でない者が法律事務を扱うこと)に当たるおそれがある旨を説明しなければなりません。弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、法律事件に関して代理や和解などの法律事務を扱うことを業とするのを禁じているためです。その際、必要に応じて弁護士等の意見を求める必要がある旨を説明することが望ましいとされます。

覚えておく事実

  • 弁護士法72条は、弁護士・弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事件に関し鑑定・代理・和解等を扱い、またはその周旋をすることを業とするのを禁じる。
  • ガイドラインは、仲介者・FAの役務提供は基本的にはクロージング時点で終了しているとしている。
  • クロージング後に当事者間で紛争が生じた場合は、弁護士に支援を求めることを検討する必要がある。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか紛争解決の支援が非弁行為に当たりうる旨の説明は「しなければならない」。弁護士等の意見を求める必要がある旨の説明は「望ましい」。
  • ひっかけに注意「役務の範囲にクロージング後も含めれば、紛争解決の支援は非弁行為にならない」は誤り。役務の範囲にかかわらず該当しうる。
  • 数字を覚える非弁行為の根拠条文は弁護士法「72条」。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.87、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.50、弁護士法

非専任で選ばれなかった業者はテール条項で手数料を請求しないしなければならない

専任条項がない契約で、依頼者が成約支援を受ける業者を選んだ場合、選ばれなかった業者はテール条項を根拠に手数料を請求すべきでないとされています。

くわしい解説を読む

テール条項は、仲介契約・FA契約が終わった後の一定期間(テール期間)内に依頼者がM&Aをした場合にも、業者が手数料を受け取れるとする条項です。業者が成立直前まで貢献したのに、手数料を避けるために契約を終了されるケースを念頭に置いたもので、相当程度の貢献があれば一定の合理性が認められます。一方、専任条項(ほかの業者に依頼しない約束)がない場合、依頼者は複数の業者から支援を受け、同じ候補先を紹介されることがあります。依頼者がそれまでの支援の内容を踏まえて成約支援を受ける業者を選んだとき、選ばれなかった業者はテール条項を根拠に手数料を請求すべきではありません。この規律は中小M&Aガイドライン第3版で新設されました。

覚えておく事実

  • テール条項は、譲り渡し側の自由な経営判断を損なわない限度で活用されるべきとされる。
  • テール期間は、最長でも2〜3年以内を目安とすることが望ましいとされる。
  • テール条項の対象は、少なくともネームクリア(企業概要書を送り、譲り渡し側の名称を開示すること)が行われ、紹介された譲り受け側に限定すべき。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「選ばれなかった業者も、同じ候補先をネームクリアのうえ紹介していれば、テール条項で手数料を請求できる」は誤り。
  • よく問われる点この規律は専任条項が「ない」場合の話で、ガイドライン第3版で新設された。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.105、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.11

直接交渉の制限はM&A目的の交渉に限り、契約終了までとするしなければならない

依頼者が候補先と直接交渉することを禁じる条項は、M&Aに関する目的の交渉に限定し、有効期間は仲介契約・FA契約の終了までに限定すべきとされています。

くわしい解説を読む

仲介契約・FA契約には、依頼者が候補先と、業者を介さずに直接交渉・接触することを禁じる条項が置かれることがあります。交渉の窓口を一本化して交渉を円滑にする点では、一定の合理性があります。しかし、目的を限らず一律に交渉を禁じると、通常の事業の取引のための交渉まで禁じられ、依頼者の事業を妨げるおそれがあります。そのため、制限する交渉はM&Aに関する目的のものに限定すべきとされます。また、契約終了後も直接交渉を禁じると、依頼者が自らM&Aを実行しにくくなり、自由な経営判断を損なうおそれがあります。手数料を避けるために契約を終えて紹介先と直接M&Aをするケースはテール条項で手数料が発生し得るため、有効期間は契約終了までに限定すべきとされます。

覚えておく事実

  • 制限される候補先は、依頼者が明示的に了解した場合を除き、その業者が関与・接触し、紹介した候補先のみに限定すべき。
  • 直接交渉の制限に関する事項(制限される候補先や交渉目的の範囲等)は、契約前に依頼者へ説明すべき重要な事項の一つ。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い直接交渉の制限の有効期間は「契約終了まで」。テール期間(契約終了後、最長でも2〜3年以内が目安)と混同しない。
  • ひっかけに注意「手数料逃れを防ぐため、直接交渉の制限は契約終了後も2〜3年は有効とすべき」は誤り。
  • よく問われる点限定すべき3点は、①紹介した候補先、②M&Aに関する目的の交渉、③契約終了までの有効期間。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.5、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.104、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.87

仲介者は善管注意義務を負うが成果は保証しないしなければならない

仲介者は依頼者に対して善管注意義務を負いますが、M&Aの成立などの成果を保証したり請け負ったりするものではないとされています。

くわしい解説を読む

仲介契約書サンプルの第8条は、仲介者の責任の範囲を定めています。まず、仲介者の助言を採り入れるかどうか、各種の契約を結ぶかどうか、取引の手続は、依頼者が自分の判断で決め、契約も依頼者自らが結びます。仲介者は業務を行うにあたり、依頼者に対して善良な管理者の注意義務(善管注意義務:仕事を任された者が、その立場にふさわしい注意を払って業務を処理する義務)を負います。一方で、仲介者は一定の成果や効果の実現を保証したり請け負ったりするものではない、と定められています。

覚えておく事実

  • 仲介契約書サンプルでは、仲介者は、候補先から追加で手数料を取って便宜を図る行為など、5つの利益相反行為を行わないと定めている。
  • 仲介契約書サンプルでは、依頼者は、取引の実行前に限り、いつでも契約を解除できる。
  • 契約を解除した場合は、業務の実施の程度に応じて報酬・費用を清算する。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「仲介者はM&Aの成立を請け負い、不成立なら損害賠償責任を負う」は誤り。成果や効果の実現は保証しない。
  • ひっかけに注意「仲介者が依頼者に代わって助言の採否や契約締結を決める」は誤り。決めるのは依頼者自身。
  • よく問われる点仲介者は善管注意義務を「負う」。「契約に書かれた業務を形式的に処理すれば足りる」は誤り。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.6、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.7

アドバイザリー契約書は依頼者に合わせて作るしなければならない

支援機関との契約書は、プロセスごとの支援内容を整理して記載し、ひな形を機械的に使わず、ガイドラインの留意点を守って作成します。

くわしい解説を読む

アドバイザリー契約は、仲介者・FAと依頼者が結ぶ支援の契約です。知識・スキルマップは、契約書に契約形態、提供する支援、手数料、秘密保持義務などの重要事項を漏れなく明確に書くことを求めています。支援者の業務範囲をはっきりさせるため、M&Aの各プロセスごとに提供する支援の内容を整理し、契約書に反映する必要があります。また、依頼者の希望を反映するため、ひな形を踏まえつつも硬直的にそのまま使うのではなく、必要に応じて見直しを検討することが求められます。

覚えておく事実

  • 依頼者の利益を不当に制限しないよう、少なくとも専任条項・直接交渉の制限に関する条項・テール条項についてのガイドラインの留意点を守る。
  • 専任条項は、依頼者が並行して他の仲介者・FAにマッチング支援等を依頼することを禁止する条項である。
  • 直接交渉の制限に関する条項は、依頼者が、仲介者・FAから紹介された候補先と、仲介者・FAを通さずに接触することを制限する条項である。
  • 秘密保持義務は、依頼者が士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センター等から意見・助言を求められる内容とすることが求められる。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点ガイドラインの留意点を守る対象の3条項は「専任条項」「直接交渉の制限に関する条項」「テール条項」。
  • ひっかけに注意「契約書はひな形どおりに作り、依頼者の希望に応じて変える必要はない」は誤り。
  • ひっかけに注意依頼者が他の専門家にセカンド・オピニオンを求めることを禁じる秘密保持条項は不適切。相談できる内容にする。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.35、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.3

仲介契約には利益相反行為の禁止を義務として書くしなければならない

仲介者の場合、禁止される利益相反行為を、仲介者自身の義務として契約書に盛り込む必要があります。

くわしい解説を読む

仲介者は売り手と買い手の双方と契約するため、一方の利益を優先して他方の利益を害するおそれ(利益相反)があります。そこで知識・スキルマップは、仲介者が契約書を作るときは、禁止される利益相反行為を仲介者の義務として盛り込む必要があるとしています。中小M&Aガイドラインの仲介契約書サンプルでも、第8条第4項で、仲介者が行わない利益相反行為として5つの行為を挙げています。なお、FA契約の場合はこの項は不要とされています。

覚えておく事実

  • 仲介者は、候補先から追加で手数料を取り、依頼者のニーズに反したマッチングを優先するなど、候補先に便宜を図る行為をしない。
  • 仲介者は、リピーターとなる候補先を優遇し、不当に低い譲渡価額へ誘導するなど、候補先に便宜を図る行為をしない。
  • 仲介者は、依頼者の希望額より高く成立したとき、正規の手数料とは別に、差額の一定割合を報酬として求める行為をしない。
  • 仲介者は、伝えるよう頼まれた事項を伝えない・偽って伝える行為や、依頼者にだけ有利・不利な情報を隠す行為をしない。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い利益相反行為の禁止を契約書に盛り込む必要があるのは仲介者の場合。FA契約ではこの項は不要。
  • よく問われる点「依頼者の事前の了解を得た出張の費用を報酬とは別に請求する」は、禁止される利益相反行為に当たらない。
  • よく問われる点サンプルは譲り渡し側との契約が前提。譲り受け側との仲介契約では「低額」「高額」の部分の高低を逆にする。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.35、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.6、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.7

