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M&A用語集

中小企業M&A実務能力・倫理検定の4科目(M&A実務・財務・税務・法務・倫理)で使う用語448語を、「ひとことで」「くわしい解説」「試験ではここを押さえる」の3段でまとめました。言葉を入力すると候補が出ます。読み(ひらがな)や略称でも探せます。

あ行

IT DD

あいてぃーでぃーでぃーM&A実務

IT(情報技術)に関連するリスクの確認・検証を目的とするDD。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

知識・スキルマップで「その他DD」の一つとして整理されている調査です。M&Aの後で情報システムが使えなくなったり、想定外の更新費用がかかったりしないよう、ITに関するリスクを調べます。調査の領域は3つです。①情報システムの構造・状態(ハードウェア・ソフトウェア・ネットワーク等の配置・状態、EOL(サポート終了)を迎えるインフラの有無と更新の追加費用、法定セキュリティ要件を満たしているか)②情報システムへの投資(メンテナンス投資、新規投資、譲り受け側とのシステム統合に関わる投資)③ITの運用組織(外部委託の状況、統合後の事業計画を支えられるIT人材のスキル)です。譲り受け側のシステム統合の意向を踏まえ、メリハリをつけて実施します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点EOL(End of Life)を迎えるインフラがないか、更新のための追加費用がどれほどかかるかを調べる。
  • ひっかけに注意「対象はハードウェアに限られ、IT人材や外部委託は対象外」は誤り。ITの運用組織として外部委託状況・IT人材のスキルも調べる。
  • よく問われる点カーブアウトでシステムを譲り渡し側の社内で共用している場合は再構築が必要になることがあり、スタンドアローン・コストを考慮する。

別名・略称:ITDD図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.127(当社にて要約)

相手方の手数料(仲介者)

あいてかたのてすうりょうM&A実務倫理・行動規範

仲介者が、依頼者の取引の相手方から受け取る手数料。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者は、譲り渡し側と譲り受け側の双方と契約し、双方から手数料を受け取るのが一般的です。このため、相手方から受け取る手数料や、その合計である手数料総額が、M&Aが成立するかどうかや譲渡額などの条件に影響し得る構造にあります。そこで中小M&Aガイドライン第3版は、仲介者に対し、仲介契約の締結前に、相手方の手数料に関する事項(報酬率、報酬基準額、最低手数料の額、報酬の発生タイミング等)と、手数料総額が成立や条件に影響し得る旨を、書面で説明するよう求めています。さらに、当初の説明から増額となる場合に備えて、報酬率・報酬基準額・最低手数料それぞれについて開示基準を依頼者と合意します。この基準は具体的・定量的でなければなりません。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い相手方の手数料の説明が求められるのは仲介者。相手方と契約しないFAには求められない。
  • ひっかけに注意「成約が確定した時点でまとめて説明すれば足りる」は誤り。仲介契約の締結前に書面で説明する。
  • ひっかけに注意「『大きな変更があった場合に開示』等の定性的な基準でもよい」は誤り。包括的・定性的な基準は不可。報酬基準額は変更する場合に開示。

別名・略称:相手方手数料図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.70、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.91、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.92(当社にて要約)

アンチ・サンドバッギング条項

あんち・さんどばっぎんぐじょうこうM&A実務法務

譲り受け側の認識に応じて、表明保証違反があっても譲り渡し側の免責を認める条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

表明保証の違反について、譲り受け側が事前に知っていた事実まで補償の対象にするかどうかは、契約交渉の論点になります。アンチ・サンドバッギング条項は、DDの結果などを踏まえた譲り受け側の認識に応じて、譲り渡し側の免責を認める条項です。中小M&Aガイドラインの株式譲渡契約書サンプルの注記では、たとえば、譲り受け側が契約締結時点で認識し又は認識し得た事実や、DDで提供を受けた情報に含まれる事実は、表明保証の違反とならないと定める例が紹介されています。譲り受け側の主観によって責任が限定されるため、譲り渡し側に有利な条項です。反対の内容を定めるのがプロ・サンドバッギング条項です。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いアンチ=譲り受け側の認識に応じて免責を認める(譲り渡し側に有利)。プロ=認識にかかわらず免責しない(譲り受け側に有利)。取り違えが頻出。
  • 似た用語との違い補償額の上限を定める条項や、クロージング前の重大な悪影響で解除を認める条項(MAC条項)とは別物。

図解で確認:最終契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.24(当社にて要約)

アーンアウト条項

あーんあうとじょうこうM&A実務財務・税務

クロージング後の一定期間に目標を達成した場合に、譲り受け側が譲り渡し側へ追加の対価を支払うことを定める条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

譲渡額は最終契約で確定するのが基本ですが、最終契約後の状況に応じて支払額が変わる条項が設けられることがあります。その一つがアーンアウト条項です。クロージング後の一定期間の特定の時点で目標を決め、達成したら譲り受け側から譲り渡し側へ追加の対価を払います。目標には、売上・利益などの財務目標のほか、売上個数・入居率などの非財務目標もあります。譲り受け側は、クロージング時の支払を抑え、その後の業績悪化のリスクを避けられます。将来の利益は読みにくいが大きく伸びる可能性があるベンチャー企業のM&Aでよく使われます。ただし目標や追加対価の決め方が曖昧だと争いになりやすく、支払不履行のリスクもあるため、設ける場合は条件・方法を明確かつ詳細にする必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える対象期間は「3年以内」が多い。
  • 似た用語との違い支払の向きは譲り受け側→譲り渡し側(追加の対価)。既払の対価を譲り渡し側が払い戻すのは支払金の返還に関する条項。
  • ひっかけに注意「調整が不十分な段階でも、バリュエーションの差を埋めるために設けるとよい」は誤り。DD等を十分に行った上で、確定していない具体的リスクに対応して設定する。

別名・略称:アーンアウト図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.54、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.55、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.144(当社にて要約)

意向表明書

いこうひょうめいしょM&A実務法務

譲り受け側が、譲り受けの希望条件等を表明するために提出する書面のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

企業概要書などで情報を得た譲り受け側が、「この条件で譲り受けたい」という意思を示す書面です。基本的には法的拘束力を持たないことが多いです。企業概要書の情報等を踏まえ暫定的な希望条件を記載し、DD(買収前の調査)に進む意向を示すものを第一次意向表明書、DDの結果を踏まえて最終的な希望条件を記載するものを第二次(最終)意向表明書と呼ぶことがあります。記載事項は、譲り受け側候補者の概要、M&A後の経営戦略、想定スキーム、希望譲渡額と算定の前提、DDの項目・内容、資金調達、クロージングのスケジュール等です。作成は譲り受け側が行うべきで、支援者が過度に介入して内容を調整することは避けます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い第一次=DD前・暫定的な希望条件。第二次(最終)=DD後・最終的な希望条件。提出主体はどちらも譲り受け側。
  • よく問われる点トラブル防止のため、法的拘束力がない書類であることと、後続の調査・調整で変更の可能性があることを明記する。
  • 数字を覚える提出は、譲り受け側への譲り渡し側の紹介から概ね2か月前後が目安。プロセスレターがあれば提出期限が明記される。

別名・略称:第一次意向表明書、最終意向表明書図解で確認:意向表明/基本合意出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.71(当社にて要約)

遺産に係る基礎控除

いさんにかかるきそこうじょ財務・税務

相続税の計算で課税価格の合計額から差し引く額。3,000万円+600万円×法定相続人の数。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

相続税は、亡くなった人(被相続人)の遺産すべてに課税されるわけではなく、まず遺産に係る基礎控除を差し引きます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、相続税の総額は、課税価格の合計額からこの額を引いた課税遺産総額を基に計算します。取得した財産の合計が基礎控除以下なら、申告も納税も不要です(小規模宅地等の特例を使う場合は申告が必要)。法定相続人の数え方には決まりがあり、相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます。人数に算入できる養子は、実子がいれば1人、いなければ2人までです。申告と納税は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署に行います。

例仮の事例で、配偶者と子3人(うち1人が相続放棄)なら、3,000万円+600万円×4人=5,400万円です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意相続放棄をした人も法定相続人の数に含める。放棄者を除いて計算する選択肢は誤り。
  • 数字を覚える養子の算入は実子ありで1人、実子なしで2人まで。申告・納税期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内。
  • ひっかけに注意「申告書は財産を取得した相続人の住所地の税務署に提出する」は誤り。被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署。

別名・略称:相続税の基礎控除図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算、国税庁タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税(当社にて要約)

一次対応・二次対応・三次対応(センター)

いちじたいおう・にじたいおう・さんじたいおうM&A実務

事業承継・引継ぎ支援センターの支援の段階。初期相談、登録機関等への橋渡し、センターによる直接支援をいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継・引継ぎ支援センターは、相談内容に応じて段階的に支援します。一次対応(初期相談)では、相談者の状況を聞いて支援の方向性を判断します。M&Aの意思決定ができていない段階の相談や、親族内承継・従業員承継・廃業の相談も受け付け、事業承継以外の対応が適切なら中小企業活性化協議会やよろず支援拠点等へ橋渡しします。二次対応では、センターに登録された仲介者・FA等(登録機関等)や連携するM&Aプラットフォーマーへ橋渡しします。相談者はこれらと仲介契約・FA契約を結ぶため、手数料が発生します。三次対応は、二次対応で適当な登録機関等がいない場合や、相手がすでに決まっている場合に、センターが交渉からクロージングまでを、士業等専門家の活用を含めて支援します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「一次対応は中小M&Aの実行を意思決定した者に限る」は誤り。意思決定前の相談や、親族内承継・廃業の相談も受け付ける。
  • よく問われる点二次対応では登録機関等・連携M&Aプラットフォーマーと仲介契約・FA契約を締結するため、手数料が発生する。
  • ひっかけに注意「三次対応ではセンターが無償で代行するので外部専門家の費用もかからない」は誤り。外部専門家の利用は譲り渡し希望者に費用負担が生じる。

別名・略称:一次対応、二次対応、三次対応図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.60、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.61(当社にて要約)

一方依頼者への情報開示(仲介者)

いっぽういらいしゃへのじょうほうかいじちゅうかいしゃ倫理・行動規範

仲介者が、一方の依頼者の不利益につながる情報を、その依頼者への善管注意義務から開示すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者は双方の依頼者から情報を受け取ります。その中に、もう一方の依頼者(一方依頼者)の不利益につながるリスクを含む情報があるとき、倫理・行動規範は、一方依頼者に対する善管注意義務の履行の観点から、その情報を開示することを求めています。秘密保持契約がある場合も、開示すべきかどうかの判断が求められます。開示が難しいと判断した場合でも、開示以外の手段(例えば支援の打ち切り)によって一方依頼者の利益を守る支援を行い、善管注意義務を果たさなければなりません。中小M&Aガイドラインも、利益対立に関わる情報を認識したら各当事者に適時に明示的に開示することや、譲り受け側の不適切な行為の情報を譲り渡し側に開示することを仲介者に求めています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「秘密保持契約があれば開示しなくてよい」は誤り。開示すべきか判断し、難しくても支援の打ち切り等で一方依頼者の利益を守る。
  • ひっかけに注意一方の依頼者に不利益となるリスク情報を、秘密保持を理由に放置したまま成約させるのは禁忌肢になりうる。
  • よく問われる点過去に契約不履行のあった買い手であることを知りながら、譲り渡し側に伝えず紹介するのも不適切。

別名・略称:利益対立情報の開示図解で確認:情報管理出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.13、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.103(当社にて要約)

移動総資産

いどうそうしさんM&A実務

成功報酬の基準となる価額の一つで、主に譲渡額に負債額を加えた額のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者・FAの成功報酬を計算するときに、何を基準の金額にするかの選択肢の一つです。主な基準は、①譲渡額、②移動総資産額、③純資産額の3つです。移動総資産額は、主に譲渡額に負債額を加えた額で、譲り渡し側の総資産は事業規模に連動して大きくなる傾向にある、という考えに基づいています。そのため、同じ譲渡額でも、負債(特に借入金)が多い会社ほど基準額が大きくなり、手数料は高くなります。譲り渡し側が債務超過の場合は純資産額がゼロ円以下になるため、通常は譲渡額や移動総資産額が基準とされます。

例ガイドラインの事例では、譲渡額5億円・負債額5億円の会社について移動総資産額を10億円とし、これにレーマン方式の料率を当てはめています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「移動総資産額は譲渡額から負債額を差し引いた額」は誤り。譲渡額に負債額を「加えた」額で、負債が多いほど手数料は高くなる。
  • よく問われる点同水準の報酬率でも、報酬基準額に移動総資産を採用すると、譲渡額・純資産を採用する場合より報酬額は高くなる。
  • 似た用語との違い純資産額は資産と負債の差額で、簿価なら決算書から容易・明確に計算でき、小規模企業で使うことがある。

別名・略称:移動総資産額図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.63、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.64、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.69(当社にて要約)

委任・準委任

いにん・じゅんいにん法務

法律行為の処理を任せる委任と、法律行為でない事務の処理を任せる準委任のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

委任は、当事者の一方が法律行為(契約の締結など)をすることを相手方に委託し、相手方が承諾することで効力を生じる契約です(民法643条)。法律行為でない事務の委託は準委任といい、委任の規定が準用されます(656条)。M&Aの仲介契約・FA契約は、候補先の探索や交渉の補助など事実行為が中心のため、一般に準委任契約と整理されます。受任者には善管注意義務(644条)や報告義務(645条)が課されます。委任は、各当事者がいつでも解除できます(651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に解除した場合や、受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除した場合は、やむを得ない事由がない限り損害を賠償しなければなりません(651条2項)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い請負は仕事の完成が目的。委任・準委任は事務の処理が目的で、準委任でも成功報酬型の報酬を定められる(648条の2)。
  • ひっかけに注意「報酬を得られなくなるから受任者の利益を目的とする委任に当たる」は誤り。専ら報酬を得る利益は除かれる(651条2項2号)。
  • よく問われる点委任は各当事者がいつでも解除できる。不利な時期の解除等は、やむを得ない事由がない限り損害賠償が必要。

別名・略称:委任契約、準委任契約、任意解除図解で確認:法務基礎出典:民法、民法、民法(当社にて要約)

依頼資料リスト

いらいしりょうりすとM&A実務

DD実施機関が、調査に必要な書類や質問をまとめ、譲り渡し側に提出を依頼するためのリスト。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

DDを始めるときに、DD実施機関(調査を行う専門家等)が作る一覧です。調査に必要な書類や回答を求める質問をリストにし、譲り渡し側に依頼します。資料の受け渡しで認識の食い違いが起きないよう、資料名、対象年度、提供してもらう資料の形式、原本を見る必要があるかを明記します。請求する資料の例は、営業報告書、財務諸表、税務申告書、販売費及び一般管理費の明細、販売計画資料、投資実績・投資計画、減価償却費の明細等です。小規模な企業は帳簿や規程類が整っていないことが多いため、早めに書類・データの整備を促します。複数のDDで得た情報は実施機関の間で共有し、重複する依頼をできるだけ減らします。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点譲り渡し側の負担軽減のため、初期的な入手資料で確認できるものは重ねて依頼しない。初回のリストは初回の会議・顔合わせの「前」に送るとスケジュールを短縮できる。
  • よく問われる点仲介者・譲り渡し側FAがいる案件では、DD実施機関と譲り渡し側の直接のやり取りは原則禁止が通例。仲介者・FAがリストを展開する。

図解で確認:DD(全体)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.87(当社にて要約)

遺留分

いりゅうぶんM&A実務法務

兄弟姉妹以外の相続人に法律上保障された、相続財産のうち最低限取得できる割合。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

親族内承継で、オーナーが後継者に自社株式を集中して贈与・遺贈すると、ほかの相続人の取り分が少なくなりすぎることがあります。そのときに問題になるのが遺留分です。遺留分の割合は、直系尊属(父母など)のみが相続人の場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1で、兄弟姉妹には遺留分がありません(民法1042条)。遺留分を侵害された相続人(遺留分権利者)は、受遺者や受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できます(1046条)。この請求権は、相続の開始と侵害を知った時から1年、相続開始の時から10年で消滅します。後継者への株式集中による紛争を防ぐため、経営承継円滑化法には除外合意・固定合意という民法の特例があります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える遺留分は、直系尊属のみが相続人なら3分の1、それ以外は2分の1。兄弟姉妹には遺留分がない。
  • 数字を覚える遺留分侵害額請求権は、相続の開始と侵害を知った時から1年、相続開始の時から10年で消滅する。
  • ひっかけに注意「遺留分権利者は自社株そのものの返還を請求できる」は誤り。請求できるのは遺留分侵害額に相当する金銭の支払(民法1046条1項)。

別名・略称:遺留分侵害額請求、遺留分権利者図解で確認:法務基礎出典:民法(当社にて要約)

遺留分に関する民法の特例

いりゅうぶんにかんするみんぽうのとくれいM&A実務法務

経営承継円滑化法に基づき、後継者と推定相続人全員の合意で、自社株式等を遺留分の算定上特別に扱える制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

相続では、一定の相続人に最低限の取り分(遺留分)が保障されています。そのため、先代経営者が後継者に自社株式を生前贈与しても、相続のときに他の相続人から遺留分を請求され、株式が分散するおそれがあります。これを防ぐのが経営承継円滑化法の民法特例です。旧代表者の推定相続人(遺留分のない兄弟姉妹とその子は除く)と、議決権の過半数を持つ代表者である後継者(会社事業後継者)の全員が書面で合意し、贈与された株式等を遺留分の算定から除いたり(除外合意)、価額を合意時の価額に固定したり(固定合意)できます。合意の後、経済産業大臣の確認を受け、さらに家庭裁判所の許可を受けて効力が生じます。親族外の後継者(従業員等)も会社事業後継者になり得ます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える経済産業大臣の確認申請は「合意から1か月以内」、家庭裁判所への申立ては「大臣確認から1か月以内」。
  • 似た用語との違い民法特例は全員の合意を前提に、後継者が単独で家庭裁判所に申し立てられる。遺留分の放棄は各推定相続人が各自で申し立てる。
  • よく問われる点合意対象の株式等を除いても後継者の議決権が総議決権の50%を超える場合は、除外合意・固定合意はできない。

別名・略称:民法特例図解で確認:中小企業政策出典:中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(当社にて要約)

インカムアプローチ

いんかむあぷろーち財務・税務

対象企業が将来獲得する収益やキャッシュフローを現在価値に割り引いて、価値を算定する考え方。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

インカムアプローチは、バリュエーションの3つのアプローチの1つで、その会社がこれから稼ぐ収益やキャッシュフローをもとに価値を求めます。将来の収益又はキャッシュフローを、割引率を使って現在の価値(現在価値)に置き直して算定するのが基本で、代表的な手法はDCF法と収益還元法です。メリットは、将来の収益の見込みを反映できることです。一方、割引率・成長率・リスクプレミアム・残存価値などの前提条件次第で結果が大きく異なります。また算定には事業計画書が必要なため、事業計画書がない場合は初期段階で使うのが難しいことがあります。前提の違うシナリオをいくつか作り、楽観シナリオを上限、悲観シナリオを下限として、譲渡額の水準の目安にすることもできます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「悲観シナリオを上限、楽観シナリオを下限とする」は誤り。楽観シナリオが上限、悲観シナリオが下限。
  • 似た用語との違い企業価値評価ガイドラインの比較では、インカムは将来の収益獲得能力と固有の性質の反映が◎、客観性は△(問題となるケースもある)。
  • よく問われる点算定に事業計画書が必要。事業計画書がない場合は、初期段階での使用が難しいことがある。

図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.113、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.114、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42(当社にて要約)

インサイダー取引規制

いんさいだーとりひききせい法務倫理・行動規範

上場会社等の会社関係者が、未公表の重要事実を知って公表前にその会社の株券等を売買することを禁じる規制。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

上場会社のM&Aの情報は株価を大きく動かすため、事前に知った人がその情報で株を売買すると、一般の投資家との公平が損なわれます。そこで金融商品取引法166条は、上場会社等の役員・従業員、上場会社等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者などの会社関係者が、職務等に関して重要事実を知ったときは、公表されるまでその会社の株券等の売買等をしてはならないとしています。会社関係者でなくなった後1年以内の者や、会社関係者から重要事実の伝達を受けた者(第一次情報受領者)も対象です。他人に利益を得させる目的等で、公表前の重要事実を伝えたり売買を勧めたりすることも禁止されています(167条の2)。上場会社が譲り受け側となる中小M&Aでは、交渉相手や支援機関も会社関係者に当たりえます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える違反は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又は併科(197条の2)。課徴金の対象にもなる。会社関係者でなくなった後1年以内も対象。
  • よく問われる点上場会社と契約の締結交渉をしている者も会社関係者に当たる。M&Aの交渉相手やFA・仲介者が該当しうる。
  • よく問われる点交渉中に知った上場会社の重要事実をもとに、公表前に株を売買したり、知人に売買を勧めたりするのは、インサイダー取引規制で禁止される。

別名・略称:会社関係者図解で確認:法務基礎出典:金融商品取引法、金融商品取引法(当社にて要約)

印紙税

いんしぜい財務・税務

印紙税法の課税物件表に掲げる文書(課税文書)に課される税。課税文書の作成者が納める。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは多くの契約書を作るため、それぞれに印紙税がかかるかの判断が必要です。印紙税は、印紙税法別表第一の課税物件表に掲げる文書(課税文書)に課され、課税文書の作成者が納税義務者です(共同で作成した場合は連帯して納付)。課税されるか、どの号の文書に当たるかは、文書の名称ではなく記載内容で判断します。事業譲渡契約書は「営業の譲渡に関する契約書」として第1号文書に当たり、記載された契約金額に応じた税額です。合併契約書・吸収分割契約書・新設分割計画書は第5号文書で、1通4万円の定額です。株式譲渡契約書は課税物件表に掲げられておらず一般に非課税ですが、代金受領の記載があれば第17号の1文書(受取書)として課税されます。印紙を貼らなかったり消印しなかったりすると過怠税がかかります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い事業譲渡契約書は第1号文書で契約金額に応じた税額。合併・吸収分割契約書・新設分割計画書は第5号で1通4万円。
  • ひっかけに注意「株式譲渡契約書は常に非課税」は誤り。代金受領の記載があれば第17号の1文書として課税文書になる。
  • よく問われる点納税義務者は課税文書の作成者。課否は名称ではなく記載内容で判断。株式交換契約書・株式移転計画書は第5号に含まれない。

別名・略称:課税文書、収入印紙図解で確認:税務基礎出典:印紙税法、印紙税法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.118(当社にて要約)

EBITDA

いーびっとだー財務・税務

企業価値評価などで使う利益の指標。簡易的に「営業利益+減価償却費」で計算し、償却前利益とも呼ばれる。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

EBITDAは、M&Aで会社の収益力をみるときによく使われる利益の指標です。中小M&Aでは簡易的に「営業利益+減価償却費」で算定することが多く、「償却前利益」とも呼ばれます。減価償却費は、費用ではあってもお金の支出を伴わない費用です。主な使い道は2つあります。1つは、マルチプル法のうちEV/EBITDA倍率法で、類似上場会社の倍率を対象会社のEBITDAに掛けて企業価値(EV)を算定します。もう1つは、支援の初期段階で成約の可能性を判断するときの確認項目です。知識・スキルマップは、譲り渡し側の事業規模・営業利益・EBITDA・債務資産状況・有利子負債・ネットデットの6項目などを総合的にみて判断するとしています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「EBITDA=営業利益+支払利息」は誤り。簡易的には営業利益+減価償却費。
  • よく問われる点成約可能性判断の6項目に含まれる(事業規模・営業利益・EBITDA・債務資産状況・有利子負債・ネットデット)。従業員数や自己資本比率は含まれない。
  • 似た用語との違いDCF法で予測期間について算出するのはFCFで、EBITDAではない。

別名・略称:償却前利益図解で確認:バリュエーション(財務)出典:参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.4、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.22、J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

EV/EBITDA倍率法

いーぶいいーびっとだーばいりつほう財務・税務

類似上場会社のEV/EBITDA倍率を対象会社のEBITDAに掛け、純有利子負債を引いて株式価値を求める手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

EV/EBITDA倍率法は、マルチプル法(類似会社比較法)のうち、中小M&Aで多く用いられる手法です。まず、類似する上場会社について、企業価値(EV)がEBITDA(簡易的には営業利益+減価償却費)の何倍かという倍率を求めます。次に、その倍率を対象会社のEBITDAに掛けて対象会社の企業価値を算定し、そこから純有利子負債(有利子負債から現預金を差し引いた額)を差し引いて株式価値を求めます。式にすると、株式価値=EBITDA×EV/EBITDA倍率−純有利子負債です。上場会社に比準するため比較的客観性の高い手法ですが、選ぶ上場会社等が適切かに注意が必要です。

例仮の数値で、営業利益4,000万円・減価償却費1,000万円・倍率6倍・有利子負債1億2,000万円・現預金5,000万円なら、3億円−7,000万円=2億3,000万円です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意純有利子負債は「控除」する。加算する計算や、現預金を差し引かずに有利子負債をそのまま控除する計算は誤り。
  • よく問われる点EBITDAは簡易的に「営業利益+減価償却費」で算定する。支払利息を足すのではない。
  • 数字を覚える中小企業は株式の流動性が低いため、算定した株式価値を30%程度ディスカウント(非流動性ディスカウント)するケースもある。

別名・略称:EV/EBITDA倍率図解で確認:バリュエーション(財務)出典:参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.4、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47(当社にて要約)

受取配当等の益金不算入

うけとりはいとうとうのえききんふさんにゅう財務・税務

法人が受け取る配当等の全部又は一部を、株式等の区分に応じて法人税の益金に算入しない制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人が他の法人から受け取る配当等は、法人税の計算上、株式等の保有割合などによる区分に応じて、全部又は一部が益金に算入されません。区分は4つです。計算期間を通じて完全支配関係がある完全子法人株式等は全額、3分の1超を保有する関連法人株式等は配当等の額から負債利子相当額を差し引いた額、5%超3分の1以下のその他の株式等は50%、5%以下の非支配目的株式等は20%が益金不算入です。M&Aでは、持株会社を通じた配当や自己株式の取得の税負担を比べる場面でよく登場します。法人株主が子会社に自己株式を取得させると、交付額のうち資本金等の額を超える部分はみなし配当となり、この制度の対象になります。完全子法人株式等であれば全額が益金不算入です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える完全子法人株式等は100%、関連法人株式等(3分の1超)は負債利子控除後の額、その他(5%超3分の1以下)は50%、非支配目的(5%以下)は20%。
  • ひっかけに注意「自己株式の取得に伴うみなし配当は益金不算入の対象にならない」は誤り。みなし配当も受取配当等として扱われる。
  • ひっかけに注意「関連法人株式等の配当は負債利子にかかわらず全額不算入」は誤り。負債利子相当額を控除した額が不算入。

図解で確認:税務基礎出典:法人税法、法人税法(当社にて要約)

売上債権

うりあげさいけん財務・税務

通常の商取引で生じた受取手形・売掛金など、販売代金を後で受け取る権利。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

商品を売っても、代金をすぐ現金で受け取るとは限りません。後日支払ってもらう約束の売掛金や、代金として受け取った手形(受取手形)を売上債権といい、貸借対照表の流動資産に表示します。通常の商取引で生じた債権は流動資産とされます(正常営業循環基準)。M&Aの財務DDでは、売上債権・棚卸資産・仕入債務から運転資本(事業を回すために必要な資金)を計算し、短期的な資金繰りを評価します。売上債権が増えると、売上は計上されても現金はまだ入っていないため、キャッシュ・フローは減ります。DD結果を踏まえて事業計画を直すときは、回転日数や回転率を使い、売上高の増減に連動させて予測します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務。現金・預金は算式に含めない。
  • ひっかけに注意「売上債権が増加するとFCFは増加する」は誤り。売上債権の増加は資金の減少要因で、間接法では減算する。
  • 数字を覚える運転資本の予測に使う回転日数・回転率は、過去3年程度の平均値を使う。

別名・略称:営業債権図解で確認:財務基礎出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準(企業会計審議会、平成10年3月13日)(当社にて要約)

売上総利益(粗利)

うりあげそうりえき財務・税務

売上高から売上原価を差し引いた利益。粗利(あらり)とも呼ばれる。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

売上総利益は、損益計算書で最初に出てくる段階の利益で、売上高から売上原価(売った商品の仕入値や製造にかかった費用)を引いて求めます。小売業などの売上原価は、期首の商品棚卸高に当期の仕入高を足し、期末に残った商品棚卸高を引いて計算します。売上総利益からさらに販売費及び一般管理費(人件費・広告費など)を引くと営業利益になります。売上高に対する割合を粗利率といいます。M&Aの初期段階で決算書を確認し、おおよその企業価値を評価する際には、特に売上総利益率の推移が、企業としての付加価値を示す指標として重要とされます。

例仮の数値で、売上高1,100万円、期首商品120万円、当期仕入800万円、期末商品150万円なら、売上原価は770万円、売上総利益は330万円です。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い粗利は売上原価だけを差し引いた利益。営業利益はさらに販売費及び一般管理費も差し引く。
  • よく問われる点簡易的なヒアリングで、企業の付加価値を示す指標として重要とされるのは「売上総利益率の推移」(営業利益率ではない)。
  • ひっかけに注意売上原価の計算で期首と期末の棚卸高を逆にしたり、当期仕入高をそのまま売上原価とする選択肢は誤り。

別名・略称:粗利、粗利益図解で確認:財務基礎出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.97、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.22(当社にて要約)

運転資本

うんてんしほん財務・税務

「売上債権+棚卸資産−仕入債務」で求める、企業の短期的な資金繰りを評価する指標。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社は商品を売っても代金をすぐに回収できるとは限らず(売上債権)、在庫(棚卸資産)も抱えます。一方で、仕入代金の支払を待ってもらえる分(仕入債務)もあります。この差し引きを示すのが運転資本で、知識・スキルマップでは「売上債権+棚卸資産−仕入債務」で算出し、企業の短期的な資金繰りを評価する指標とされています。売上債権には売掛金と受取手形、仕入債務には買掛金と支払手形が入ります。財務DDの結果を受けて事業計画を修正するときは、売上債権・棚卸資産・仕入債務ごとに回転日数又は回転率を出し、売上高又は売上原価の増減に連動させて予測します。回転日数等には過去3年程度の平均値を使います。DCF法のFCFを計算するときは、運転資本の増加額を差し引きます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意運転資本の算式に現金・預金や借入金は含めない。売上債権・仕入債務には受取手形・支払手形も含める。
  • 数字を覚える事業計画で運転資本を予測するときの回転日数・回転率は、過去3年程度の平均値を使う。
  • よく問われる点売上債権・棚卸資産の増加や仕入債務の減少は運転資本を増やし、その分FCFを減らす。

図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.101、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47(当社にて要約)

営業秘密

えいぎょうひみつ法務

秘密として管理され、事業活動に有用で、公然と知られていない技術上・営業上の情報(不正競争防止法2条6項)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、デュー・ディリジェンスなどで顧客情報や技術情報を相手方に開示します。こうした情報が不正競争防止法で守られる営業秘密に当たるには、①秘密として管理されていること(秘密管理性)、②生産方法・販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)、③公然と知られていないこと(非公知性)の3要件をすべて満たす必要があります(2条6項)。営業秘密を不正な手段で取得して使ったり、保有者から示された営業秘密を不正の利益を得る目的等で使用・開示したりすることは不正競争に当たり、被害者は差止め(3条)や損害賠償(4条)を請求できます。3要件を満たさない情報は保護を受けにくいため、秘密保持契約による契約上の保護が重要になります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「NDAを結べばその情報は当然に営業秘密になる」は誤り。秘密管理性など3要件を満たす必要がある。
  • 数字を覚える営業秘密侵害罪は10年以下の拘禁刑若しくは2000万円以下の罰金、又は併科(21条1項)。
  • よく問われる点破談後に、DDで得た対象会社の顧客情報・技術情報を自社の営業に流用するのは、秘密保持契約違反や営業秘密の不正使用にあたるおそれがある。

別名・略称:秘密管理性、有用性、非公知性図解で確認:法務基礎出典:不正競争防止法(当社にて要約)

営業利益

えいぎょうりえき財務・税務

売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益で、本業でどれだけ稼いだかを示すもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

営業利益は、会社の本業による儲けを示す利益です。売上高から売上原価と販売費及び一般管理費(販管費:人件費・家賃・広告費など)を差し引いて求め、支払利息など本業以外の損益は含みません。売上高に対する割合を営業利益率といい、本業の収益性を見る指標になります。営業利益率は業界によって水準が大きく異なるため同業他社と比べて判断し、また時系列の推移を見ることで、業界の大きな環境変化やビジネス構造の変化をつかみます。M&Aでは、成約可能性を判断する際に確認する項目の1つで、企業価値評価にも使われます。たとえばEV/EBITDA倍率法では、EBITDAを簡易的に「営業利益+減価償却費」で計算します。製品・サービス別に営業利益を分析すると、買収後の製品ポートフォリオ見直しにも役立ちます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点EBITDAは簡易的に「営業利益+減価償却費」で算定する。「営業利益+支払利息」とする選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意営業利益率は業界によって水準が大きく異なる。業界を問わず一律の基準で良否を判断する趣旨の選択肢は誤りで、同業他社と比較する。
  • よく問われる点成約可能性判断の6項目は、事業規模・営業利益・EBITDA・債務資産状況・有利子負債・ネットデット。

別名・略称:営業利益率図解で確認:財務基礎出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.97、参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.4(当社にて要約)

益金

えききん財務・税務

法人税の所得計算で、所得を増やす側に数える金額。資本等取引以外の取引に係る収益の額をいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人税は会計上の利益ではなく「所得」に課税され、所得は益金の額から損金の額を差し引いて計算します。益金は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡や役務(サービス)の提供、無償による資産の譲受けなど、資本等取引以外の取引に係る収益の額です。ポイントは無償の取引も含まれることです。資産をただで譲っても、時価相当の収益があったものとして益金になり、ただで資産をもらった側にも受贈益として益金が生じます。一方、増資・減資・剰余金の分配などの資本等取引は、益金・損金の計算に含めません。M&Aで子会社などへ資産を低額や無償で移すと、譲渡した側に、時価との差額についての益金と寄附金の問題が生じ得ます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「資産を無償で譲渡した場合、対価がないので益金は生じない」は誤り。無償による資産の譲渡に係る収益の額も益金に含まれる。
  • よく問われる点無償による資産の譲受け(受贈益)も益金。増資の払込金や剰余金の配当などの資本等取引は、益金・損金に含めない。

別名・略称:益金の額図解で確認:財務基礎出典:法人税法(当社にて要約)

エスクロー

えすくろーM&A実務

取引の安全のため、代金等を第三者(金融機関・エスクロー事業者)に預けること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、代金を払ったのに約束どおりの引渡しがされない、といった不安が当事者にあります。そこで使われるのがエスクローで、第三者(金融機関やエスクロー事業者)に代金を預ける仕組みです。M&Aでは、譲り受け側が買収代金の一部を金融機関等に預け、支払を一部保留する形で行われます。一般的な流れは、①第三者が入金を譲り渡し側に報告し、②譲り渡し側が引渡しを行い、③譲り受け側が受領を第三者に報告し、④第三者から譲り渡し側へ代金が支払われる、というものです。取引の信頼性・安全性を確保できる一方、第三者への手数料がかかります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「譲り渡し側が受け取った代金の一部を譲り受け側に預ける仕組み」は誤り。譲り受け側が買収代金の一部を第三者に預託する。
  • ひっかけに注意「当事者間の信頼に基づく仕組みなので手数料はかからない」は誤り。預託先の第三者に手数料が発生する。
  • よく問われる点譲渡額をクロージング時に全額支払わない条項を入れる場合は、支払不履行のリスクを減らすため、エスクロー取引を検討・提案すべきとされる。

図解で確認:最終契約出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.143(当社にて要約)

FA

えふえーM&A実務倫理・行動規範

譲り渡し側又は譲り受け側の一方とだけ契約(FA契約)を結び、マッチング支援等を行う支援機関。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

FAはフィナンシャル・アドバイザーの略で、仲介者と並ぶ支援業者の形です。譲り渡し側か譲り受け側のどちらか一方とだけFA契約を結び、それに基づくFA業務として支援します。一方の依頼者のためだけに働くため、依頼者の意向を踏まえ、依頼者に有利な条件でのM&Aの成立を目指して助言・調整します。譲渡額をはじめ最も有利な条件を重視する場合や、債権者・株主等の関係者との関係で最も有利な条件を目指す必要がある場合に向くとされます。海外では、大規模M&Aで高度な助言を行う者だけをFAと呼ぶことがありますが、ガイドラインは、中小M&Aでも一方と契約してマッチング支援等を行う支援機関をFAと呼ぶ我が国の一般的な解釈に従っています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「FAは高度な助言業務を提供する者に限られる」は誤り。それは海外での用法で、ガイドラインは一方と契約してマッチング支援等を行う支援機関をFAと呼ぶ。
  • 似た用語との違いFAは依頼者一方から、仲介者は双方から手数料を受け取るのが通常。
  • よく問われる点FAも、金融機関・士業等専門家等が同様の業務を行えば、業務の性質・内容が共通する限りでFAとしてガイドラインが適用される。

別名・略称:フィナンシャル・アドバイザー、FA契約、FA業務図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.18、登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果(M&A支援機関登録制度)(当社にて要約)

M&A

えむあんどえーM&A実務

「Mergers and Acquisitions」の略。合併・会社分割に加え、株式譲渡・事業譲渡などによる事業の引継ぎを広く指す言葉。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインの用語集で最初に定義される、すべての出発点となる言葉です。英語では「合併(Mergers)と買収(Acquisitions)」の略ですが、我が国では意味を広くとらえ、会社法が定める組織再編(合併や会社分割)に加えて、株式譲渡や事業譲渡も含めた、さまざまな手法による事業の引継ぎ(譲り渡し・譲り受け)をいいます。つまり、会社を丸ごと引き継ぐことだけでなく、事業の一部を切り出して引き継ぐことも含まれます。手法ごとの特徴は、ガイドラインの参考資料1「中小M&Aの主な手法と特徴」にまとめられています。

例オーナーが持つ株式を他社に譲る株式譲渡も、事業の一部だけを他社に移す事業譲渡も、どちらもM&Aに当たります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「M&Aは合併と買収に限られ、事業譲渡は含まない」は誤り。我が国では株式譲渡・事業譲渡を含む各種手法による事業の引継ぎを広くいう。
  • 似た用語との違い「M&A」は手法を問わない事業の引継ぎ全般。「中小M&A」は後継者不在の中小企業の事業を社外の第三者が引き継ぐ場合に限る。

別名・略称:Mergers and Acquisitions図解で確認:M&A実務の基礎出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16(当社にて要約)

M&A支援機関登録制度

えむあんどえーしえんきかんとうろくせいどM&A実務

中小M&Aガイドラインの遵守宣言等を要件に、FA業務・仲介業務を行う支援機関を登録する国の制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業が安心してM&Aに取り組めるよう、M&A支援機関への信頼感を高めるために作られた国の制度です。中小企業庁が令和3年4月に取りまとめた「中小M&A推進計画」を受けて、同年8月に創設されました。中小企業等を対象にFA業務又は仲介業務を行う者が、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言する等して登録を受けます。業種は問わず、仲介業務を行う金融機関も対象ですが、DDのみを行う士業等専門家などは対象外です。登録しなくても仲介・FA業務はできますが、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)でFA・仲介の手数料が補助されるのは、登録業者の支援に限られます。制度のホームページでは、登録業者の手数料の算定基準等を確認できます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「登録しなければ仲介・FA業務を行えない」は誤り。「登録業者は国が支援の品質を保証している」も誤り。登録の効果は補助金の対象になること。
  • 数字を覚える創設は「令和3年(2021年)8月」。2026年3月現在、M&A専門業者約1,200者を中心に約3,400者が登録している。
  • よく問われる点補助対象かどうかの登録確認は「交付決定時」。交付決定時に未登録の業者を利用した費用は補助対象と認められない。

別名・略称:登録支援機関、登録制度図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.19、M&A支援機関登録制度公募要領(令和7年度、令和7年5月30日)抄録:p1,3-11,35-36、事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)(当社にて要約)

M&A専門業者

えむあんどえーせんもんぎょうしゃM&A実務倫理・行動規範

マッチング支援や中小M&Aの手続進行の総合的な支援を専門に行う民間業者のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

支援機関の中で、M&Aの支援そのものを本業とする民間の業者です。業務の中心は、譲り渡し側・譲り受け側の相手探し(マッチング支援)と、交渉から契約・クロージングまでの手続を進める総合的な支援で、ガイドラインはこれらをまとめて「マッチング支援等」と呼びます。M&A専門業者は主に、双方と契約する「仲介者」と、一方とだけ契約する「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」に分類され、業務範囲は業者ごとに異なります。また、金融機関、士業等専門家、M&Aプラットフォーマーが仲介者・FAと同様の業務を行うこともあり、その場合は業務の性質・内容が共通する限りで、仲介者・FAとしてガイドラインが適用されます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い仲介者は譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約し、FAは一方とだけ契約する。どちらもM&A専門業者の主な分類。
  • よく問われる点金融機関や士業等専門家でも、仲介者・FAと同様の業務を行えば、業務の性質・内容が共通する限りでガイドラインが適用される。名称でなく業務内容で判断する。

図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.17、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.18(当社にて要約)

M&Aプラットフォーマー

えむあんどえーぷらっとふぉーまーM&A実務

M&Aプラットフォーム(オンラインのマッチングの場)を運営する支援機関のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aプラットフォームというウェブサイトを運営している事業者を指します。事業者が自分でサイトに登録し、案件を閲覧して候補先を探せるため、簡便かつ低コストでマッチングできるのが特色です。多額の費用を掛けられない中小企業や、M&A専門業者への依頼をためらう中小企業の後押しになると期待されています。ガイドラインは、利便性・安全性の向上、案件情報の少ない支援機関による利用の促進、成約事例等の発信による意識の醸成を望ましいとしています。利用対象者やサービスの内容はプラットフォーマーごとに異なります。また、仲介者・FAと同様の業務を行えば、業務の性質・内容が共通する限りで仲介者・FAとしてガイドラインが適用されます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いプラットフォーマーは運営する支援機関、プラットフォームはウェブサイトそのもの。「プラットフォーマー=案件を登録する事業者」は誤り。
  • よく問われる点サイトの提供のみを行うM&Aプラットフォーマーは、M&A支援機関登録制度の登録は不要。登録対象はFA・仲介業務の契約を結び手数料を受け取る者。
  • よく問われる点利用対象者やサービス内容はプラットフォーマーごとに異なる。「統一されている」は誤り。

図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.18、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.130、M&A支援機関登録制度公募要領(令和7年度、令和7年5月30日)抄録:p1,3-11,35-36(当社にて要約)

M&Aプラットフォーム

えむあんどえーぷらっとふぉーむM&A実務

インターネット上のシステムを使い、オンラインでマッチングの場を提供するウェブサイトのこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

近年急速に普及している、ネット上の「M&Aの出会いの場」です。譲り渡し側・譲り受け側がシステムに登録することで、主にマッチングを低コストで進められます。特に譲り渡し側は無料で登録できるものが相当数あり、支援機関に相当額の手数料を払う資力のない小規模事業者にも、中小M&Aの可能性を広げたと評価されています。一方で、仕組みはサイトごとに違い(どちら側から交渉を始められるか、当事者が直接登録できるか、FAを介す必要があるか等)、支援も一般にはマッチングまでです。基本合意や最終契約の条件交渉は原則として当事者が行うため、事業承継・引継ぎ支援センターや士業等専門家の支援を受けながら進めることが望まれます。真に極秘で進めたい案件には向かないとされます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いM&Aプラットフォームはウェブサイトそのもの。M&Aプラットフォーマーはそれを運営する支援機関。
  • ひっかけに注意「プラットフォームは最終契約の交渉まで支援するのが一般的」は誤り。一般にマッチングまでで、その後の条件交渉は原則として当事者が行う。
  • よく問われる点譲り渡し側は手数料が発生しないケースが多い。譲り受け側はクロージング時の完全成功報酬型(譲渡額等の数%程度)が多い。

別名・略称:マッチングサイト図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.18、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.57、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.59(当社にて要約)

MAC条項

えむえーしーじょうこうM&A実務法務

最終契約締結からクロージングまでに対象会社に重大な悪影響が生じた場合の、契約解除や条件修正の権利を定める条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約を結んでからクロージング(株式・代金の受渡し)までには、一定の期間があります。その間に、対象会社の価値を大きく損なう出来事が起きることもあり得ます。そのような場合に備えて置かれるのがMAC条項です(MACはMaterial Adverse Changeの略で、重大な悪影響を及ぼす変化の意味)。最終契約締結からクロージングまでの間に対象会社に重大な悪影響が生じた場合に、契約を解除したり条件を修正したりする権利を定めます。スキルマップでは、クロージングの前提条件として設定される事項のうち、譲り渡し側の義務に関するものの例に挙げられています。似た名前の条項が多いので、何についての条項かで区別して覚えることが大切です。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いMAC条項は対象会社に重大な悪影響が生じた場合の最終契約上の条項。株主の変更を理由に取引先が契約を解除できるのはCOC条項(取引契約上の条項)。
  • 似た用語との違い対象期間は「最終契約締結からクロージングまで」。クロージング後の業績目標の達成で追加対価を払うのはアーンアウト条項。
  • 似た用語との違い契約書に記載した内容だけを合意内容とするのは完全合意条項で、MAC条項ではない。

図解で確認:最終契約出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.146(当社にて要約)

MBO

えむびーおーM&A実務

経営者(経営陣)が自社の株式を買い取って会社を取得すること。Management Buy-Outの略。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

知識・スキルマップでは、従業員承継(役員・従業員への引継ぎ)の実施方法の一つとして整理されています。経営陣が既存の株主から株式を買い取り、自ら株主兼経営者になる形です。スキルマップは、MBOと相続の違い、メリット、実施方法(資金の調達方法等)を知識として挙げています。また、ビジネスDDで事業計画を検証するときの注意点としても出てきます。MBOの前は既存株主に経営を任されている立場ですが、成立後は自らが株主兼経営者になるため、事業計画が過度に保守的になる傾向があるとされます。反対に、譲り渡し側経営者が得る譲渡対価が大きい場合や、成立後に経営への関与が低い場合は、強気の事業計画になる傾向があります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点MBOでは事業計画が「過度に保守的」になる傾向。譲渡対価が大きい・成立後の関与が低い場合は「強気」になる傾向。入れ替えに注意。
  • 似た用語との違いMBOは従業員承継の手法として整理され、社外の第三者が引き継ぐ中小M&A(第三者承継)には当たらない。

別名・略称:Management Buy-Out、マネジメント・バイアウト図解で確認:事前相談出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.29、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.94(当社にて要約)

LBO(レバレッジド・バイアウト)

えるびーおー財務・税務

買収される企業のキャッシュフロー等を返済原資として、借入れで買収資金を調達する買収手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

LBOは、主にPEファンドなどが企業を買収するときに使う資金調達の手法です。少ない自己資金(エクイティ)に借入れ(デット)を組み合わせることで、投資収益率を高めます(てこ=レバレッジの考え方)。日本銀行のレビューは、LBOファイナンスの特徴として、①実質的な買収主体がPEファンド等であること、②返済原資は被買収企業のキャッシュフローで、買収主体に対してはノンリコース(返済を求めない)であること、③被買収企業の資産や株式等が担保になること、④買収後のレバレッジやのれんが高水準になること、を挙げています。一般的なスキームでは、ファンドが中間持株会社(HoldCo)を介して買収SPC(買収のための会社)を設立し、SPCが銀行団から借り入れて対象企業を買収した後、SPCと対象企業が合併してできる新会社が借入れを返済します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「ファンドの信用力が返済原資となり、ファンドが返済義務を負う」は誤り。返済原資は被買収企業のキャッシュフローで、買収主体にはノンリコース。
  • ひっかけに注意「LBOローンは固定金利・低スプレッドが多く金利変動の影響を受けにくい」は誤り。変動金利・高スプレッドが多く影響を受けやすい。
  • よく問われる点一般的なスキームでは、買収後に買収SPCと対象企業が「合併」し、新会社の内部留保(キャッシュフロー)で返済する。

別名・略称:レバレッジド・バイアウト、LBOファイナンス図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:日銀レビュー「LBOファイナンスの動向とリスク管理」(2024年5月、2024-J-8)、日銀レビュー「LBOファイナンスの動向とリスク管理」(2024年5月、2024-J-8)(当社にて要約)

応諾書

おうだくしょM&A実務

譲り受け側の意向表明書に対して、譲り渡し側が受け入れる旨を示して提出する書面のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

基本合意の代わりに使われることがある書面です。基本合意は必ず締結されるものではなく、譲り受け側から出された意向表明書に対して、譲り渡し側が応諾書を提出することで、基本合意とほぼ同様の合意を締結したものとして扱うこともあります。知識・スキルマップは、意向表明の内容が具体的で、かつ譲り渡し側の希望する内容になっている場合には、基本合意の締結ではなく、応諾書による合意の形式で対応することも考えられるとしています。中小M&Aガイドラインも、入札手続等ではこの方法がとられることがあるとしています。いずれの形式をとる場合でも、条件を具体化させることが重要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「応諾書は譲り受け側が企業概要書の内容を了承したことを示す書面」は誤り。譲り渡し側が、譲り受け側の意向表明書に対して提出する。
  • よく問われる点基本合意は必ず締結されるものではない。スケジュールに余裕がない場合は基本合意を締結せずにプロセスを進めることもあり得る。

図解で確認:意向表明/基本合意出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.69、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.94、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.95(当社にて要約)

か行

解雇予告

かいこよこく法務

労働者を解雇するとき、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を払うこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

突然の解雇で労働者の生活が成り立たなくなるのを防ぐため、労働基準法20条1項は、使用者が労働者を解雇しようとするときは、少なくとも30日前に予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとしています。1日分の平均賃金を支払えば、予告日数を1日短縮できます(20条2項)。天災事変などで事業の継続が不可能になった場合などは例外ですが、行政官庁の認定が必要です。ただし、予告や手当の支払をしても、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用として無効になります(労働契約法16条)。M&Aでは、事業譲渡を理由とする解雇にも整理解雇の判例法理が適用されるとされています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える30日前の予告、又は30日分以上の平均賃金。1日分の平均賃金を払えば予告日数を1日短縮できる(20条2項)。
  • ひっかけに注意「解雇予告手当を払えば解雇は有効」は誤り。合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く解雇は無効(労働契約法16条)。
  • ひっかけに注意「事業譲渡を理由にすれば従業員を一律に解雇できる」は誤り。解雇には解雇予告など法令上の手続が必要。

別名・略称:解雇予告手当図解で確認:法務基礎出典:労働基準法、労働契約法(当社にて要約)

会社分割

かいしゃぶんかつM&A実務

会社の事業に関する権利義務の全部又は一部を、他の会社や新設する会社に包括的に承継させる手続。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社法が定める組織再編の一つです。事業に関する権利義務を、既にある他の会社に承継させるのが「吸収分割」、分割によって新しく作る会社に承継させるのが「新設分割」です。事業譲渡と違い、権利義務をまとめて引き継ぐ(包括的に承継する)のが特徴です。雇用は、労働契約承継法により、一定の要件を備えれば原則として確保されます。許認可も、個別の業法によってはそのまま引き継がれるケースがあります。一方で、債権者が異議を述べられる期間を原則として1か月以上設ける債権者保護手続を含む会社法上の手続と登記が必要で、時間や費用がかかることがあります。会社分割を行った旨は履歴事項全部証明書にも記載されます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える債権者保護手続の異議申述期間は原則1か月以上(会社法789条2項)。官報公告と知れている債権者への各別の催告が必要。
  • 似た用語との違い吸収分割は既存の他の会社に承継(会社法2条29号)、新設分割は分割で設立する会社に承継(2条30号)。
  • 似た用語との違い会社分割は包括承継で、雇用は労働契約承継法により一定の要件のもと原則確保される。事業譲渡は特定承継で、労働者の個別の承諾が必要。

別名・略称:吸収分割、新設分割図解で確認:事前相談出典:参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.2、会社法、会社法(当社にて要約)

解除(解約)

かいじょ法務

当事者の一方の意思表示によって、契約関係を解消すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

相手方が契約どおりに債務を履行しないときに、契約から抜け出すための手段です。民法では、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ解除できます(催告解除、541条)。ただし、不履行が契約と取引上の社会通念に照らして軽微なときは解除できません。履行不能や明確な履行拒絶などの場合は、催告せずに解除できます(無催告解除、542条)。解除すると各当事者は原状回復義務(元の状態に戻す義務)を負い、損害賠償の請求もできます(545条)。M&Aの最終契約では、クロージング後に取引を巻き戻すのは難しいため、株式譲渡契約サンプルは解除をクロージング前に限り、その後の問題は補償で解決するのが基本の形です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点株式譲渡契約サンプルの通常の解除は、相当期間を定めた催告後も是正されないときで、クロージング前に限られる。
  • 似た用語との違い反社会的勢力に関する表明保証違反は、催告なく書面通知で解除できる。経営者保証の解除特則はクロージング後の解除を認める。
  • ひっかけに注意「解除すると損害賠償は請求できない」は誤り。解除は損害賠償請求を妨げず、サンプルでも解除後の補償請求は妨げられない。

別名・略称:解約、契約解除、催告解除、無催告解除図解で確認:法務基礎出典:民法、民法、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.22(当社にて要約)

外為法

がいためほう法務

外国為替及び外国貿易法の略称。対外取引や、外国投資家による国内への投資などを管理する法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、外国企業や外資系ファンドなどの外国投資家が日本の会社の株式を取得する、クロスボーダー取引で問題になります。外国投資家には、非居住者の個人や外国法人だけでなく、外国投資家が直接・間接に議決権の50%以上を持つ国内の会社等も含まれます。外国投資家が非上場会社の株式を取得すると、割合にかかわらず原則として対内直接投資等に当たります。外為法上の手続は、事前届出の対象業種、事後報告の対象業種、いずれも不要なものの3通りがあり、関連告示等を見て判断します。国の安全等の観点で審査が必要となるおそれがある業種等では、あらかじめ財務大臣と事業所管大臣に届け出なければなりません(27条)。譲り渡し側が海外企業なら、所在国の外資規制への対応も必要になりえます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える事前届出後は、受理の日から30日を経過するまで投資できない。国の安全等の審査が必要なときは4か月まで延長できる。
  • ひっかけに注意「日本法に基づき設立された会社は外国投資家に当たらない」は誤り。外国投資家が議決権の50%以上を持つ会社等は当たる。
  • よく問われる点手続は事前届出・事後報告・いずれも不要の3通り。外国投資家による非上場株式の取得は、割合にかかわらず原則対象。

別名・略称:外国為替及び外国貿易法図解で確認:法務基礎出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.30、外国為替及び外国貿易法(外為法)、外国為替及び外国貿易法(外為法)(当社にて要約)

外部委託先の管理

がいぶいたくさきのかんり倫理・行動規範

M&A専門業者が業務の一部を第三者に委託するとき、委託先の適正な業務遂行を確保すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&A専門業者は、業務の一部を別の仲介者・FAに委託したり、マッチング支援の架電を営業専門会社に依頼したりすることがあります。中小M&Aガイドラインは、委託しても委託業務の最終的な責任は免れないとし、次の対応を求めています。選定基準を定めるなどして適切な委託先を選ぶこと。依頼者に秘密保持義務を負う情報を委託先に提供する場合は、委託先にも同様の義務を負わせ、さらに第三者に渡らないようにし、依頼者に説明して了承を得ること。委託契約で委託業務を明らかにすること。責任部署を明確にして遂行状況を確認し、監督・指導すること。委託業務の苦情を委託元が受け付けることです。なお、依頼者が元の支援機関以外の者に直接DDを依頼する場合は、ここでいう委託に含まれません。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「業務を委託すれば責任は委託先に移る」は誤り。委託業務の最終的な責任は委託元が免れない。
  • ひっかけに注意依頼者に説明・了承を得ずに秘密情報を委託先へ渡すのは禁忌肢になりうる。
  • 義務か・望ましいか委託先の実施状況を合理的に把握する規定を委託契約に盛り込むことは「望ましい」。

図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.82、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.83(当社にて要約)

買戻し条項

かいもどしじょうこうM&A実務法務

クロージング後に経営者保証等が解除されない場合に、譲り渡し側株主が契約を解除し、株式を買い戻せると定める条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

譲り渡し側の経営者にとって、M&A後も会社の借入れの個人保証(経営者保証)が残り続けることは大きな不安です。中小M&Aガイドラインの株式譲渡契約書サンプル第15条の2は、その救済として解除特則と買戻し条項を置いています。次の事由があれば、譲り渡し側株主は、書面通知で契約を解除し、又は相当な価額で株式を買い戻せます。①クロージング日から一定期間を過ぎても保証が解除されない、②譲り受け側が期限内に金融機関に具体的な相談を始めない、③金融機関が解除不可等としたのに、譲り受け側が期限内に借換え等の自己負担で解除しない。ただし、クロージング後は譲り受け側が経営権・預金口座・印鑑を握っているため、実際の取り戻しは困難を極めると予想されます。買戻し価額を確定額や計算方法で定めることも考えられます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える行使期間はクロージング日から「1年」。事由は「3か月」経過しても未解除、「14日」以内に相談を始めない、「1か月」以内に自己負担での解除をしない。
  • 数字を覚える譲り受け側は、クロージング日から「6か月」経過かつ事由該当時に行使するかの催告ができ、その後1か月行使がなければ行使できなくなる。
  • ひっかけに注意「買戻し条項があれば安心」は誤り。解除・買戻しは例外的事態で、クロージング前の早い段階から金融機関等への相談を始めることが求められる。

別名・略称:解除特則図解で確認:最終契約出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.22、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.23(当社にて要約)

加算税・延滞税

かさんぜい・えんたいぜい財務・税務

申告や納付が期限内に正しく行われなかったときに、本来の税金に加えてかかる税。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

税金は期限までに正しく申告し、納める必要があります。申告期限までに申告しなかった場合や、実際より少ない額で申告した場合には、本来の税金のほかに加算税がかかることがあります。また、期限までに納めなかった場合には延滞税がかかります。たとえば相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を所轄する税務署に申告し、納税も申告期限までに行います。これを守らないと、加算税や延滞税がかかる場合があります。M&Aの税務DDで把握する過年度の申告漏れなどの税務リスクも、後で判明すれば追徴課税として、こうした追加の負担につながり得ます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内。納税も申告期限までに行う。
  • ひっかけに注意「相続税の申告書は相続人の住所地の税務署に提出する」は誤り。被相続人の住所地を所轄する税務署に提出する。
  • 似た用語との違い加算税は無申告や過少申告に対して、延滞税は期限までに納めなかったことに対してかかる。

別名・略称:加算税、延滞税図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.112(当社にて要約)

課税所得

かぜいしょとく財務・税務

法人税がかかる対象となる各事業年度の所得の金額。益金の額から損金の額を差し引いて求める。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人税の課税標準(税額計算のもとになる金額)は各事業年度の所得の金額で、益金の額から損金の額を控除した金額です。会計上の利益(収益−費用)と考え方は似ていますが、同じではありません。決算で確定した会計上の利益を出発点に、税法の別段の定めによって加算・減算する調整(申告調整)を行って所得を計算します。たとえば、損金に算入できない役員給与は加算し、益金に算入しない受取配当等は減算します。こうして求めた所得に税率を掛けて法人税額を計算します。普通法人の基本税率は23.2%で、資本金1億円以下の中小法人等には年800万円以下の部分に軽減税率があります。過去の欠損金があれば、繰越控除で所得を減らせます。

例仮の数値で、中小法人の所得1,300万円なら、800万円×15%+500万円×23.2%=236万円です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「法人税の課税標準は損益計算書の当期純利益そのもの」は誤り。会計上の利益に別段の定めによる加算・減算をして所得を求める。
  • 数字を覚える普通法人の基本税率は23.2%。中小法人等の年800万円以下の部分は、基準日時点では租税特別措置法により15%(本法は19%)。
  • 似た用語との違い「収益−費用」は会計上の利益、「益金−損金」は課税所得。両者を同じものとする選択肢は誤り。

別名・略称:所得の金額図解で確認:財務基礎出典:法人税法、法人税法、法人税法(当社にて要約)

合併

がっぺいM&A実務

譲り渡し側の権利義務の全部を他の会社や新設する会社に包括的に承継させ、譲り渡し側が消滅する手続。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社法が定める組織再編の一つです。譲り渡し側の会社の全ての資産・負債・契約等をまとめて他の会社に引き継がせ、譲り渡し側の会社は消滅します。既存の会社が引き継ぐのが「吸収合併」、合併で新しく作る会社が引き継ぐのが「新設合併」です。法的に一つの法人になるため結合は強く、許認可も個別の業法によってはそのまま引き継がれるケースがあります。一方で、組織内の雇用条件の調整や事務処理手続の一本化が必要になることがあり、簿外債務・偶発債務にも注意が必要です。会社分割と同じく、原則1か月以上の債権者保護手続を含む会社法上の手続と登記が必要で、合併の旨は履歴事項全部証明書にも記載されます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い合併は権利義務の「全部」を承継し譲り渡し側は消滅する。会社分割は事業に関する権利義務の「全部又は一部」を承継し、分割会社は存続する。
  • 数字を覚える債権者保護手続の異議申述期間は原則1か月以上。期間内に異議を述べなかった債権者は承認したものとみなされる。
  • よく問われる点合併では消滅会社の労働契約が存続会社等に包括的に承継され、労働条件もそのまま維持される。

別名・略称:吸収合併図解で確認:事前相談出典:参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.3、会社法、会社法(当社にて要約)

株価調整条項

かぶかちょうせいじょうこうM&A実務財務・税務

最終契約からクロージングまでに企業価値が変動した場合に、クロージング時に譲渡額を調整することを定める条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約で譲渡額を決めてから、実際に株式と代金を受け渡すクロージングまでには時間差があります。その間に譲り渡し側の企業価値が変わったとき、その変動を踏まえてクロージング時に譲渡額を調整すると定めるのが株価調整条項です。アーンアウト条項・支払金の返還に関する条項とともに、最終契約後に譲渡額を調整・修正する条項の一つです。調整額の算出方法が曖昧だと、争いに発展するリスクがあります。中小M&Aでは最終契約からクロージングまでの期間が短いことが多いため、設けるべきか慎重に検討すべきとされています。設ける場合は、調整が発生する条件や方法の妥当性を確認し、明確かつ詳細な内容にする必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い対象は「最終契約からクロージングまで」の企業価値の変動。クロージング後の目標達成で追加対価を払うのはアーンアウト条項。
  • ひっかけに注意「中小M&Aは最終契約からクロージングまでの期間が長いので、原則として設けるべき」は誤り。期間が短いことが多く、設けるか慎重に検討する。
  • よく問われる点当事者間の調整が十分になされていない段階で、安易に提案すべきでないとされる(スキルマップ)。

別名・略称:価格調整条項図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.55、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.54、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.144(当社にて要約)

株券発行会社

かぶけんはっこうがいしゃ法務

定款で株券を発行する旨を定めている株式会社のこと(会社法214条)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社法では株券を発行しないのが原則で、定款に定めた場合だけ株券を発行します(214条)。株券発行会社かどうかで、株式譲渡の手続が大きく変わります。株券発行会社では、株式の譲渡は株券を交付しなければ効力を生じません(128条1項)。一方、株券不発行会社では当事者の意思表示で譲渡の効力が生じ、株主名簿の名義書換が会社その他の第三者に対抗するための要件(対抗要件)になります(130条1項)。株券発行会社は株式発行後遅滞なく株券を発行しなければなりませんが、公開会社でない株券発行会社は、株主から請求があるまで発行しないことができます(215条)。定款に株券発行の定めが残っている中小企業も多いため、M&Aでは定款と登記簿で確認します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「株券を実際に発行していなければ株券発行会社ではない」は誤り。定款に株券発行の定めがあれば株券発行会社である。
  • よく問われる点株券発行会社の株式譲渡は株券の交付が効力要件(128条1項)。確認せず株券を交付しないまま代金を決済させるのは重大な誤り。
  • 似た用語との違い株券発行会社では、名義書換は会社に対する対抗要件にとどまり、第三者への対抗は株券の占有による(130条2項)。

別名・略称:株券不発行会社図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

株式移転

かぶしきいてんM&A実務

株式会社が発行済株式の全部を、新たに設立する株式会社に取得させること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社法が定める組織再編の一つです(会社法2条32号)。1つ又は2つ以上の株式会社が、自社の発行済株式の全部を、この手続で新しく作る株式会社に取得させます。その結果、新しく作った会社が完全親会社(持株会社)になり、元の会社はその完全子会社になります。2つの会社で行えば、新しい親会社の下に両社が兄弟会社として並ぶ形になります。株式交換と同じく、完全親子会社の関係を作れて、現金対価が不要というメリットがあります。一方で、法人格は存続するものの子会社又は兄弟会社の関係に立つため、事後的な補償請求が難しくなるというデメリットがあります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い株式移転は「新たに設立する」会社が完全親会社になる。株式交換は「既存の」会社が完全親会社になる。入れ替えに注意。
  • よく問われる点株式移転は1又は2以上の株式会社が行える。株式交換では親会社になれるのは株式会社又は合同会社。
  • よく問われる点交換・移転とも現金対価が不要。子会社・兄弟会社の関係に立つため、事後的な補償請求が困難になる点がデメリット。

図解で確認:事前相談出典:会社法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.33(当社にて要約)

株式交換

かぶしきこうかんM&A実務

株式会社が発行済株式の全部を、既存の他の株式会社又は合同会社に取得させること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社法が定める組織再編の一つで、相手の会社を100%子会社(完全子会社)にするための手続です(会社法2条31号)。対象会社の株主が持つ株式の全部が既存の会社(完全親会社になる会社)に移り、その対価として、親会社側の株式等が株主に渡されます。対価に自社の株式を使えるので、現金を用意しなくてもよい(現金対価が不要)というメリットがあります。一方で、対象会社の法人格は残るものの、自社の子会社の関係に立つため、後から問題が見つかっても相手に補償を求めること(事後的な補償請求)が難しくなるというデメリットがあります。中小M&Aでは主な手法に次ぐ「その他の手法」として紹介されています。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い株式交換は「既存の」会社に発行済株式の全部を取得させる。株式移転は「新たに設立する」株式会社に取得させる。
  • よく問われる点メリットは完全親子会社の関係を作れることと現金対価が不要なこと。デメリットは子会社の関係に立つため事後的な補償請求が困難になること。
  • ひっかけに注意「株式交換では対象会社の法人格が消滅する」は誤り。法人格は存続し、子会社となる。消滅するのは合併。

図解で確認:事前相談出典:会社法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.33、参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.3(当社にて要約)

株式交付

かぶしきこうふM&A実務

株式会社が他の株式会社を子会社にするため、その株式を譲り受け、対価に自社株式を交付すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