業務の実態に合った仲介契約・FA契約を結ぶしなければならない

仲介者・FAは、業務形態の実態に合致した契約(仲介契約・FA契約)を締結する必要があります。M&A支援機関登録制度の遵守事項9にも挙げられています。

くわしい解説を読む

仲介者は譲り渡し側・譲り受け側の両方と契約して双方に助言し、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は一方とだけ契約してその一方に助言します。仲介者は双方が依頼者となるため、構造的に利益相反のおそれが生じます。中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAがそれぞれ業務形態の実態に合致した契約を締結する必要があるとしています。また、契約締結後は、契約上の義務として、手続の各段階で依頼者の意向に沿った手続を実施する必要があります。依頼者はM&Aの知識が十分とはいえず、契約の内容も複雑なため、仲介とFAの違いを理解するのは容易ではありません。そのため、両者の違いと特徴は、契約前に説明すべき重要な事項の最初に挙げられています。

覚えておく事実

  • 遵守事項一覧チェックシートで、遵守事項9(実態に合致した契約の締結)は「仲介契約・FA契約の締結」の項目に属する。
  • 仲介者として両当事者から手数料を受け取る場合は、その旨も契約前に説明する。
  • 仲介者は、禁止される利益相反行為を行わない旨を、仲介者の義務として仲介契約書に定めなければならない。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「実態は双方から報酬を受ける仲介なのに、FA契約の形式で契約してもよい」は誤り。実態に合致した契約を結ぶ必要がある。
  • よく問われる点仲介契約書には、禁止される利益相反行為をしない旨を、仲介者の義務として盛り込む。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.183、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.85、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.86

意向表明/基本合意(法務)

練習問題 10問(初級 3・中級 5・上級 2) | この分野を演習する

出題範囲:意向表明に関する法律知識/基本合意に関する法律知識

図解|意向表明/基本合意(法務)

意向表明→基本合意→最終契約の順に拘束力が強まる

どの書面・条項に法的拘束力があるかを区分して押さえる。

  1. 最終契約法的拘束力を持つ。正式な譲渡価額も最終契約締結時に合意
  2. 基本合意の拘束条項独占的交渉権や秘密保持義務などは法的拘束力を認めるのが通常
  3. 基本合意の了解事項目的・承継対象・譲渡価額の目途などは拘束力なし(サンプル)
  4. 意向表明書譲り受け側が希望条件を示す書面。基本的に拘束力を持たないことが多い
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.21、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.12(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)意向表明書インサイダー取引規制外為法企業結合の事前届出基本合意書競争の実質的制限金融商品取引法錯誤・詐欺・強迫重要事実信義誠実の原則スクイーズアウト待機期間(禁止期間)対内直接投資等代表取締役独占禁止法独占交渉権表見代理

独占交渉権の付与と期間は当事者が決めるしなければならない

独占交渉権はDDに費用がかかる譲り受け側には必要なことが多い一方、他の候補先との交渉を制限するため、付与や期間は支援者の都合でなく当事者の意思で決めるべきです。

くわしい解説を読む

独占交渉権は、基本合意の有効期間中、譲り渡し側が他の相手とM&Aの交渉をしないことで、譲り受け側が得る権利です。譲り受け側はDD(買収前の詳しい調査)の費用を負担するため、基本的に独占交渉権を求めます。ただしDDの費用が低い場合やDDをしない場合は、この限りではありません。一方、独占交渉権を与えたり基本合意を結んだりすると、譲り渡し側は案件がまとまる見込みにかかわらず新たな相手を探しにくくなります。そこで、トップ面談などを通じ、意向表明書以外の面も考えて見込みを判断する必要があります。検討の要素には、意向表明書の内容、候補先の数、DDの負担、譲り渡し側の希望、スケジュールがあります。

覚えておく事実

  • 中小M&Aガイドラインは、時間的な余裕がない場合等を除き、DDの前に独占的交渉権を与える等の趣旨から、原則として基本合意を結ぶことが望ましいとする。
  • 複数の候補先がいる場合、基本合意の締結や独占交渉権の付与は、譲り渡し側の選択肢を狭めることにつながりうる。
  • スケジュールに余裕がない場合は、基本合意を結ばずにその後のプロセスを進めることもあり得る。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「独占交渉権の付与や期間は支援者が決める」は誤り。当事者の意思に基づき決定されるべきもの。
  • よく問われる点DDの実施コストが低い場合やDDを行わない場合は、独占交渉権が必要になるとは限らない。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.69、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.94

意向表明書は譲り受け側が作り支援は控えめにべき・求められる

意向表明書は譲り受け側が作るもので、支援者は過度に介入しないようにします。後のトラブルを防ぐため、法的拘束力がないことと、後の調査で変わりうることを明記します。

くわしい解説を読む

意向表明書は、譲り受け側が譲り受けの希望条件などを表明するために出す書面です。支援者は、プロセスレター(譲り渡し側が候補先に示す、進め方やスケジュールを書いた書面)で求められた形式があればそれに沿って、記載内容の検討や下書きを支援します。ただし作るのは譲り受け側で、依頼者の意思決定に不用意に関わらないためにも、支援者が過度に介入して内容を調整することは避けるべきとされます。また、後の段階で当事者間のトラブルが起きないよう、①法的拘束力がない書類であること、②後の調査・調整によって変更の可能性があること、を明記することが求められます。

覚えておく事実

  • 意向表明書は、譲り渡し側の紹介から一定期間(概ね2か月前後が目安)で提出されるのが通常で、プロセスレターがあれば期限が明記されている。
  • 意向表明書の主な記載事項は、候補者の概要、M&A後の経営戦略、想定するM&Aの手法、希望譲渡額と算定の前提、DDの項目、資金調達、クロージングの予定など。
  • 譲り受け側の経営会議に説明する資料が必要になった場合は、その作成を支援することが望ましいとされる。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える提出時期の目安は、譲り渡し側の紹介から「概ね2か月前後」。
  • よく問われる点明記するのは「法的拘束力がないこと」と「後の調査・調整で変更の可能性があること」の2点。
  • ひっかけに注意「支援者が意向表明書の内容を決めて譲り受け側に提出させる」は誤り。過度な介入は避けるべき。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.71

基本合意のスケジュールは目安で、法的拘束力をもたないべき・求められる

基本合意に向けた調整では、DDの日程や最終契約・クロージングの時期を当事者間で合意します。ただし、そのスケジュールは目安で、法的拘束力をもたないことを依頼者に伝える必要があります。

くわしい解説を読む

基本合意の段階では、DD(デュー・ディリジェンス:譲り受け側が行う詳しい調査)をいつ行うか、最終契約をいつ結び、クロージング(取引の実行)をいつにするかを決めておくと、その後の手続を進めやすくなります。知識・スキルマップは、スケジュール調整の際に、これらのタイミングを当事者間で合意することを求めています。一方で、スケジュールはあくまで目安で、状況によって変化しうるものです。そのため支援者は、スケジュールが法的拘束力(守らなければ法的な責任を問われる効力)をもたないことも、あわせて依頼者に伝える必要があります。依頼者がスケジュールを確定した約束と誤解しないようにするためです。

覚えておく事実

  • 合意内容にクロージング後の決済など後のトラブルにつながるリスクが含まれる場合は、その内容と結果を具体的に説明し、当事者の納得を得てまとめる必要がある。
  • 基本合意書の作成・アドバイスは非弁行為に当たる可能性があり、必要に応じて弁護士に確認することが求められる。
  • 相手方からの提案(オファー)や修正案(カウンター・オファー)は、すべて依頼者に開示する必要がある。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本合意で定めたスケジュールには法的拘束力があり、遅れると違約になる」は誤り。目安で、法的拘束力をもたない。
  • 義務か・望ましいか日程を当事者間で合意することは「求められる」、拘束力がないことを依頼者に伝えるのは「必要がある」とされる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.74

基本合意に盛り込む主な事項

基本合意は、交渉で概ね条件合意に達したときに結びます。スキーム、DD前の時点の譲渡対価の予定額、役員・従業員の処遇、スケジュールなど主要な合意事項を盛り込みます。

くわしい解説を読む

基本合意は、最終契約の前に、それまでの交渉で概ね合意した主要な条件を確認するために結ぶものです。中小M&Aガイドラインは、盛り込む事項として、最終契約におけるスキーム(株式譲渡や事業譲渡といった手法)、DD(デュー・ディリジェンス:譲り受け側による詳しい調査)前の時点における譲渡対価の予定額、経営者その他の役員・従業員の処遇、最終契約締結までのスケジュールと双方の実施事項や遵守事項、条件の最終調整方法などを挙げています。締結に当たっては、仲介者・FAや士業等専門家の助言を受けて調印することが大切です。なお、資金繰り等の関係でクロージングを急ぐ場合には、基本合意を結ばず、最低限の秘密保持契約だけで最終契約に直接進むケースもあります。

覚えておく事実

  • 基本合意書のサンプルは、中小M&Aガイドラインの参考資料7(3)「基本合意書サンプル」に掲載されている。
  • 基本合意書サンプルでは、譲渡価額は「目途」として記載され、正式な価額は最終契約締結時に双方の協議で合意した額とされる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本合意には、DD完了後に確定した最終的な譲渡対価を盛り込む」は誤り。盛り込むのはDD前の時点の譲渡対価の予定額。
  • よく問われる点基本合意は必ず結ぶものではない。クロージングを急ぐ場合は、秘密保持契約のみで最終契約に進むケースもある。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.47、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.12

基本合意書サンプルの譲渡価額は「目途」で、確定は最終契約時

基本合意書サンプルでは、譲渡価額は「金●●円を目途とする」と書かれ、正式な譲渡価額は最終契約締結時に双方の協議で合意した金額とされています。

くわしい解説を読む

中小M&Aガイドラインの参考資料7(3)は、株式譲渡を想定した基本合意書のサンプルです。第3条(譲渡価額)では、承継する株式の対価を「金●●円を目途とする」とし、ただし書で、正式な譲渡価額は最終契約締結時に甲(譲り渡し側の株主)と乙(譲り受け側)の協議により合意した金額とすると定めています。基本合意の後に、譲り受け側がDD(デュー・ディリジェンス:対象会社の詳しい調査)を行うためです。サンプル第4条は、乙が本合意締結の日から1か月間を目処にDDを行うことができ、甲はこれに協力すると定めています。なお第8条により、第3条を含む第1条〜第3条は法的拘束力を有しないとされています。