令和元年12月11日に公布された改正会社法で認められた、比較的新しい組織再編の手法です(会社法2条32号の2)。ある株式会社が、他の株式会社を子会社にする目的で、その会社の株主から株式を譲り受け、代金のかわりに自社の株式を渡します。株式交換が相手の発行済株式の「全部」を取得して完全子会社にする手続であるのに対し、株式交付は「子会社とする」ための手続で、全部の取得を前提としていない点が違います。中小M&Aでは、株式交換・株式移転とともに「その他の手法」として紹介され、各種手法を組み合わせることもあり得るとされています。完全親子会社の組織を作れる点がメリット、事後的な補償請求が難しくなる点がデメリットとして整理されています。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い株式交付の目的は「子会社化」で、発行済株式の全部の取得を要しない。株式交換・株式移転は発行済株式の「全部」を取得させる。
  • 数字を覚える株式交付は令和元年12月11日公布の改正会社法で認められた手法。
  • よく問われる点対価は株式交付をする会社(親会社となる会社)の株式。株式の譲渡人(対象会社の株主)に交付する。

図解で確認:事前相談出典:会社法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.33、参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.3(当社にて要約)

株式譲渡

かぶしきじょうとM&A実務

譲り渡し側の株主が、持っている株式を譲り受け側に譲渡するM&Aの手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aで最もよく使われる手法の一つです。会社の持ち主(株主)が変わるだけで、会社そのものはそのまま残り、譲り受け側の子会社になるイメージです。そのため、会社の資産・負債・従業員や取引先との契約・許認可等は原則として存続し、手続も他の手法より相対的に簡便です。その反面、未払残業代のような帳簿に表れない簿外債務や、将来発生しうる偶発債務(例:紛争の損害賠償)もそのまま引き継ぎます。そのため、譲り受け側は全般的・網羅的な法務DDを行うことが多いです。また、賃貸借契約等にチェンジ・オブ・コントロール条項(支配権が変わると契約を解除できる等の条項)があると、事前に相手方との協議が必要になることがあります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い株式譲渡では許認可が原則として存続する。事業譲渡では許認可は承継されないことが多く、譲り受け側で新規取得が必要。
  • よく問われる点簿外債務・偶発債務もそのまま引き継ぐため、全般的・網羅的な法務DDを行うことが多い。法務DDでは特に株式・労務で何らかの事項が検出されやすい。
  • よく問われる点チェンジ・オブ・コントロール条項がある契約は、継続のため事前に賃貸人等との協議・交渉が必要になることがある。

図解で確認:事前相談出典:参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.1、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.114(当社にて要約)

株式の共有と権利行使者

かぶしきのきょうゆうとけんりこうししゃ法務

複数人で共有する株式について、共有者が定めて会社に通知する、権利を行使する1人のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

オーナー経営者が亡くなり、遺産分割がまだ終わっていないと、その株式は相続人全員の準共有(株式のような財産権を複数人で共有する状態)になります。このとき、共有者がそれぞれ自由に議決権などを行使できるわけではありません。会社法106条は、共有者が権利を行使する者1人を定め、その氏名等を会社に通知しなければ、会社が同意した場合を除き権利を行使できないとしています。そのため、相続が発生した株主がいると、株主総会の決議やM&Aの意思決定、株式譲渡に支障が出ることがあります。M&Aでは、株式を譲渡する前に、遺産分割や権利行使者の指定を整理しておく必要があります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「共有者の1人が持分に応じて単独で議決権を行使できる」は誤り。権利行使者1人を定めて会社に通知するのが原則。
  • よく問われる点権利行使者の通知がなくても、会社が同意した場合は権利行使できる(会社法106条ただし書)。

別名・略称:権利行使者、準共有図解で確認:法務基礎出典:会社法(当社にて要約)

株式併合

かぶしきへいごう法務

いくつかの株式を合わせて、それより少ない数の株式にすること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、少数株主から株式を取得して会社から締め出す(スクイーズアウト)手段として使われます。併合の割合を大きくすると少数株主の持株が1株に満たない端数になり、その端数が金銭で処理されるためです。株式併合をするには、その都度、株主総会の特別決議で、併合の割合、効力発生日、効力発生日における発行可能株式総数などを定め、取締役は総会で併合が必要な理由を説明しなければなりません(会社法180条)。端数が生じる場合、反対株主は、端数となる株式の全部を公正な価格で買い取るよう会社に請求できます(182条の4)。議決権の9割以上を持つ株主なら総会を経ずに株式等売渡請求を使えるため、9割に届かない場合に株式併合が検討されます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「株式併合は普通決議で足りる」は誤り。株主総会の特別決議が必要(309条2項4号)。
  • 数字を覚える端数の買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までに行う。
  • 似た用語との違い株式等売渡請求は議決権9割以上の株主が総会決議なしで使える。9割未満なら株式併合(特別決議)を使う。

別名・略称:株式の併合図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

株主価値

かぶぬしかちM&A実務財務・税務

企業の価値のうち、株主に帰属する部分。株式の価値のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aで株式を売買するときの価格を考える土台になる値です。DCF法では、事業が生むキャッシュフローから事業価値を求め、そこに現預金などの非事業用資産を加えて企業価値とし、さらに借入金などの有利子負債を差し引いて株主価値を出します。企業全体の価値から、お金を貸している債権者の取り分を除いた残りが株主の取り分という考え方です。コストアプローチ(時価純資産法)では、資産・負債を時価評価した差額の純資産を株主価値とみます。マルチプル法では、PER倍率法とPBR倍率法が株主価値を、EV/EBITDA倍率法が企業価値を算定します。算定された値は交渉の参考であり、当事者が最終的に合意した額が譲渡額となります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点事業価値+非事業用資産=企業価値、企業価値-有利子負債=株主価値。加算と控除を入れ替えた選択肢は誤り。
  • 似た用語との違いPER倍率法(当期純利益)とPBR倍率法(簿価純資産)は株主価値を、EV/EBITDA倍率法は企業価値(EV)を算定する。
  • ひっかけに注意「算定した株式価値は客観的な値で、交渉でもそのまま用いる」は誤り。算出額はあくまで参考で、合意した額が譲渡額。

別名・略称:株式価値、株式価額図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.48、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42(当社にて要約)

株主総会

かぶぬしそうかい法務

株主で構成され、会社の基本的な事項や重要な事項を決議する株式会社の機関。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、事業譲渡や合併の承認、定款変更など、多くの手続で株主総会の決議が必要になります。招集は原則として取締役が行い、会日の2週間前(公開会社でない会社は1週間前)までに株主へ通知を発します。中小企業は株主が少ないことが多く、株主全員の同意があれば招集手続を省略して開催できます。さらに、議決権を行使できる株主全員が提案に書面等で同意すれば、総会を開かなくても可決の決議があったものとみなされます(書面決議)。なお、取締役会設置会社の株主総会は、会社法と定款で定めた事項に限って決議できます。決議には普通決議・特別決議・特殊決議があり、事項ごとに必要な賛成の数が違います。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える招集通知は会日の2週間前まで。公開会社でない会社は1週間前まで(取締役会非設置なら定款でさらに短縮できる)。
  • よく問われる点書面決議は、議決権を行使できる株主「全員」の同意が要件。過半数や3分の2の同意では決議があったとみなされない。
  • 数字を覚える書面決議の同意書面は、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く。

別名・略称:定時株主総会図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

株主名簿

かぶぬしめいぼ法務

株主の氏名・住所、保有株式数、取得日などを記載した、会社が作成し備え置く名簿。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

株主名簿は、だれが何株を持っているかを会社が管理するための帳簿で、株式会社は作成して本店に備え置かなければなりません(会社法121条・125条)。株主や債権者は閲覧等を請求できます(125条)。株式の譲渡は、取得者を株主名簿に記載しなければ会社その他の第三者に対抗できません(130条1項)。M&Aの法務DDでは、株主構成と株式の移動を確かめる基本資料として必ず確認します。中小企業では未作成や不正確な例が多く、譲渡承認の議事録や契約書などの証憑とあわせて確かめます。株券不発行会社の株主は、自分についての記載事項を書いた書面(株主名簿記載事項証明書)の交付を請求でき、株式譲渡のクロージングでは名義書換後にこの書面を受け取って確認するのが一般的です(122条)。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点株式の譲渡は株主名簿に記載しなければ会社その他の第三者に対抗できない(会社法130条1項)。
  • 似た用語との違い株主名簿記載事項証明書は株券不発行会社の制度(代表取締役が署名又は記名押印)。株券発行会社には適用せず、株券そのものを交付する。

別名・略称:株主名簿記載事項証明書図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

株主リスト

かぶぬしりすと法務

総会決議などを要する登記の申請に添付する、主要な株主の氏名・住所・株式数・議決権数などを証する書面。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

商業登記の申請で、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合に添付が求められる書面です(商業登記規則61条3項)。対象となる株主は、議決権の割合が高い順に、①上位10名、②議決権の割合を合計して3分の2に達するまでの人数、のうち少ない方の人数です。各株主の氏名又は名称、住所、株式数、議決権数、議決権の割合を記載します。登記すべき事項について株主全員の同意を要する場合は、株主全員の氏名・住所・株式数・議決権数を証する書面を添付します(61条2項)。M&Aでは、クロージング後の役員変更登記などで必要になります。名義株(名義と実際の所有者が違う株式)や所在不明株主がいると、正確なリストを作るのに支障が出ます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「総会決議を要する登記には原則として株主全員分を添付」は誤り。上位10名と、議決権割合が3分の2に達するまでの人数の少ない方。
  • 似た用語との違い株主全員の同意を要する登記では、株主全員について氏名・住所・株式数・議決権数を証する書面を添付する。
  • よく問われる点名義株や所在不明株主がいると、株主リストの作成に支障が出る。

図解で確認:法務基礎出典:商業登記規則(当社にて要約)

簡易合併・略式合併

かんいがっぺい・りゃくしきがっぺいM&A実務法務

一定の場合に、当事会社の一方で株主総会の承認決議を省略できる合併。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

合併は原則として、存続会社と消滅会社のそれぞれで株主総会の特別決議が必要です。簡易合併は、存続会社が消滅会社の株主に交付する対価の額が、存続会社の純資産額の5分の1以下の場合で、存続会社の総会決議が不要になります。ただし、差損が生じる場合や、公開会社でない存続会社が譲渡制限株式を交付する場合は使えず、一定数の株主が反対を通知すると総会が必要になります。略式合併は、親会社が子会社の議決権の90%以上を持つ(特別支配会社である)親子会社間の合併で、支配される側の会社の総会決議が不要になります。どちらの場合も、債権者保護手続(官報公告と知れている債権者への個別催告)は省略できません。会社分割や株式交換にも同様の制度があります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える簡易合併は対価が存続会社の純資産額の5分の1以下、略式合併は議決権の90%(10分の9)以上。「3分の2以上」は誤り。
  • よく問われる点簡易手続による場合、株主は組織再編の差止請求ができず、原則として反対株主の株式買取請求もできない。
  • 似た用語との違い消滅会社等の側の簡易手続は分割会社だけ(承継資産の帳簿価額が総資産額の5分の1以下。吸収分割・新設分割とも)。合併の消滅会社にはない。

別名・略称:簡易合併、略式合併、簡易組織再編、略式組織再編図解で確認:法務基礎出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.33、会社法、会社法(当社にて要約)

簡易手続(事業譲渡等)

かんいてつづきじぎょうじょうととうM&A実務法務

会社への影響が小さい事業の譲受けや組織再編で、株主総会決議を省略できる手続のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業譲渡等や組織再編は原則として株主総会の特別決議が必要ですが、会社の規模に比べて取引が小さいときにまで総会を開くのは負担が大きいため、決議を省略できる簡易手続があります。事業譲渡等では、他の会社の事業全部の譲受けで、対価の帳簿価額が譲受会社の純資産額の5分の1以下なら、譲受会社の総会決議は不要です(会社法468条2項)。組織再編では、吸収分割で承継させる資産の帳簿価額が分割会社の総資産額の5分の1以下なら、分割会社の総会が不要です(784条2項)。ただし簡易の場合でも、法務省令で定める数の株式を持つ株主が、通知・公告の日から2週間以内に反対を通知すると、総会決議が必要になります(468条3項)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い簡易の分母は、事業全部の譲受け側では「純資産額」、譲渡側の重要な一部の譲渡や吸収分割会社では「総資産額」。
  • よく問われる点消滅会社等の側で簡易手続があるのは分割会社だけ(吸収分割784条2項・新設分割805条)。吸収合併の消滅会社や株式交換完全子会社にはない。
  • 数字を覚える一定数の株式を持つ株主が通知・公告から2週間以内に反対を通知すると、総会決議が必要になる。

別名・略称:簡易事業譲渡、簡易な事業譲受け図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法、会社法(当社にて要約)

簡易評価

かんいひょうかM&A実務倫理・行動規範

仲介者が参考資料として簡易に算定した、企業価値の概算額・暫定額のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者が行うバリュエーションの場面で出てくる言葉です。バリュエーションには一方当事者の意向が反映されやすいという性質があります。仲介者は譲り渡し側・譲り受け側の両方から依頼を受けているため、一方に偏った確定的な評価をすると、もう一方の利益を損なうおそれがあります。そこで知識・スキルマップは、両当事者を依頼者とする仲介者は確定的なバリュエーションを実施せず、示すのはあくまで参考資料として簡易に算定した概算額・暫定額にとどめることとしています。そのうえで、仲介者は一定の事項を明示しなければなりません。セカンド・オピニオンは、バリュエーション以外のプロセスでも活用され得るとされています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点明示事項は3点:①簡易に算定した概算額・暫定額である旨 ②一方当事者の意向・意見等を考慮した場合はその内容 ③必要に応じ士業等専門家等にセカンド・オピニオンを求められる旨。
  • ひっかけに注意「一方の意向を考慮したことは、他方に不利になるので伏せる」は誤り。考慮した意向・意見等の内容は両当事者に明示しなければならない。
  • 義務か・望ましいか仲介者は確定的なバリュエーションを実施せず、上の事項を明示「しなければならない」。

図解で確認:バリュエーション出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.40(当社にて要約)

環境DD

かんきょうでぃーでぃーM&A実務

環境問題のリスクを可視化し、環境対応の観点から企業価値を正しく判断するためのDD。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

知識・スキルマップで「その他DD」の一つとして整理されている調査です。工場や研究開発設備、その跡地では土壌・水質・大気の汚染が起きている可能性があり、問題が見つかると原状回復等のコストがかかります。そこで、環境問題に対するリスクを見える形にし、企業価値を正しく判断するために行います。環境への影響の発生可能性や深刻さに応じて、実施範囲・方法・頻度を決めます。国内の環境法令(土壌汚染対策法、水質汚濁防止法、大気汚染防止法等)に加え、環境に関する国際条約の知識も求められます。必要に応じて既存の取引先も調査範囲に含め、常に最新の法規制を踏まえて調査します。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い国際条約の対応:PoPs条約=ストックホルム条約、PIC条約=ロッテルダム条約、有害廃棄物の越境移動=バーゼル条約、オゾン層保護=ウィーン条約・モントリオール議定書。
  • よく問われる点負の影響への対応の優先順位付けの指標は「規模・範囲・是正不能性」の3観点。影響を受けた生物の種の数は「範囲」の指標。
  • よく問われる点欧州を中心にバリューチェーン全体での環境DDを義務付ける規制を検討する動きがあり、海外取引がある場合は留意する。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.129、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.130、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.124(当社にて要約)

関係者の不適切な行為の放置

かんけいしゃのふてきせつなこういのほうち倫理・行動規範

自己の関係者による不適切な行為を予見・認識しながら、止めさせる措置を講じないこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

支援者本人が不正をしなくても、部下や業務の委託先など自分の関係者が不適切な行為をしていると知りながら放っておけば、結果として依頼者や関係者が害されます。そこでスキルマップの倫理・行動規範#48後段は、自己の関係者による不適切な行為について予見・認識しながら、これを停止等させるための客観的に可能かつ有用な措置を講じない行為をしてはならないとしています。ポイントは、損害が生じた後ではなく、予見・認識した段階で対応が求められることです。

例部下が譲り受け側から成約後に個人的な謝礼を受け取る約束をしているらしいと知った上司は、事実を確認し、受領をやめさせ、担当の見直しを含めて社内規程に沿って組織として対応します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「関係者の不適切な行為への対応は、実際に行われて損害が生じた後に検討すれば足りる」は誤り。予見・認識した段階で措置を講じる。
  • ひっかけに注意「成約間近なので、成約後に本人に注意すれば足りる」は誤り。成約後まで放置することは#48に反する。
  • よく問われる点部下個人の問題として見過ごすことも放置に当たる。求められるのは「客観的に可能かつ有用な」停止等の措置。

図解で確認:その他禁止行為出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.13(当社にて要約)

完全合意条項

かんぜんごういじょうこうM&A実務法務

当事者間の合意内容を、契約書に記載した内容だけに限定する条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aの交渉では、条件の多くを話し合いで決めていきます。しかし最終契約に完全合意条項を設けると、契約書に書かれた内容だけが当事者の合意とされます。そのため、書面以外の取り決めや口頭での合意は法的に担保されません。交渉の途中で経営者の処遇について口約束をしていても、契約書に書いていなければ守られる保証はないということです。株式譲渡契約書サンプルの完全合意条項では、秘密保持契約を含め、それまでの取決めは全て効力を失うとされています。このため、重要な合意事項、特にクロージング後の誓約事項は、全て具体的に条文化して契約書に記載しておく必要があります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「契約書に記載のない口頭合意も、契約書の条項と同等の効力を持つ」は誤り。書面外の取り決めや口頭合意は法的に担保されない。
  • よく問われる点株式譲渡契約書サンプルの完全合意条項では、秘密保持契約を含む従前の取決めは全て失効するとされている。
  • 似た用語との違い完全合意条項は合意の範囲を契約書の記載に限定する条項。クロージング時の履行確認の条項でも、重大な悪影響時の解除(MAC条項)でもない。

図解で確認:最終契約出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.136、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.147、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.28(当社にて要約)

完全支配関係

かんぜんしはいかんけい財務・税務

一の者(個人を含む)が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係など、100%の支配関係。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

完全支配関係は、法人税法でグループの範囲を決める概念です。一の者が法人の発行済株式等(自己株式を除く)の全部を直接又は間接に保有する関係、又はその一の者との間に完全支配関係がある法人同士の関係をいいます。「一の者」には法人だけでなく個人(同族関係者を含む)も含まれるため、同じ個人オーナーが100%保有する会社同士(兄弟会社)も完全支配関係にあります。これに対し、50%超を保有する関係は支配関係です。完全支配関係は、グループ法人税制(譲渡損益の繰延べなど)、グループ通算制度、適格現物分配、受取配当等の益金不算入(完全子法人株式等)など、多くの制度の基準になります。組織再編税制では、完全支配関係のある法人間の再編は、従業者引継などの要件が原則不要です。また、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人は、中小法人等の特例を使えません。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「一の者は法人に限られ、個人が100%保有する兄弟会社間には生じない」は誤り。個人(同族関係者を含む)も含まれる。
  • 似た用語との違い完全支配関係は発行済株式等(自己株式を除く)の全部、支配関係は50%超の保有。
  • よく問われる点寄附金の全額損金不算入・受贈益の全額益金不算入は「法人による」完全支配関係に限られ、個人オーナーの兄弟会社間には適用されない。

図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法、法人税法、法人税法(当社にて要約)

官報公告

かんぽうこうこく法務

国が発行する官報に掲載して、法律で求められる事項を広く知らせること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは主に、合併や会社分割の債権者保護手続で登場します。合併や会社分割では、債権者の知らないうちに債務者や財産の状況が変わるため、会社は、組織再編をすることや債権者が異議を述べられることなどを官報に公告し、知れている債権者には各別に催告しなければなりません。異議を述べられる期間は1か月以上です。官報に加えて、定款で定めた日刊新聞紙への掲載又は電子公告でも公告すれば(いわゆるダブル公告)、各別の催告を省略できます。ただし、吸収分割で分割会社に請求できなくなる不法行為債権者への催告は省略できません。期間内に異議がなければ承認したものとみなされ、異議を述べた債権者には、弁済や相当の担保の提供等をします。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える債権者が異議を述べられる期間は1か月以上。
  • よく問われる点合併の債権者保護手続は、官報公告と知れている債権者への個別催告の両方が必要。官報公告だけでは足りない。
  • ひっかけに注意「ダブル公告をすれば個別催告はすべて省略できる」は誤り。吸収分割の不法行為債権者への催告は省略できない。

別名・略称:官報図解で確認:法務基礎出典:会社法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.33(当社にて要約)

カーブアウト

かーぶあうとM&A実務財務・税務

会社の事業の一部を切り出して、M&Aの対象とすること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社を丸ごとではなく、ある事業部門だけを売買する場面で使われるのがカーブアウトです。日本銀行のレビューでは、事業会社のノンコア・不採算事業の購入(カーブアウト)が、LBO(借入れを使った買収)の主な目的の一つに挙げられています。切り出される事業は、それまで譲り渡し側の一部門として本社の人員・設備・システムを共有し、共通費も社内の前提で配賦(各部門への割り振り)されています。そのため、切り出した後の運営を想像し、人員、業務フロー、契約、共通費、資産・設備、システムをどう分けるか(スタンドアローン・イシュー)を検討します。財務DDでは、譲り渡し側が作るカーブアウト財務諸表と、事業を続けるのに実際に必要なキャッシュフローとの差に注意します。短期間で分けられないものは、TSA等の付随契約で対処します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点カーブアウト財務諸表で共通費が精緻に見積もられている例は稀。提出されたものをそのまま事業計画の前提にしない。
  • よく問われる点製造所・物流センター等の全社共通資産は、切り出す事業の運用方法を決めないとカーブアウトBSに含める範囲・金額を決められない。
  • 似た用語との違いカーブアウト財務諸表の検証は財務・税務DDの調査項目。法務DDの項目ではない。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.110、日銀レビュー「LBOファイナンスの動向とリスク管理」(2024年5月、2024-J-8)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.111(当社にて要約)

企業概要書(IM)

きぎょうがいようしょM&A実務

秘密保持契約の締結後に譲り受け側へ示す、譲り渡し側の実名や事業・財務の情報を記した資料。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

ノンネーム・シートで関心を示した候補先と秘密保持契約を結んだ後に渡す、詳しい会社紹介の資料です。インフォメーション・メモランダム(IM)やインフォメーション・パッケージ(IP)とも呼ばれます。譲り渡し側の実名や、事業・財務に関する一般的な情報など具体的な情報を記載し、仲介者・FAが譲り渡し側から提供された情報(会社パンフレット、登記簿謄本、決算書、組織図、事業計画書等)を元に作ることが多いです。譲り渡し側の強みだけでなく、誠実な取引の観点から、想定されるリスクと対応策も同時に開示することが求められます。記載内容は譲り渡し側の同意を得て最終化し、作成時に判明しないリスクはディスクレーマー(免責の留保)等で適切に留保します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点IMの提示は秘密保持契約の締結「後」。NDA前に幅広く送るのはノンネーム・シート。
  • ひっかけに注意「IMには強みのみを記載し、リスクはDDで判明するまで書かない」は誤り。想定されるリスクや対応策も同時に開示することが求められる。
  • ひっかけに注意「IMは譲り受け側が作成して譲り渡し側に提出する」は誤り。仲介者・FAが譲り渡し側の情報を元に作り、譲り受け側に提示する。

別名・略称:IM、IP、Information Memorandum図解で確認:マッチング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.53(当社にて要約)

企業価値(EV)

きぎょうかち財務・税務

事業が生み出す価値(事業価値)に、現預金などの非事業用資産を加えた会社全体の価値。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aの価値評価では、「事業価値」「企業価値」「株主価値」という似た言葉を区別して使います。DCF法の手順では、将来のフリー・キャッシュ・フローと継続価値をWACCで割り引いて事業価値を求め、そこに現預金などの非事業用資産を加えたものを企業価値(EV:Enterprise Value)とします。そこから有利子負債を差し引いた残りが株主価値です。マルチプル法でも同じ区別があり、EV/EBITDA倍率法で算定されるのは企業価値で、株式価値を求めるにはさらに純有利子負債(有利子負債−現預金)を差し引きます。一方、PER倍率法・PBR倍率法は株主価値を算定します。どの手法で何が算定されるのかを正確に押さえることが、計算問題を解く鍵になります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点事業価値+非事業用資産=企業価値。企業価値−有利子負債=株主価値(DCF法の手順)。
  • ひっかけに注意「EV/EBITDA倍率法は株主価値を直接算定する」は誤り。算定されるのは企業価値(EV)で、純有利子負債を控除して株式価値を出す。
  • 似た用語との違いPER倍率法・PBR倍率法が算定するのは株主価値。EV/EBITDA倍率法は企業価値。

別名・略称:EV図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.48、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.4(当社にて要約)

企業結合

きぎょうけつごう財務・税務

ある企業又は事業と、他の企業又は事業とが1つの報告単位に統合されること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

企業結合は「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)で使われる会計上の用語で、M&Aを会計処理するときの出発点になる概念です。合併、株式取得による子会社化、事業の譲受け、会社分割などが含まれます。この基準では関連する用語も定義されています。「事業」は、企業活動を行うために組織化され、有機的一体として機能する経営資源をいいます。「支配」は、ある企業や事業の財務及び経営方針を左右する能力、「取得」は、他の企業又は事業に対する支配を獲得することです。企業結合は、共同支配企業の形成、共通支配下の取引(グループ内の再編)、それ以外の「取得」に分けて会計処理を考え、取得にはパーチェス法を使います。複数の取引が1つの企業結合を構成する場合は一体として扱います。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「株式取得による子会社化は企業結合に含まれない」は誤り。合併・株式取得による子会社化・事業譲受け・会社分割等が含まれる。
  • ひっかけに注意「取得とは議決権の過半数を保有することだけをいい、支配の有無は問わない」は誤り。取得は支配の獲得をいう。
  • よく問われる点「事業」は組織化され有機的一体として機能する経営資源。個々の資産の単なる寄せ集めは事業に当たらない。

図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)(当社にて要約)

企業結合の事前届出

きぎょうけつごうのじぜんとどけで法務

一定規模以上の株式取得や合併などを行う前に、独占禁止法に基づき公正取引委員会に届け出ること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

大きな会社同士の企業結合は、市場の競争に影響するおそれがあるため、独占禁止法は一定規模以上の企業結合について、実行前に公正取引委員会への届出を求めています。株式取得では、企業結合集団の国内売上高合計額が200億円超の会社が、国内売上高(子会社を含む)50億円超の会社の株式を取得し、議決権保有割合が20%又は50%を超えることとなる場合に、あらかじめ届け出ます(10条2項、施行令16条)。合併・共同株式移転は、一方が200億円超・他方が50億円超のときです(15条2項・15条の3第2項)。事業の全部の譲受けは、譲受会社が200億円超で譲渡会社が30億円超のときです(16条2項)。具体的な金額は施行令で定められています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える株式取得:取得会社200億円超・発行会社50億円超、議決権20%超又は50%超。事業全部の譲受けの相手方基準は30億円超。
  • よく問われる点全当事会社が同一の企業結合集団に属する合併など(グループ内再編)は届出不要。
  • ひっかけに注意届出が必要なのに、届出前にクロージング(株式取得)を実行するのは誤り。届出受理後の待機期間が過ぎるまで株式取得はできない。

別名・略称:企業結合規制図解で確認:法務基礎出典:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(当社にて要約)

議決権

ぎけつけんM&A実務法務

株主が株主総会で議案に賛成・反対の意思を示し、決議に加わる権利。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

株主総会の決議は議決権の数で決まるため、M&Aでは誰がどれだけの議決権を持っているかが、手続を進められるかどうかを左右します。会社法では、普通決議は議決権の過半数を持つ株主が出席し(定足数)、出席株主の議決権の過半数で可決します。特別決議は、定足数が議決権の過半数(定款で3分の1まで下げられる)で、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。中小M&Aガイドラインは、総議決権の過半数があれば総会決議は確実に可決できるものの、全事業の譲渡など特に重要な事項には特別決議が必要になることがあるため、総議決権の3分の2以上を保有しておくことが望ましいとしています。株式が分散していたり、所在不明の株主がいたりすると、M&Aの重大な障害になるおそれがあります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える特別決議の「3分の2以上」は、総株主ではなく出席株主の議決権が基準。定足数は定款で3分の1までしか下げられない。
  • 義務か・望ましいかGLは総議決権の3分の2以上の保有を「望ましい」とする。全株式を譲渡する株式譲渡では、基本的に全株式の保有が「必要」。

別名・略称:総議決権図解で確認:法務基礎出典:会社法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.35(当社にて要約)

基準期間(消費税)

きじゅんきかん財務・税務

消費税の納税義務の有無を判定するための期間。法人は原則として前々事業年度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

消費税には、売上の小さい事業者の納税義務を免除する仕組みがあり、その判定に使うのが基準期間です。法人の基準期間は原則として前々事業年度で、その課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として納税義務が免除されます(免税事業者)。ただし、次の場合は免除されません。適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録をしている場合、特定期間(前事業年度開始の日以後6か月)の課税売上高が1,000万円を超える場合(課税売上高に代えて給与等の支払額で判定してもよい)、課税事業者選択届出をした場合です。新設法人で資本金1,000万円以上の場合なども、免税されない特例があります。事業譲渡では減価償却資産等の譲渡が課税売上に当たるため、課税事業者であれば消費税の課税関係に留意が必要です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える基準期間(法人は原則前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら原則免税。特定期間は前事業年度開始後6か月。
  • ひっかけに注意「基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、インボイス登録事業者も免税」は誤り。登録事業者は免除されない。
  • 数字を覚える標準税率10%は消費税7.8%+地方消費税2.2%。軽減税率8%は消費税6.24%+地方消費税1.76%。

別名・略称:免税事業者、納税義務の免除図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.6501 納税義務の免除、消費税法、国税庁タックスアンサー No.6303 消費税および地方消費税の税率(当社にて要約)

議事録

ぎじろく法務

株主総会や取締役会で、議事の経過や決議の結果などを記録した書面。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社の意思決定が適正な手続で行われたことを示す証拠になる書面です。M&Aでは二つの場面で重要になります。一つは登記で、登記すべき事項について株主総会や取締役会の決議を要するときは、登記申請書に議事録を添付しなければなりません(商業登記法46条2項)。株主全員の書面同意で決議があったとみなされる場合(書面決議)は、そのことを証する書面を添付します。クロージング後の役員変更登記などで、議事録の整備が必要になります。もう一つは法務DDで、定款・登記簿・株主名簿とともに議事録を確認し、株式の譲渡承認や株主総会・取締役会の決議の手続に瑕疵がないかを調べます。中小企業では、過去の株式移動の承認議事録がない例が多いとされます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点決議を要する登記には議事録を、株主全員の同意を要する登記には同意を証する書面を、申請書に添付する。
  • よく問われる点承認議事録がないなどの瑕疵は、追認決議等による治癒を最終契約の前提条件やクロージング後の誓約事項にすることがある。
  • 数字を覚える書面決議の同意書面は、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く。

別名・略称:株主総会議事録、取締役会議事録図解で確認:法務基礎出典:商業登記法、会社法、会社法(当社にて要約)

気付きの機会

きづきのきかいM&A実務

経営者が事業承継について考え始めるきっかけ。支援機関が経営相談等を通じて提供する。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継やM&Aは、経営者自身が必要性に気付かないと準備が始まりません。そこで中小M&Aガイドラインは、身近な支援機関が日頃の接点を生かして気付きの機会を提供することを期待しています。商工団体には、会員向け研修や巡回による経営指導を通じて、特に60歳を超える経営者に事業計画策定やニーズ調査等で積極的に気付きの機会を提供することが、中小企業診断士には、経営相談の中で事業計画や事業承継計画の策定を働き掛けることが期待されます。金融機関では、顧客からの初期相談は通常、営業店が受けます。事業承継はセンシティブな話題のため、伝え方やタイミングに注意が必要です。その後は、ローカルベンチマーク等を活用した見える化・磨き上げの支援につなげます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える商工団体が特に積極的に気付きの機会を提供することが期待されるのは「60歳を超える」経営者。
  • よく問われる点事業承継はセンシティブな話題のため、伝え方やタイミングに注意が必要。金融機関の初期相談は通常、営業店が受け付ける。

図解で確認:事前相談出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.106、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.110、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.121(当社にて要約)

寄附金(法人税)

きふきん財務・税務

法人が支出した金銭等の贈与や、経済的な利益の無償の供与。法人税では損金算入に制限がある。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人税では、見返りなしに他者へ金銭や資産を渡したり、経済的な利益を与えたりしたものを寄附金として扱います。資産を時価より低い価額で譲渡した場合も、時価との差額のうち実質的に贈与と認められる部分は寄附金とされることがあります。一般の寄附金は損金算入限度額を超える部分が損金不算入となり、国・地方公共団体への寄附金や指定寄附金は全額が損金に算入されます。法人による完全支配関係(100%の親子関係など)がある法人間の寄附金は、支出側で全額損金不算入、受け取った側で受贈益の全額が益金不算入です。M&Aの税務DDでは、関係会社間の低額取引が寄附金・受贈益と認定されるリスクを確認します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「個人オーナーが100%支配する兄弟会社間の寄附にも全額損金不算入・益金不算入が適用される」は誤り。法人による完全支配関係に限る。
  • よく問われる点資産の低額譲渡は、時価との差額のうち実質的に贈与と認められる部分が寄附金とされうる。
  • 似た用語との違い国・地方公共団体への寄附金と指定寄附金は全額損金算入。一般の寄附金は限度額を超える部分が損金不算入。

別名・略称:寄附金の損金不算入図解で確認:税務基礎出典:法人税法、所得税法、法人税法(当社にて要約)

基本合意書

きほんごういしょM&A実務法務

譲り渡し側が特定の譲り受け側に絞って交渉すると決めたときに、その時点の了解事項を確認する書面。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

LOIやMOUとも呼ばれます。当事者間の交渉で概ね条件の合意に達したときに結び、最終契約での手法(株式譲渡・事業譲渡等)、DD前時点の譲渡対価の予定額、経営者や役員・従業員の処遇、最終契約までのスケジュールと双方の実施事項等を盛り込みます。基本的に法的拘束力はありませんが、譲り受け側の独占的交渉権や秘密保持義務等には法的拘束力を認めるのが通常です。ガイドラインは、それまでの交渉結果の確認や、DDに進む前に独占的交渉権を付与する等の趣旨から、原則として締結することが望ましいとしています。ただし、資金繰り等でクロージングを急ぐ場合は、秘密保持契約だけで最終契約に進むこともあります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本合意書は全条項に法的拘束力がない」は誤り。独占的交渉権や秘密保持義務等には法的拘束力を認めるのが通常。
  • 義務か・望ましいか基本合意は必須ではなく、原則として締結することが「望ましい」。資金繰りが厳しい等時間的余裕がない場合は省略することもある。
  • よく問われる点サンプルで法的拘束力を否定しているのは目的・承継対象財産と個人保証解除・譲渡価額の条項(第1〜3条)。DD協力・独占的交渉権・善管注意義務・秘密保持は拘束力あり。

別名・略称:LOI、MOU、基本合意図解で確認:意向表明/基本合意出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.21、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.47、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.94(当社にて要約)

キャッシュ・フロー計算書(CF)

きゃっしゅふろーけいさんしょ財務・税務

一会計期間の現金及び現金同等物の流れを、営業・投資・財務の3つの活動に分けて示す書類。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

損益計算書の利益は発生主義で計算するため、実際のお金の増減とは一致しません。そこで、一会計期間にお金がどう動いたかを示すのがキャッシュ・フロー計算書です。資金の範囲は「現金及び現金同等物」で、現金は手許現金と要求払預金(いつでも引き出せる預金)、現金同等物は容易に換金でき、価値の変動リスクがわずかな短期投資をいいます。表示は3区分で、営業活動(本業の取引など)、投資活動(固定資産や短期投資の取得・売却など)、財務活動(借入れや返済など資金の調達・返済)に分けます。投資活動・財務活動は主要な取引ごとに総額で表示します。将来の資金の流れを見て資金ショートを防ぐ資金繰り表とは別物で、キャッシュ・フロー計算書は過去の一定期間の流れをまとめたものです。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点法人税等の支払は営業活動、固定資産の取得は投資活動、借入金の返済は財務活動。支払配当金はどちらの表示方法でも財務活動。
  • 似た用語との違いキャッシュ・フロー計算書は過去の資金の流れ、資金繰り表は将来の資金の流れを見る。資金繰り表は財務三表に含まれず、決まった様式もない。
  • ひっかけに注意「会社法の計算書類に含まれる」は誤り。計算書類は貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表。

別名・略称:CF、C/F、キャッシュフロー計算書図解で確認:財務基礎出典:連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準(企業会計審議会、平成10年3月13日)、J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)、会社法(計算等の規定)(当社にて要約)

吸収合併

きゅうしゅうがっぺいM&A実務法務

合併で消滅する会社の権利義務の全部を、既存の存続会社に引き継がせる合併(会社法2条27号)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

合併は、複数の会社が1つになる組織再編です。そのうち吸収合併は、既にある会社(存続会社)が残り、もう一方の会社(消滅会社)の権利義務の全部を引き継ぐ方式です。合併をする会社は合併契約を結ばなければならず(会社法748条)、存続会社は契約で定めた効力発生日に消滅会社の権利義務を承継します(750条1項)。権利義務がまとめて移る包括承継なので、個々の契約相手方や従業員の同意は不要です。ただし、取引先との契約にチェンジ・オブ・コントロール条項などがあれば別途確認が必要です。消滅会社の解散は、吸収合併の登記の後でなければ第三者に対抗できません(750条2項)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「吸収合併の効力は合併登記の日に生じる」は誤り。契約で定めた効力発生日に生じる(750条1項)。
  • 似た用語との違い吸収合併は既存の会社が存続する。新設合併は合併で新たに設立する会社が権利義務を引き継ぐ。
  • よく問われる点包括承継なので個々の契約相手方・従業員の同意は不要。合併の無効は効力発生日から6か月以内に訴えでのみ主張できる。

別名・略称:存続会社、消滅会社図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

吸収分割

きゅうしゅうぶんかつM&A実務法務

会社が事業に関する権利義務の全部又は一部を、既存の他の会社に承継させる会社分割。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社分割は、会社の事業の一部(又は全部)を切り出して別の会社に引き継がせる組織再編です。そのうち吸収分割は、既にある会社(承継会社)に引き継がせる方式で、株式会社又は合同会社が行えます(会社法2条29号)。分割会社と承継会社は吸収分割契約を結び(757条)、承継会社は効力発生日に、契約の定めに従って分割会社の権利義務を承継します(759条1項)。契約で定めた範囲がまとめて移るため、事業譲渡のように一つずつ移す手続は要りません。分割会社の従業員の労働契約の承継は労働契約承継法に従い、承継される事業に主として従事する労働者等には、期限までに承継の有無等を書面で通知しなければなりません。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い吸収分割は「吸収分割契約」を締結し効力発生日に承継。新設分割は「新設分割計画」を作成し設立会社の成立の日に承継。
  • よく問われる点労働契約承継法は会社分割にだけ適用され、事業譲渡・合併には適用されない。
  • 数字を覚える承継させる資産の帳簿価額が分割会社の総資産額の5分の1以下なら、分割会社の株主総会は不要(簡易分割、784条2項)。

別名・略称:分割会社、承継会社図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(当社にて要約)

Q&Aシート

きゅーあんどえーしーとM&A実務

DDで、開示された資料についての質問等を記載し、譲り渡し側とやり取りするためのシート。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

DDの実施中、データルームに開示された資料を確認して分からない点や追加で知りたい点が出てきたときに使う書式です。DD実施機関はQ&Aシートに質問を書き、譲り渡し側が回答します。このとき、質問の趣旨を分かりやすく書く必要があります。また支援者は、譲り受け側がその資料や質疑を求める意図・目的を補足し、譲り渡し側が依頼の趣旨を理解して対応できるよう支援します。譲り渡し側のDD対応者が、DD実施機関からの質問に的確に回答できるとは限らないため、必要に応じて質問の内容・意図を説明したうえで、回答内容の確認・助言を行います。

例経理部長が質問の意図が分からず困っているときは、仲介者が意図を補足して回答を手伝います。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点譲り受け側の支援者は、各DDで得た情報を取りまとめてDD実施機関の間で共有し、重複する依頼・質疑を可能な限り排除する。
  • ひっかけに注意「効率化のため譲り渡し側とDD実施機関に直接やり取りさせる」は誤り。仲介者・FAがいる案件では直接のやり取りは原則禁止が通例。
  • ひっかけに注意「回答が難しい質問には回答しなくてよい」は誤り。質問の意図を補足し、回答内容の確認・助言を行うことが求められる。

図解で確認:DD(全体)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.88、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.87(当社にて要約)

業界内での情報共有の仕組み

ぎょうかいないでのじょうほうきょうゆうのしくみM&A実務倫理・行動規範

最終契約の不履行など不適切な行為をした譲り受け側の情報を、支援機関の間で共有する仕組み。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、不適切な譲り受け側への対応として、個々の支援機関の取組に加え、自らが支援した譲り受け側のうち、最終契約の不履行等の不適切な行為を働く者の情報を業界内で共有する仕組みの構築を期待しています。仕組みは、参加者とは別の法人を中立・公平な運営主体として置き、運営主体と参加者の契約に基づいて構築します。運営主体が登録事由を設定し、参加者からの報告や、報道等の公表情報・情報提供窓口に寄せられた情報を確認した上で、参加者全体に共有します。運営主体は、譲り受け側から手数料をはじめ一切の経済的利益の供与を受けないことが必要です。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか仕組みへの参加は「強く望まれる」(義務ではない)。参加の有無(不参加ならその旨)の依頼者への説明は「しなければならない」。
  • 数字を覚える説明のタイミングは仲介契約・FA契約の締結前。M&Aプラットフォーマーは登録前。
  • よく問われる点運営主体は参加者とは別法人で、譲り受け側から一切の経済的利益を受けない。

別名・略称:情報共有の仕組み図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.103、不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて(2025年2月) p.2(当社にて要約)

競業避止義務

きょうぎょうひしぎむM&A実務法務

対象事業と競合する事業を自ら行わず、他人にも行わせない義務のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aの後に、譲り渡し側の元オーナーが同じ事業を始めると、譲り受け側が買った事業の価値が下がってしまいます。これを防ぐのが競業避止義務です。事業譲渡を選ぶと、譲渡会社は法律上この義務を負います(会社法21条)。その内容は当事者の合意で免除・縮減するだけでなく、加重することもできます。株式譲渡などでも、最終契約のクロージング後の誓約事項(契約で約束する遵守事項)として、譲り渡し側に競業避止義務を課すのが一般的です。中小M&Aガイドラインの参考資料(契約書サンプル)では、事業譲渡契約は「クロージング日以後●年間」、株式譲渡契約は「本契約締結後●年間」と定めています。契約で設ける場合は、独占禁止法上の問題(不当な取引制限、不公正な取引方法)に触れないよう注意が必要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「法定の競業避止義務は合意で免除・縮減しかできない」は誤り。加重することもできる。
  • よく問われる点契約で競業避止義務を設ける場合、独禁法上の不当な取引制限・不公正な取引方法に抵触する可能性に留意する。
  • 似た用語との違い誓約事項のうち、競業避止・従業員の引き抜き禁止は譲り渡し側、雇用継続・経営者保証の解除は譲り受け側の義務。

別名・略称:競業避止条項図解で確認:最終契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.41、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.32、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.147(当社にて要約)

競争の実質的制限

きょうそうのじっしつてきせいげん法務

企業結合によって、一定の取引分野の競争が実質的に制限されることになる状態のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

独占禁止法の企業結合規制の中心となる考え方です。会社は、株式の取得・所有、合併、共同新設分割・吸収分割、共同株式移転、事業の全部又は重要部分の譲受け等によって、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、これらを行ってはなりません(10条1項、15条1項、15条の2第1項、15条の3第1項、16条1項)。不公正な取引方法による場合も同様です。この規制は、事前届出が必要かどうかとは別に、企業の規模にかかわらず適用されます。違反がある場合、公正取引委員会は株式の処分や事業の譲渡などの排除措置を命じることができます(17条の2)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「届出基準を下回る中小企業同士のM&Aには企業結合規制は適用されない」は誤り。実体規制は規模にかかわらず適用される。
  • 似た用語との違い事前届出は一定規模以上の取引の手続。競争の実質的制限の禁止は、規模を問わない実体の規制。

図解で確認:法務基礎出典:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)(当社にて要約)

共通支配下の取引

きょうつうしはいかのとりひき財務・税務

結合する企業のすべてが、企業結合の前後で同じ株主に最終的に支配され、その支配が一時的でない企業結合。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

親会社と子会社の合併や、同じ親会社を持つ子会社同士の合併など、グループの中で行う組織再編がこれに当たります。グループの外から会社を買う「取得」では、受け入れる資産・負債を時価で評価し、対価との差額をのれんとするパーチェス法で処理します。これに対し共通支配下の取引は、グループ全体から見れば支配する者が変わらないため、時価評価をしません。移転する資産・負債は、原則として移転直前の適正な帳簿価額で引き継ぎ、新たなのれんは原則として生じません(連結上の処理を除く)。企業結合会計では、共同支配企業の形成と共通支配下の取引以外の企業結合が「取得」とされます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い取得はパーチェス法で時価評価し、のれんを計上する。共通支配下の取引は適正な帳簿価額で引き継ぎ、新たなのれんは原則生じない。
  • よく問われる点共同支配企業の形成と共通支配下の取引以外の企業結合は「取得」とされる。

別名・略称:共通支配下の企業結合図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)(当社にて要約)

共同事業要件

きょうどうじぎょうようけん財務・税務

支配関係のない法人間の合併などが、税制上の適格組織再編成となるために満たすべき要件。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

組織再編成が税制上の「適格」となる類型には、完全支配関係(100%)、支配関係(50%超)、共同事業の3つがあります。グループ関係にない会社同士、つまり支配関係のない法人間の合併が適格となるには、金銭等を交付しないことに加え、共同事業を行うための要件(共同事業要件)を満たす必要があります。内容は、①事業関連性要件、②事業規模要件(売上・従業者数・資本金等がおおむね5倍を超えないこと)又は特定役員引継要件、③従業者引継要件(おおむね80%以上)、④事業継続要件、⑤株式継続保有要件(支配株主がいる場合)です。中小企業同士の第三者間の合併で論点になります。また、支配関係5年未満の適格合併で欠損金の引継ぎ・使用が制限される場面でも、みなし共同事業要件を満たせば制限を受けません。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える事業規模はおおむね5倍以内(又は特定役員の引継ぎ)、従業者はおおむね80%以上の引継ぎ。3倍・50%などは誤り。
  • よく問われる点事業規模要件に代わるのは「特定役員」の引継ぎ(主要な取引先ではない)。株式継続保有要件は支配株主がいる場合の要件。
  • 似た用語との違い支配関係(50%超)のグループ内再編は従業者引継・事業継続等で足りる。事業関連性・事業規模は共同事業要件の要素。

図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法施行令、法人税法、法人税法(当社にて要約)

業務提携・資本提携

ぎょうむていけい・しほんていけいM&A実務

業務提携は企業間で業務上の協力関係を築く手法、資本提携は株式の持ち合いや取得等を行う手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社を一度に引き継ぐのではなく、まず協力関係から始める手法です。業務提携は、共同物流や資材の共同調達、商品の共同開発など、企業間で業務上の協力関係を築くもので、事業承継に向けた第一歩と位置付けられます。資本提携は、業務提携の強化や資本増強等のために、一定の限度で互いの株式を持ち合ったり、一方の会社の株式を取得したり、第三者割当増資等を行ったりするものです。どちらも、一定の提携を足がかりに両者の融合を図りながら、徐々に事業承継を進めていくような場合に活用できる手法とされています。

例まず共同仕入れで協力し、関係が深まった段階で相手先が株式の一部を取得する、という進め方。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い業務提携は業務上の協力(共同物流・共同調達・共同開発等)。資本提携は株式の持ち合い・一方の株式取得・第三者割当増資等で、資本の関係を伴う。
  • よく問われる点業務提携は「事業承継に向けた第一歩」と位置付けられ、提携を足がかりに徐々に事業承継を進める場合に活用できる。

別名・略称:業務提携、資本提携図解で確認:事前相談出典:参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.3(当社にて要約)

許認可

きょにんかM&A実務法務

事業を行うために法令上必要となる、行政の許可・認可・登録・届出など。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

許認可がないと続けられない事業は多いため、M&Aではスキームによって許認可がどう扱われるかが重要な検討事項です。株式譲渡では株主が変わるだけなので、許認可は原則として存続します。これに対し事業譲渡では、資産・負債・契約・許認可等を個別に移転させるため、許認可は譲り受け側に承継されないことが多く、その場合は新規取得が必要です。知識・スキルマップは、許認可の種類と更新状況、過去の指導の有無を確認して停止リスクを調べ、そのリスクを早い段階(マッチング前が理想)で想定することを求めています。市場開設者からの買参権のような業界特有の権利は見落とされやすいとされます。移行・再取得の準備が遅れると、スケジュールの遅延やディールの中止につながることがあります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「事業譲渡では許認可は原則として自動的に承継される」は誤り。承継されないことが多く、譲り受け側で新規取得が必要。
  • よく問われる点許認可リスクの想定は早い段階(マッチング前が理想)。手続が複雑な場合は行政書士等へ早めに相談する。
  • ひっかけに注意「コンサル料名目なら支援者が許認可の申請書類を作成できる」は誤り。名目を問わず報酬を得て業として行えない(行政書士法19条)。

別名・略称:許認可等図解で確認:法務DD出典:参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.1、参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.2、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.122(当社にて要約)

禁忌肢

きんきし倫理・行動規範

倫理・行動規範の問題で、正しいと理解すること自体に大いに問題がある誤答肢として設ける選択肢。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&A実務能力・倫理検定試験は、倫理・行動規範の遵守を最も重視しています。そこで資格WGの討議結果として、倫理・行動規範に著しく反するような支援者を排除する目的で、それを正しいと理解することに大いに問題がある誤答肢を「禁忌肢」として設定するとされました。禁忌肢の具体的なイメージは、実際に支援機関と依頼者の間でトラブルに至った事例も参考にした、中小M&Aガイドラインに明らかに違反するような行為や、トラブルにつながる確度が相当に高い行為です。誤答を誘導するあいまいな内容ではなく、明確に問題がある内容とする想定です。禁忌肢を設けた設問を複数置き、その一定数の誤答で不合格とする設計が想定されています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点禁忌肢を設けた設問を複数置き、それらの一定数の誤答で不合格とする設計が想定されている。
  • よく問われる点技術的に設定が難しい場合は、倫理・行動規範の科目別合格最低基準の引上げや配点を高くするなどの代替手段を講じる。
  • 数字を覚える合格基準は総得点の70〜80%程度を想定し、各科目の合格最低点も設ける想定。

図解で確認:基本原則出典:第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.7、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.3(当社にて要約)

禁止される広告・営業

きんしされるこうこく・えいぎょう倫理・行動規範

中小M&Aガイドラインや倫理・行動規範が、仲介者・FAに行ってはならないとする広告・営業の内容や方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAの広告・営業に職業倫理の遵守を求め、次のような広告・営業を行ってはならないとしています。①仲介者・FAの名称、勧誘者の氏名、契約締結の勧誘目的である旨を告げずに行うもの。②意思決定に必要な時間を与えず、即時の判断を迫るもの。③M&Aの成立の可能性や条件について、虚偽・事実と相違する・誤認を招くもの(譲り受け意向のない企業や意向未確認の企業、実在しない企業に意向があると偽る、過大なバリュエーションを提示する、相手方の財務状況等を実際より優良と誤認させる、確定的な判断を下す、など)。倫理・行動規範も、虚偽・誇大又は誤解を生じる表示や隠ぺいを禁じ、他者を誹謗中傷する広告・比較広告も厳に慎むよう求めています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「御社を買いたい企業がいます」と、意向未確認や実在しない企業について意向があると伝えるのは典型的な禁忌肢。
  • よく問われる点名称・勧誘者の氏名・勧誘目的を告げない営業、即時の判断を迫る営業も禁止。
  • よく問われる点過剰な広告・営業は、民法上の不法行為責任を負う可能性もある。

別名・略称:虚偽・誇大な広告、誇大広告図解で確認:広告・営業出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.85、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.11、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84(当社にて要約)

金融機関(中小M&A支援)

きんゆうきかんM&A実務

中小M&Aの支援機関の一つで、融資を通じて企業の経営状況を把握している銀行・信用金庫等。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、支援機関の一つとして金融機関を挙げています。金融機関の顧客は貸付先であることが多く、融資を通じて経営状況を詳しく把握しているため、豊富なネットワークを生かして積極的に働き掛けることや、自らの顧客基盤の中からマッチング候補先を探すことが期待されます。譲り受け側が融資で譲渡対価相当額を調達するケースも相当数あり、融資の可否は重要な要素です。都市銀行・地域銀行・信用金庫・信用組合など、業態や規模、個別の機関ごとにノウハウ・体制は全く異なります。仲介業務・FA業務を行う場合は、融資部門との間に情報隔壁(チャイニーズ・ウォール)を設けるなど、適正な利益相反管理が求められます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い役割分担:金融機関は融資で把握した経営状況とネットワークを生かした働き掛け、商工団体は窓口として適切な支援機関へ紹介、M&A専門業者は総合的な支援。
  • 義務か・望ましいか融資部門と仲介・FA業務部門の間のチャイニーズ・ウォールは「設けることが望ましい」。融資先の譲り渡しでは優越的地位に配慮する。
  • よく問われる点秘密保持契約サンプルでは、経営者保証の扱いを金融機関等に相談する目的の開示は、M&A成立前の相談も含めて認められる。

図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.17、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.105、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.78(当社にて要約)

金融商品取引法

きんゆうしょうひんとりひきほう法務

有価証券の発行者に情報開示を義務づけ、有価証券の公正な取引を確保するための法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

主に上場会社等に関わる法律ですが、中小M&Aでも譲り受け側が上場企業等の場合には関係してきます。金商法は有価証券の発行者に、有価証券の内容と発行者に関する情報の開示義務を課しています。M&Aでは有価証券や発行者の情報に変動が生じるのが通常なので、事前に開示義務の適用を確認し、組織再編等が開示の対象となる可能性に留意します。また、上場会社等と契約の締結や交渉をしている者(M&Aの交渉相手やFA・仲介者など)が職務等に関し重要事実を知った場合、公表前にその会社の株券等を売買することは禁止されます(インサイダー取引規制、166条)。一方、非上場で有価証券報告書の提出義務もない会社の株式譲渡には、公開買付け(TOB)規制は原則として適用されません。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点インサイダー規制の会社関係者には、上場会社等と契約の締結・交渉をしている者も含まれ、会社関係者でなくなった後1年以内も対象。
  • 数字を覚える市場外の著しく少数の者からの買付けでも、買付け後の所有割合が3分の1超ならTOBが必要(基準日時点の条文。30%への引下げは基準日後)。
  • 似た用語との違い非上場で有価証券報告書の提出義務もない会社の株式譲渡には、公開買付け規制は原則適用されない。

別名・略称:金商法図解で確認:法務基礎出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.30、金融商品取引法、金融商品取引法(当社にて要約)

キーマン

きーまんM&A実務

M&A成立後の事業運営で中心となり、退職すると事業継続に支障が出るおそれのある従業員。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業では、特定の従業員が取引先との関係や業務の要を担っていることがあります。こうしたキーマンがM&A後に辞めてしまうと事業が続けられなくなるおそれがあるため、DDでキーマンを把握します。最終契約では、キーマンの継続勤務への同意を、譲り渡し側が満たすべきクロージングの前提条件(キーマン条項)とすることがあります。DDへの協力などのためにキーマンへ説明・情報開示するかどうかは、譲り渡し側オーナーと十分に協議して決めます。開示する場合は社内への情報流出に十分注意し、必要に応じて秘密保持を誓約する書面を取得します。同意が得られない場合に備え、クロージングの延期や再交渉の余地を事前に当事者間で擦り合わせておきます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点キーマン・従業員の継続勤務同意は、譲り渡し側が満たすべきクロージングの前提条件の例。
  • よく問われる点キーマンへの説明・情報開示を行うかどうかは、譲り渡し側オーナーと十分に協議して方針を決める。必要に応じ秘密保持の誓約書面を取得する。
  • ひっかけに注意「同意が得られない場合の対応は、未達が判明してから検討すればよい」は誤り。延期・再交渉の余地を事前に擦り合わせておく。

別名・略称:キーマン条項図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.121、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.146、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.77(当社にて要約)

クイック・ヒット

くいっく・ひっとM&A実務

譲り渡し側の従業員にM&Aのメリットを実感してもらうために行う、即効性のある就労環境の改善策。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&A後は、譲り渡し側の従業員との信頼関係を早く築くことが大切です。そのために、M&Aによる具体的なメリットを早く実感してもらう取組がクイック・ヒット(即効性のある就労環境の改善)で、スキルマップはPMIの「信頼関係の構築」の項目に位置付けています。例として、賃金引上げなどの処遇改善、旧式のオフィス機器の高機能化・トイレの改修・制服や作業服の新調といった設備・備品の整備、PCの一人1台支給や個人メールアドレスの付与、社長賞などの従業員表彰制度の導入が挙げられています。実施の前に、譲り受け側がアンケートや個別面談で、従業員が感じている不便や改善要望を把握しておくことが有効です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える「Day.100以内」を目途に、可能な範囲で実行することが望ましい。従業員説明会の「Day1」と混同しない。
  • ひっかけに注意「アンケートや個別面談は行わず、譲り受け側の判断だけで実施するのが有効」は誤り。不便や改善要望を把握した上で実施する。
  • よく問われる点スキルマップ上の領域は「信頼関係の構築」。経営統合・業務統合の項目ではない。

別名・略称:クイックヒット図解で確認:クロージング後(PMI)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.176(当社にて要約)

偶発債務

ぐうはつさいむ財務・税務

保証債務・訴訟・簿外の労働債務などに起因し、貸借対照表には負債として計上されていない債務。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

偶発債務は、保証債務や訴訟、簿外の労働債務などから生じ得る債務で、貸借対照表には負債として計上されていないものです。企業会計原則は、受取手形の割引高や保証債務などの偶発債務を、貸借対照表に注記するよう定めています。M&Aでは、譲り受け側が買収後に思わぬ負担を負う原因になるため、財務DDで確認します。DDでは、貸借対照表に計上されていない項目の例として偶発債務や資産除去債務を確認し、実質的な負債を把握する際には、リース債務などと並ぶデットライクアイテムとして扱います。株式譲渡では法人格が承継されるため偶発債務を分離できず、そのまま引き継がれます。定量化できるリスクは譲渡額に織り込まれているかを双方ですり合わせ、価格調整では、偶発債務や事業外資産の時価への修正による差額などがよく論点になります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点受取手形割引高や保証債務等の偶発債務は、貸借対照表に注記する。
  • 似た用語との違い偶発債務はデットライクアイテム(負債に類する項目)の例。保険積立金などはキャッシュライクアイテム。
  • よく問われる点価格調整条項を設定するのは最終契約内容の交渉時。適用するかは最終的にクロージング数日前のキャッシュを基に決める。

図解で確認:財務DD出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.109、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.143(当社にて要約)

繰越欠損金

くりこしけっそんきん財務・税務

過去の事業年度に生じた税務上の赤字(欠損金)のうち、翌期以降の所得から差し引ける分。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

赤字の年と黒字の年がある会社で、黒字の年だけに課税されると負担が重くなります。そこで、青色申告をした事業年度に生じた欠損金額(損金が益金を上回った額)は繰り越して、その後の事業年度の所得から差し引く(損金に算入する)ことができます。繰り越せるのは、各事業年度開始の日前10年以内に生じたものです。要件は、欠損金が生じた事業年度に青色申告をし、その後も連続して確定申告書を提出していることです。控除できる額には上限があり、中小法人等は所得の全額まで控除できますが、それ以外の法人は所得の50%までです。M&Aで資本金5億円以上の大法人の100%子会社になると、中小法人等の特例が使えず、控除が所得の50%に制限されます。

例仮の数値で、控除前の所得2,000万円・繰越欠損金1,500万円なら、中小法人等以外が控除できるのは1,000万円までです。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える繰越期間は10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度に生じた欠損金は9年)。
  • ひっかけに注意控除限度の50%は「所得」の50%。「欠損金額の50%」とする選択肢は誤り。中小法人等は所得の全額まで控除できる。
  • よく問われる点大法人(資本金5億円以上)の100%子会社になると中小法人等の特例が使えず、控除限度が所得の50%に制限される。

別名・略称:欠損金の繰越控除、青色欠損金図解で確認:財務基礎出典:法人税法、国税庁タックスアンサー No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除(当社にて要約)

グループ通算制度

ぐるーぷつうさんせいど財務・税務

完全支配関係にある企業グループの各法人が個別に申告しつつ、グループ内で損益通算などの調整を行う法人税の制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

グループ通算制度は、親法人と、親法人による完全支配関係にある内国子法人からなる企業グループについて、各法人を納税単位としつつ、グループ内で損益通算などの調整を行う制度です。令和4年4月以後に開始する事業年度から、連結納税制度に代わって適用されています。各法人が個別に法人税額の計算・申告を行い、欠損法人の欠損金額は、所得法人の所得の比で配分して通算します。ある法人の修正申告や更正は、原則として他の法人に影響させない遮断措置があります。適用には、親法人と完全支配関係にある他の内国法人の全てが国税庁長官の承認を受ける必要があり、一部の子会社だけを選ぶことはできません。M&Aで買収した会社をグループに加入させる場合、完全支配関係の継続見込み等の要件を満たさないと、保有資産の時価評価損益を計上し、加入前の欠損金が原則として切り捨てられます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「親法人が通算制度に加える子法人を任意に選択できる」は誤り。完全支配関係にある内国法人の全てが対象。
  • よく問われる点承認するのは国税庁長官(税務署長への届出だけでは足りない)。各法人が個別に申告し、修更正は原則として他の法人に影響させない。
  • よく問われる点グループ内に1社でも資本金1億円超の法人があると、全通算法人が中小特例の対象外。中小通算法人の年800万円はグループ内で所得比により按分。

別名・略称:通算制度図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:国税庁タックスアンサー No.5900 グループ通算制度の概要、法人税法、法人税法(当社にて要約)

グループ法人税制

ぐるーぷほうじんぜいせい財務・税務

完全支配関係にある法人間の取引について、譲渡損益の繰延べなどの特別な取扱いを定めた法人税の仕組み。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

グループ法人税制は、100%の資本関係(完全支配関係)にある法人間の取引について、法人税の特別な取扱いを定めたものです。主な内容の1つは譲渡損益の繰延べです。内国法人が完全支配関係のある他の内国法人に、譲渡損益調整資産(固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産。帳簿価額1,000万円未満のもの等を除く)を譲渡しても、その時点では譲渡損益を計上せず繰り延べます。繰り延べた損益は、譲受法人がその資産を再譲渡・償却等したときや、完全支配関係がなくなったときに計上します。この取扱いは強制適用で、選択制ではありません。もう1つは寄附金・受贈益で、法人による完全支配関係がある内国法人間の寄附は、支出側で全額損金不算入、受領側で受贈益が全額益金不算入となります。M&Aで対象会社をグループから外すと、過去に繰り延べた損益が実現する点に注意が必要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「譲渡損益の繰延べは法人が選択した場合に限り適用」は誤り。強制適用。完全支配関係がなくなると繰り延べた損益を計上する。
  • ひっかけに注意「個人オーナーが100%保有する兄弟会社間の寄附も受贈益が全額益金不算入」は誤り。法人による完全支配関係に限られる。
  • 数字を覚える譲渡損益調整資産は固定資産・土地・有価証券・金銭債権・繰延資産。帳簿価額1,000万円未満のもの等は除かれる。

別名・略称:譲渡損益調整資産図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法、法人税法、法人税法(当社にて要約)

クロージング

くろーじんぐM&A実務

M&Aにおける最終契約の決済。最終契約締結後に、株式・財産の譲渡や譲渡代金の支払を行う工程。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約は「売ります・買います」という約束で、その約束を実行するのがクロージングです。中小M&Aの最終段階にあたり、株式などの譲渡と、譲渡代金(譲渡対価)の全部又は一部の支払を行います。目的は、取引の前提条件(クロージング条件)が満たされたことを確認し、取引を完遂することです。準備として、クロージングチェックリストの作成、必要書類・重要物品の準備、決済方法の確認を行います。当日は特に、譲り受け側から譲渡対価が確実に入金されたことを確認する必要があります。事業譲渡で不動産が含まれる場合は、クロージング後速やかに登記をするため、クロージングで登記必要書類を授受するのが通常で、司法書士等と日程を調整します。クロージングの後は、PMI(経営統合作業)に進みます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える最終契約からクロージングまで「2か月以上」等の期間を特段の事情なく設けると、最終契約の修正が必要になるリスクや不履行のリスクがある。
  • よく問われる点仲介者・FAの役務は基本的にクロージング時点で終了する。クロージング後の当事者間の紛争解決への関与は、非弁行為に該当する可能性がある。
  • よく問われる点クロージング条項の充足を確認しても、表明保証違反に基づく補償請求権を放棄したことにはならない。

図解で確認:クロージング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.21、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.55、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.56(当社にて要約)

クロージング条件

くろーじんぐじょうけんM&A実務

最終契約で定める、クロージング(株式・代金の受渡し等)を実行するための前提となる条件。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約を結んでも、すぐに株式や代金を受け渡すとは限りません。締結からクロージングまでの間に満たすべき条件を決めておき、それがそろったら実行します。これがクロージング条件(クロージングの前提条件)です。スキルマップは主な例を、どちらの義務かで分けています。譲り渡し側の義務の例は、株式譲渡を承認する取締役会決議、キーマン・従業員の継続勤務同意、MAC条項・COC条項への対応、許認可や契約の移転(事業譲渡・会社分割の場合)、株券の交付(株式譲渡の場合)です。譲り受け側の義務の例は、譲り渡し側の経営者保証の解除又は解除の同意取得、買収資金の調達可否の確認です。条件の充足確認は、基本的に弁護士の立会いの下で進めることが望まれます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点経営者保証の解除(又は解除の同意取得)は「譲り受け側」の義務の例。取締役会の承認・継続勤務同意・株券の交付は「譲り渡し側」の義務の例。
  • ひっかけに注意「前提条件を任意に放棄すれば充足したとみなされ、表明保証違反の責任も減免される」は誤り。株式譲渡契約書サンプルは減免されないと定める。
  • よく問われる点前提条件が一部でも満たされない場合、相手方は自己の義務の履行を拒絶できる(任意に放棄することもできる)。

別名・略称:クロージング条項、クロージングの前提条件、前提条件図解で確認:最終契約出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.146、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.164、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.49(当社にて要約)

クロージングチェックリスト

くろーじんぐちぇっくりすとM&A実務

クロージングに必要な手続・書類・重要物品を、実施する主体と期限も含めて網羅的に整理した一覧。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