覚えておく事実

  • サンプル第4条のDDは、対象会社の一定時点の貸借対照表その他の事前開示資料の正確性・妥当性等を検証するために行う。
  • サンプルは「あくまでも例」で当事者の意向を制約するものではなく、必要に応じて弁護士等の専門家に相談することが望ましいとされる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本合意書で譲渡価額が確定する」は誤り。サンプルでは「目途」で、正式な価額は最終契約締結時に合意する。
  • 数字を覚えるサンプルのDDは、本合意締結の日から「1か月間」を目処に行うことができる。
  • よく問われる点サンプル第3条(譲渡価額)は、第8条により法的拘束力を有しない条項の一つ。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.12、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.14

基本合意書サンプルで法的拘束力がないのは第1条〜第3条だけ

基本合意書サンプル第8条は、目的・承継対象財産と個人保証解除・譲渡価額を定めた第1条〜第3条に法的拘束力がないとしています。独占的交渉権や秘密保持などは否定の対象外です。

くわしい解説を読む

基本合意書は「法的拘束力がない」と一言でまとめられがちですが、正確には条項ごとに違います。参考資料7(3)の基本合意書サンプル第8条は、第1条(目的)、第2条(承継対象財産及び個人保証解除)、第3条(譲渡価額)の定めは、本合意時点の甲乙間の了解事項を確認するためのもので、何らの法的拘束力も有しないと定めています。言い換えると、第4条(デュー・ディリジェンス)、第5条(独占的交渉権)、第6条(善良な管理者の注意義務)、第7条(秘密保持義務)などは拘束力が否定されておらず、拘束力を持つ形です。たとえば第5条では、譲り渡し側の株主は有効期間中、ほかの誰ともM&A取引の交渉をしてはならないとされています。

覚えておく事実

  • サンプル第9条により、基本合意は解除される場合や最終契約の履行が完了した場合を除き、定めた期日まで有効に存続する。
  • サンプル第6条により、譲り渡し側の株主は最終契約締結まで、譲り受け側の事前の同意なく、対象会社で重大な資産の譲渡や新たな借入れ等をしてはならない。
  • 知識・スキルマップは、基本合意書のうち法的拘束力を持つ条項と持たない条項を明確に区分できることを求めている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本合意書は全体として法的拘束力がない」は不正確。サンプルで拘束力を否定しているのは第1条〜第3条のみ。
  • ひっかけに注意「独占的交渉権と秘密保持の条項は法的拘束力を有しない」は誤り。第8条の否定の対象外。
  • 数字を覚えるサンプルの秘密保持義務は、別段の定めがない限り、本合意の有効期間満了後「3年間」存続する(第7条4項)。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.14、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.13、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.69

基本合意の締結と独占交渉権の付与は案件ごとに検討する

基本合意を結ぶか、独占交渉権を与えるかは、意向表明書の内容、候補先の数、譲り受け側のDD負担、譲り渡し側の希望、スケジュールを踏まえて案件ごとに検討します。

くわしい解説を読む

独占交渉権とは、一定期間、譲り渡し側がほかの候補先とM&Aの交渉をしないことで譲り受け側が得る権利です。基本合意に含まれる場合、秘密保持と並んで法的拘束力を認める合意内容とされます。知識・スキルマップは考慮要素として次の5つを挙げます。①意向表明書(譲り受け側が希望条件を示す書面)の内容、②譲り受け候補先の数(複数いる場合、基本合意や独占交渉権は譲り渡し側の選択肢を狭めうる)、③譲り受け側のDD負担(DDの費用を負担するため、基本的には独占交渉権を求める)、④譲り渡し側の希望(基本合意が今後のプロセスの安心材料にもなる)、⑤スケジュール(余裕がなければ基本合意を結ばずに進めることもある)。これらを踏まえ、案件ごとに検討することが求められます。

覚えておく事実

  • 独占交渉権の付与やその期間は、支援者側の都合ではなく、当事者の意思に基づき決定されるべきとされる。
  • 独占交渉権を与えたり基本合意を結んだりすると、譲り渡し側は案件の確度にかかわらず、新たなマッチング先を探しにくくなる。
  • 基本合意には、法的拘束力がない合意内容と、法的拘束力を認める合意内容(秘密保持、独占交渉権の付与等)が含まれる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「独占交渉権の付与やその期間は、支援者が自らの判断で決めるべき」は誤り。当事者の意思に基づき決める。
  • ひっかけに注意「基本合意は必ず締結しなければならない」は誤り。スケジュールに余裕がない場合は締結せずに進めることもある。
  • よく問われる点DDの実施コストが低い場合やDDを実施しない場合は、独占交渉権が必要になるとは限らない。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.69

意向表明書への応諾書で基本合意に代えることもある

基本合意は必ず結ぶものではなく、譲り受け側の意向表明書に譲り渡し側が応諾書を出すことで、基本合意とほぼ同様の合意を締結したものとして扱うこともあります。

くわしい解説を読む

意向表明書は、譲り受け側が譲り受けの際の希望条件などを示すために出す書面で、基本的には法的拘束力を持たないことが多いとされます。この意向表明書に対し、譲り渡し側が応じる旨の書面(応諾書)を出すことで、基本合意とほぼ同様の合意を締結したものとして扱うことがあります。中小M&Aガイドラインは、入札手続を行う場合などを例に挙げています。知識・スキルマップは、意向表明の内容が具体的で、譲り渡し側の希望する内容になっている場合には、基本合意の締結ではなく応諾書による合意の形式での対応も考えられるとしています。どちらの形式でも、条件を具体化させることが重要です。

覚えておく事実

  • 意向表明書には、DDに進む意向を示す第一次意向表明書と、DDの結果を踏まえて最終的な希望条件を示す第二次(最終)意向表明書がある。
  • 基本合意の内容はDDと最終契約の土台ともなりうるため、当事者の意向を踏まえて可能な限り具体的かつ明確に検討する必要がある。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い応諾書を出すのは「譲り渡し側」、意向表明書を出すのは「譲り受け側」。逆にした選択肢は誤り。
  • よく問われる点応諾書による合意が考えられるのは、意向表明の内容が具体的で、譲り渡し側の希望する内容になっている場合。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.69、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.95

法務DD

練習問題 12問(初級 4・中級 5・上級 3) | この分野を演習する

出題範囲:調査事項に関する法律知識

図解|法務DD

法務DDは6つの観点で法的リスクを調べる

株式譲渡では法的リスクをそのまま引き継ぎやすく、網羅的に調べることが多い。

法務DD
  • 株式・会社組織株主の履歴、株式発行の適法性、議事録や規程の整備・運用
  • 重要な契約COC条項で、M&A後に取引先が契約を破棄できないか
  • 資産・負債事業用資産を継続利用できるか、借入の財務制限条項など
  • 人事・労務未払残業代や労働紛争、就業規則・36協定の有無
  • 訴訟・紛争係属中の訴訟の潜在債務の見込みと事業継続への影響
  • 許認可・法令遵守許認可の更新状況、法令違反の有無と治癒できるか
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.126、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.114、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.115(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)許認可少数株主チェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)株券発行会社株式の共有と権利行使者株主名簿議事録契約上の地位の移転個人情報保護法個人データの第三者提供借地権就業規則商号続用者の責任所在不明株主賃貸借契約定款不動産登記法務DDほか4語

法務DDでは過去の会社法上の手続に欠陥がないかを確かめるべき・求められる

株式の譲渡承認、株券の交付、総会決議、利益相反取引の承認などに欠陥があると、株主の地位や過去の決議の効力が争われるおそれがあるため、法務DDで確認します。

くわしい解説を読む

法務DD(デュー・ディリジェンス:譲り受け側が行う法務面の調査)では、対象会社がこれまで会社法の手続をきちんと踏んできたかを確かめます。手続に欠陥(瑕疵)があると、今の株主が本当に株主なのか、過去の役員選任や決議が有効なのかが争われるおそれがあるからです。主な確認点は、①譲渡制限株式の譲渡承認と株主名簿の記載、②株券発行会社であれば株券の交付、③株主総会の招集手続と決議要件、④取締役の利益相反取引の承認、⑤変更登記が期限内にされているか、です。資料には定款、登記簿、株主名簿、議事録を使います。中小企業では過去の株式移動の承認議事録がないことも多く、追認の決議など欠陥を直す手当てを最終契約の前提条件などに組み込みます。

覚えておく事実

  • 株主総会の招集通知は原則として総会の2週間前までに発する。非公開会社は原則1週間前まで(会社法299条1項)。
  • 登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店所在地で変更の登記をしなければならない(915条1項)。
  • 譲渡制限株式の取得者は、譲渡承認を受けていなければ原則として名義書換を請求できない(134条)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える役員変更などの変更登記は、変更が生じてから「2週間以内」に本店所在地で行う(会社法915条1項)。
  • よく問われる点承認議事録がないなどの欠陥は、追認決議などで直すことを最終契約の前提条件やクロージング後の約束事項にする。

出典:会社法、会社法、会社法

株券発行会社は株券の実在を早めに確かめるしなければならない

定款で株券を発行すると定めた会社なのに株券が実際には発行されていない場合、対応しないとM&Aが成立しません。調査の早い段階で株券の実在を確認します。

くわしい解説を読む

株券発行会社とは、定款(会社の基本ルール)で株券を発行すると定めている株式会社です。株券発行会社であっても、実際には株券が発行されていない、株主が持っていない、といった可能性があります。そこで法務DDの株主に関する調査では、①定款上、株券発行会社かどうか、②株券発行会社なら、実際に株券を発行しているか、③発行しているなら、その株券が存在するか、を確認します。株券発行会社なのに株券が発行されていないことがわかった場合、対応しなければM&Aを成立させることができません。そのため、株券の引渡しのやり直しや、株券を発行しない会社(株券不発行会社)への移行などで対応します。

覚えておく事実

  • 株主名簿がない、又は内容に誤りがあると、会社法に基づく過料のほか、法律上の正確な株主がわからないという問題が生じうる。
  • 株主名簿に加え、株券裏面の株主名、取締役会の議事録、税務申告書の別表など、株主の異動履歴の証拠を確認することが求められる。
  • 特例有限会社は特別決議に総株主の半数以上かつ議決権の4分の3以上の賛成が要るため、少数株主からの株式取得(スクイーズ・アウト)や定款変更が困難又は不可となることがある。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点確認の順序は「定款上の株券発行会社か」→「実際に発行しているか」→「その株券が存在するか」。
  • よく問われる点対応策は「引渡しのやり直し」や「株券不発行会社への移行」。対応しないとM&Aの成立が不可能になる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.115

COC条項は取引が続くかを左右するしなければならない

COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)があると、M&A成立後に取引先が契約を破棄できるようになります。同意取得の要否や売上への影響を確認し、双方と協議して対応を決めます。

くわしい解説を読む

COC条項とは、株主の異動や支配権の変動があると、契約の相手方に解除権などが生じると定める条項です。M&Aで株主が変わると、この条項を根拠に取引先が契約をやめられるため、法務DDの契約調査で特に重要とされます。COC条項があれば、取引先から同意を得る必要があるか、売上への影響がどれほど大きいかを確認し、譲り渡し側・譲り受け側と協議して対応を検討します。取引先の特性によって同意を得る手続が変わることもあり、たとえば相手が上場企業だと契約管理が特に厳格な可能性があります。また、明示的なCOC条項がなくても、短い期間で更新する条項がある契約は、実質的にCOC条項のように働く可能性があります。

覚えておく事実

  • COC条項が一般的なひな形と異なる規定になっている場合は、そうした規定になった背景事情を把握することが重要とされる。
  • 事業用資産の賃貸借契約やリース契約でも、COC条項など継続利用の妨げになる条項がないか確認する。
  • 明示的な契約がなく口頭の合意などで取引している取引先がいる可能性もあるため、Q&Aやインタビューで確認する。
  • 売上が特定の取引先に集中している場合は、COC条項の有無などをトップ面談時や基本合意時に確認することが求められる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「明示的なCOC条項がなければ取引継続のリスクはない」は誤り。短期の更新条項が実質的にCOC条項のように機能しうる。
  • よく問われる点COC条項があれば、取引先の同意取得の要否と売上への影響の大きさを確認し、双方と協議して対応を決める。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.118、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.120、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.61

コンプライアンス違反は治せるかを見極めるしなければならない

法令違反が見つかったら、治癒(是正)できるかを見極めます。クロージング前に治せない違反は子会社化できないリスクがあるため、マッチング前に把握して譲り受け側に説明しておく必要があります。

くわしい解説を読む

法務DDのコンプライアンス調査では、関連する法令をきちんと守っているか、法令違反(監督官庁からの指導など)があるか、その内容は何かを確認します。規程類の確認やQ&A・インタビューに加え、コンプライアンスの担当部署や会議体があればその資料・議事録も見て、体制が実際に機能しているかまで把握します。違反が判明したら、治癒(違反状態を解消すること)が可能かを見極め、重要度に応じた対応を早く検討します。クロージング前に治せない性質の違反だと、譲り受け側は連帯責任やブランド力の低下を避けるため子会社にできないリスクがあります。そのため、マッチングの前にできる限り把握し、譲り受け側に説明しておく必要があります。

覚えておく事実

  • 特に重大な違反の例は、個人情報の私的利用(個人情報保護法違反)、偽装、給付金等の不正受給、談合などである。
  • 治癒が不可能な場合は、スキームの変更やディール自体の中止などの選択肢を、早期に依頼者と協議することが求められる。
  • 譲り受け側が上場を目指している場合、上場審査でグループの法規制対応が確認されるため、譲り渡し側の規程の運用や法令遵守も確認する。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点特に重大な違反の例は「個人情報の私的利用」「偽装」「給付金等の不正受給」「談合」。
  • ひっかけに注意「治せない違反はDDで判明してから説明すればよい」は誤り。マッチング前に可能な限り把握し、譲り受け側に説明しておく。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.123

訴訟・紛争はクレームまで調べ見通しは語らないしなければならない

法務DDでは、係属中・過去の訴訟や紛争に加え、訴訟に至らないクレームまで調べます。ただし個別の訴訟の見通しや処理方針について見解を述べることは、非弁行為に当たる可能性が高いとされています。

くわしい解説を読む

係属中とは、訴訟などの手続が続いている状態をいいます。調べる観点は、①係属中の訴訟・紛争で、まだ表に出ていない債務(潜在債務)が現実になる見込みと、そうなったときの影響、②事業の継続への影響(評判が落ちるレピュテーションリスクなど)、③過去の訴訟・紛争、④訴訟・紛争に至っていないクレーム、などです。進行中の訴訟は一方的に取り下げることができないため、スケジュールやM&Aができるかどうかそのものに影響する可能性があります。また、潜在的な紛争がクロージング直前になって訴訟になることもあるため、早めに把握することが求められます。

覚えておく事実

  • クロージングまでに訴訟の解決の目途がつかない場合、一定期間内の解決を条件に対価の一部を後払いにする方法や、価格調整条項を設ける方法が考えられる。
  • ただし後払いや価格調整条項は、追加対価の設定が曖昧になったり不履行につながったりして、深刻なトラブルになるリスクがある。
  • 支援者には、民事訴訟法の基本的な知識と、執行・保全の知識が求められる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「支援者が個別の訴訟の見通しや処理方針について意見を述べる」は誤り。非弁行為の可能性が高く、弁護士等に相談する。
  • ひっかけに注意「訴訟に至っていないクレームは調査対象外」は誤り。クレームも調査の観点に含まれる。
  • よく問われる点進行中の訴訟は一方的に取り下げられないため、スケジュールやM&Aの可否そのものに影響しうる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.124

売上が集中する取引先はCOC条項の有無を早めに確認するべき・求められる

譲り受け側は事業の継続に必要な取引先を把握し、売上が特定の取引先に集中していれば、COC条項の有無などのリスクをトップ面談時や基本合意締結時に確認することが求められます。

くわしい解説を読む

COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)は、株主の異動など会社の支配権が変わったときに、契約の相手方が契約を解除できるなどと定める条項です。M&Aの成立後に取引先が契約を破棄できることになるため、法務の面で重要です。売上の多くを特定の取引先に頼っている会社では、その取引先との契約が続くかどうかが事業の継続に直結します。そこで知識・スキルマップは、譲り受け側が企業概要書(IM:譲り渡し側の事業や財務の情報をまとめた資料)を分析する段階で事業継続に必要な取引先を把握し、売上の集中がわかった場合には、COC条項の有無などをトップ面談時や基本合意締結時に譲り渡し側へ確認することを求めています。

覚えておく事実

  • 法務DDでは、COC条項がある場合、取引先からの同意取得の要否や売上への影響の大きさを確認し、対応を協議することが求められる。
  • 明示的なCOC条項がなくても、契約に短期での更新条項があれば、実質的にCOC条項のように機能する可能性がある。
  • IMの内容に不明点や疑義があれば、譲り渡し側に問い合わせるほか、DDで調査すべき事項として整理することが重要。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点売上が集中する取引先のCOC条項の確認時期は「トップ面談時や基本合意締結時」とされる。
  • ひっかけに注意「株式譲渡では対象会社が契約当事者のまま変わらないので、COC条項の確認は不要」は誤り。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.61、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.118

株主名簿の不備は過料と株主の特定の問題を生むべき・求められる

株主名簿がない、または内容に不備があると、会社法に基づく過料のほか、法律上の正確な株主がわからない問題が生じ、クロージングに影響します。名簿以外の証拠でも株主の異動を確かめます。

くわしい解説を読む

株式譲渡では、譲り渡す人が本当に株主かを確かめることが出発点です。会社法121条・125条は、株式会社に株主名簿の作成と本店への備置きを義務づけています。しかし中小企業では、株主名簿がそもそも存在しなかったり、内容に瑕疵(誤りや抜け)があったりします。知識・スキルマップによると、その場合は会社法に基づき過料(お金を納めさせる制裁)が課されるほか、法律上の正確な株主が把握できず、クロージング(取引の実行)などに影響します。そこで法務DD(譲り受け側が行う法務面の調査)では、株主名簿に加え、株券の裏面の株主名、取締役会の議事録、税務申告書の別表などで、株主の異動の履歴を確認することが求められます。

覚えておく事実

  • 株主名簿には、株主の氏名・住所、持株数、株式を取得した日、株券発行会社なら株券の番号を記載する(会社法121条)。
  • 株主名簿に載っていない株主がいるなど、必要な情報が文書にない可能性もあるため、ヒアリング等で確認する必要がある。
  • 株券発行会社では、定款上の扱い、実際の株券発行の有無、株券の存在を、調査の早い段階で確認することが求められる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意株主名簿の不備に対する会社法上の制裁は「過料」。「罰金」とする選択肢は誤り。
  • よく問われる点株主の異動履歴の証憑は、株主名簿のほか、株券裏面の株主名、取締役会議事録、税務申告書別表などで確認する。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.115、会社法

法務DDでは事業を制限する条項と義務を課す条項を確かめるべき・求められる

法務DDの契約調査では、競業避止条項や専用実施権の設定など事業を制限しうる条項と、最低仕入数量や債務保証、違約罰など一定の義務を課す条項を確認します。

くわしい解説を読む

M&Aの後に事業を続けるうえで、対象会社が結んでいる契約が足かせになることがあります。知識・スキルマップは、法務DDの契約調査で確認すべきものとして2種類を挙げます。1つ目は事業を制限しうる条項で、競業避止条項(特定の者の営業と競争する性質の事業を営むことを制限する条項)、定款、特許権の取扱いなどです。特許権者は専用実施権(特許を独占的に利用する地位)を他人に設定できますが、設定すると権利者自身も権利行使の制限を受けます。2つ目は一定の義務を課す条項で、最低仕入数量を定める条項、リベート・キックバック(取引代金の一部の払戻し)の設定、債務保証、違約罰の設定などです。