クロージングでは、多くの書類や手続を当日までにそろえる必要があり、一つでも漏れると取引を完了できません。そのために支援者が作るのがクロージングチェックリストです。最終契約書の内容などに基づき、必要な手続・書類・重要物品(実印や金庫の鍵など)を網羅的に整理し、漏れなく記載します。手続・書類の内容だけでなく、誰が実施・作成するのか(主体)と、いつまでに完了させるのか(スケジュール)も書きます。株式譲渡、合併、会社分割、事業譲渡などスキームによって必要な手続・書類は異なるため、案件ごとに整理して依頼者に示します。必要書類が要件を満たしているかなど、条件の充足を支援者が判断しにくい場合は、弁護士と連携して確認します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点手続・書類の内容に加えて、「実施・作成する主体」と「完了までのスケジュール」も記載する。
  • ひっかけに注意「必要な手続や書類はスキームを問わず共通なので、一つの標準様式で足りる」は誤り。スキームによって異なる。
  • よく問われる点チェックリストの作成と譲渡額の入金・確認準備は、遵守事項一覧チェックシートの23(段取りと入金確認)に対応する。

図解で確認:クロージング出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.156、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.167(当社にて要約)

経営資源の引継ぎ

けいえいしげんのひきつぎM&A実務

廃業を希望する者の事業又は主たる事業用資産等を、他者に引き継ぐこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

後継者が見つからず廃業を考えている事業者でも、事業そのものや、設備・店舗などの事業用資産には価値が残っていることがあります。それらを他者に引き継ぐのが経営資源の引継ぎです。事業承継・引継ぎ支援センターは、事業者同士のM&Aや後継者人材バンクに加えて、廃業を希望する者の事業又は主たる事業用資産等の引継ぎの相談にも対応し、相手探しからクロージングまで支援します。事業の一部だけを譲る場合も含まれ、一部は中小M&Aにも当たります。スキルマップも、中小M&A専門人材の使命の中で、事業と希少な経営資源の引継ぎを通じて事業の継続・成長に貢献することを掲げています。廃業については、中小M&Aガイドラインの参考資料8「円滑な廃業を支援する施策」も参照されます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点センターは、廃業希望者の事業・主たる事業用資産等の引継ぎについても、マッチングからクロージングまで支援する。事業の一部譲渡も含む。
  • ひっかけに注意中小M&A専門人材の使命を「成約件数の最大化」とするのは誤り。依頼者の利益の実現と、事業と希少な経営資源の引継ぎを通じた国民経済の発展への寄与。

図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.62、参考資料8 円滑な廃業を支援する施策 p.2、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.7(当社にて要約)

経営資源引継ぎの実現(専門家活用枠)

けいえいしげんひきつぎのじつげんM&A実務

事業承継・M&A補助金で、補助事業期間内にクロージングまで完了すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継・M&A補助金(14次公募)の専門家活用枠は、M&Aの際に仲介者・FAやDDなどの専門家を活用する費用を補助する枠です。この補助金でいう「経営資源引継ぎの実現」とは、補助事業期間内にクロージングまで完了した補助事業を指します。クロージングとは、最終契約書に基づくM&A取引が実行され、株式や事業等の引渡し手続と譲渡代金の支払手続(決済手続)等によって、経営権や所有権等の移転が完了することです。補助上限額は600万円(DD費用を申請する場合は200万円の上乗せ)ですが、補助事業期間内にクロージングしなかった場合は上限300万円となり、原則としてDD費用のみが対象です。補助金は事業完了後の精算払いです。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える補助上限600万円(DD費用で+200万円)。期間内にクロージングしなかった場合は上限300万円で、原則DD費用のみが対象。
  • よく問われる点事業譲渡で設備・従業員・顧客等の有機的一体としての経営資源の譲受・譲渡が確認できない場合は、経営資源引継ぎの要件を満たさない可能性がある。
  • よく問われる点グループ内の事業再編、親族内の事業承継、株式譲渡後に承継者の議決権が過半数に満たない場合は補助対象外。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)、事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)、事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)(当社にて要約)

経営者保証

けいえいしゃほしょうM&A実務

中小企業の経営者が、会社の借入れ等について個人として保証すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業が金融機関からお金を借りるとき、経営者が個人として保証人になることが多く、これを経営者保証といいます。M&Aで会社を譲った後も保証が残ると、譲り渡し側の経営者は、経営に関与しなくなった会社の借入れについて責任を負い続けることになります。そのため中小M&Aでは、保証を解除するか、譲り受け側に移行するかが大きな論点です。方法としては、M&A前に自社で法人と経営者の分離などを進めて金融機関に解除を相談する方法と、譲り受け側の信用力等を踏まえて解除・移行する方法があります。後者では、士業等専門家(特に弁護士)や事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、金融機関への事前相談、最終契約で譲り受け側の義務として位置付けることなどが挙げられます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点解除・移行は最終的には金融機関等の判断による。正式な手続は、クロージング後に登記簿上の代表者が変更された「後」に行う。
  • 義務か・望ましいか譲り渡し側が士業等専門家や金融機関への相談を希望したら、仲介者・FAは拒むべきでなく、秘密保持条項の対象から相談先を除外する必要がある。
  • よく問われる点最終契約では譲り受け側の義務とし、クロージング条件の設定や、解除・移行されない場合の解除条項・補償条項を盛り込むことが重要。

別名・略称:個人保証図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.23、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.51、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.18(当社にて要約)

経営者保証に関するガイドライン

けいえいしゃほしょうにかんするがいどらいんM&A実務

経営者保証の契約時・履行時等の中小企業・経営者・金融機関の対応を定めた、中小企業団体と金融機関団体共通の自主的自律的な準則。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

経営者保証をめぐって、中小企業、経営者、金融機関が、保証契約を結ぶとき・保証を履行するときなどにどう対応するかを定めたルールです。日本商工会議所と全国銀行協会が事務局を務める研究会が平成25年12月に策定し、平成26年2月1日から適用されています。法律ではなく、中小企業団体と金融機関団体に共通する自主的自律的な準則で、法的拘束力はありませんが、関係者が自発的に尊重し遵守することが期待されています。主な内容は、法人と経営者が明確に区分・分離されている場合等には保証を求めないこと、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定期間の生計費相当額や華美でない自宅を残すことを検討すること、保証債務の履行時に返済しきれない残額は原則として免除すること、などです。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「国会で制定された法律で、違反した金融機関には罰則がある」は誤り。法的拘束力のない自主的自律的な準則。
  • 数字を覚える策定・公表は「平成25年12月」、適用は「平成26年2月1日」から。
  • よく問われる点主たる債務者に求める取組は、①法人と経営者の関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示等による経営の透明性確保。

別名・略称:経営者保証GL図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.23、経営者保証に関するガイドライン(平成25年12月 経営者保証に関するガイドライン研究会)、参考資料8 円滑な廃業を支援する施策 p.1(当社にて要約)

経営承継円滑化法

けいえいしょうけいえんかつかほうM&A実務

中小企業の経営の承継を円滑にするため、遺留分に関する民法の特例と資金供給の円滑化等の支援措置を定めた法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

代表者の死亡や引退による経営の承継は、中小企業の事業の継続に大きな影響を与えます。そこで、承継を円滑にするための支援をまとめたのが経営承継円滑化法(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、平成20年法律第33号)です。目的規定は、遺留分に関する民法の特例を定めることと、資金供給の円滑化等の支援措置を講じることを掲げています。中小機構の資料は、支援の柱を4つに整理しています。①事業承継税制(相続税・贈与税の納税猶予の前提となる都道府県知事の認定)、②遺留分に関する民法の特例、③金融支援(信用保証の別枠、日本政策金融公庫等の融資)、④所在不明株主に関する会社法の特例です。対象の中小企業者は、中小企業基本法の4区分に政令で指定する業種を加えたものです。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える金融支援等の認定の有効期限は認定日の翌日から「1年」。事業承継税制関係は申告期限の翌日から「5年」、所在不明株主の特例は原則「2年」。
  • 数字を覚える知事認定で信用保証の別枠(普通保険2億円・無担保保険8,000万円・特別小口保険2,000万円)を使える。ただし認定で融資が保証されるわけではない。
  • よく問われる点金融支援の前提となる認定(12条)の権限は、政令で都道府県知事に委ねられている。

別名・略称:中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、円滑化法図解で確認:中小企業政策出典:中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行令(当社にて要約)

経常利益

けいじょうりえき財務・税務

営業利益に受取利息などの営業外収益を加え、支払利息などの営業外費用を差し引いた利益。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

経常利益は、本業の儲け(営業利益)に、本業以外で生じるふだんの損益を加えた利益で、損益計算書の経常損益計算の区分で計算します。営業外損益には、受取利息・支払利息や有価証券売却損益など、営業活動以外から生じ、特別損益に当たらないものが入ります。これに対し、固定資産売却損益のように臨時に生じる損益は特別損益として扱い、経常利益には含めません。経常利益に特別損益を加減したものが税引前当期純利益、そこから法人税・住民税等を差し引いたものが当期純利益です。

例仮の数値で、営業利益80、受取利息5、支払利息15、固定資産売却損30の場合、経常利益は80+5−15=70、税引前当期純利益は70−30=40です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「固定資産売却損は営業外費用として経常利益に含める」は誤り。特別損失であり、経常利益には含めない。
  • 似た用語との違い支払利息は販売費及び一般管理費ではなく営業外費用。営業利益ではなく経常利益の段階で差し引く。
  • よく問われる点経常利益±特別損益=税引前当期純利益。そこから法人税等を引いて当期純利益。

図解で確認:財務基礎出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)(当社にて要約)

継続価値(ターミナルバリュー)

けいぞくかち財務・税務

DCF法で、詳細な予測期間より後の期間に事業が生み出す価値。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

DCF法では、数年分の事業計画を立ててフリー・キャッシュフロー(FCF)を予測しますが、会社は予測期間が終わった後も事業を続けます。その後の一定成長期間に生まれる価値をまとめて見積もったものが継続価値(ターミナルバリュー、TV)です。DCF法の手順は、①過去の業績分析等を踏まえて予測期間(一般に3〜5年程度)を決め、その期間のFCFを算出、②割引率としてWACCを算定、③予測期間後の継続価値を算定、④FCFと継続価値をWACCで割り引いて事業価値を算定、⑤非事業用資産を加えて企業価値とし、有利子負債を差し引いて株主価値を出す、の順です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚えるDCF法の詳細な予測期間は一般に3〜5年程度。継続価値はその後の一定成長期間の価値。
  • よく問われる点継続価値も予測期間のFCFと同じくWACCで割り引き、合計して事業価値とする。

別名・略称:ターミナルバリュー、TV図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47(当社にて要約)

契約上の地位の移転

けいやくじょうのちいのいてん法務

契約当事者の一方が、契約上の立場そのものを第三者に引き継がせること(民法539条の2)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

取引先との基本契約、賃貸借契約、リース契約などは、債権や債務だけでなく契約の当事者という立場ごと移す必要があります。これが契約上の地位の移転で、契約当事者の一方が第三者との間で地位を譲渡する合意をし、契約の相手方がその譲渡を承諾したときに、地位が第三者に移ります(民法539条の2)。事業譲渡は特定承継なので、引き継ぐ契約ごとに相手方の承諾を取る必要があります。一方、株式譲渡では契約当事者である対象会社そのものは変わらないため、原則として承諾は不要です。ただし、契約にチェンジ・オブ・コントロール条項(支配権が変わったら相手方の同意や通知が必要とする条項)がある場合は、相手方の同意や通知が必要になることがあります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い事業譲渡は相手方の承諾が必要。株式譲渡は原則不要(COC条項は別)。合併は包括承継で原則不要。
  • よく問われる点地位が移るのは、契約の相手方が譲渡を承諾したとき(民法539条の2)。

図解で確認:法務基礎出典:民法(当社にて要約)

契約不適合責任

けいやくふてきごうせきにん法務

引き渡した目的物が種類・品質・数量について契約の内容に合わないときに、売主が負う責任。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

売買で引き渡された物が、契約で約束した種類・品質・数量に合っていなかったときのルールが契約不適合責任です(改正前の瑕疵担保責任に代わるもの)。買主は、修補・代替物・不足分の引渡しによる履行の追完を請求でき(民法562条)、相当の期間を定めて催告しても追完がなければ、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(563条)。損害賠償請求や解除もできます(564条)。種類・品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に売主に通知しないと責任を追及できません(566条。売主が悪意・重過失の場合を除く)。株式譲渡では株式そのものが目的物なので、対象会社の資産・負債の問題は表明保証で手当てするのが一般的です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える種類・品質の不適合は、知った時から1年以内に通知が必要(566条)。数量不足はこの期間制限の対象外。
  • ひっかけに注意「担保責任を負わない特約があれば常に免責される」は誤り。売主が知りながら告げなかった事実は免れない(572条)。
  • 似た用語との違い商人間の売買では、受領後遅滞なく検査し、不適合を直ちに通知しないと責任追及できない(商法526条)。

図解で確認:法務基礎出典:民法、民法、民法(当社にて要約)

月額報酬

げつがくほうしゅうM&A実務

主に一定額を毎月支払う仲介者・FAの手数料のこと。リテーナーフィーともいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者・FAの手数料の4つの典型(着手金・月額報酬・中間金・成功報酬)の一つで、「定額顧問料」や「リテーナーフィー」とも呼ばれます。案件が成立したかどうかにかかわらず、契約している間、月ごとに定額で発生するのが特徴です。そのため、契約期間が長くなるほど支払総額が増えます。中小M&Aガイドラインは、月額報酬は定期的に発生するものなので、契約期間を確認すべきだとしています。手数料には一般的な法規制がなく、月額報酬を設けない仲介者・FAもいます。着手金・月額報酬・中間金を請求せず、成功報酬だけを請求する形は「完全成功報酬型」と呼ばれます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いリテーナーフィー(定額顧問料)=月額報酬。マイルストーンフィー=中間金。対応の入れ替えに注意。
  • よく問われる点月額報酬は定期的に発生するため、契約期間を確認すべきとされる。

別名・略称:リテーナーフィー、定額顧問料図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.39、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.63(当社にて要約)

決算修正(決算整理)

けっさんしゅうせい財務・税務

期末に、一会計期間の損益と財政状態を正しく表すために行う修正の仕訳。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

決算書は、①期中取引の仕訳、②決算修正の仕訳、③貸借対照表と損益計算書の作成、という3段階で作ります。日々の取引を記録しただけでは、その期の損益を正しく表せないことがあります。たとえば締日の後から期末までの売上・原価・経費はまだ計上されておらず、期末に使い残した商品や消耗品は費用ではなく資産です。そこで期末に、締日後の売上・原価・経費を計上したり、未使用の商品・消耗品を棚卸資産として資産に計上したりする修正を行います。これが決算修正(決算整理)で、修正後の仕訳を勘定科目ごとに集計したものが決算書になります。決算書は経営者自身の分析や事業計画の資料にもなるため、適時に正確に作る必要があります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点決算書作成の順序は、期中取引の仕訳→決算修正の仕訳→貸借対照表・損益計算書の作成。
  • ひっかけに注意「決算修正は期中の現金の入出金を記録するために行う」は誤り。期末に期間損益を正しくするための修正。
  • よく問われる点期末に未使用の商品・消耗品は、決算修正で棚卸資産として資産計上する(消耗品費のままにしない)。

別名・略称:決算整理、決算修正仕訳、決算整理仕訳図解で確認:財務基礎出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

欠損等法人

けっそんとうほうじん財務・税務

欠損金等を有する法人で、他の者に発行済株式等の50%超を保有される関係(特定支配関係)となったもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

欠損等法人とは、欠損金等を有する法人で、他の者による特定支配関係(発行済株式等の50%超の保有)を有することとなったものをいいます。欠損等法人が、特定支配関係が生じた日(特定支配日)以後5年以内に、旧事業を廃止して多額の資金借入れ等で新たな事業を始めるなど一定の事由に該当すると、特定支配日前に生じた欠損金の繰越控除が使えなくなります(切り捨てられます)。株式を買えば対象会社の欠損金を無条件に使えるわけではないため、赤字会社を買収して欠損金を活用する計画では、この制限の確認が欠かせません。税務DDでは、繰越欠損金の金額・期限・使用制限を確認します。欠損金の繰越期限は10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度の分は9年)です。買収後に合併する場合は、支配関係5年未満の適格合併による欠損金の引継ぎ制限も別にかかります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える特定支配関係は50%超の保有(100%に限らない)。特定支配日以後5年以内の旧事業廃止等で欠損金が使えなくなる。
  • ひっかけに注意「株式を取得すれば、その後どのように事業を変えても欠損金は無条件に使える」は誤り。
  • 似た用語との違い合併による欠損金の引継ぎ制限(支配関係5年未満の適格合併)は別の制度。買収後に合併するなら両方を確認する。

図解で確認:税務DD出典:国税庁タックスアンサー No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除、法人税法(当社にて要約)

原価計算基準

げんかけいさんきじゅん財務・税務

企業の原価計算の慣行のうち、一般に公正妥当と認められるところを要約した基準。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

製品をつくるのにいくらかかったか(原価)を計算するときの拠り所となる基準で、昭和37年に企業会計審議会が設定しました。企業会計原則の一環を成し、そのうち特に原価に関して定めたものです。業種や経営規模など各企業の条件に応じて、実情に即して適用されるべきものとされています。原価計算の目的は、①財務諸表作成(真実の原価を集計する)、②価格計算、③原価管理、④予算管理、⑤経営の基本計画設定の5つです。また、原価計算制度は財務会計の仕組みと結びついて常に継続的に行われる計算で、経営意思決定のために臨時に行う特殊原価調査は、制度としての原価計算に含まれません。M&Aの財務DDでは、原価計算の方法を会計方針の一つとして把握します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「原価計算基準は法人税法の一部として国税庁が定めた」は誤り。企業会計原則の一環として企業会計審議会が設定した(昭和37年)。
  • 数字を覚える原価計算の目的は5つ:財務諸表作成・価格計算・原価管理・予算管理・経営の基本計画設定。
  • よく問われる点臨時的な特殊原価調査は制度としての原価計算の範囲外。標準原価を設定する最も重要な目的は原価管理。

図解で確認:財務基礎出典:原価計算基準(企業会計審議会中間報告、昭和37年11月8日)本文の転載(Wikibooks)、原価計算基準(企業会計審議会中間報告、昭和37年11月8日)本文の転載(Wikibooks)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.105(当社にて要約)

減価償却

げんかしょうきゃく財務・税務

建物や機械など長く使う固定資産の取得価額を、使う期間にわたって少しずつ費用にする手続。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

建物・機械・ソフトウェアなどの固定資産は何年も使うため、買った年に全額を費用にすると、その年だけ利益が極端に小さくなります。そこで、取得価額(購入金額に付随費用を加えた額)を、耐用年数(使える期間)にわたって配分して費用にします。これが減価償却で、毎期計上する費用を減価償却費といいます。中小会計要領では、有形固定資産は定率法・定額法等で、無形固定資産(のれんなど)は原則として定額法で相当の減価償却を行い、耐用年数は法人税法に定める期間等、適切な利用期間とします。減価償却費は計上してもお金が出ていかない費用なので、間接法のキャッシュ・フロー計算では利益に足し戻します。企業価値評価で使うEBITDAも、簡易的に営業利益+減価償却費で求めます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い有形固定資産は定率法・定額法等、無形固定資産は原則として定額法で償却する。
  • よく問われる点減価償却費は資金の支出を伴わない費用。間接法では加算し、EBITDAは「営業利益+減価償却費」で簡易算定する。
  • よく問われる点災害等で固定資産の価値が著しく下落したときは、減価償却とは別に評価損を計上する。

別名・略称:減価償却費図解で確認:財務基礎出典:中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)、連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準(企業会計審議会、平成10年3月13日)(当社にて要約)

現在価値

げんざいかち財務・税務

将来に見込まれるキャッシュフローや収益を、割引率で割り引いて現時点の価値に直した金額。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

同じ金額でも、今手元にあるお金と数年後に受け取るお金では価値が違うと考えます。そのため、将来のお金を評価するときは、割引率を使って現時点の価値にそろえます。これが現在価値です。M&Aのバリュエーションでは、インカムアプローチがこの考え方を使います。代表例のDCF法は期待されるキャッシュフローを、収益還元法は期待される収益を、それぞれ現在価値に割り引いて評価します。インカムアプローチは将来の収益見込みを反映できますが、算定に事業計画書が必要で、事業計画書がない場合は初期段階で使いにくいことがあります。シナリオを複数作り、楽観シナリオを上限、悲観シナリオを下限として譲渡額水準の目安にすることもできます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い将来の収益・CFを現在価値に割り引くのはインカムアプローチ。BSを基にするのはコストアプローチ、類似会社等と比べるのはマーケットアプローチ。
  • よく問われる点複数シナリオで算定するときは、楽観シナリオを上限、悲観シナリオを下限とする(逆にした選択肢は誤り)。

図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.113、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42(当社にて要約)

源泉徴収

げんせんちょうしゅう財務・税務

給与・退職手当・配当などを支払う者が、支払の際に所得税を差し引いて納付する制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

源泉徴収は、給与や退職金、配当などを支払う会社などの支払者が、支払の際に受け取る人の所得税(復興特別所得税を含む)を差し引いて、代わりに納付する仕組みです。給与等や退職手当等の支払者には源泉徴収義務があり、徴収した所得税は徴収した月の翌月10日までに納付します。配当等の源泉徴収税率は20%で、復興特別所得税を含めると20.42%です。非上場株式の配当には、住民税の特別徴収はありません。自己株式の取得で生じるみなし配当の部分にも源泉徴収が必要です。役員賞与や配当は、支払が確定してから1年を経過しても支払われていなければ、その日に支払があったものとみなされます。M&Aでは、源泉所得税の徴収漏れ(給与・退職金・報酬・配当)が税務DDの典型的な確認事項です。徴収漏れの納付義務は支払者である対象会社が負うため、株式譲渡後も対象会社の税務リスクとして残ります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える配当等の源泉徴収税率は20%(復興特別所得税込み20.42%)。納付期限は徴収した月の翌月10日。非上場株式の配当に住民税の特別徴収はない。
  • ひっかけに注意「源泉所得税は受給者本人の税金なので、徴収漏れがあっても対象会社は納付義務を負わない」は誤り。支払者である会社が負う。
  • よく問われる点株式譲渡で株主が変わっても、過去の源泉徴収漏れの納付義務は消えず、対象会社の税務リスクとして残る(表明保証・補償で手当て)。

別名・略称:源泉所得税図解で確認:税務基礎出典:所得税法、所得税法、国税庁タックスアンサー No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)(当社にて要約)

減損(減損処理)

げんそん財務・税務

資産の価値が損なわれたときに、帳簿価額を引き下げて損失を計上する処理。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

資産は取得原価などで帳簿に載せますが、収益力の低下などで価値が損なわれることがあります。そのときに帳簿価額を引き下げ、差額を損失(減損損失)として計上するのが減損処理です。M&Aで特に問題になるのが、のれん(買収の対価のうち、受け入れた資産・負債の時価の純額を上回る部分)です。日本の会計基準では、のれんは20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって規則的に償却し、あわせて固定資産の減損の対象にもなります。買収後に業績が想定を下回ると、のれんの減損で大きな損失が出るおそれがあり、借入れを使って買収するLBOではこのリスクが大きくなるとされます。財務DDでは、固定資産の減損会計の適用状況を会計方針の着眼点の一つとして確認します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「日本基準ではのれんは償却せず、価値が下落したときに減損処理だけを行う」は誤り。20年以内で規則的に償却し、減損の対象にもなる。
  • 似た用語との違い税務上ののれんに当たる資産調整勘定は、60か月(5年)で均等に損金算入する。会計上ののれんの償却(20年以内)とは別。

別名・略称:減損処理、減損損失、減損会計図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、日銀レビュー「LBOファイナンスの動向とリスク管理」(2024年5月、2024-J-8)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.105(当社にて要約)

公開会社

こうかいがいしゃ法務

発行する株式の全部又は一部に、譲渡制限の定款の定めを設けていない株式会社のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

「公開会社」は、会社法で株式の手続や機関設計を考えるときの出発点になる区分です。名前から上場会社を連想しがちですが、上場とは関係がなく、定款に株式の譲渡制限(株式を譲渡で取得するには会社の承認が必要という定め)があるかどうかで決まります(会社法2条5号)。発行する株式の全部に譲渡制限を付けている会社だけが「公開会社でない株式会社(非公開会社)」で、一部の種類の株式にでも譲渡制限がなければ公開会社になります。多くの中小企業は、全株式に譲渡制限を付けた非公開会社です。M&Aでは、対象会社が非公開会社かどうかで、株式譲渡に会社の承認が要るか、株券をいつ発行するかといった手続が変わります。

例上場していない同族会社でも、定款に譲渡制限の定めがなければ公開会社に当たります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「公開会社=上場会社」は誤り。上場とは無関係で、定款に譲渡制限の定めがあるかどうかで決まる(会社法2条5号)。
  • よく問われる点一部の種類の株式だけでも譲渡制限がなければ公開会社。全部の株式に譲渡制限がある会社だけが非公開会社。

別名・略称:非公開会社、公開会社でない株式会社図解で確認:法務基礎出典:会社法(当社にて要約)

後継者人材バンク

こうけいしゃじんざいばんくM&A実務

事業承継・引継ぎ支援センターが行う、後継者不在の小規模事業者と創業希望者とのマッチング支援等の事業。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

後継者がいない小さな事業でも、引き継ぎたい人が見つかれば事業を続けることができます。後継者人材バンクは、事業承継・引継ぎ支援センターが実施する事業で、後継者不在の小規模事業者(主として個人事業主)と、創業希望者(まだ事業を営んでいない個人)を引き合わせ、マッチングを支援します。事業者同士のM&Aとは異なり、引き継ぐ側が「これから創業したい個人」である点が特徴です。創業希望者にとっては、ゼロから事業を始めるのではなく既存の事業を引き継ぐことで、創業に伴うリスクを抑えられるというメリットがあります。センターは、マッチングからクロージングまで支援します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「譲り受けを希望する既存の事業会社とマッチングする事業」は誤り。相手は事業を営んでいない個人(創業希望者)。
  • 似た用語との違い後継者人材バンクは事業承継・引継ぎ支援センターが実施する。日本政策金融公庫の「事業承継マッチング支援」とは別の事業。

図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.25、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.62(当社にて要約)

後継者不在率

こうけいしゃふざいりつM&A実務

企業のうち、後継者が「いない」又は「未定」である企業が占める割合。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継やM&Aが必要とされる背景を示す代表的な数字が後継者不在率です。後継者が「いない」又は「未定」の企業の割合で、この割合が高いほど、跡を継ぐ人が決まっていない企業が多いことを意味します。中小企業白書(2025年版)が帝国データバンクのデータを再編加工したものでは、中小企業の後継者不在率は2018年以降低下傾向にありますが、2024年時点でも52.7%と、半数近くの企業で後継者が不在です。一方、帝国データバンクの全国調査(全業種の約27万社が対象)では、2025年は50.1%で、前年から2.0ポイント低下し、7年連続で改善しました。改善には、官民の相談窓口や支援メニューの拡充が寄与したと分析されています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える中小企業白書(2025年版)では2024年時点で「52.7%」。帝国データバンク調査では2025年に「50.1%」で、7年連続の改善。
  • 似た用語との違い52.7%は白書が中小企業について示した2024年の値、50.1%は帝国データバンクが全業種約27万社を調べた2025年の値。出典・対象・時点が異なる。
  • 数字を覚える帝国データバンク調査の2025年値は、前年比2.0ポイント低下、過去10年で最も高かった2017年から16.4ポイント低下。

図解で確認:中小M&A市場動向出典:事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録、全国「後継者不在率」動向調査(2025年)(帝国データバンク、2025年11月21日公表)抄録(当社にて要約)

公序良俗

こうじょりょうぞく法務倫理・行動規範

公の秩序又は善良の風俗のことで、これに反する法律行為は無効になる(民法90条)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

契約は当事者が自由に内容を決められるのが原則ですが、社会の秩序や道徳に反する内容まで法律が守るわけではありません。民法90条は、公の秩序又は善良の風俗(公序良俗)に反する法律行為を無効としています。M&Aの実務では、たとえば過大な手数料条項や、過度に長いテール条項・競業避止条項などが、公序良俗や信義則によって効力を制限されることがあります。契約書に書いてあれば当然にすべて有効、というわけではありません。また、中小M&A専門人材の倫理・行動規範も、職業上の誠実性、社会的信頼、品位を損なう行為や、公序良俗に反する行為をしてはならないとしています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「契約に書いてある条項は当然にすべて有効」は誤り。公序良俗に反する部分は無効となり、信義則で制限されることもある。
  • 数字を覚える公序良俗違反の無効は民法90条。信義則は1条2項、権利濫用の禁止は1条3項。

図解で確認:法務基礎出典:民法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12(当社にて要約)

構造的な利益相反

こうぞうてきなりえきそうはん倫理・行動規範

譲り渡し側と譲り受け側の利益が対立する中で、仲介者が一方を優先する動機を持ちうること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、譲り渡し側はできるだけ高く売りたく、譲り受け側はできるだけ安く買いたいため、譲渡対価などで両者の利益は構造的に対立します。双方と契約する仲介者には、リピーター(繰り返し依頼してくれる顧客)になり得る譲り受け側の利益を優先する動機があるという指摘があります。一方で、手数料が譲渡額に連動して増える場合は、譲り渡し側を優先する動機もあるという指摘もあります。中小M&Aガイドラインは、利益相反が直ちに違法となるものではないとし、中小M&Aの実務ではFAより仲介者の形態の方が多く用いられていることを示したうえで、仲介という業態を不適切と断ずることは現実的でないとしています。そのうえで仲介者に最低限講ずべき措置を求めています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「利益相反があるので仲介は違法」「仲介はガイドライン上不適切とされFAへの移行が求められる」は誤り。
  • ひっかけに注意「仲介者には譲り受け側を優先する動機しかない」は誤り。手数料が譲渡額に連動すれば譲り渡し側を優先する動機もある。
  • よく問われる点中小M&Aの実務では、FAより仲介者の形態の方が多く用いられている。

図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.98、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99(当社にて要約)

公租公課

こうそこうかM&A実務財務・税務

国や地方公共団体に納める税金と、社会保険料などの公的な負担をまとめた呼び方。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

公租は税金、公課は社会保険料など税金以外の公的な負担を指し、まとめて公租公課といいます。M&Aの最終契約では、主に2つの場面で出てきます。1つは表明保証で、株式譲渡契約のサンプルでは、対象会社が過去7年間、法人税等と社会保険料等の公租公課を適法・適正に申告・納付していることを譲り渡し側が保証します。もう1つは事業譲渡での費用負担で、事業譲渡契約のサンプルでは、固定資産税等の公租公課を日割りで計算し、クロージング日の前日までを譲り渡し側、クロージング日以降を譲り受け側が負担するとしています。財産の移転手続に必要な登録免許税等は譲り受け側の負担です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点事業譲渡契約サンプルでは、固定資産税等はクロージング日前日までを譲り渡し側、クロージング日以降を譲り受け側が日割りで負担する。
  • よく問われる点移転手続の登録免許税等と許認可手続の費用は、譲り受け側の負担とされる。
  • 数字を覚える事業譲渡契約サンプルでは、登記・登録等の移転手続をクロージング日後30日以内に完了するものとする。

別名・略称:公租公課等の負担図解で確認:最終契約(税務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.40、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.35、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.28(当社にて要約)

公的機関(中小M&A支援)

こうてききかんM&A実務

中小M&Aの支援機関のうち、事業承継・引継ぎ支援センター等の公的な機関。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインでは、支援機関として、M&A専門業者、金融機関、商工団体、士業等専門家、M&Aプラットフォーマーとともに、事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関を挙げています。センターは公的な相談窓口として、M&Aの意思決定ができていない段階の相談や、親族内承継・従業員承継・廃業の相談も受け付けます。中小企業活性化協議会やよろず支援拠点等のほかの公的機関、士業等を含む民間の支援機関と連携し、事業承継以外の対応が適切であれば橋渡しします。ほかの仲介者・FAから受けたアドバイスについて、セカンド・オピニオンを求める相手にもなります。契約書サンプルでは、秘密情報を開示できる公的機関・団体にセンターが含まれると明記されています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「事業承継・引継ぎ支援センターは秘密情報を開示できる公的機関に含まれない」は誤り。含まれると明記されている。
  • よく問われる点法令等に基づく公的機関への開示は、原則として事前に相手方へ通知する(困難な場合は開示後できる限り速やかに)。
  • よく問われる点センターには、M&Aの意思決定前の段階でも相談でき、他の仲介者・FAの助言についてセカンド・オピニオンも求められる。

図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.78、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.60(当社にて要約)

子会社・親会社

こがいしゃ・おやがいしゃ法務

子会社は他の会社に経営を支配されている法人、親会社は株式会社を子会社として支配する会社。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社法は、子会社を「会社が総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他、その会社が経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」、親会社を「株式会社を子会社とする会社その他、その株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」と定義しています(2条3号・4号)。M&Aでは、株式譲渡で対象会社が譲り受け側の子会社となるのが典型です。株式交付は、他の株式会社を子会社とするためにその株式を譲り受け、対価として自社株式を交付する手続で、譲り受ける株式数の下限は、効力発生日に子会社となる数でなければなりません。また、子会社株式を譲渡する場合でも、一定の条件に当たれば株主総会の特別決議が必要になります(467条1項2号の2)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える子会社株式の譲渡で総会の特別決議が要るのは、帳簿価額が総資産額の5分の1超で、かつ効力発生日に議決権の過半数を有しなくなる場合。
  • 似た用語との違い株式交換は発行済株式の全部を取得させる手続。株式交付は子会社化が目的で全部の取得は要せず、既に子会社である会社の買増しには使えない。