覚えておく事実

  • 競業避止条項の確認は、過去に譲り渡し側がほかのM&Aを行ったことがある場合に特に重要となる。
  • 譲り渡し側が特許権者であっても、他人に専用実施権を付与していないかを確認する。
  • 違約罰とは、債務不履行の制裁として、違約金の請求に加えて、実際に生じた損害の賠償請求もできるもの。
  • 債務保証とは、主たる債務者が債務を履行しない場合に、保証人が債権者に対して債務を保証するもの。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「特許権者は専用実施権を設定しても、自ら特許権を自由に行使できる」は誤り。権利者自身も権利行使の制限を受ける。
  • 似た用語との違い違約罰は、違約金に加えて実際の損害の賠償も請求できる。違約金の請求しかできないとする選択肢は誤り。
  • よく問われる点契約調査ではCOC条項も確認する。明示がなくても、短期の更新条項は実質的にCOC条項のように機能しうる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.118

最終契約(法務)

練習問題 20問(初級 6・中級 9・上級 5) | この分野を演習する

出題範囲:最終契約に関する法律知識/表明保証に関する法律知識

図解|最終契約(法務)

最終契約の条項は、実行の条件と違反時の救済を決める

最終契約は法的拘束力を持つため、双方が弁護士の助言を得ながら調整することが望ましい。

最終契約
  • 前提条件満たされないと、相手方は代金支払など自己の義務を拒める
  • 表明保証一定の事実が締結日とクロージング日に真実・正確だと保証
  • クロージング前の義務通常の事業活動の範囲で運営し、違反のおそれは直ちに通知
  • クロージング後の義務競業避止、引継ぎへの協力、経営者保証の解除、雇用継続など
  • 補償表明保証違反等による損害を、上限・下限・期間を定めて補償
  • 解除催告しても是正されない違反があれば、クロージング前に限り解除
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.49、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.136、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.140(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)アンチ・サンドバッギング条項競業避止義務知る限り・知り得る限り特別補償プロ・サンドバッギング条項補償期間補償の上限・下限MAC条項解除(解約)買戻し条項完全合意条項契約上の地位の移転契約不適合責任債権譲渡譲渡会社の競業禁止税務申告等の適正(表明保証)誓約事項損害賠償(債務不履行)ほか6語

プロ・サンドバッギング条項は譲り渡し側に重い条項べき・求められる

譲り受け側が表明保証違反を知っていても、譲り渡し側の責任は変わらないとする条項です。意味を理解しないまま受け入れると、後で紛争になりやすい条項です。

くわしい解説を読む

表明保証とは、最終契約で譲り渡し側が「未払いの残業代はない」などの事実が真実で正確だと約束することで、事実と違えば補償の責任を負います。プロ・サンドバッギング条項は、譲り受け側が違反を知り、または知り得た場合でも、その責任に影響しないとする条項で、譲り受け側は設けたがることが多いとされます。この条項があると、譲り渡し側がDD(譲り受け側による調査)に協力してリスクを開示し、譲り受け側が承知していた場合でも、リスクが現実になれば譲り渡し側は責任を免れません。(例:必要な許認可がなく行政処分を受けた、未払い残業代を請求された)そのため譲り渡し側は、削除や修文を求めることを検討する必要があります。

覚えておく事実

  • 譲り受け側が特に認識したリスクは、通常の補償とは別に「特別補償」として定めることもありうる。
  • 中小M&AではDDの期間が限られ、開示される客観的資料も不十分なことが少なくないため、この条項そのものに合理性がないわけではないとされる。
  • 口頭のやり取りでは、譲り渡し側は伝えたつもりでも譲り受け側に正確に伝わらないことがあり、「認識し得た」と言えるかが問題になる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「中小M&Aでは合理性を欠き無効」は誤り。プロ・サンドバッギング条項そのものに合理性がないわけではないとされる。
  • ひっかけに注意「DDで開示したリスクが現実化すれば譲り渡し側は免責される」は誤り。この条項があると免責されない。
  • よく問われる点譲り渡し側は削除・修文を検討し、特に認識されたリスクは特別補償として別に定めることもありうる。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.24、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.25

最終契約の特約は民法の規定より優先するが限界もある

契約不適合責任や損害賠償など民法の規定の多くは、契約で変更できます。ただし、知りながら告げなかった事実の免責や、公序良俗に反する条項は認められません。

くわしい解説を読む

民法には、売った物が契約の内容に合わないときの売主の責任(契約不適合責任)や、損害賠償、契約の解除についての規定があります。これらの多くは、当事者が契約で別の定めをすればそちらが優先する規定(任意規定)です。M&Aの最終契約で定める表明保証・補償・解除の制限などは、民法のルールを当事者の合意で修正する特約にあたります。(例:補償の範囲・上限・請求期間を定め、民法の損害賠償の範囲とは異なるルールにする)ただし限界があります。売主が責任を負わない特約をしても、知りながら告げなかった事実については責任を免れません(民法572条)。また、公の秩序や善良な風俗に反する法律行為は無効です(90条)。

覚えておく事実

  • 引き渡した物が種類・品質・数量で契約の内容に合わないとき、買主は修補などの追完、代金の減額、損害賠償、解除を求めうる(民法562条〜564条)。
  • 当事者は債務不履行の損害賠償額をあらかじめ決めておくことができ、違約金は賠償額の予定と推定される(420条1項・3項)。
  • 民法の損害賠償は通常生ずべき損害が対象で、特別の事情による損害は当事者が予見すべきであった場合に限られる(416条)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「責任を負わない特約があれば、売主は知りながら告げなかった事実も免責される」は誤り(民法572条)。
  • よく問われる点株式譲渡契約の補償条項は、民法の損害賠償の範囲(416条)と異なる範囲・上限・期間を定める特約である。

出典:民法、民法、民法

株式譲渡契約を解除できるのは原則クロージング前まで

株式譲渡契約のサンプルでは、相手の表明保証や義務の違反を催告しても直らない場合、クロージング前に限り契約を解除できるとしています。

くわしい解説を読む

クロージングとは、株式の引渡しと代金の支払を実際に行う工程です。クロージング後に契約を解除すると、株式や代金を元に戻す必要が生じます。中小M&Aガイドラインの参考資料である株式譲渡契約書サンプルでは、解除できる時期を原則としてクロージング前に限っています。一般的な違反では、相手方に相当の期間を定めて是正を求め(催告)、その期間内に直らないときに解除できます。例外として、反社会的勢力との関係がないという表明保証に違反した場合は、書面で通知するだけで解除できます。また、解除した後も、違反による損害の補償は請求できます。

覚えておく事実

  • 経営者保証(経営者が会社の借入れを個人で保証すること)が外れないなどの事由があれば、譲り渡し側はクロージング日から1年を経過するまで、解除か株式の買戻しができる(特則)。
  • 特則の事由の一つは、クロージング日から3か月を経過しても経営者保証等が解除されないこと。
  • 特則の事由の一つは、クロージング日から14日以内に、譲り受け側が金融機関等に経営者保証等の解除について具体的な相談を始めないこと。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い通常の解除はクロージング前に限られ催告も必要。経営者保証の解除特則はクロージング後1年まで解除・買戻しを認める。
  • 数字を覚える経営者保証の特則は「3か月」「14日以内」「1年」。数字を入れ替えた選択肢に注意。
  • ひっかけに注意「契約を解除すると補償の請求もできなくなる」は誤り。解除後も補償の請求は妨げられない。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.22

補償条項では上限・下限・請求期間を定める

株式譲渡契約のサンプルでは、表明保証違反の補償について、総額の上限、少額の損害を除く下限、請求できる期間の3つの制限を定めています。

くわしい解説を読む

補償条項は、譲り渡し側の表明保証違反や義務違反で譲り受け側が損害を受けたとき、その損害等を譲り渡し側が埋め合わせる約束です。責任が無制限だと譲り渡し側の負担が重すぎるため、株式譲渡契約書サンプルは表明保証違反の補償に3つの制限を置いています。①上限:補償総額は譲渡価額の一定割合(●%)まで。上限を高くするなら相応の理由が求められ、100%に近い上限は妥当性を慎重に吟味する必要があります。②下限:一つの原因による損害が一定額を超えるものの合計が一定額を超えた場合にだけ補償します。③期間:クロージング日から一定の月数以内に書面で請求した場合に限ります。

覚えておく事実

  • 請求期間の一つの考え方として、クロージング日から数えて1〜n回目の決算日+1か月程度を目安とすることが示されている。
  • 譲り受け側が損害の拡大を防ぐ措置を取らなかったために拡大した損害は、譲り渡し側は条理上合理的な範囲で補償を免れる。
  • サンプルは、商法526条(商人間の売買で買主に受領後の検査と不適合の通知を求める規定)を適用しないと定めている。
  • 事業譲渡契約のサンプルでは、上限を「合計損害額●●円」、請求期限を「クロージング日から●年」と定めている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「上限は譲渡価額の100%近くが通常で、特段の理由は要らない」は誤り。高い上限には相応の理由が求められる。
  • よく問われる点補償の対象となる損害等には、合理的な弁護士費用が含まれる。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.24、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.42、商法

アンチ・サンドバッギング条項は譲り渡し側の免責を認める

譲り受け側が契約時やDDで知っていた、または知り得た事実は、表明保証違反にならないとする条項です。譲り渡し側に有利な条項です。

くわしい解説を読む

表明保証に違反があっても、譲り受け側がその事実を事前に知っていた場合にまで責任を追及できるのかという問題があります。アンチ・サンドバッギング条項は、DDの結果などを踏まえた譲り受け側の主観(認識)に応じて、譲り渡し側の免責を認める条項です。株式譲渡契約書サンプル本体には定めがなく、設けられる場合もあるとして注記で規定例が紹介されています。規定例では、①譲り受け側が契約締結時点で認識し、または認識し得た事実、②譲り受け側がDD(デュー・ディリジェンス:譲り受け側による調査)で譲り渡し側や対象会社から提供を受けた情報に含まれる事実は、表明保証違反にならないとしています。

覚えておく事実

  • 反対に、譲り受け側の認識にかかわらず譲り渡し側の免責を認めない条項を、プロ・サンドバッギング条項という。
  • 規定例の対象には「認識し得た事実」も含まれ、実際に知っていた事実に限られない。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いアンチ=免責を認める(譲り渡し側に有利)、プロ=免責を認めない(譲り受け側に有利)。取り違えに注意。
  • ひっかけに注意「譲り受け側が違反を知り又は知り得ても責任に影響しない」はプロ・サンドバッギング条項の説明で、アンチではない。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.24、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.25

最終契約の一般条項(費用負担・完全合意・残存効など)

株式譲渡契約のサンプルには、公表日、費用の各自負担、通知、残存効、完全合意、地位の譲渡禁止、可分性などの一般条項が置かれています。

くわしい解説を読む

一般条項は、取引の中身に関係なく契約に置かれる基本ルールです。株式譲渡契約書サンプルでは、公表日の条項で契約を外部に公表する日を決め、それまでは秘密保持に努めます。費用の条項では、税金などの公租公課やアドバイザーへの費用・報酬は原則として各自が負担します。残存効の条項は、契約が終わっても補償の章と一般条項の章(公表日を除く)は効力が続くとするものです。完全合意の条項は、この契約が当事者の完全な合意であり、それ以前の取決めは文書・口頭を問わず全て失効するとするものです。このほか、相手の書面による事前承諾なく契約上の地位を譲渡できない条項や、一部の条項が無効でも他の条項は影響を受けない可分性の条項があります。

覚えておく事実

  • サンプルの完全合意条項では、株式譲渡について以前に交わした取決めは、秘密保持に関する契約も含め全て失効する。
  • 所定の住所に通知すれば、通知が遅れたり届かなかったりしても、通常到達すべき日に到達したものとみなされる。
  • 準拠法は日本法とし、紛争は特定の地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする定めが置かれている。
  • 契約に定めのない事項や疑義は、信義誠実の原則に従い誠実に協議して解決する。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意サンプルの完全合意条項では、事前に結んだ秘密保持契約(NDA)も失効する。「NDAは引き続き有効」とする選択肢は誤り。
  • よく問われる点アドバイザーへの費用・報酬は、原則として各当事者が自分で負担する。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.28、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.29

「知る限り」より「知り得る限り」の方が保証の範囲が広い

表明保証に「知る限り」と付けると現に知っていることだけ、「知り得る限り」と付けると知ることができたことまで含むため、後者の方が範囲が広くなります。

くわしい解説を読む

表明保証では、譲り渡し側が「過去●年間、法令に違反したことはない」などと約束します。しかし会社のすべてを把握するのは難しいため、「甲の知る限り」のように主観による限定を加えることがあります。「知る限り」は、現に認識していることを指します。「知り得る限り」は、現に認識していなくても、認識できたであろう場合を含みます。そのため「知り得る限り」の方が広い概念で、保証の範囲は広がります。譲り渡し側にとっては「知る限り」の方が保証する範囲が狭くなります。誰の主観を対象に、どのような場合にどの程度の限定を加えるかは、個別の事案によって異なります。

覚えておく事実

  • 株式譲渡契約書サンプルでは、法令遵守の表明保証に【甲の知る限り/知りうる限り】という選択式の限定が置かれている。
  • サンプルでは、反社会的勢力との関係がないことの表明保証のうち、従業員についての部分が「甲の知る限り」と限定されている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意広い・狭いの逆転に注意。「『知る限り』の方が『知り得る限り』より広い」は誤り。
  • よく問われる点「知り得る限り」は、現に認識していなくても認識できたであろう場合を含む。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.33、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.34

対象会社について表明保証する主な事項の例

株式譲渡契約のサンプルは、資産、知的財産権、負債、重要な契約、競業避止、労働関係、税務申告、情報開示なども表明保証の対象になりうると示しています。

くわしい解説を読む

表明保証は、譲り渡し側が対象会社の状態について「この内容は真実で正確です」と約束するものです。株式譲渡契約書サンプルは、本文の例のほかに、注記で次のような事項を挙げています。資産では、事業に使う資産について対抗要件(第三者に権利を主張するための要件)を備えた権利を持ち、他人の債務の担保になっていないこと。知的財産権では、必要な権利を持ち、他人の権利を侵害していないこと。負債では、第三者の債務の保証などをしておらず、計算書類に載っていない債務がないこと。このほか、重要な契約が有効であること、事業に重大な影響を与える競業避止義務を負っていないこと、労働関係、税務申告、開示した情報の正確性も挙げられています。

覚えておく事実

  • 税務申告等の適正では、過去7年間、法人税などの税金や社会保険料を適法・適正に申告し、適時に納めていることを保証する例が示されている。
  • 労働関係では、法令上支払義務のある全ての賃金を従業員に支払っていることを保証する。
  • 重要な契約では、今回の契約の締結・履行が、相手方との契約の解除事由や債務不履行にならないことを保証する。
  • 事実と異なる点があれば、譲り渡し側は表明保証の対象から除く事項を契約書に明記する必要がある。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える税務申告等の適正の表明保証の対象期間は、サンプルの例では「過去7年間」。
  • ひっかけに注意「情報開示の保証は書面で開示した情報に限る」は誤り。書面か口頭かを問わず、重要な点で真実かつ正確であることを保証する。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.34、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.35、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.36

クロージング(法務)

練習問題 8問(初級 2・中級 4・上級 2) | この分野を演習する

出題範囲:クロージングに関する法律知識

図解|クロージング(法務)

株式譲渡のクロージングは、承認→決済→名義書換で進む

譲渡対価が確実に入金されたことを確かめ、株券・書類と引換えに株式を移す。

  1. 最終契約の調印クロージング日より前に最終契約書に調印する
  2. 譲渡承認株主の請求を受け、取締役会(非設置会社は株主総会)が承認
  3. プレクロージング前日までに書類と当日の手順を関係者で一通り確認する
  4. 株券交付と決済株券発行会社は株券を交付。代金の確実な入金を確認する
  5. 名義書換・授受株主名簿を書き換え、会社実印や金庫の鍵などを授受する
  6. 役員変更臨時株主総会・代表取締役の選任を経て、2週間以内に変更登記
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.156、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.164、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.56(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)株券発行会社株主名簿株主リスト官報公告議事録債権者保護手続債権譲渡商業登記譲渡承認待機期間(禁止期間)対抗要件取締役会設置会社不動産登記プレクロージング変更登記名義書換

M&Aの手法ごとにクロージングで必要な法的手続

株式譲渡、事業譲渡、合併・会社分割では、クロージングで必要な手続が違います。手法ごとの手続を取り違えないことが大切です。

くわしい解説を読む

クロージング(取引の実行)で必要な手続は、M&Aの手法(スキーム)によって変わります。株式譲渡では、譲渡制限株式の譲渡承認、株券発行会社なら株券の交付、株主名簿の名義書換が中心です。事業譲渡では、資産や契約を一つずつ移すため、株主総会の特別決議に加え、不動産は登記、動産は引渡し、債権は債務者への通知などで対抗要件(第三者に権利を主張するための要件)を備え、契約の相手方や従業員の承諾も個別に得ます。合併・会社分割では、株主総会の承認、債権者が異議を述べる機会を与える債権者保護手続、登記が必要です(吸収合併・吸収分割では効力が生じた日から2週間以内)。会社分割では、労働契約承継法に基づき従業員の雇用条件を保護する手続も必要です。

覚えておく事実

  • 事業譲渡で契約上の地位を移すには、契約の相手方の承諾が必要(民法539条の2)。
  • 使用者は、労働者の承諾を得なければ、雇用契約上の権利を第三者に譲り渡すことができない(民法625条1項)。
  • 債権者保護手続では、官報に公告し、知れている債権者には個別に催告する。異議を述べる期間は1か月以上(会社法789条2項)。
  • 期間内に異議を述べなかった債権者は、合併等を承認したものとみなされる(789条4項)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「事業譲渡でも官報公告と催告をすれば、債務の移転に個別の債権者の同意は不要」は誤り。債権者保護手続は合併・会社分割の手続。
  • ひっかけに注意「株式譲渡でも従業員一人ひとりから承継の承諾を得る必要がある」は誤り。労働者の承諾(民法625条)は事業譲渡で問題になる。
  • 数字を覚える吸収合併・吸収分割の登記は、効力が生じた日から「2週間以内」に本店所在地で行う(会社法921条・923条)。

出典:会社法、会社法、会社法

株券不発行会社では株主名簿の記載を書面で証明してもらう

株券不発行会社の株主は、自分についての株主名簿の記載内容を書いた書面の交付を会社に請求できます。株券の代わりに株主であることを確かめる資料になります。

くわしい解説を読む

株券発行会社では、株券そのものが株主であることを示します。株券を発行しない会社(株券不発行会社)では株券がないため、株主は会社に対し、自分について株主名簿に記載されている事項(氏名・住所、株式数、取得日など)を記載した書面の交付、または電子データの提供を請求できます。書面には代表取締役が署名または記名押印します。株券不発行会社の株式譲渡のクロージングでは、名義書換をした後にこの書面を受け取り、譲り受け側が株主名簿に記載されたことを確認するのが一般的です。株券発行会社にはこの規定は適用されません。

覚えておく事実

  • 電子データ(電磁的記録)で提供する場合は、代表取締役が署名・記名押印に代わる措置をとる(会社法122条3項)。
  • 指名委員会等設置会社では、書面に署名・記名押印するのは代表執行役である(122条2項)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いこの書面の交付請求は株券不発行会社の制度。株券発行会社には適用されず、株券を交付して譲渡する(会社法122条4項・128条)。
  • よく問われる点書面には代表取締役が署名または記名押印しなければならない(122条2項)。