別名・略称:子会社、親会社図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法、会社法(当社にて要約)

顧客情報の管理

こきゃくじょうほうのかんり倫理・行動規範

顧客に関する情報を厳格に管理し、悪用や顧客の承諾のない流用をしないこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aの支援では、会社の財務内容や経営者の意向など、外部に漏れると大きな影響が出る情報を扱います。倫理・行動規範の大分類「情報管理」は、顧客情報の取扱いに十分な注意を払い、顧客に関する情報を厳格に管理し、悪用したり顧客の承諾なしに流用したりしてはならないとしています。具体的には、業務上知り得た情報を自ら又は関係者の利益のために利用しないこと、インサイダー取引防止のため未公表の重要事実に当たり得る情報を顧客・関係者以外に伝えず、故意・過失を問わずインサイダー取引を行わないこと、退職時に顧客・関係者の情報を他社へ持ち出すなどの行為をしないこと、取引の記録・書類の保持に十分注意することです。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか取引終了後も、取引で使った書類等の使用停止と適切な管理(一定期間の保存、アクセス制限等)を行わ「なければならない」。
  • よく問われる点顧客との取決めに応じて、情報の破棄と破棄証明が必要な場合もある。
  • ひっかけに注意顧客情報を無断で他案件に流用する、退職時に顧客リストを持ち出すのは禁忌肢になりうる。

別名・略称:情報管理図解で確認:情報管理出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.13(当社にて要約)

個人情報保護法

こじんじょうほうほごほう法務

個人情報の適正な取扱いのルールを定め、個人の権利利益を保護するための法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、顧客名簿や従業員名簿などの個人データの受け渡しが問題になります。個人情報取扱事業者は、原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データ(個人情報データベース等を構成する個人情報)を第三者に提供できません(27条1項)。ただし、合併・分社化・事業譲渡など事業の承継に伴う提供は第三者提供に当たらず、本人の同意は不要です(27条5項2号)。契約締結前のDDでの提供も同様ですが、相手方に安全管理措置を守らせるため、利用目的・取扱方法、漏えい時の措置、交渉が不調になった場合の措置などを定めた契約を結ぶ必要があります。承継後は承継前の利用目的の範囲内で取り扱い、その範囲を超えるなら本人の同意が必要です(18条2項)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「契約締結前のDDでの提供には本人の同意が必要」は誤り。事業承継に伴う提供に当たるが、安全管理措置を守らせる契約が必要。
  • ひっかけに注意「承継した顧客名簿は譲り受け側の別事業の営業に自由に使える」は誤り。承継前の利用目的を超えるには本人の同意が必要。
  • よく問われる点範囲外の利用について同意を得るためのメール送信や電話は、目的外利用に当たらない。

別名・略称:個人情報の保護に関する法律図解で確認:法務基礎出典:個人情報の保護に関する法律、個人情報の保護に関する法律、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会。取得時点の版は令和8年6月一部改正)(当社にて要約)

個人データの第三者提供

こじんでーたのだいさんしゃていきょう法務

個人情報取扱事業者が、個人データを第三者に提供すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、顧客名簿や従業員名簿など個人データ(個人情報データベース等を構成する個人情報)が相手方に渡る場面があります。個人情報保護法27条1項は、個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないとしています。ただし、合併、分社化、事業譲渡など事業の承継に伴って個人データを提供する場合は、提供先は「第三者」に当たらず、本人の同意は不要です(27条5項2号)。その代わり、承継した事業者は、承継前の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱うには本人の同意が必要です(18条2項)。範囲を超える利用の同意を得るためのメールや電話は、目的外利用に当たりません。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点合併・分社化・事業譲渡など事業の承継に伴う提供は第三者提供に当たらず、本人の同意は不要(27条5項2号)。
  • ひっかけに注意「承継した顧客名簿は譲受け側の別事業の営業に自由に使える」は誤り。承継前の利用目的の範囲を超えるには本人の同意が必要。
  • 似た用語との違い株式譲渡では対象会社が引き続き個人データを保有するため、個人データの移転を伴わない。

別名・略称:個人データ図解で確認:法務基礎出典:個人情報の保護に関する法律、個人情報の保護に関する法律、個人情報の保護に関する法律(当社にて要約)

コストアプローチ

こすとあぷろーち財務・税務

貸借対照表の純資産に着目して、会社の株式価値を評価する考え方。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社の価値を評価する方法(バリュエーション)には、大きくコスト・マーケット・インカムの3つのアプローチがあります。コストアプローチ(ネットアセット・アプローチ)は、貸借対照表の純資産に着目する方法で、代表的な手法に簿価純資産法と時価純資産法があります。時価純資産法では、すべての資産・負債を個別に時価で評価し直し、その差額である時価ベースの純資産を株主価値とします。貸借対照表だけで算定できるため比較的シンプルですが、企業が将来どれだけ稼げるかという収益性や営業権が株式価値に反映されないため、評価額の妥当性を欠く可能性があります。そのため、企業の利益の算定が難しい場合に使われることが多い方法です。事案によっては、複数の手法の結果を比較検討することもあります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い代表手法の対応は、コスト=時価純資産法・簿価純資産法、マーケット=マルチプル法・市場株価法、インカム=DCF法・収益還元法。
  • よく問われる点BSだけで算定でき簡便だが、将来の収益性・営業権が反映されない。利益の算定が困難な場合に使われることが多い。
  • ひっかけに注意「将来の収益を反映できるが、割引率等の前提次第で結果が大きく変わる」はインカムアプローチの特徴で、コストアプローチではない。

別名・略称:ネットアセット・アプローチ図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.113、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42(当社にて要約)

固定合意

こていごういM&A実務法務

遺留分を算定するための財産に算入する自社株式等の価額を、合意の時における価額に固定する合意。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

経営承継円滑化法の民法特例の一つです。後継者が株式を受け継いだ後、経営努力で会社の価値が上がると、相続のときの株価も上がり、その分だけ他の相続人の遺留分も大きくなってしまいます。これでは後継者の経営意欲がそがれます。固定合意は、旧代表者の推定相続人と会社事業後継者の全員の合意で、遺留分の算定に算入する株式等の価額を、合意の時における価額に固定するものです。これにより、後継者の貢献による株価の上昇分が遺留分の算定から除かれます。固定する価額は、弁護士・公認会計士・税理士(それぞれの法人を含む)等が相当な価額として証明したものに限られます。対象は会社の株式等で、個人事業主の事業用資産には使えません。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「旧代表者が税理士なら自ら価額を証明できる」は誤り。旧代表者・会社事業後継者は証明できない。中小企業診断士や不動産鑑定士も証明者に含まれない。
  • 似た用語との違い固定合意は価額を「合意時の価額」に固定して算入する。算入そのものをしないのは除外合意。
  • よく問われる点固定合意について経済産業大臣の確認を申請する場合は、専門家の証明を記載した書面を添付する。

図解で確認:中小企業政策出典:中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(当社にて要約)

固定資産(有形固定資産・無形固定資産)

こていしさん財務・税務

長期間にわたり事業に使うために持つ資産。有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に分かれる。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

貸借対照表では、資産を流動資産と固定資産に分けて表示します。固定資産は、事業で長く使い続けるための資産で、3つに区分されます。有形固定資産は建物・機械装置・土地など形のあるもの、無形固定資産はソフトウェア・借地権・特許権・のれん(営業権)など形のないもの、投資その他の資産は子会社株式など流動資産に属しない有価証券などです。中小会計要領では、原則として取得原価(購入金額に付随費用を加えた額)で計上します。有形固定資産は定率法・定額法などで、無形固定資産は原則として定額法で減価償却(使う期間に分けて費用にすること)を行い、耐用年数は法人税法に定める期間などを使います。災害などで著しく価値が下がったときは評価損を計上します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「のれん(営業権)や特許権は有形固定資産に属する」は誤り。形のないものは無形固定資産に属する。
  • 似た用語との違い子会社株式は流動資産でも有形固定資産でもなく、「投資その他の資産」に属する。
  • よく問われる点無形固定資産の減価償却は原則として定額法。取得価額は購入金額に付随費用を加えて計算する。

別名・略称:固定資産、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産図解で確認:財務基礎出典:中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)(当社にて要約)

固定比率

こていひりつ財務・税務

固定資産÷自己資本×100で求める、長期の安全性を見る指標。低いほど安全性が高い。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

建物や機械などの固定資産は、長い期間をかけて資金を回収するため、返済が不要な自己資本でまかなうのが安全だと考えます。固定比率は、固定資産が自己資本に対してどれだけあるかを見る指標で、固定資産÷自己資本×100で計算します。低いほど、固定資産を返済不要の資金でまかなえていることになり、長期的な安全性が高いと判断します。ここが流動比率や自己資本比率と違う点で、この2つは高いほど安全です。指標の良し悪しの向きを取り違えさせる選択肢がよく出るので注意が必要です。中小M&Aでは、決算書から対象企業の財務の状態をつかむ基本的な指標の一つです。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「固定比率は高いほど安全」は誤り。固定比率は低いほど安全で、流動比率・自己資本比率とは向きが逆。
  • 数字を覚える固定比率=固定資産÷自己資本×100。分母は総資本ではなく自己資本。

図解で確認:財務基礎出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

固定費・変動費

こていひ・へんどうひ財務・税務

変動費は売上規模に応じて増減する費用、固定費は売上規模に関係なく一定の費用。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

費用を、売上の増減に連動して動くかどうかで分ける考え方です。変動費は売上規模(操業度)に応じて増減する費用、固定費は売上規模に関係なく一定の費用です。売上高から変動費を引いたものを限界利益といい、固定費を回収するための利益になります。限界利益で固定費をちょうど回収できる売上高が損益分岐点売上高で、固定費÷限界利益率で求めます。損益分岐点が低く売上高が高い企業ほど、安全余裕率(売上が落ちても赤字になりにくい度合い)が高くなります。M&Aでは、DD結果を踏まえて事業計画を修正するときに、販管費を変動費+固定費で予測し、変動費は売上高や従業員数に連動させます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「損益分岐点売上高=固定費÷変動費率」は誤り。正しくは固定費÷限界利益率。
  • よく問われる点限界利益=売上高-変動費。限界利益は固定費の回収に貢献する利益。
  • よく問われる点事業計画では販管費を変動費+固定費で予測し、変動費は売上高又は従業員数に連動させる。

別名・略称:固定費、変動費図解で確認:財務基礎出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)、原価計算基準(企業会計審議会中間報告、昭和37年11月8日)本文の転載(Wikibooks)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.101(当社にて要約)

顧問税理士

こもんぜいりしM&A実務

顧問先の企業と顧問契約を結び、日頃から税務・会計に関与している税理士。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業の経営者にとって最も身近な専門家の一人です。中小M&Aガイドラインでは、譲り渡しを考えた経営者は、実際にはまず顧問の士業等専門家、特に顧問税理士に相談することが多いと思われるとしています。顧問税理士など、もともと関与のある専門家の支援の下で中小M&Aの手続を進めるケースもあり、その場合は顧問料とは別に報酬を支払うこともあるため、予め確認しておくことが求められます。税務DDでは対象企業の顧問税理士へのインタビューが行われ、顧問税理士は顧問先のDDに積極的に協力することが望ましいとされます。また、案件を一人で抱え込まず、表明保証などの契約条項について弁護士等と連携し、顧問先に不利益がないか確認・助言することが期待されます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点譲り渡し側経営者がまず相談することが多いと思われるとされるのは、顧問の士業等専門家、特に顧問税理士。
  • ひっかけに注意「顧問税理士が手続を支援する場合の報酬は顧問料に含まれる」は誤り。別途報酬を支払うケースもあり、予め確認する。
  • ひっかけに注意「守秘の観点から顧問先のDDへの協力は控えることが望ましい」は誤り。積極的に協力することが望ましい。

別名・略称:顧問の士業等専門家図解で確認:事前相談出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.34、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.37、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.38(当社にて要約)

コンプライアンスチェック

こんぷらいあんすちぇっくM&A実務倫理・行動規範

譲り受け側やその関係者が反社会的勢力に当たらないか、過去のM&Aトラブルがないかなどを確かめること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

譲り受け側が最終契約をきちんと履行し、事業を引き継ぐ意思と能力を持っているかを確かめることは、仲介者・FAの重要な役割です。中小M&Aガイドラインは、その調査の観点の一つとしてコンプライアンス面を挙げ、反社会的勢力への該当性や過去のM&Aに関するトラブルの有無を、代表者・役員・株主等の関係者を含めて確認するよう求めています。調査の対象は、譲り受け側、その経営者・役員・主要株主・関連会社です。方法の例は、Web上の不芳情報検索、社内データベース、業界内の情報共有の仕組み、外部データベース・調査会社です。実施主体は、仲介者・FAの担当者や内部審査部門、関連会社です。タイミングは、譲り受け側との契約締結前(プラットフォーマーは登録前)に加え、プロセスの進捗過程でも行います。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点対象は譲り受け側本体だけでなく、代表者・役員・株主等の関係者を含む。最終契約締結までに十分に確認する。
  • 似た用語との違い譲り受け側調査の項目は財務状況・コンプライアンス・事業実態・最終契約の実行可能性・その他の5つ。項目と方法の組合せが問われる。
  • ひっかけに注意譲り受け側の反社チェックを行わずに紹介するのは禁忌肢になりうる。

図解で確認:不適切な個人・組織、反社等との関係出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.100、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.101(当社にて要約)

さ行

債権者保護手続

さいけんしゃほごてつづきM&A実務法務

合併・会社分割などで、異議を述べられる債権者に公告・催告し、異議の機会を与える手続。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

合併で会社が消えたり、会社分割で債務の負担者が変わったりすると、債権者は思わぬ不利益を受けるおそれがあります。そこで会社法は、異議を述べられる債権者(吸収合併の消滅会社の債権者、吸収分割後に分割会社へ履行を請求できなくなる債権者など)のために、債権者保護手続を定めています(789条。存続会社側は799条)。会社は官報に公告し、知れている債権者には各別に催告しなければならず、異議を述べられる期間は1か月以上必要です。期間内に異議がなければ承認したものとみなされます。異議を述べた債権者には、弁済・相当の担保の提供・信託をします(債権者を害するおそれがないときは不要)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える異議期間は1か月以上。この期間を確保せずに効力発生日を設定するのは重大な誤り。
  • よく問われる点官報に加え日刊新聞紙又は電子公告で公告(ダブル公告)すれば各別の催告を省略できる。ただし吸収分割の不法行為債権者への催告は省略できない。
  • 似た用語との違い事業譲渡には会社法上の債権者保護手続がない。債務の移転は債権者の個別の同意で対応する。

図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

債権譲渡

さいけんじょうと法務

債権を、同じ内容のまま他人に譲り渡すこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業譲渡で売掛金などの債権を譲り受け側に移すときは、民法の債権譲渡の規定に従います。債権は原則として譲渡でき(民法466条1項)、当事者が譲渡を制限する特約(譲渡制限特約)を結んでいても、譲渡自体は有効です(466条2項)。ただし、特約を知っていた、又は重大な過失で知らなかった譲受人に対しては、債務者は履行を拒めます(466条3項)。債権譲渡を債務者に主張するには、譲渡人から債務者への通知か、債務者の承諾が必要です(467条1項)。債務者以外の第三者に主張するには、確定日付のある証書による通知・承諾が必要です(467条2項)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「譲渡制限特約付きの債権の譲渡は無効」は誤り。改正民法で有効に変わった。ただし悪意・重過失の譲受人には債務者は履行を拒める。
  • よく問われる点債務者への対抗要件は譲渡人からの通知又は債務者の承諾。譲受人からの通知ではない。第三者には確定日付ある証書が必要。

別名・略称:譲渡制限特約図解で確認:法務基礎出典:民法(当社にて要約)

最終契約

さいしゅうけいやくM&A実務

M&Aの条件を確定させ、当事者の合意に法的拘束力を持たせるために締結する最終的な契約。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

基本合意の後、DD(買収前の調査)を経て、M&Aの条件を最終的に決めるのが最終契約です。株式譲渡なら株式譲渡契約、事業譲渡なら事業譲渡契約と呼ばれます。DDで見つかった点や基本合意で留保していた事項を再交渉し、必要な事項がそろっているか確認して調印します。主な内容は、譲渡対象、譲渡時期、譲渡対価、支払時期・方法、経営者・役職員の処遇、経営者保証の扱い、表明保証条項、補償条項、クロージングの前提条件、競業避止義務、解除事由などで、株式譲渡・事業譲渡に共通です。締結で終わりではなく、譲渡対価は通常クロージングで初めて支払われます。内容は当事者自身も十分に確認し、不安があれば調印前に士業等専門家などにセカンド・オピニオンを求めることも有効です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点仲介者・FAはドラフト作成にとどめ、最終化は当事者間で行う。最終的な契約書面まで作成すると非弁行為となりうる。
  • ひっかけに注意「最終契約の締結でM&Aは完了する」は誤り。譲渡対価は通常クロージングで支払われ、締結で全て完了するものではない。
  • よく問われる点経営者保証の扱い(解除・引継ぎの義務、なされない場合の解除・補償)も、最終契約で取り決める主要な内容。

別名・略称:株式譲渡契約、事業譲渡契約図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.48、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.49、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.135(当社にて要約)

再生M&A

さいせいえむあんどえーM&A実務

中小企業の再生局面で活用されるM&Aの手法で、スポンサー型再生支援とも表現されるもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

経営が悪化した中小企業を立て直す(事業再生)場面では、再生を支えるスポンサー企業を探し、事業を引き継いでもらう方法があります。「中小企業における事業再生支援のあり方検討会」では、中小企業の再生局面での効果的な支援手法として、再生M&A(スポンサー型再生支援)が注目されました。スポンサー探しのノウハウの観点から、事業承継・引継ぎ支援センターへの期待が高まっています。センターは既に、再生支援を担う中小企業活性化協議会との連携を進めており、2024年度の橋渡し件数は、センターから協議会へが230件、協議会からセンターへが452件でした。今後は、優良事例の横展開などを通じて、特に協議会との実践的な連携のあり方を検討していくべきとされています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える2024年度の橋渡し件数は「センター→協議会230件」「協議会→センター452件」。協議会からセンターへの方が多い。
  • よく問われる点再生M&Aは「スポンサー型再生支援」とも表現され、スポンサー探しのノウハウの観点から、事業承継・引継ぎ支援センターへの期待が高まっている。

別名・略称:スポンサー型再生支援図解で確認:中小M&A市場動向出典:第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.38(当社にて要約)

最低手数料

さいていてすうりょうM&A実務

成功報酬の計算額が一定額を下回るときに適用される、手数料の最低額のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

成功報酬はレーマン方式などで計算するのが一般的ですが、譲り渡し側が小規模だと基準となる価額が小さく、計算した報酬額では仲介者・FAが十分な成功報酬を確保できないことがあります。これに備えて、最低手数料を設けている仲介者・FAは多いです。計算した額が最低手数料を下回るときは、最低手数料が成功報酬の額になります。最低手数料の金額は仲介者・FAごとに異なるため、依頼しようとする中小企業は、最低手数料を含めて手数料の算出方法を明確に確認し、比較検討することが望ましいとされます。

例ガイドラインの事例では、譲渡額5,000万円×5%=250万円が最低手数料1,000万円を下回るため、成功報酬は最低手数料の1,000万円(税抜)となっています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「最低手数料を計算額に加算する」は誤り。計算額が最低手数料を下回る場合に、計算額に代えて最低手数料を適用する。
  • よく問われる点小規模案件ほど最低手数料が適用されやすい。最低手数料を設ける仲介者・FAは多く、水準は業者ごとに異なる。
  • よく問われる点計算問題では税抜か税込かに注意。消費税等を加えた額で比較・控除する。

図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.65、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.66、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.39(当社にて要約)

債務超過企業

さいむちょうかきぎょうM&A実務財務・税務

中小M&Aガイドラインで、譲り渡し側が債務超過の状態にある場合の、その譲り渡し側をいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインでは、債務超過の状態にある譲り渡し側を債務超過企業と呼びます。ここでいう債務超過は、特に説明のない限り、決算書の簿価上ではなく、資産・負債の時価評価を踏まえた実態貸借対照表上の債務超過を意味します。簿価では債務超過でも、時価純資産では資産超過となる場合もあります。債務超過企業でも中小M&Aを実行できる可能性はありますが、債務整理手続等を伴うことがあります。事業の価値は最終的には譲り受け側の評価で決まるため、債務超過だから廃業しかないとは限りません。債務整理が必要な場合は、中小企業活性化協議会や事業再生を専門とする弁護士等と連携します。事業譲渡等の対価が不当に低いと、債権者から詐害行為取消権を、監督委員等から否認権を行使されるおそれがあるため、少なくとも清算価値を相当程度超える対価が求められます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点ガイドラインの「債務超過」は、特に説明のない限り簿価ではなく、時価評価を踏まえた実態貸借対照表上の債務超過。
  • ひっかけに注意「債務超過企業は中小M&Aを実行できず、必ず法的整理を先行させる」は誤り。実行できる可能性があり、債務整理手続等を伴うことがある。
  • よく問われる点債務超過企業の事業譲渡等の対価は、少なくとも清算価値を相当程度超える金額が求められる(低額だと詐害行為取消・否認のリスク)。

図解で確認:財務DD出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.23、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.120、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.123(当社にて要約)

財務DD

ざいむでぃーでぃーM&A実務財務・税務

譲り受け側が譲り渡し側の収益力や財務リスクを把握するため、財務・会計状況を調査・検証するDD。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

DDの中心となる調査の一つです。過去の実績の把握、現在の財務状態の調査による財務リスクの特定、将来の事業計画の基礎情報の入手が目的です。調べる主な項目は、バリュエーションに影響する時価(実態)純資産、正常収益力、運転資本、設備投資、ネットデット(キャッシュライクアイテム・デットライクアイテム等も考慮)のほか、買収後に表れるおそれのある税務リスク、スタンドアローン・イシュー、PMIに影響する事象です。範囲や手法は主に依頼者の譲り受け側と公認会計士が事前に合意して決めます。書面だけでなく、現場で現物を確認することが肝要です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点財務DDは一般に、基本的な譲渡条件の合意後(主に基本合意締結後)に実施する。「基本合意前の初期段階が多い」は誤り。
  • 似た用語との違いセラーズDDは譲り渡し側が事前に行う財務DDで、中小M&Aでは少ない。通常の財務DDの実施主体は譲り受け側。
  • よく問われる点多大な簿外債務・偶発債務が見つかると、株式譲渡から事業譲渡へのスキーム変更を余儀なくされることもある。

別名・略称:財務デュー・ディリジェンス図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.102、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.114(当社にて要約)

詐害行為取消請求

さがいこういとりけしせいきゅう法務

債務者が債権者を害すると知ってした行為の取消しを、債権者が裁判所に求める制度(民法424条)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

お金を返せない状態の債務者が財産を安く手放したりすると、債権者は回収できる財産を失います。そこで民法424条は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを、債権者が裁判所に請求できるとしています。ただし、その行為で利益を受けた相手(受益者)が、行為の時に債権者を害することを知らなかったときは取り消せません。また、財産権を目的としない行為には適用されません。M&Aでは、債務超過企業の事業譲渡や会社分割が、この詐害行為取消しや会社法上の詐害事業譲渡(23条の2)の対象となりうる点が問題になります。倒産手続が始まった後は、破産管財人などによる否認権の問題になります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点受益者が行為の時に債権者を害することを知らなかったときは取り消せない(424条1項ただし書)。請求は裁判所に対して行う。
  • 似た用語との違い倒産手続開始前は債権者の詐害行為取消請求、開始後は管財人等の否認権の問題になる。

図解で確認:法務基礎出典:民法(当社にて要約)

詐害事業譲渡・詐害的会社分割

さがいじぎょうじょうと・さがいてきかいしゃぶんかつ法務

引き継がれない債務の債権者を害すると知りながら行う、事業譲渡や会社分割のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

優良な事業だけを事業譲渡や会社分割で別の会社に移し、債務は元の会社に残すと、残された債務の債権者(残存債権者)は回収できなくなります。こうした行為から債権者を守るため、会社法は、譲渡会社・分割会社が残存債権者を害することを知って事業譲渡や会社分割をした場合、残存債権者は譲受会社・承継会社に対し、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求できるとしています(事業譲渡は23条の2第1項、吸収分割は759条4項。新設分割も同様)。ただし、譲受会社・承継会社が効力発生時に債権者を害することを知らなかったときは請求できません。事業を切り出して再生を図る第二会社方式で特に問題になります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える請求は、残存債権者が知った時から2年以内に行わないと消滅する。効力発生日から10年経過でも消滅(事業譲渡の場合)。
  • よく問われる点譲渡会社に破産・再生・更生手続が開始されると、残存債権者はこの請求ができない(23条の2第3項)。
  • よく問われる点債権者を害すると知りながら優良事業だけを移し債務を旧会社に残すスキームは、詐害的とされるリスクが高く、支援者が勧めるべきではない。

別名・略称:残存債権者の履行請求図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

錯誤・詐欺・強迫

さくご・さぎ・きょうはく法務

勘違い(錯誤)や、だまされ(詐欺)・脅され(強迫)てした意思表示を、取り消せるとする民法のルール。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aの契約でも、譲り受け側が重要な事実を誤解して契約したり、譲り渡し側が財務情報について虚偽の説明をしたりした場合に問題になります。民法では、錯誤が法律行為の目的と取引上の社会通念に照らして重要なときは、その意思表示を取り消すことができます(95条1項)。ただし、契約の前提とした事情についての勘違い(基礎事情の錯誤、いわゆる動機の錯誤)は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り取り消せます。また、錯誤が表意者の重大な過失によるときは、原則として取り消せません。詐欺又は強迫による意思表示も取り消すことができます(96条1項)。第三者が詐欺をした場合は、相手方がその事実を知り又は知ることができたときに限り取り消せます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「錯誤による意思表示は無効」は誤り。改正民法で錯誤の効果は「取消し」に改められた。
  • よく問われる点基礎事情の錯誤は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた場合に限り取り消せる。
  • よく問われる点第三者の詐欺は、相手方が知り又は知ることができたときに限り取り消せる。表意者に重大な過失がある錯誤は原則取り消せない。

別名・略称:錯誤、詐欺、強迫図解で確認:法務基礎出典:民法(当社にて要約)

差止請求(組織再編)

さしとめせいきゅう法務

違法な組織再編で不利益を受けるおそれがある株主が、会社にその組織再編をやめるよう求めること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

合併・会社分割・株式交換などの組織再編は株主の利益に大きく影響するため、効力が生じる前に止める手段として用意されている制度です。吸収合併等が法令又は定款に違反する場合で、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は会社に対し、その吸収合併等をやめることを請求できます(会社法784条の2・796条の2)。また、略式手続(特別支配会社との間で株主総会決議を省略する手続)による場合に、対価等が当事会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当で、株主が不利益を受けるおそれがあるときも請求できます。一方、簡易手続による場合(存続会社等の負担が小さく総会決議を省略する場合)は、原則として差止請求はできません。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い略式手続では「対価等が著しく不当」な場合も請求できる。簡易手続による場合は差止請求できない。
  • よく問われる点差止めの要件は、法令・定款違反(又は略式での著しく不当な対価)に加えて、株主が不利益を受けるおそれがあること。
  • 似た用語との違い効力発生後は、組織再編の無効の訴えで争う。提訴期間は効力が生じた日から6か月以内。

別名・略称:組織再編の差止請求、吸収合併等の差止請求図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

仕入債務

しいれさいむ財務・税務

通常の商取引で生じた買掛金・支払手形など、仕入代金を後で支払う義務。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

商品や原材料を仕入れても、代金をすぐ払うとは限りません。後日払う約束の買掛金や、代金として振り出した手形(支払手形)を仕入債務といい、貸借対照表の流動負債に表示します。M&Aの財務DDでは、売上債権と棚卸資産の合計から仕入債務を差し引いて運転資本を計算し、短期的な資金繰りを評価します。仕入債務は支払を先に延ばしている分だけ手元の資金を増やす働きがあるため、仕入債務が減る(早く払う)とキャッシュ・フローは減ります。DD結果を踏まえて事業計画を直すときは、売上債権・棚卸資産・仕入債務ごとに回転日数や回転率を算出し、売上高や売上原価の増減に連動させて予測します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務。仕入債務は差し引く側。
  • ひっかけに注意「仕入債務が増加するとFCFは減少する」は誤り。支払が先に延びるので資金の増加要因。間接法では仕入債務の減少額を減算する。
  • 数字を覚える運転資本の予測に使う回転日数・回転率は、過去3年程度の平均値を使う。

図解で確認:財務基礎出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.101(当社にて要約)

支援機関

しえんきかんM&A実務

中小M&Aを支援する機関の総称。M&A専門業者、金融機関、商工団体、士業等専門家などを含む。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、中小企業向けの手引きであると同時に、支援する側の行動指針でもあり、その対象となるのが支援機関です。具体的には、M&A専門業者(仲介者・FA)、金融機関、商工団体、士業等専門家、M&Aプラットフォーマーのほか、事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関も含みます。金融機関の中には、与信(融資)業務等に加えてマッチング支援等を行う者もいます。商工団体は商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、商店街振興組合連合会等で、中小企業の経営全般に関する地域の身近な相談窓口です。どの支援機関でも、仲介者・FAと同様の業務を行う場合は、業務の性質・内容が共通する限りで仲介者・FAとしてガイドラインが適用されます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点公的機関(事業承継・引継ぎ支援センター等)やM&Aプラットフォーマーも支援機関に含まれる。民間のM&A専門業者に限らない。
  • よく問われる点商工団体の例は商工会議所・商工会・中小企業団体中央会・商店街振興組合連合会等。
  • 似た用語との違い支援機関は支援する側の総称。M&A専門業者はその一つで、マッチング支援等を専門に行う民間業者。

別名・略称:M&A支援機関図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.17(当社にて要約)

支援機関間の連携

しえんきかんかんのれんけいM&A実務倫理・行動規範

各支援機関が自ら全てを抱え込まず、必要に応じて他の支援機関と積極的に連携すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aの支援には、事業承継・引継ぎ支援センター、商工団体、金融機関、M&A専門業者、士業等専門家、M&Aプラットフォーマーなど多くの支援機関が関わります。中小M&Aガイドラインは、円滑に進むケースでは支援機関同士が連携している例が多いとしています。たとえば、商工団体が窓口に相談に来た譲り渡し側経営者を事業承継・引継ぎ支援センターへつなぎ、センターが登録機関等や連携M&Aプラットフォーマーへ橋渡しすることがあります。M&Aプラットフォームで自らマッチングした中小企業が、契約交渉の局面で士業等専門家の力を借りることもあります。そのため各支援機関は、自ら全てを抱え込むのではなく、必要に応じ他の支援機関と積極的に連携することが望まれています。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか他の支援機関との積極的な連携は「望まれる」とされている(義務ではない)。
  • よく問われる点案件情報が少ない支援機関が、M&Aプラットフォームでマッチングを実現し、その後の手続を自ら支援することもある。

別名・略称:抱え込み図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.78、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.79(当社にて要約)

支援の質の確保・向上

しえんのしつのかくほ・こうじょう倫理・行動規範

仲介者・FAが、知識・能力の向上と適正な業務遂行を通じて、M&A支援の質を高めること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

成約の目的化や、経験の乏しい人材の参入増加といった問題を受けて、中小M&Aガイドラインは仲介者・FAに支援の質の確保・向上を求めています。柱は2つです。1つ目は知識・能力の向上で、自社の支援内容に応じて求める水準を明らかにし、人材育成方針や社内研修・社外研修の受講支援などで育成すること、その取組や成果を人事評価や報酬に反映することが例示されています。2つ目は適正な業務遂行で、役員・従業員の業務も最終的な責任は専門業者が負うため、業務規程・マニュアル・書式の整備、経験不足の者には経験のある者を同行させる体制、違反行為を把握し対応する仕組み(社内相談窓口・懲戒規定)、苦情の受付体制を整えることが挙げられています。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか取組を公表する等して依頼者等に伝えることは「望ましい」(義務ではない)。業務規程の整備等の適正な業務遂行の取組は「行うべき」。
  • ひっかけに注意経験や知識が十分でない者に単独で案件を担当させるのは不適切。十分な者とともに業務を行わせ、社内規則等に定める。

図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.80、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.81、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.82(当社にて要約)

時価純資産法

じかじゅんしさんほう財務・税務

資産・負債を時価で評価し直し、簿外の資産・負債も含めて算定した純資産を株式価値とする評価手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

時価純資産法はコストアプローチの代表的な手法で、中小M&Aでは時価純資産法で算定されるケースが多いとされます。すべての資産と負債の時価を検討して純資産額を計算します。資産は、内容・回収可能性・換金性・再調達金額などを検討して評価します。負債は帳簿金額が支払うべき額で時価と考えられますが、計上漏れがないか(網羅性)、オフバランス債務(帳簿に載っていない債務)がないかを確認し、未計上や引当金の不足があれば追加計上します。保険の解約返戻金や退職給付債務のような簿外資産・負債も時価評価の対象です。譲り受け側が対象企業の実態をつかむのに有効ですが、時価の算定に費用と時間がかかります。そこで中小M&Aでは、不動産や有価証券など影響が大きく時価を把握しやすい一部の資産・負債だけを時価評価する修正簿価純資産法も多く用いられます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「修正簿価純資産法は資産・負債の全てを時価評価する」は誤り。不動産・有価証券など一部のみを時価評価する。
  • よく問われる点保険の解約返戻金(簿外資産)は加算し、退職給付債務(簿外負債)は控除する。簿外項目を評価に含めない計算は誤り。
  • 似た用語との違い財産評価基本通達の純資産価額方式は時価純資産法に類似し、税理士でも対応可能と考えられている。