出典:会社法、会社法

株式譲渡では会社の承認、株券の交付、名義書換をそろえる

中小企業の株式譲渡では、会社の譲渡承認を得て、株券発行会社なら株券を交付し、どの会社でも譲渡後に株主名簿の名義書換を行います。

くわしい解説を読む

多くの中小企業は、発行済株式がすべて譲渡制限株式である会社(いわゆる非公開会社)です。そのため株式譲渡には会社の承認が必要で、原則として取締役会設置会社では取締役会決議、取締役会非設置会社では株主総会決議で承認します(定款で別の方法とすることも可能)。株式譲渡契約書サンプルは対象会社が株券発行会社であることを前提とし、譲渡の効力は株券を交付した時に生じるとしています。クロージング日には、譲り渡し側が代金の支払と引換えに、印鑑証明書、株券、譲渡を承認した取締役会議事録の写し、取締役・監査役の辞任届、株主名簿の写しを渡し、クロージング後直ちに名義書換を行わせます。

覚えておく事実

  • 株券発行会社であるか否かにかかわらず、株式譲渡後には株主名簿の名義書換を行う必要がある。
  • クロージングで交付する株主名簿の写しは、クロージング日の前日時点のものである。
  • サンプルでは、譲渡価額は銀行振込で支払い、振込手数料は譲り受け側の負担とされている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「名義書換は株券不発行会社だけに必要」は誤り。株券発行会社でも譲渡後に名義書換を行う。
  • 似た用語との違い承認機関は、取締役会設置会社なら取締役会、非設置会社なら株主総会(定款に別の定めがない場合)。逆にした選択肢に注意。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.17

事業譲渡契約の許認可・移転手続・費用負担の定め

事業譲渡契約のサンプルでは、許認可の手続は双方が協力して費用は譲り受け側の負担、資産の移転手続はクロージング日後30日以内に完了するとしています。

くわしい解説を読む

事業譲渡は、事業を構成する資産や契約を個別に移す手法です。そのため、事業に必要な許認可の取得や、資産ごとの登記・通知などの手続が必要になります。事業譲渡契約書サンプルでは、許認可の取得・登録・届出は契約締結後速やかに双方が協力して行い、費用は譲り受け側が負担します。資産の移転や対抗要件(第三者に権利を主張するための要件)として登記・登録・通知・第三者の承諾などが必要なものは、クロージング日後30日以内に完了させます。承継する財産にかかる固定資産税・保険料・電気や水道などの料金は日割り計算で、クロージング日の前日までを譲り渡し側、クロージング日以降を譲り受け側が負担します。

覚えておく事実

  • 移転手続にかかる登録免許税などの公租公課は、譲り受け側が負担する。
  • 譲り渡し側は、承継する財産の細目を書いた引継書を作り、クロージング日に財産・帳簿類・取引先リストとともに引き渡す。
  • 譲り渡し側は契約締結からクロージング日まで、承継する事業と財産を善良な管理者の注意をもって管理する。
  • 固定資産税などの日割り負担は、納税告知書や請求書の宛名が誰であるかにかかわらず適用される。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える登記・登録などの移転手続は「クロージング日後30日以内」に完了するとされている。
  • よく問われる点固定資産税等は、クロージング日「前日まで」が譲り渡し側、クロージング日「以降」が譲り受け側の負担。
  • よく問われる点許認可手続の費用と、移転手続の登録免許税等は、いずれも譲り受け側の負担。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.40

クロージングでは入金を確かめ、登記と担保解除の段取りを整えるしなければならない

クロージング(最終契約の決済)では、譲り受け側から譲渡対価が確実に入金されたことを確認することが必要です。不動産登記や担保解除の段取りも前もって整えます。

くわしい解説を読む

クロージングは、最終契約を結んだ後に株式や事業の財産を引き渡し、その代金(譲渡対価)を受け取る、中小M&Aの最終段階です。中小M&Aガイドラインは、この場面で特に、譲渡対価の全部又は一部が確実に入金されたことを確認することが必要としています。事業譲渡(事業に使う資産や契約を個別に移す手法)で不動産を引き継ぐ場合は、クロージング後すぐに名義を移す登記をするため、クロージングの場で登記に必要な書類を受け渡すのが通常です。そのため司法書士等と日程を調整し、段取りを準備します。また、金融機関からの借入れのために不動産等に担保が設定されている場合は、担保の解除と抹消登記について、取引金融機関との調整があらかじめ必要になることがあります。

覚えておく事実

  • 譲り渡し側は、金融機関への着金確認やネットバンキングにログインできるかの確認など、入金をすぐ確かめられる体制を整えることが求められる。
  • 譲り受け側は、電話で振込を実行できるよう、金融機関への振込予約を事前に手配しておくことが求められる。
  • 担保解除の調整は、譲り渡し側が自ら行うか、仲介者・FA(M&Aを支援する業者・助言者)や士業等専門家の指示に従って必要な手続を進める。
  • 不動産の所有権移転や担保抹消の登記に専門的な知見が要ると判断した場合は、司法書士等の関与を求めることが必要とされる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「振込予約を済ませた連絡を受ければよい」は誤り。ガイドラインが求めるのは、譲渡対価が確実に入金されたことの確認。
  • ひっかけに注意「登記はクロージング後に書類をそろえるので、司法書士との調整はその後でよい」は誤り。登記書類はクロージングで授受するため事前に日程を調整する。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.56、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.166、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.154

株式譲渡のクロージングは承認→決済→役員変更登記の順しなければならない

株式譲渡のクロージングは、会社の譲渡承認を得てから、当日に株券と代金を交換して株主名簿を書き換え、その後に役員交代と役員変更登記を行う流れで進みます。

くわしい解説を読む

株式の譲渡に会社の承認が要る「株式譲渡制限会社」では、売り手の株主が会社に承認を求め(譲渡承認請求)、取締役会(取締役会を置いていない会社では株主総会)で承認を受ける必要があります。代表取締役が承認機関となる場合もあります。承認を得たうえでクロージング日を迎え、当日は株券の引渡しと代金の決済、株主名簿(株主を記録する会社の名簿)の書換え、実印・銀行印などの重要物の受渡しを行います。経営陣が入れ替わる場合は、その後に臨時株主総会で役員の交代や退職慰労金を承認し、取締役会で新しい代表取締役を選び、最後に役員変更の登記をします。

覚えておく事実

  • クロージング日前の手続は、(1)最終契約書の調印、(2)株主からの譲渡承認請求、(3)取締役会又は株主総会の承認の3つ。
  • クロージング日当日の手続は、(4)株券の引渡しと売買代金の決済、(5)株主名簿の書換え、(6)重要物の授受の3つ。
  • 当日の後は、(7)臨時株主総会の承認(役員交代・退職慰労金)、(8)取締役会での代表取締役の選任、(9)役員変更登記と進む。
  • 株券発行会社では株券を譲り受け側に交付しないと株式譲渡の効力が生じず、株券不発行会社では株主名簿の名義書換えで譲渡が完了する。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点順序が問われる。譲渡承認請求→承認→株券引渡し・代金決済→株主名簿の書換え→重要物の授受→臨時株主総会→代表取締役選任→役員変更登記。
  • ひっかけに注意「取締役会を置かない譲渡制限会社でも承認は取締役会決議で行う」は誤り。取締役会非設置会社の承認機関は株主総会。
  • 似た用語との違い株券発行会社は株券の交付が効力発生に必要。株券不発行会社は株主名簿の名義書換えで譲渡が完了する。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.156、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.157

事業譲渡は資産・契約ごとに相手方の同意を得て移すしなければならない

事業譲渡では、契約で効力発生日を決めても、資産や契約を移すには一つひとつ相手方の同意が必要です。事務所の賃貸借やリースの貸主の承諾書は常に必要です。

くわしい解説を読む

事業譲渡は、会社の株式ではなく、事業に使う資産や契約を譲り受け側に移す手法です。契約の当事者が譲り渡し側から譲り受け側に変わるため、最終契約で効力発生日を定めても、それだけでは移りません。資産の譲渡や契約の移管には契約の相手方の同意が必要です。たとえば不動産の賃貸借やリース契約は借主が変わるので、貸主からの承諾書が常に必要になります。主要取引先についても同様の承諾書(少なくとも口頭の了承)が要る場合があり、必要なら債権譲渡の通知も取得します。譲り受け側は、取引先・従業員・水道光熱・通信など、全ての契約を切り替える準備をします。あわせて、移した権利を第三者に主張するための要件(対抗要件)を備える手続も行います。

覚えておく事実

  • 従業員は譲り渡し側を退職して譲り受け側に新しく雇われる形になるため、退職と新規雇用に関する承諾書を作成する。
  • 賃貸借・リース契約が新規契約扱いになる場合、譲り受け側に保証金等の負担が生じることに留意する。
  • 譲り渡し側は事業譲渡を、譲り受け側は事業譲受を、それぞれ株主総会と取締役会で承認する(譲り受け側の株主総会は、簡易譲渡の場合を除く)。
  • 譲り受け側は、許認可・資格等を引き継げるか、引継ぎの要件は何かを確認して準備する。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「貸主の承諾書はCOC条項(支配権が変わると解除できる条項)がある場合に限り必要」は誤り。事業譲渡では借主が変わるため常に必要。
  • よく問われる点効力発生日に移転が完了しない場合の対応は、移転義務を譲り渡し側に課すか、その分の価格調整を行うかの2つ。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.158