別名・略称:時価純資産図解で確認:バリュエーション(財務)出典:参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.2、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.48、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.119(当社にて要約)

時価評価

じかひょうか財務・税務

資産・負債を、帳簿価額ではなく評価時点の時価で評価し直すこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

帳簿に載っている金額(簿価)は、実際の価値とずれていることがあります。そこでM&Aでは、対象企業の実態をつかむために資産・負債を時価で評価し直します。時価純資産法は、すべての資産・負債を時価評価し、保険の解約返戻金や退職給付債務などの簿外資産・負債も時価評価して純資産を求めます。ただし時価の算定には費用と時間がかかるため、中小M&Aでは、不動産や有価証券など影響が大きく時価を把握しやすい一部だけを時価評価する修正簿価純資産法もよく使われます。中小M&Aガイドラインの「債務超過」も、時価評価を踏まえた実態貸借対照表で判断します。連結財務諸表では、子会社の資産・負債を支配を獲得した日の時価で評価します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「修正簿価純資産法は資産・負債の全てを時価評価する」は誤り。時価評価するのは不動産・有価証券など一部だけ。
  • よく問われる点中小M&Aガイドラインの債務超過は、特に説明がない限り、簿価ではなく時価評価を踏まえた実態貸借対照表上で判断する。
  • よく問われる点連結では子会社の資産・負債を支配獲得日の時価で評価する(全面時価評価法)。

別名・略称:時価評価替え図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料(全体) p.5、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.23(当社にて要約)

事業計画(事業計画書)

じぎょうけいかくM&A実務財務・税務

企業の将来の事業の見通しと、その実現の道筋を、数値も含めてまとめた計画。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業計画書は、ビジョン・理念・目的、企業・事業概要、市場環境・競合、自社の強み・弱み、取引先情報、実施体制・人員計画、売上計画、利益計画、資金調達計画、投資計画、実施スケジュールなどで構成されます。M&Aでは、DCF法などインカムアプローチによるバリュエーションの基礎となるため、慎重な精査が必要です。検証の基本は、いつ・誰により・どのような状況の下で作成されたかの3つの観点です。譲り渡し側経営者が受け取る譲渡対価が大きい場合やM&A後の経営への関与が低い場合は強気の計画に、MBOでは自らが株主兼経営者となるため過度に保守的な計画になる傾向があります。事業計画書がない場合は、ヒアリング等を通じて素案を作成することが望ましいとされます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い強気になりやすいのは譲渡対価が大きい場合や成立後の経営関与が低い場合。MBOは過度に保守的になりやすい(入れ替えに注意)。
  • よく問われる点事業計画が複数ある場合は、取締役会の承認の有無や譲り渡し側での浸透度合い等を踏まえて、検証すべき計画を選ぶ。
  • 義務か・望ましいか譲り受け側に開示する前には、譲り渡し側に内容を入念に確認する「必要」がある。計画書がない場合の素案作成は「望ましい」。

別名・略称:事業計画書図解で確認:バリュエーション出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.45、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.94、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42(当社にて要約)

事業承継ガイドライン

じぎょうしょうけいがいどらいんM&A実務

早期・計画的な事業承継を促すため、事業承継診断や円滑な承継に必要な5つのステップ等を示した中小企業庁のガイドライン。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継は準備に時間がかかるため、早めに計画的に取り組むことが大切です。中小企業庁の事業承継ガイドラインは、そうした取組を促すため、事業承継診断や、円滑な承継に必要な5つのステップなどを示しています。5つのステップは、①事業承継に向けた準備の必要性の認識、②経営状況・経営課題等の把握(見える化)、③事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)、④事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)又はM&A等のマッチングの実施(社外への引継ぎの場合)、⑤事業承継の実行です。経営者保証ガイドラインの事業承継特則も、経営者保証なしでの承継を目指して経営改善に取り組む際に、この5ステップを参照するよう示しています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点5ステップの順序は、準備の必要性の認識→見える化→磨き上げ→事業承継計画の策定/マッチング→実行。「磨き上げ」は「見える化」の後。
  • 似た用語との違いステップ4は、親族内・従業員承継なら「事業承継計画の策定」、社外への引継ぎなら「M&A等のマッチングの実施」。
  • 似た用語との違い中小M&Aガイドラインは中小M&Aの基本事項・手数料の目安・支援機関の行動指針、中小PMIガイドラインはM&A後の統合の取組を示す。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録、事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)、事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)(当社にて要約)

事業承継計画

じぎょうしょうけいけいかくM&A実務

事業承継を円滑に進めるために、現経営者が後継者とともに策定する計画。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継ガイドラインは、事業承継に向けた取組を5つのステップで示しています。①事業承継に向けた準備の必要性の認識、②経営状況・経営課題等の把握(見える化)、③事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)、④事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)又はM&A等のマッチング実施(社外への引継ぎの場合)、⑤事業承継の実行です。事業承継計画は、親族内・従業員承継の場合の4番目のステップに当たります。事業承継・引継ぎ支援センターは、親族内承継の支援として、税理士・中小企業診断士等の外部専門家と連携し、事業承継計画の策定を無料で支援します。日本政策金融公庫の事業承継関連の融資でも、事業承継計画を策定した事業者などが対象に挙げられています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点5ステップで事業承継計画の策定は4番目(親族内・従業員承継の場合)。社外への引継ぎでは4番目がM&A等のマッチング実施。
  • よく問われる点センターは外部専門家(税理士・中小企業診断士等)と連携し、親族内承継の事業承継計画の策定を無料で支援する。
  • ひっかけに注意「日本公庫の事業承継・集約・活性化支援資金の対象は事業承継計画を策定した事業者に限られる」は誤り。承継・集約を行う事業者等も対象。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)、事業承継・引継ぎポータル(中小機構):事業承継について/親族内承継支援/第三者承継支援、日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」(国民生活事業・中小企業事業)(当社にて要約)

事業承継時の経営者保証ガイドラインの特則

じぎょうしょうけいじのけいえいしゃほしょうがいどらいんのとくそくM&A実務

事業承継時に焦点を当てて経営者保証に関するガイドラインを補完し、前経営者と後継者からの二重徴求を原則禁止する特則。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継のとき、金融機関が後継者にも経営者保証を求めると、承継の妨げになり得ます。そこで、経営者保証に関するガイドラインを補完するため、事業承継時に焦点を当てて作られたのがこの特則で、令和元年12月に策定・公表され、令和2年4月1日から適用されています。中心となるルールは、前経営者と後継者の双方から二重に保証を求めること(二重徴求)を原則として禁止することです。後継者には保証を当然に引き継がせず、ガイドラインの要件の多くを満たさなくても保証を求めない対応ができないか、真摯かつ柔軟に検討するよう金融機関に求めています。前経営者についても、実質的な経営権・支配権を持つなど特別の事情がない限り第三者に当たる可能性があるとして、保証契約の見直しを求めています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える策定・公表は「令和元年12月」、適用は「令和2年4月1日」から。令和5年4月に、活性化協議会による要件充足の確認を反映して改定された。
  • ひっかけに注意「二重徴求は例外なく禁止」は誤り。原則禁止だが、前経営者の死亡後で相続が確定するまでの間など、例外的に許容され得る事例が4つ示されている。
  • よく問われる点代表者交代前の既存債権は前経営者、交代後の新規債権は後継者のみから保証を取る場合は、二重徴求に当たらない。

別名・略称:事業承継特則、経営者保証GLの特則図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.23、事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)、事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)(当社にて要約)

事業承継診断

じぎょうしょうけいしんだんM&A実務

支援機関が事業者の事業承継の準備状況や課題を確認し、早期・計画的な取組を促すための診断。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継は準備に時間がかかるため、経営者に早く気付いてもらうことが大切です。事業承継ガイドラインは、早期・計画的な取組を促すために、事業承継診断や5つのステップ等を示しています。都道府県ごとに構築された事業承継ネットワークでは、参加する地域の支援機関や金融機関などが事業承継診断を行い、経営者に気付きを提供します。診断の結果、センターの支援が必要な場合は、事業承継・引継ぎ支援センターへトスアップ(つなぐこと)し、センターが課題の整理と方針決定を行います。親族内承継であれば、センターが税理士・中小企業診断士等の外部専門家と連携して、事業承継計画の策定を無料で支援します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点事業承継ネットワークは都道府県ごとに構築され、参加機関が事業承継診断を行い、必要に応じてセンターへトスアップする。
  • 似た用語との違い事業承継診断や5つのステップを示すのは事業承継ガイドライン。手数料の目安や支援機関の行動指針を示すのは中小M&Aガイドライン。

図解で確認:中小企業政策出典:第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.29、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録、事業承継・引継ぎポータル(中小機構):事業承継について/親族内承継支援/第三者承継支援(当社にて要約)

事業承継税制

じぎょうしょうけいぜいせいM&A実務財務・税務

後継者が円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与・相続で取得した際に、贈与税・相続税の納税を猶予・免除する制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

自社株式の評価額が高い会社では、後継者が株式を贈与や相続で受け継ぐと多額の贈与税・相続税がかかり、承継の妨げになります。そこで設けられたのが事業承継税制(法人版)です。後継者が経営承継円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与・相続等で取得した場合に、一定の要件のもとで納税を猶予し、後継者の死亡等により猶予税額の納付を免除します。適用には担保の提供が必要で、承継後5年間は代表者であることや株式を持ち続けることなどが求められ、要件を満たさなくなると猶予税額と利子税を納めます。一般措置と、平成30年に創設された特例措置があり、特例措置は特例承継計画の確認を受ける必要がある代わりに内容が有利です。個人事業者向けには、事業用資産を対象とする個人版事業承継税制もあります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える納税猶予割合は、一般措置が贈与100%・相続80%、特例措置は贈与・相続とも100%。対象株数は一般が総株式数の3分の2まで、特例は全株式。
  • 似た用語との違い後継者は一般措置が1人、特例措置は最大3人。雇用確保要件は、一般が5年間平均8割の維持、特例は弾力化されている。
  • 数字を覚える特例措置の対象は平成30年1月1日〜令和9年12月31日の贈与・相続等。特例承継計画の提出期限(基準日時点で令和8年3月31日)と混同しない。

別名・略称:法人版事業承継税制、非上場株式等の納税猶予図解で確認:中小企業政策出典:国税庁タックスアンサー No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)、非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和7年5月・令和7年7月更新、国税庁)抄録、非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和7年5月・令和7年7月更新、国税庁)抄録(当社にて要約)

事業承継促進枠

じぎょうしょうけいそくしんわくM&A実務

事業承継・M&A補助金の枠の一つで、親族内承継や従業員承継等を契機とする中小企業者等の設備投資等を補助するもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

子どもや従業員に会社を引き継ぐ(親族内承継・従業員承継)ことをきっかけに、新しい設備を入れて生産性を高めたいと考える企業を後押しする枠です。事業承継・M&A補助金の4つの枠の一つで、経営資源を引き継ぐ予定の中小企業者等が行う、生産性向上に資する設備投資等の費用を補助します。公募の申請期日から5年後までの事業承継対象期間内に事業承継を完了する必要があり、完了しなければ補助金を返還します。また、公募申請の前に、認定経営革新等支援機関等から事業承継計画に対する確認書の発行を受けておく必要があります。計画には、付加価値額又は1人当たり付加価値額の伸び率を年3%向上させることを含める必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える補助上限800万円(一定額以上の賃上げで1,000万円)、補助率1/2(小規模企業者は800万円以内の部分が2/3)。
  • 数字を覚える事業承継は公募申請期日から「5年以内」に完了させる。完了しなければ補助金を返還する。
  • よく問われる点被承継者に支払う譲り受け費用(土地・資産の購入費用等)は原則補助対象外。申請前に認定経営革新等支援機関等の確認書が必要。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継・M&A補助金 14次公募のご案内(4枠総合パンフレット)(当社にて要約)

事業承継特別保証

じぎょうしょうけいとくべつほしょうM&A実務

3年以内に事業承継を予定する法人等が、経営者保証付きの融資を経営者保証なしの信用保証付融資に借り換えられる制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

経営者保証が残っていることが、後継者が事業を引き継ぐときの障害になることがあります。事業承継特別保証は、これを解消するための信用保証制度で、令和2年4月1日に始まりました。3年以内に事業承継を予定する法人等が対象で、今ある経営者保証付きの融資を、経営者保証のない信用保証付融資に借り換えることができます。利用には、①資産超過であること、②返済緩和中でないこと、③EBITDA有利子負債倍率(有利子負債がEBITDAの何倍か)が10倍以内であること、④法人と経営者が分離されていること、という財務要件を満たす必要があります。根拠は中小企業信用保険法(の運用)で、大臣の認定は要りません。中小企業活性化協議会等の確認を受けた場合は、保証料率が大幅に軽減されます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚えるEBITDA有利子負債倍率は「10倍以内」、対象は「3年以内」に事業承継を予定する法人等。保証人は徴求しない。
  • 数字を覚える保証限度額は2億8千万円(うち無担保8千万円)、保証期間は10年以内、責任共有(8割保証)。
  • 似た用語との違い事業承継特別保証は中小企業信用保険法(運用)が根拠で大臣認定不要、令和2年4月開始。経営承継借換関連保証は円滑化法12条の認定が必要で、令和2年10月開始。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録(当社にて要約)

事業承継ネットワーク

じぎょうしょうけいねっとわーくM&A実務

都道府県ごとに構築され、参加する自治体・金融機関・商工団体・士業等が事業承継診断を行い、必要に応じてセンターにつなぐ仕組み。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継の課題を抱えていても、経営者が自分から相談に来るとは限りません。そこで、地域の身近な支援機関が経営者に働きかけ、支援が必要な企業を掘り起こすのが事業承継ネットワークです。都道府県ごとに構築され、参加する自治体・金融機関・商工団体・士業等が事業承継診断を行い、事業承継・引継ぎ支援センターの支援が必要な場合はセンターにつなぎます(トスアップ)。主に親族内承継を支援していた事業承継ネットワークの機能は、令和3年4月に、主に事業引継ぎを支援していた「事業引継ぎ支援センター」と統合され、事業承継・引継ぎ支援センターとしてワンストップで支援する体制になりました。センターは事業者向けのセミナーや支援機関向けの勉強会も開き、2024年度は全国で約1,400回開催しています。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い統合前は、「事業引継ぎ支援センター」が主に事業引継ぎ(中小M&A・従業員承継)、「事業承継ネットワーク」が主に親族内承継を支援していた。統合は令和3年4月。
  • よく問われる点事業承継診断を行うのは、ネットワークに参加する自治体・金融機関・商工団体・士業等。センターの支援が必要な場合にトスアップする。
  • ひっかけに注意センターに統合された相手を「よろず支援拠点」や「中小企業再生支援協議会」とするのは誤り。

図解で確認:中小企業政策出典:第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.29、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.25(当社にて要約)

事業承継・M&A補助金

じぎょうしょうけい・えむあんどえーほじょきんM&A実務

中小企業者等が事業承継・事業再編・事業統合を契機に行う取組の経費の一部を補助する国の補助金。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継やM&Aをきっかけに設備投資をしたり、M&Aの専門家に支援を頼んだりすると、まとまった費用がかかります。その一部を国が補助するのが事業承継・M&A補助金で、中小企業生産性革命推進事業の一つです。中小企業者と個人事業主(中小企業者等)が対象で、事業承継・事業再編・事業統合を促し、生産性の向上による経済の活性化を図ることを目的としています。国の補助事業として補助金適正化法が適用されます。基準日(令和8年3月末)時点で受付中だった14次公募には、事業承継促進枠(親族内・従業員承継等を契機とする設備投資等)、専門家活用枠(FA・仲介・DD等の専門家費用)、PMI推進枠(M&A後の統合の費用)、廃業・再チャレンジ枠(廃業費用)の4つの枠があります。申請は電子申請(Jグランツ)で行います。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点14次公募の枠は、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業・再チャレンジ枠の4つ。申請受付は2026年2月27日〜4月3日。
  • よく問われる点専門家活用枠のFA・仲介費用は、M&A支援機関登録制度の登録業者の支援に限り補助対象。DD費用やマッチングサイトのシステム利用料は登録不要。
  • ひっかけに注意「規模基準を満たせば必ず対象」は誤り。みなし大企業は対象外。親族間の事業承継やグループ内の事業再編も、専門家活用枠では原則補助対象外。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)、事業承継・M&A補助金 14次公募のご案内(4枠総合パンフレット)、事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)(当社にて要約)

事業承継・引継ぎ支援センター

じぎょうしょうけい・ひきつぎしえんせんたーM&A実務

中小M&A、従業員承継、親族内承継を含む事業承継の相談に幅広く対応する、国が設置する公的相談窓口。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継について誰に相談すればよいかわからない中小企業の経営者が、無料で相談できる国の公的窓口です。経済産業省の委託を受けた機関(都道府県の商工会議所や県の財団等)が運営し、地域金融機関のOBや、公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士などの士業等専門家が常駐しています。令和3年4月に、主に事業引継ぎ(中小M&A・従業員承継)を支援していた「事業引継ぎ支援センター」と、主に親族内承継を支援していた「事業承継ネットワーク」の機能を統合し、ワンストップで支援する機関になりました。中小M&Aのマッチングと成約までの支援、従業員承継・親族内承継の支援のほか、後継者人材バンクや経営資源の引継ぎ支援も行います。民間でM&Aを進める際のセカンド・オピニオンの相談先にもなります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える全国47都道府県に「48か所」(東京都のみ千代田区と立川市の2か所)。統合・改組は「令和3年4月」。
  • ひっかけに注意「センターは第三者承継(M&A)専門」は誤り。親族内承継・従業員承継を含む事業承継の相談に、幅広く無料で対応する。
  • よく問われる点秘密保持契約書サンプル等では、開示できる公的機関にセンターを含むと明記。依頼者の相談先として秘密保持の対象から除外することが求められる。

別名・略称:引継ぎ支援センター、センター図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.25、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.60、事業承継・引継ぎポータル(中小機構):事業承継について/親族内承継支援/第三者承継支援(当社にて要約)

事業譲渡

じぎょうじょうとM&A実務

譲り渡し側の事業の全部又は一部を、資産・負債やノウハウ等ごと譲り受け側に譲渡する手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社そのものではなく、会社が営む事業を切り出して引き継ぐ手法です。対象には土地・建物・機械設備等の資産や負債に加え、ノウハウや知的財産権等も含まれます。資産・負債・契約・許認可等を一つずつ移す(個別に移転する)ため、債権債務や雇用関係を含む契約関係を、債権者や従業員の同意を取り付けながら切り替える必要があり、不動産を含む場合は登記も必要です。許認可は譲り受け側に承継されないことが多く、その場合は新規に取得します。手続は株式譲渡より煩雑ですが、事業の一部を手元に残せます。譲り受け側にとっては、特定の事業・財産だけを引き継げるため、簿外債務・偶発債務のリスクを遮断しやすいというメリットがあります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「事業譲渡では許認可は原則として自動的に承継される」は誤り。承継されないことが多く、譲り受け側で新規取得が必要になる。
  • 似た用語との違い事業譲渡は個別に移す(特定承継)。合併・会社分割は包括的に承継する。
  • よく問われる点譲り受け側のメリットは簿外債務・偶発債務のリスクを遮断しやすいこと。譲り渡し側は事業の一部を手元に残せる。

図解で確認:事前相談出典:参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.1、参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.2、事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(平成28年厚生労働省告示第318号・原文。令和8年告示第11号による改正前)(当社にて要約)

事業譲渡益

じぎょうじょうとえき財務・税務

事業譲渡によって、事業を譲渡した会社に生じる譲渡益。会社の益金として法人税等の対象になる。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業譲渡と株式譲渡では、誰に税金がかかるか(課税主体)が異なります。株式譲渡では、売主は株主(個人オーナー)なので、株主に譲渡所得課税(分離課税20.315%)が生じ、対象会社自体には課税されません。対象会社の資産・負債の帳簿価額や欠損金などの税務上の属性もそのまま残ります。これに対し事業譲渡では、売主は会社なので、事業の譲渡益は譲渡した会社の益金として法人税等の対象になります。対価は会社に入るため、株主である経営者が受け取るには、配当や役員報酬(総合課税、15.105%〜55.945%)、清算などでさらに課税が生じ得ます。そのため、分離課税となる役員退職慰労金の支給と併せて検討することもあり得ます。また、事業譲渡では減価償却資産等の譲渡が消費税の課税売上に当たる一方、株式の譲渡は消費税が非課税です。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い株式譲渡で課税されるのは株主(個人は分離課税20.315%)。事業譲渡で課税されるのは譲渡した会社(益金として法人税等)。
  • ひっかけに注意「事業譲渡の対価はオーナー個人に直接支払われ個人に譲渡所得課税」「株式譲渡で対象会社に法人税が課される」はいずれも誤り。
  • ひっかけに注意「事業譲渡の対価を配当でオーナーに渡せば20.315%の分離課税で終了」は誤り。非上場株式の配当は総合課税。

図解で確認:税務基礎出典:法人税法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.118、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.31(当社にて要約)

事業譲渡(会社法467条)

じぎょうじょうとかいしゃほうよんひゃくろくじゅうななじょうM&A実務法務

会社法467条が株主総会の承認を求める、事業の全部・重要な一部の譲渡などの行為のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業譲渡は、会社の事業(工場・取引先・従業員などを含むひとまとまりの事業)を他の会社に売るスキームです。会社にとって重大な行為なので、会社法467条は、事業の全部の譲渡、事業の重要な一部の譲渡、一定の子会社株式の譲渡、他の会社の事業全部の譲受けなどを「事業譲渡等」とし、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議で契約の承認を受けることを求めています(309条2項11号)。重要な一部の譲渡でも、譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1(定款で引下げ可)以下なら決議は不要です。また事業譲渡は特定承継(権利義務を一つずつ移す方式)なので、債権者・契約相手方・従業員から個別の同意を得る必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える「重要な一部」の譲渡でも、譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1以下なら株主総会決議は不要(467条1項2号)。
  • ひっかけに注意「事業の一部の譲受けにも株主総会決議が必要」は誤り。譲受け側で対象になるのは他の会社の事業の全部の譲受け。
  • 似た用語との違い事業譲渡は特定承継で個別の同意が必要。合併・会社分割は包括承継。

別名・略称:事業譲渡等図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

事業譲渡と労働者の個別の承諾

じぎょうじょうととろうどうしゃのこべつのしょうだくM&A実務法務

事業譲渡で労働契約を譲受会社に移すには、各労働者の個別の承諾が必要であること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業譲渡は権利義務を一つずつ移す特定承継なので、従業員の労働契約も自動的には移りません。民法625条1項は、使用者は労働者の承諾を得なければその権利を第三者に譲り渡せないと定めており、厚生労働省の事業譲渡等指針も、労働契約を譲受会社に承継させるには承継予定労働者から個別の承諾を得る必要があるとしています。譲渡会社は、真意による承諾を得られるよう、事業譲渡の全体状況(債務の履行の見込みを含む)や譲受会社の概要・労働条件等を十分に説明し、時間的余裕をみて協議することが適当とされています。労働条件を変更して承継させる場合は、その変更についても同意を得る必要があります。意図的な虚偽情報で得た承諾は取り消されうる(民法96条1項)とされています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「承継を承諾しなかった労働者は、それだけを理由に解雇できる」は誤り。承諾しなかったことのみを理由とする解雇は認められない。
  • 似た用語との違い事業譲渡は個別の承諾が必要。会社分割は労働契約承継法で主従事労働者が当然承継。合併は包括承継で労働条件もそのまま。
  • ひっかけに注意「従業員の承諾がなくても労働契約は譲受会社に移る」は誤り。事業譲渡では、労働契約を移すのに従業員の個別の承諾が必要。

別名・略称:個別の同意(事業譲渡と労働契約)図解で確認:法務基礎出典:民法、事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(平成28年厚生労働省告示第318号・原文。令和8年告示第11号による改正前)(当社にて要約)

士業等専門家

しぎょうとうせんもんかM&A実務

公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士等の資格を持つ専門家のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aでは会計・税務・経営・法律の専門知識が必要になる場面が多く、そこで関わるのが士業等専門家です。ガイドラインは、関与することの多い士業として公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士(五十音順)を挙げ、行政書士・司法書士・社会保険労務士も関わることが多いとしています。専門分野と職責が違うため、必要に応じて互いに連携することが期待されています。例えば公認会計士は依頼を受けて財務DDやバリュエーションを、中小企業診断士は磨き上げやビジネスDDを、弁護士は交渉の代理や契約書の作成・リーガルチェック、法務DDを担います。本来業務のほかに、マッチング支援等を行う者もいます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「税理士業務にはDDやバリュエーションが直接含まれる」は誤り。税理士業務は税務代理・税務書類の作成・税務相談で、DD等は直接含まれない。
  • よく問われる点中小企業診断士は、中小企業支援法11条に基づき経済産業大臣が登録する経営診断の専門家。
  • よく問われる点士業等専門家がマッチング支援等を行う場合も、仲介者・FAと業務の性質・内容が共通する限りでガイドラインが適用される。

図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.17、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.111、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.115(当社にて要約)

事業引継ぎ

じぎょうひきつぎM&A実務

中小M&Aと従業員承継を併せた総称。中小M&Aガイドラインの用語集で使われる言葉。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継・引継ぎ支援センターの名前にも入っている言葉です。ガイドラインの用語集では、中小M&A(社外の第三者への引継ぎ)と従業員承継(役員・従業員への引継ぎ)をまとめて「事業引継ぎ」と呼び、親族内承継は含みません。同センターは令和3年4月に、主に事業引継ぎを支援していた「事業引継ぎ支援センター」と、主に親族内承継を支援していた「事業承継ネットワーク」の機能を統合してできた機関です。そのため現在のセンターは、事業引継ぎと親族内承継の両方を含む事業承継全般の相談にワンストップで対応しています。

例社外の会社への株式譲渡と、役員による会社の引継ぎは、どちらも事業引継ぎに当たります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い事業引継ぎ=中小M&A+従業員承継。親族内承継は含まない。親族内承継まで含めた全体が事業承継。
  • ひっかけに注意「統合前の事業承継ネットワークは主に事業引継ぎを支援」は誤り。事業引継ぎは事業引継ぎ支援センター、ネットワークは主に親族内承継。
  • 数字を覚える統合(改組)は令和3年4月。センターは令和6年8月現在、全国47都道府県48か所(東京都のみ千代田区と立川市の2か所)。

図解で確認:M&A実務の基礎出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.25(当社にて要約)

資金繰り表

しきんぐりひょう財務・税務

一定期間の現金の収入と支出を集計し、資金の過不足を把握する表。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会計は発生主義で、入金・出金の時点ではなく取引が発生した時点で収益・費用を計上するため、利益が出ていても手元の現金が足りなくなることがあります(黒字倒産)。資金繰り表は、将来の現金の収入と支出を見積もって並べ、資金の過不足を前もってつかむための表です。収入合計から支出合計を引いて差引過不足を出し、前月からの繰越金と、借入れや返済などの財務収支を加減して、次月への繰越額を計算します。決まった様式はなく、財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書)にも含まれません。資金不足を予測できれば、借入れや支払サイトの延長などの手を事前に打てます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い資金繰り表は将来の資金の流れ、キャッシュ・フロー計算書は過去の資金の流れをみる。資金繰り表は財務三表に含まれない。
  • ひっかけに注意「資金繰り表には法令で定められた様式がある」は誤り。決まったフォーマットはない。
  • よく問われる点資金繰り表があると、金融機関への融資相談(資金が必要な理由の説明)が進めやすい。

図解で確認:財務基礎出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)、J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)、J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

自己株式の取得

じこかぶしきのしゅとく財務・税務

会社が自社の発行した株式を株主から買い取ること。取得した株式は金庫株とも呼ばれる。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

自己株式の取得は、会社が株主から自社の株式を買い取ることです。親族内承継では、後継者の納税資金の確保や少数株主からの買取りなどを目的に、自己株式(金庫株)を活用することがあります。会社法上は、分配可能額の範囲内でしか取得できないという財源規制があります。税務上は、個人株主が非上場株式を発行会社に譲渡すると、受け取った金銭のうち資本金等の額を超える部分はみなし配当(配当所得として総合課税、源泉徴収20.42%)、残りは株式の譲渡収入(分離課税)になります。第三者への株式譲渡なら全額が分離課税20.315%となるため、高所得者は発行会社への譲渡の方が税負担が重くなりやすい点に注意が必要です。ただし、相続税額がある人が、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に、相続で取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合は、みなし配当課税をせず全額を譲渡所得とする特例があり、取得費加算の特例とも併用できます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い発行会社への譲渡は、資本金等の額を超える部分がみなし配当(総合課税)。第三者への譲渡は全額が譲渡所得(分離課税20.315%)。
  • 数字を覚える相続株式の特例は、相続税申告期限の翌日以後3年以内の譲渡が対象。みなし配当とせず全額を譲渡所得とし、取得費加算の特例と併用可。
  • よく問われる点会社法上の財源規制(分配可能額)がある。親族内承継での金庫株の活用目的は、後継者の納税資金の確保や少数株主からの買取り等。

別名・略称:金庫株図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:国税庁タックスアンサー No.1536 株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合-法人の合併等、自己株式の取得等の場合-、所得税法、国税庁タックスアンサー No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例(当社にて要約)

自己契約・双方代理

じこけいやく・そうほうだいり法務倫理・行動規範

自分が相手方の代理人になる自己契約と、当事者双方の代理人になる双方代理のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

代理人は本人のために行動すべき立場ですが、自分が契約の相手方の代理人も兼ねたり(自己契約)、当事者双方の代理人になったりする(双方代理)と、一方の利益を優先するおそれがあります。そこで民法108条1項は、同一の法律行為についての自己契約・双方代理を、代理権を有しない者がした行為(無権代理)とみなしています。ただし、債務の履行と、本人があらかじめ許諾した行為は除かれます。代理人と本人の利益が相反する行為も同様に無権代理とみなされます(108条2項)。M&Aの仲介者は当事者双方の代理人ではなく、契約成立に向けて間を取り持つ媒介者ですが、双方から報酬を受けるため構造上の利益相反があるとされます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い仲介者は双方の代理人ではなく媒介者。仲介者が一方当事者の代理人として契約締結まで行うことは想定されていない。
  • よく問われる点債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為は、自己契約・双方代理でも無権代理とみなされない(108条1項ただし書)。

図解で確認:法務基礎出典:民法(当社にて要約)

自己資本比率

じこしほんひりつ財務・税務

自己資本÷総資本×100で求める、長期の安全性を見る指標。高いほど安全性が高い。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社の資金の調達元は、返済が必要な負債(他人資本)と、返済が不要な自己資本(純資産)に分かれます。自己資本比率は、総資本(負債と純資産の合計)のうち自己資本が占める割合で、自己資本÷総資本×100で計算します。返済の必要がない資金の割合が大きいほど、借入れに頼らずに経営できていると考えられ、長期的な安全性が高いと判断します。貸借対照表から見る安全性の指標には、ほかに短期の支払能力を見る流動比率(高いほど安全)と、固定資産を自己資本でどれだけまかなっているかを見る固定比率(低いほど安全)があります。中小M&Aでは、決算書から対象企業の財務の状態をつかむ基本的な指標の一つです。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える自己資本比率=自己資本÷総資本×100。分母は総資本(負債+純資産)。
  • 似た用語との違い自己資本比率と流動比率は「高いほど安全」、固定比率は「低いほど安全」。向きの入れ替えに注意。

図解で確認:財務基礎出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

資産調整勘定

しさんちょうせいかんじょう財務・税務

非適格合併等や一定の事業の譲受けで、対価が受け入れた資産・負債の時価純資産を超える部分。税務上ののれん。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

資産調整勘定は、法人税法上の「のれん」に当たるものです。非適格合併等(一定の要件を満たす事業の譲受けを含む)で、交付した対価の額が、移転を受けた資産・負債の時価純資産価額を超える場合、その超過部分を資産調整勘定とします。計上した額は、当初計上額を60で割り、その事業年度の月数を掛けた額を毎期減額して損金に算入します。つまり5年(60か月)で均等に損金化し、会社が任意に償却額を決めることはできません。反対に、対価が時価純資産価額に満たない不足額は差額負債調整勘定とし、5年で益金に算入します。事業譲渡では、税務上ののれんが発生すればその償却費を損金にできる点が譲り受け側のメリットとされます。会計上ののれん(20年以内の効果の及ぶ期間で償却)とは期間の考え方が異なります。

例仮の数値で、資産調整勘定1億2,000万円なら、12か月の事業年度の損金算入額は1億2,000万円÷60×12=2,400万円です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える当初計上額÷60×事業年度の月数を毎期損金算入(5年均等)。任意償却ではない。
  • 似た用語との違い会計上ののれんは20年以内の効果の及ぶ期間で償却。資産調整勘定は会計上の償却期間に合わせず60か月均等。
  • よく問われる点対価が時価純資産に満たない不足額は差額負債調整勘定とし、5年で益金に算入する。

別名・略称:税務上ののれん図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.31、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)(当社にて要約)

自主規制ルール(M&A仲介協会)

じしゅきせいるーるえむあんどえーちゅうかいきょうかいM&A実務倫理・行動規範

一般社団法人M&A仲介協会が策定・公表した、M&A仲介業界の自主的なルールのこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