クロージング条件を確認しても補償請求権は放棄しないしなければならない

クロージングの前に条件が全て満たされたかを両当事者と確認しても、補償を請求する権利は失われません。後で表明保証違反が分かれば補償を求められます。

くわしい解説を読む

最終契約には、クロージングを実行する前提となる条件(クロージング条件)が定められます。支援者はクロージングにあたり、これらが全て満たされているかを両当事者と確認し、確認事項と必要書面を一覧にして漏れなく確かめます。一方、表明保証は、譲り渡し側などが会社の状態について「この事実は正しい」と相手方に約束するもので、違反があれば補償(損害の穴埋め)を求められます。条件が事実上満たされていたかが最終的に確定するのは、クロージング後になることも多いため、クロージングでの確認は、表明保証違反時の補償請求権を放棄したことを意味しません。

例クロージング時には問題がないとされたが、後から説明と違う事実が見つかった場合

覚えておく事実

  • 株式譲渡契約書サンプルでは、前提条件が一部でも満たされない場合、相手方は自分の義務(代金の支払など)の履行を拒絶できる。
  • 同サンプルでは、前提条件を任意に放棄しても条件を満たしたとはみなされず、表明保証違反などの責任も減免されない。
  • 同サンプルの譲り受け側の前提条件には、譲り渡し側の表明保証がクロージング日に真実かつ正確であること(軽微な誤りを除く)が含まれる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「条件の充足を双方で確認した以上、後で表明保証違反が分かっても補償は請求できない」は誤り。確認は補償請求権の放棄を意味しない。
  • ひっかけに注意「条項が事実上満たされているかはクロージング当日までに確定させる」は誤り。最終的な確定はクロージング後になることも多い。
  • ひっかけに注意「前提条件を放棄すれば充足したとみなされ、相手方の表明保証違反の責任も減免される」は誤り。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.166、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.18

3. リスクと係争

M&Aの後に問題が見つかったときや、当事者の間で争いになったときの法的な扱いです。最終契約の条項(表明保証・補償)とあわせて確認します。

リスク/係争

練習問題 12問(初級 4・中級 5・上級 3) | この分野を演習する

出題範囲:リスク事項に関する法律知識/判例及び係争に関する法律知識

図解|リスク/係争

紛争の期間制限は、6か月から20年まで起算点ごとに違う

紛争リスクの評価には期間制限の知識が要る。いつから数えるかに注意する。

  1. 6か月合併・会社分割などの無効は、効力発生日から6か月以内に訴えで主張
  2. 1年種類・品質の契約不適合は、知った時から1年以内に通知
  3. 2年詐害事業譲渡の請求は知った時から2年、否認権は破産手続開始から2年
  4. 3年・5年不法行為は知った時から3年、債権は行使できると知った時から5年
  5. 10年債権は行使できる時から10年。否認権は行為の日から10年
  6. 20年不法行為による損害賠償請求権は、不法行為の時から20年
出典:会社法、会社法、民法(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)私的整理解雇予告詐害行為取消請求詐害事業譲渡・詐害的会社分割差止請求(組織再編)支払不能商号続用者の責任消滅時効組織再編の無効の訴え損害賠償(債務不履行)特別清算破産否認権不法行為責任民事再生利益相反取引(取締役)

M&Aに関わる主な期間制限(時効・訴えの期間)

組織再編の無効の訴えは6か月、債権は5年・10年、不法行為は3年・20年、契約不適合の通知は1年など、紛争リスクの評価には期間制限の知識が必要です。

くわしい解説を読む

M&Aでは、取引の後に請求や訴えを受けるリスクがどれだけ残るかを評価します。その判断に欠かせないのが、一定の期間を過ぎると権利を行使できなくなる期間制限です。合併・会社分割・株式交換などの無効は、効力が生じた日から6か月以内に訴えで主張します。一般の債権は、行使できると知った時から5年、または行使できる時から10年で時効により消滅します。不法行為の損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年です。売った物の種類・品質が契約と違うときは、買主が知った時から1年以内に通知しなければ原則として責任を追及できません。破産手続で行為の効力を覆す否認権は、手続開始から2年、行為から10年で行使できなくなります。

覚えておく事実

  • 非公開会社の株式発行の無効の訴えは、効力が生じた日から1年以内(会社法828条1項2号)。
  • 人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、行使できる時から10年ではなく20年で時効になる(民法167条)。
  • 譲受会社が譲渡会社の商号を使い続けて債務を負う場合、譲渡会社の責任は、譲渡日後2年以内に請求等をしない債権者に対して消滅する(会社法22条3項)。
  • 売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失で知らなかったときは、1年の通知期間の制限はない(民法566条ただし書)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「不法行為の損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から1年で消滅」は誤り。正しくは3年(不法行為の時から20年)。
  • 数字を覚える吸収合併などの無効の訴えは効力発生日から「6か月以内」。否認権は手続開始から「2年」・行為から「10年」。
  • 数字を覚える債権は、行使できると知った時から「5年」、行使できる時から「10年」で時効により消滅する(民法166条1項)。

出典:会社法、会社法、民法

最終契約後にもめやすい7つの事項しなければならない

経営者保証の扱いやDDの非実施など7つの事項は、最終契約後・クロージング後に相手方とのトラブルに発展するリスクがあるため、専門家に相談しながら慎重に検討しなければならないとされています。

くわしい解説を読む

中小M&Aガイドラインが中小企業(M&Aの当事者)向けに示す注意点です。最終契約の内容は、仲介者・FAや士業等専門家(弁護士・公認会計士など)の助言を受けて相手方と交渉して決めますが、当事者自身も十分に確認することが重要です。特に次の7つは後で争いになりやすいとされます。①譲り渡し側の経営者保証の扱い、②DDを行わないこと、③表明保証の内容、④クロージング後の支払・手続、⑤最終契約後の状況に応じた支払の変動、⑥譲り渡し側の経営者に関係する資産・負債などの最終契約後の整理、⑦最終契約からクロージングまでの期間。士業等専門家に契約内容についてセカンド・オピニオン(別の専門家の意見)を求めることも有用とされます。

覚えておく事実

  • 仲介者・FAは支援できる範囲に限界がある場合や、最終契約後は役務の提供が終わっている場合があるため、継続的な支援が期待できるか確認しておくことが重要とされる。
  • クロージング後の当事者間の紛争解決への関与は非弁行為に当たる可能性があり、紛争が生じたら弁護士に支援を求めることを検討する必要がある。
  • 中小M&Aは最終契約の締結で全て完了するものではなく、譲渡対価はクロージングを迎えて初めて支払われるのが通常である。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか7つの事項は、専門家に相談しながら慎重に検討「しなければならない」。セカンド・オピニオンを求めることは「有用」。
  • ひっかけに注意7事項は経営者保証・DD非実施・表明保証・クロージング後の支払・支払の変動・資産等の整理・クロージングまでの期間。他を含む列挙は誤り。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.49、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.50、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.12

DDを省くと取締役の責任が問われうるべき・求められる

DDを行わずにM&Aを決め、それが原因で譲り受け側に損害が出た場合は、DDなしでM&Aを実施した取締役の善管注意義務違反が問題となりえます。

くわしい解説を読む

たとえば譲り受け側の社長が「相手の社長は信用できるし、費用もかけたくない」とDDを省こうとする場面です。DDは、買収する会社のリスクを的確につかむための重要なプロセスで、DDをせずにヒアリングだけで譲り渡し側のリスクを把握・評価することには限界があります。取締役は会社に対して善管注意義務(その立場にふさわしい注意を払って職務を行う義務)を負っており、DDを行わずにM&Aを決め、それが原因で譲り受け側の会社に損害が生じると、この義務への違反が問題になりえます。支援者はこのリスクを説明し、予算に制約があっても対象を絞るなどしてDDを勧めることが望ましいとされます。

覚えておく事実

  • 中小M&AガイドラインのQ&Aでは、DDを行わないことは、認識の有無にかかわらず説明・対応すべき代表的なリスクの一つとされる。
  • DDの調査の密度は様々で、想定しうるリスク全般を調べることも、対象を限定して簡易に行うこともある。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点問題となりうるのは「DDを行わずにM&Aを実施した(譲り受け側の)取締役」の善管注意義務違反。支援者の義務ではない。
  • ひっかけに注意「DDの要否は譲り受け側が決めることなので、特に説明せず進める」は誤り。リスクを説明し、DDを勧める。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.82、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.80、中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.4

係争中のM&Aは対価の後払いや価格調整条項で手当てするべき・求められる

訴訟・紛争の最中にM&Aを行う場合は、最終契約の高度な調整が必要です。対価の一部の後払いや価格調整条項による対応が考えられますが、深刻なトラブルになるリスクもあります。

くわしい解説を読む

対象会社が訴訟や紛争を抱えていると、その結果しだいで潜在的な債務が表に出たり、事業の継続に影響したりします。進行中の訴訟は一方的に取り下げられないため、スケジュールやM&Aの可否そのものに影響が出る可能性もあります。そのため最終契約の内容を高度に調整する必要があります。クロージング日までに解決の目途がつかない場合の対応として、知識・スキルマップは2つを挙げます。クロージング後一定期間内の解決を条件に対価の一部を後払いにする方法と、クロージング日までの事業価値の変動をクロージング後に調整する価格調整条項を置く方法です。ただし、追加対価の設定があいまいになったり不履行につながったりして、進展次第で深刻なトラブルになるリスクがあります。

覚えておく事実

  • 個別の訴訟・紛争の見通しや処理方針について見解を述べることは非弁行為に当たる可能性が高く、適宜弁護士等への相談が必要。
  • 訴訟・紛争への対応策(クロージングまでの和解など)は、非弁行為との関係に注意しつつ、譲り渡し側・譲り受け側と検討する。
  • 潜在的な訴訟・紛争はクロージング直前に表面化する可能性もあるため、早期に把握することが求められる。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点後払いや価格調整条項による対応には、追加対価の設定があいまいになり、不履行につながるリスクがある。
  • ひっかけに注意「進行中の訴訟は、M&Aのために一方的に取り下げられる」は誤り。スケジュールやM&Aの可否に影響しうる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.124

各分野の要点は、論点データベースから試験で問われやすいものを選んで表示しています。執筆:whyme編集部。税務・法務の個別の判断は専門家にご確認ください。