弁護士や税理士などの士業等専門家は、法令で資格要件・業務内容・善管注意義務・刑罰等が明確にされています。一方、M&A専門業者には許可制・免許制がなく、不動産取引の宅地建物取引業法のような業界全体の法規制もありません。仲介業務・FA業務に携わるのに特段の資格も必要とされていません。そのため、業界としての統一ルールづくりが期待されてきました。令和3年4月の「中小M&A推進計画」を踏まえ、同年10月に自主規制団体として一般社団法人M&A仲介協会が設立されました。同協会は令和5年12月に「倫理規程」「コンプライアンス規程」「広告・営業規程」「契約重要事項説明規程」の4規程を策定・公表しています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える令和3年4月:中小M&A推進計画、令和3年10月:M&A仲介協会設立、令和5年12月:4規程の策定・公表。
  • ひっかけに注意「M&A専門業者は登録制で許可を受けている」は誤り。許可制・免許制はない。M&A支援機関登録制度は補助金利用の要件で許認可ではない。
  • よく問われる点設立主体は国ではなく一般社団法人。4規程は倫理・コンプライアンス・広告・営業・契約重要事項説明。

別名・略称:M&A仲介協会図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.83、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.79(当社にて要約)

実現主義

じつげんしゅぎ財務・税務

収益は、商品の販売やサービスの提供によって実現したもの、つまり対価を得たものに限って計上する原則。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

実現主義は、売上高などの収益をいつ計上するかを決める原則です。企業会計原則では、売上高は商品等の販売又は役務(サービス)の給付によって実現したものに限るとし、まだ実現していない収益(未実現収益)は原則として当期の損益計算に含めません。中小会計要領でも、収益は製品・商品の販売やサービスの提供を行い、かつ、その対価(現金預金・売掛金・受取手形など)を取得した時に計上するとしています。現金を受け取った時ではなく、売掛金なども含めて対価を得た時点で計上する点がポイントです。一方、費用は発生主義で計上し、収益とそれに関連する費用を対応させて期間の損益を計算します。例外として、長期の未完成請負工事などは、合理的に見積もって当期の損益計算に計上できます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「収益は代金を受け取った時に計上する(現金主義)」は誤り。販売・サービス提供をして対価(売掛金等を含む)を取得した時に計上する。
  • 似た用語との違い収益は実現主義、費用は発生主義。収益と費用は直接相殺せず総額で計上する(「純額」は誤り)。

別名・略称:実現主義の原則図解で確認:財務基礎出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月(当社にて要約)

実際原価

じっさいげんか財務・税務

材料などの財貨を実際に消費した量に基づいて計算した原価。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

実際原価は、製品をつくるために実際に使った材料・作業時間などの消費量をもとに計算した原価で、原価計算基準の実際原価計算制度で用いられます。ポイントは「消費量」が実際かどうかで判断することです。単価に予定価格等を使っても、消費量を実際の数量で計算していれば実際原価の計算になります。また、異常な消費量は含めません。原価計算基準では、原価とは一定の給付(製品など)に関わらせて把握した財貨・用役の消費を貨幣で表したものとされ、経営目的に関連し、正常なものに限られます。このため、借入金の支払利息などの財務費用や、異常な状態による価値の減少は、原則として原価に含めません。これに対し、消費量を能率の目安として予定して計算するのが標準原価です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「予定価格を使うと実際原価ではなくなる」は誤り。消費量が実際であれば、予定価格を用いても実際原価の計算となる。
  • ひっかけに注意「支払利息は製造に必要な資金の費用なので製造原価に含める」は誤り。財務費用は原則として原価を構成しない。

別名・略称:実際原価計算図解で確認:財務基礎出典:原価計算基準(企業会計審議会中間報告、昭和37年11月8日)本文の転載(Wikibooks)、原価計算基準(企業会計審議会中間報告、昭和37年11月8日)本文の転載(Wikibooks)(当社にて要約)

実態貸借対照表

じったいたいしゃくたいしょうひょうM&A実務財務・税務

資産・負債を時価で評価し直して作る、会社の実際の財政状態を示す貸借対照表。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

決算書の貸借対照表は帳簿価額(簿価)で作られているため、資産の価値の変動や簿外の負債などがあると、実際の財政状態とずれることがあります。そこで、資産・負債を時価評価して作り直したものが実態貸借対照表です。中小M&Aガイドラインでは、「債務超過」は特に説明がない限り、簿価上ではなく、この実態貸借対照表上の債務超過を意味します。簿価上は債務超過でも、時価評価し直すと実態は資産超過と分かることもあります。債務超過企業でも中小M&Aを実行できる可能性はありますが、債務整理手続等を伴うことがあります。公認会計士は、債務超過企業の支援として実態貸借対照表や清算貸借対照表を作成することがあります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点中小M&Aガイドラインの「債務超過」は、特に説明がない限り簿価上ではなく実態貸借対照表上の債務超過を意味する。
  • ひっかけに注意「簿価上で債務超過なら廃業するしかない」は誤り。時価評価で資産超過と分かる場合もあり、債務超過でもM&Aの可能性はある。

別名・略称:実態BS図解で確認:財務DD出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.23、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.114、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.120(当社にて要約)

私的整理

してきせいりM&A実務法務

裁判所の関与なしに、金融機関などの債権者との交渉で債務の減免等の同意を得ていく手続。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

債務超過企業の中小M&Aで、金融機関への債務(金融債務)の返済が資金繰りを圧迫している場合に検討されます。中小M&Aガイドラインは、まず元金等の支払の猶予(リスケジュール)を受け、交渉によって債務減免等について金融機関の同意を得ていく私的整理手続を検討することが望まれるとしています。裁判所の関与下で行う法的整理手続(民事再生等)と違い、官報等で公表されないため、事業や信用の毀損(価値が傷つくこと)を防ぎやすい点が利点です。交渉を円滑に進めるため、中小企業活性化協議会や特定調停手続など、一定の手続準則を示した第三者的機関の関与下で行う「準則型私的整理手続」を目指すことが望まれます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い法的整理(民事再生等)は裁判所の関与下で行い官報等で公表される。私的整理は公表されず、事業・信用の毀損を防ぎやすい。
  • ひっかけに注意「特定調停は裁判所が関与するので準則型私的整理に当たらない」は誤り。官報等で公表されず、準則型私的整理の例とされる。
  • 義務か・望ましいか法的整理では毀損が一定程度不可避なため、GLは可能な限り私的整理手続を目指すことが「望ましい」とする。

別名・略称:私的整理手続、準則型私的整理図解で確認:リスク/係争出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.127(当社にて要約)

シナジー

しなじーM&A実務

M&Aで双方の経営資源を相互に活用したり組み合わせたりすることで期待される、売上増加やコスト削減の効果。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aを行う理由の中心にあるのがシナジー(相乗効果)です。ビジネスDDでは、譲り受け側が期待するシナジーが本当に実現するか、ほかにシナジーがないかを検証します。シナジーは大きく2つに分かれます。売上シナジーは、経営資源の相互活用によるもの(クロスセル=相手の顧客に自社の商品を売る、販売チャネルの拡大)と、組合せによるもの(製品・サービスの高付加価値化、新製品の開発)です。コストシナジーは、売上原価に関するもの(生産現場の改善、サプライヤーの見直し、共同調達、生産体制の見直し)と、販管費に関するもの(広告宣伝・販促の見直し、間接業務の見直し、共同配送、管理機能の集約、販売拠点の統廃合)に分かれます。PMI(M&A後の統合)では、取組ごとに誰が・いつまでに・何をするかを決め、KPI(重要業績評価指標)で成果を確かめます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い共同調達・生産体制の見直しは「売上原価」のコストシナジー。共同配送・管理機能の集約・販売拠点の統廃合は「販管費」のコストシナジー。クロスセルは売上シナジー。
  • ひっかけに注意「効果が大きいならM&A直後に生産現場の改善や取引先との交渉を急ぐべき」は誤り。拙速に進めず、まず従業員等との信頼関係を築く。
  • よく問われる点効果の検証では、売上・コストの結果だけでなく、行動計画の実行状況、顧客の反応、障害となる問題の有無も見る。

別名・略称:シナジー効果、売上シナジー、コストシナジー図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.100、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.178(当社にて要約)

支配関係

しはいかんけい財務・税務

一の者が法人の発行済株式等の50%を超えて直接又は間接に保有する関係など。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

支配関係は法人税法で使われる概念で、一の者が法人の発行済株式等の50%を超えて直接又は間接に保有する関係、又はその一の者との間に支配関係がある法人同士の関係をいいます。100%を保有する関係は、とくに完全支配関係と呼んで区別します。支配関係は、主に組織再編税制の場面で登場します。支配関係のある法人間の合併・分割が適格となるには、金銭等を交付しないことに加え、被合併法人等の従業者のおおむね80%以上が引き継がれる見込み、主要な事業が引き続き行われる見込み、支配関係の継続見込みなどが必要です。完全支配関係ならこれらの多くは不要で、支配関係のない法人間では共同事業要件が必要になります。また、支配関係が5年前から継続していない法人間の適格合併では、欠損金の引継ぎ・使用が制限されることがあります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える支配関係は50%超、完全支配関係は100%(自己株式を除く発行済株式等の全部)の保有。
  • 似た用語との違い支配関係の再編は従業者おおむね80%以上の引継ぎ・事業継続等が必要。完全支配関係では原則不要。支配関係がなければ共同事業要件。
  • よく問われる点支配関係が5年前から継続していない適格合併では、共同事業要件等を満たさない限り欠損金の引継ぎ・使用が制限される。

図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法、法人税法(当社にて要約)

支払金の返還に関する条項

しはらいきんのへんかんにかんするじょうこうM&A実務財務・税務

過去の投資に基づく損失や過年度決算の修正が発生した場合等に、支払済みの譲渡対価を払い戻すことを定める条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約後に譲渡額を調整・修正する条項の一つで、いったん支払った譲渡対価を、後から払い戻すことを定めます。払い戻すのは譲り渡し側で、受け取るのは譲り受け側です。発動する場面の典型として、中小M&Aガイドラインは、過去の投資に基づく損失が発生した場合や、過年度決算の修正が発生した場合を挙げています。払戻しが発動する事象の設定が曖昧だと、その事象が起きたかどうかをめぐって争いに発展するリスクがあります。アーンアウト条項・株価調整条項と同じく、設ける場合は、調整・修正が発生する条件や方法の妥当性を確認したうえで、明確かつ詳細な内容にする必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い支払の向きは譲り渡し側→譲り受け側(既払対価の払戻し)。アーンアウト条項は譲り受け側→譲り渡し側(追加の対価)。
  • よく問われる点発動事由の例は「過去の投資に基づく損失」と「過年度決算の修正」の発生。

図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.55、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.54(当社にて要約)

支払不能

しはらいふのう法務

債務者が、支払能力を欠くために、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に支払えない状態。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

破産手続を開始する原因となる状態で、M&Aでは経営が悪化した会社の事業を譲り受ける場面などで問題になります。債務者が支払不能にあるとき、裁判所は破産手続を開始します。支払を停止したときは支払不能と推定され、法人の場合は支払不能のほか債務超過(負債が資産を上回る状態)も開始原因です(破産法15条・16条)。支払不能になった後に、特定の債権者だけに弁済したり担保を提供したりすると、その債権者が支払不能を知っていた場合には、破産管財人が否認(行為の効力を否定して財産を取り戻すこと)できます(偏頗行為否認、162条)。そのため、事業譲渡の代金を特定の債権者への返済だけに充てるような取引は、後で否認されるリスクがあります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点支払停止は支払不能と推定される。法人は支払不能又は債務超過が破産手続開始の原因。
  • 数字を覚える義務のない担保供与等は支払不能前30日以内のものも否認対象。否認権は手続開始から2年、行為の日から10年で行使できない。
  • 似た用語との違い民事再生は、破産手続開始の原因となる事実が生ずる「おそれ」がある段階で申し立てられる。

図解で確認:法務基礎出典:破産法、破産法、破産法(当社にて要約)

使命(中小M&A専門人材)

しめい倫理・行動規範

スキルマップが示す、中小M&A専門人材が果たすべき役割と、その最終的な目的。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

スキルマップは、中小M&Aガイドライン第3版の策定趣旨等を踏まえ、中小M&A専門人材の使命を示しています。骨子は、①M&Aに係る専門的知見と高い倫理観を基に、②依頼者や関係者に、質の高いマッチングの提供とプロセスの着実・円滑な実行に向けた支援を行い、③M&Aによる依頼者の利益の実現を図るとともに、収益性又は社会的意義等を有する事業と希少な経営資源の引継ぎによって事業の継続・成長に貢献し、④もって国民経済の発展に寄与する、というものです。成約件数や譲渡額の最大化、支援業界の発展を目的とするものではありません。利益水準が低くても地域に欠かせない事業のように、社会的意義のある事業の引継ぎも使命に含まれます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点使命の最終目的は「国民経済の発展に寄与」。成約件数の最大化やM&A業界の発展ではない。
  • ひっかけに注意「使命は収益性のある事業の引継ぎに限られる」は誤り。「収益性又は社会的意義等を有する事業」が対象。
  • よく問われる点支援の基礎は「専門的知見」と「高い倫理観」、提供するのは質の高い「マッチング」(空欄補充で問われやすい)。

別名・略称:中小M&A専門人材の使命図解で確認:使命出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.7(当社にて要約)

社会保険労務士(社労士)

しゃかいほけんろうむしM&A実務

労働・社会保険関係の手続等を担う士業等専門家。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士の役割を示したうえで、行政書士・司法書士・社会保険労務士も中小M&Aの手続に関わることが多いとしています。士業ごとに専門分野と職責が異なるため、必要に応じて士業間で連携することが期待されます。社会保険労務士は、労働や社会保険に関する手続などを担当する専門家です。M&AのDDでは、人事・労務DD(未払賃金や労働条件などの調査)の実施機関の例として、弁護士・コンサル等と並んで社会保険労務士が挙げられています。なお、仲介者・FAは、担当者の保有資格や経験年数・成約実績を依頼者に説明すべきとされており、その説明の例にも社会保険労務士などの資格が含まれます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点人事・労務DDの実施機関の例は、弁護士・社会保険労務士・コンサル等。法務DDは弁護士、会計・税務DDは会計士・税理士等。
  • 義務か・望ましいか仲介者・FAは担当者の保有資格・経験年数・成約実績を説明「すべき」。サポートする者についての説明は「望ましい」。

別名・略称:社労士図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.130、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.84、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.90(当社にて要約)

借地権

しゃくちけん法務

建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利(地上権又は土地の賃借権)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

工場や店舗の建物は会社のものでも、その土地は地主から借りているという中小企業は少なくありません。借地権は登記をしていなくても、借地上に借地権者名義で登記された建物を所有していれば、第三者(土地を買い受けた人など)に対抗できます(借地借家法10条1項)。そのため法務DDでは、建物の登記名義人と借地権者(会社)が一致しているかを確認します。建物がオーナー個人や家族の名義だと、会社の借地権を対抗できないおそれがあります。また、借地上の建物を第三者に譲渡するには借地権の譲渡について地主の承諾が要りますが、地主に不利となるおそれがないのに承諾しないときは、借地権者の申立てにより、裁判所が承諾に代わる許可(代諾許可)を与えることができます(19条)。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点借地権は登記がなくても、借地上に借地権者名義で登記された建物があれば第三者に対抗できる。建物の名義が個人だと対抗できないおそれ。
  • ひっかけに注意「地主が承諾しなければ借地上建物は譲渡できず、裁判所の許可も求められない」は誤り。裁判所の代諾許可を求められる。
  • よく問われる点代諾許可の申立てに対し、地主は自ら建物と賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てられる(介入権)。

図解で確認:法務基礎出典:借地借家法、借地借家法(当社にて要約)

従業員承継

じゅうぎょういんしょうけいM&A実務

親族以外の自社の役員・従業員に事業を引き継ぐ事業承継のパターンのこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

「役員・従業員承継」とも呼ばれます。社内の役員や従業員が後継者になる形で、業務に精通しているため、他の従業員や取引先などの理解を得やすいのが利点です。一方で、後継者となる役員・従業員が会社の株式を買い取る資金をどう用意するか、という資金面に課題があります。実施方法としては、経営陣が株式を買い取るMBO(マネジメント・バイアウト)や、従業員が自社株式を取得・保有する従業員持株制度の活用が挙げられます。中小M&Aガイドラインは、従業員承継を中小M&Aに含めず、中小M&Aと併せて「事業引継ぎ」と呼んでいます。M&Aが依頼者の真の利益になるかの観点から、こうした承継もあり得ることに留意します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「従業員承継(MBOを含む)は中小M&Aに含まれる」は誤り。従業員承継は中小M&Aに含めない。
  • 似た用語との違い中小M&Aと従業員承継を併せたものが「事業引継ぎ」。従業員承継は事業引継ぎには含まれる。
  • よく問われる点従業員承継の課題は株式取得の資金面。実施方法としてMBOや従業員持株制度の活用が挙げられる。

別名・略称:役員・従業員承継図解で確認:事前相談出典:事業承継対策(中小機構)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.29、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16(当社にて要約)

従業員説明会

じゅうぎょういんせつめいかいM&A実務

M&A成立後遅滞なく、全従業員に同時に、等しく、正確にM&Aについて伝えるために開く説明会。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aが成立すると、譲り渡し側の従業員は処遇や会社の行方に不安を抱きます。PMIの「信頼関係の構築」で、その不安に応える最初の場が従業員説明会です。M&A成立後遅滞なく(例えば、Day1=成立初日)、全従業員に対して、同時に、等しく、正確にM&Aについて伝えます。新社長や譲り受け側の経営者が自分の言葉で処遇や経営理念・方針を語り掛けることが大切で、リアルでの実施が望ましく、全事業所を回るケースも多くあります。説明する事項は、譲り受け側の基本情報、M&Aの目的、労働条件・給与体系等、今後の代表者・勤務場所・商号などです。説明会の後は、1対1の個別面談で理解度に応じて補い、不安に寄り添います。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える開催時期は「M&A成立後遅滞なく(例えばDay1)」。クイック・ヒットの目途「Day.100以内」と混同しない。
  • 似た用語との違い従業員個人の位置づけ・個人の労働条件・今後の業務は「個別面談」で説明する事項。説明会では全員に共通の事項を伝える。
  • よく問われる点影響力の大きいキーパーソンには、他の従業員に先行して情報を伝え、密にコミュニケーションをとって離職等を防ぐ。

別名・略称:Day1図解で確認:クロージング後(PMI)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.174(当社にて要約)

就業規則

しゅうぎょうきそく法務

始業・終業時刻、賃金、退職など、事業場の労働条件や職場のルールを使用者が定めた規則。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければなりません(労働基準法89条)。作成・変更の際は、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴く必要があります(90条)。M&Aでは二つの場面で問題になります。一つは法務DDで、知識・スキルマップは就業規則の遵守状況を確認対象とし、就業規則がない場合を法令違反の例に挙げています。もう一つはM&A後の労働条件の統一で、使用者は労働者と合意することなく、就業規則の変更で労働条件を不利益に変更できないのが原則です。ただし、変更後の就業規則を周知し、変更が合理的であれば、労働条件は変更後の就業規則によります(労働契約法9条・10条)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える作成・届出の義務があるのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者。
  • ひっかけに注意「作成・変更には過半数労働組合又は過半数代表者の同意が必要」は誤り。必要なのは意見の聴取。
  • よく問われる点合意のない不利益変更は原則できない。変更後の規則の周知と変更の合理性があれば、変更後の就業規則による。

図解で確認:法務基礎出典:労働基準法、労働契約法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.121(当社にて要約)

重要事項説明

じゅうようじこうせつめいM&A実務倫理・行動規範

仲介契約・FA契約の締結前に、契約の重要な事項を書面で依頼者に説明すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

依頼者が契約内容をよく理解しないまま仲介者・FAと契約し、後でトラブルになることを防ぐための手続です。中小M&Aガイドラインは、契約の締結前に、依頼者が十分に検討できるタイミングで書面により説明することを求めています。説明項目は、仲介者・FAの違い、提供する業務の範囲・内容、担当者の保有資格・経験年数・成約実績、手数料、それ以外の費用、秘密保持、直接交渉の制限、専任条項、テール条項、契約期間、中途解約、責任(免責)等です。仲介者の場合は相手方の手数料や両当事者の利益が対立し得る事項も、譲り渡し側への説明では譲り受け側に対する調査の概要や業界内の情報共有の仕組みへの参加有無も説明します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点説明の相手は契約を締結する権限を有する者(個人は本人、法人は代表者又は契約締結の委任を受けた者)。説明者は十分な経験・能力を有する者が望ましい。
  • 似た用語との違い相手方の手数料・利益対立が想定される事項は「仲介者の場合」。譲り受け側の調査の概要・情報共有の仕組みへの参加有無は「譲り渡し側への説明の場合」。
  • ひっかけに注意「説明書には契約書の文言をそのまま転記する」「サンプルの使用が必須」は誤り。理解しやすい記載が推奨され、様式は問わない。

別名・略称:重要事項説明書図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.3、中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.4(当社にて要約)

重要事実

じゅうようじじつ法務

インサイダー取引規制の対象となる、上場会社等の業務等に関する未公表の重要な事実のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

インサイダー取引規制は、会社関係者が「重要事実」を知って、その公表前に株券等を売買することを禁じています(金融商品取引法166条1項)。何が重要事実に当たるかは166条2項に定められており、M&Aに関係するのは、上場会社等の業務執行を決定する機関が、株式交換、株式移転、株式交付、合併、会社の分割、事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け、業務上の提携などを行うことを決定したことです。これを決定事実といいます。ただし、投資判断への影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準(軽微基準)に該当するものは除かれます。重要事実は、公表がされた後でなければ売買等をしてはなりません。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点「決定」は正式な機関決定に限らず、実質的な決定機関の判断を含むと解されている。基本合意の段階でも重要事実になりうる。
  • よく問われる点合併・会社分割・事業の全部又は一部の譲渡・譲受け・業務上の提携等の決定は決定事実。軽微基準に当たるものは除く。

別名・略称:決定事実図解で確認:法務基礎出典:金融商品取引法、金融商品取引法(当社にて要約)

重要物品

じゅうようぶっぴんM&A実務

クロージングで準備・引渡しが必要となる、実印、金庫鍵、印鑑登録カード、銀行印等の物品。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

株式譲渡などで会社の経営者が交代すると、会社の実印や銀行印など、会社を動かすために必要な物も新しい経営陣に引き渡します。スキルマップはこれらを重要物品と呼び、例として実印、金庫鍵、印鑑登録カード、銀行印を挙げています。支援者は、クロージングに必要な手続・書類・重要物品を、なぜ必要なのかという理由も含めて依頼者にわかりやすく説明します。説明に抜け漏れがあったり、当事者が納得できなかったりすると、クロージングそのものが滞る可能性があります。株式譲渡では、譲り受け側が重要物受領書を用意します。また、受け渡した後の保管場所や管理方法、押印手続の方法も、事前に協議しておきます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点重要物品の例は、実印・金庫鍵・印鑑登録カード・銀行印。「担保物件」とする選択肢は誤り。
  • よく問われる点説明は「必要となる理由」を含めて行う。抜け漏れや当事者の不納得があると「クロージング」そのものが滞る可能性がある。
  • よく問われる点登記関連実務(役員の辞任・選任、抵当権抹消等)がある場合は司法書士に早めに手配し、クロージング前に登記必要書類を授受する。

図解で確認:クロージング出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.159、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.160、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.164(当社にて要約)

取得関連費用

しゅとくかんれんひよう財務・税務

企業結合のために外部のアドバイザー等に支払った報酬・手数料などの費用。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aで会社や事業を取得するときには、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)や仲介者への手数料、DD(デュー・ディリジェンス)の費用など、外部の専門家に支払う費用がかかります。企業結合に関する会計基準では、これらの取得関連費用は取得原価(取得した会社・事業の価格)に含めず、発生した事業年度の費用として処理します。取得原価は、支払った対価の企業結合日の時価で算定します。取得関連費用は取得原価に入らないので、のれん(取得原価が受け入れた資産・負債の時価の純額を上回る部分)の額にも影響しません。なお、アーンアウトのように将来の業績に応じて追加で支払う対価(条件付取得対価)は、支払が確実になり時価を合理的に決められる時点で、のれんを追加で認識します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「取得関連費用はのれん(取得原価)に含める」は誤り。発生した事業年度の費用として処理する。
  • よく問われる点取得原価は、支払対価の企業結合日の時価で算定する。
  • よく問われる点条件付取得対価(アーンアウト等)は、確実となり時価が合理的に決まった時点で、のれんを追加認識(又は減額)する。

図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)(当社にて要約)

取得原価の配分(PPA)

しゅとくげんかのはいぶん財務・税務

企業結合の取得原価を、受け入れた資産・負債の企業結合日の時価を基礎として配分すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

パーチェス法で企業結合を処理するとき、支払った取得原価を、受け入れた個々の資産・負債に割り振る作業を取得原価の配分(PPA:Purchase Price Allocation)といいます。配分の基礎は、企業結合日時点で識別できる資産・負債(識別可能資産及び負債)の時価で、帳簿価額ではありません。法律上の権利など分離して譲渡できる無形資産(顧客関連資産・商標・技術など)も識別して計上します。配分しきれずに残った差額がのれん(下回れば負ののれん)になるため、無形資産を多く識別するほど、のれんは小さくなります。取得原価は支払対価の企業結合日の時価で算定し、FA報酬やDD費用などの取得関連費用は取得原価に含めず、発生した事業年度の費用とします。

例仮の数値で、対価3億円、識別可能資産の時価4億円・負債の時価1億5,000万円なら、のれんは5,000万円です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える配分は企業結合日以後1年以内に行う。配分が終わらないうちの決算では暫定的な会計処理を行う。
  • ひっかけに注意「顧客関連資産や商標などの無形資産は識別せず、すべてのれんに含める」は誤り。分離して譲渡可能な無形資産は識別して計上する。
  • よく問われる点FA報酬・DD費用などの取得関連費用は取得原価に含めず発生年度の費用。取得原価に含めてのれんを計算する選択肢は誤り。

別名・略称:PPA、Purchase Price Allocation図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)(当社にて要約)

取得費(譲渡所得)

しゅとくひ財務・税務

譲渡した資産を取得するのにかかった金額。株式では払込金や購入代金に付随費用を含む。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

株式などを売ったときの所得(譲渡所得)は、売った金額そのものではなく、譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します(譲渡所得等=譲渡価額-(取得費+譲渡費用))。取得費には、株式の払込金額や購入代金のほか、購入手数料・名義書換料などの付随費用も含みます。M&A仲介手数料など、譲渡のために直接かかった費用は譲渡費用になり得ます。相続・遺贈・贈与で取得した株式は、前の所有者の取得費を引き継ぎます。株主として新たな払込みや給付を要しないで取得した株式の取得費は零です。株式の譲渡では、譲渡対価の全額に課税されるのではなく、取得費と譲渡費用を差し引いた所得に課税される点が基本です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「相続で取得した株式の取得費は相続開始時の相続税評価額に置き換わる」は誤り。前の所有者の取得費を引き継ぐ(贈与も同じ)。
  • よく問われる点発行法人の株主として新たな払込みや給付を要しないで取得した株式の取得費は零。相続・贈与で取得した株式とは扱いが異なる。
  • よく問われる点取得費には購入手数料・名義書換料等の付随費用を含む。M&A仲介手数料など譲渡のための費用は譲渡費用になり得る。

別名・略称:取得価額(譲渡所得)、譲渡費用図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.1464 譲渡した株式等の取得費、国税庁タックスアンサー No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(当社にて要約)

取得費加算の特例

しゅとくひかさんのとくれいM&A実務財務・税務

相続した財産を一定期間内に譲渡したとき、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

相続した株式などを売ると、相続税に加えて譲渡所得への所得税等もかかり、負担が重くなります。そこで、相続・遺贈で取得した財産を一定期間内に譲渡した場合は、納付した相続税額のうち譲渡した財産に対応する部分を、譲渡所得の計算上の取得費に加えることができます。取得費が増える分だけ譲渡所得が減り、税負担が軽くなります。対象となるのは、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡です。事業承継の場面では、相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例(租税特別措置法9条の7)と併用できます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える対象は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡。「申告期限から10年以内」は誤り。
  • ひっかけに注意「相続株式を発行会社に譲渡した場合の特例を受けると、取得費加算の特例は併用できない」は誤り。併用できる。

別名・略称:相続税額の取得費加算図解で確認:税務基礎出典:租税特別措置法、国税庁タックスアンサー No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例、租税特別措置法(当社にて要約)

守秘義務

しゅひぎむ法務倫理・行動規範

業務や取引で知った秘密を、第三者に漏らしたり目的外に使ったりしない義務。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、譲り渡し側の財務・取引先・従業員などの重要な情報がやり取りされ、M&Aを検討していること自体も外部に知られてはならない情報です。そのため、秘密保持契約(NDA)や仲介契約・FA契約、基本合意書などで守秘義務を定めます。中小M&Aガイドラインの契約書サンプルでは、秘密情報を相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示せず、契約の目的以外に使用しないことが基本です。ただし、役員・従業員、弁護士・税理士などのアドバイザー(同等の秘密保持義務を負う者に限る)、事業承継・引継ぎ支援センターを含む公的機関には、合理的に必要な範囲で開示できます。経営者保証の扱いを金融機関等に相談するための開示も認められています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える秘密保持契約書サンプルの有効期間は締結日から2年(申出がなければ1年ずつ延長)。秘密保持義務は有効期間満了後3年間存続する。
  • よく問われる点アドバイザー等への開示で、開示を受けた者が義務に違反した場合は、開示した当事者自身が責任を負う。
  • よく問われる点違反時の損害賠償には合理的な範囲の弁護士費用を含む。返還請求があれば写しも含めて返還する。

別名・略称:秘密保持義務図解で確認:秘密保持契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.3、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.4(当社にて要約)

種類株式

しゅるいかぶしきM&A実務法務

剰余金の配当や議決権などについて、ほかの株式と内容が異なるように定められた株式。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社法108条により、株式会社は、剰余金の配当、残余財産の分配、議決権を行使できる事項、譲渡制限、取得請求権、取得条項、全部取得条項、拒否権(種類株主総会の決議を必要とする事項)、取締役・監査役の選任について、内容の異なる株式を発行できます。内容と発行可能種類株式総数は定款で定めます。事業承継の場面では、知識・スキルマップが親族内承継のスキームとして、配当優先・無議決権株式や拒否権付株式の活用を挙げています。後継者に議決権を集中させたり、旧オーナーに拒否権付株式を残したりする使い方です。ただし、役員選任権付株式は、公開会社と指名委員会等設置会社では発行できません。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「親族内承継で活用される種類株式は配当優先株式に限られる」は誤り。拒否権付株式も例に挙がる。
  • よく問われる点役員選任権付株式は、公開会社と指名委員会等設置会社では発行できない(108条1項ただし書)。
  • 似た用語との違い金庫株(自己株式)の活用目的は、後継者の納税資金の確保や少数株主からの買取等。種類株式は議決権・配当の設計に使う。

別名・略称:種類株式発行会社、議決権制限株式、無議決権株式、拒否権付株式、取得条項付株式図解で確認:法務基礎出典:会社法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.29(当社にて要約)

純資産

じゅんしさん財務・税務

資産の合計から負債の合計を差し引いた額。貸借対照表の純資産の部に表示される。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

純資産は、会社の資産から、返さなければならない負債を差し引いた残りで、株主の持分に当たる部分です。貸借対照表では、資産=負債+純資産の関係が成り立ちます。純資産のうち株主資本は、資本金・資本剰余金・利益剰余金などで構成され、会社が持っている自己株式は株主資本の末尾で差し引く形で表示します。M&Aの財務DD(財務面の調査)では、帳簿上の純資産だけでなく、資産・負債を時価で見直した含み益・含み損や、帳簿に載っていない簿外債務・簿外資産を反映した調整後純資産が重視されます。純資産や調整後純資産は企業の財務の健全性を確かめる指標で、その分析結果はバリュエーションだけでなく、M&Aスキームや最終契約書、買収後の資金調達の検討材料にもなります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点期末に保有する自己株式は、株主資本の末尾に控除する形式で表示する。
  • 似た用語との違い純資産=総資産−総負債。調整後純資産は、これに含み益を加え、含み損と簿外債務等を差し引いたもの(含み損益は税効果考慮後)。

図解で確認:財務基礎出典:中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108(当社にて要約)

純資産価額方式

じゅんしさんかがくほうしき財務・税務

会社の資産・負債を相続税評価額で計算し直した純資産をもとに、取引相場のない株式を評価する方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

純資産価額方式は、財産評価基本通達で取引相場のない株式を評価する原則的評価方式の1つです。会社が持つ資産を相続税評価額に洗い替え(評価し直し)、そこから負債と、評価差額(含み益)に対する法人税額等相当額を差し引いて、1株当たりの価額を求めます。法人税額等相当額の割合は、基準日時点では37%です。防衛特別法人税の創設に伴う通達改正により、令和8年4月1日以後の相続・遺贈・贈与で取得した財産の評価からは38%になります。会社が持つ土地・建物は原則として相続税評価額で評価しますが、課税時期前3年以内に取得・新築したものは通常の取引価額で評価します。株式を取得した人とその同族関係者の議決権の合計が50%以下であれば、純資産価額の80%で評価します。会社規模が小会社なら原則この方式、中会社では類似業種比準方式と併用します。中小M&Aガイドラインは、この方式が時価純資産法に類似しており、税理士でも対応可能と考えられるとしています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える課税時期前3年以内に取得した土地・建物は通常の取引価額で評価。議決権合計50%以下の同族株主グループは純資産価額の80%。
  • 数字を覚える法人税額等相当額の割合は基準日時点で37%。令和8年4月1日以後の相続・遺贈・贈与で取得した財産の評価からは38%(基準日後の改正)。
  • 似た用語との違い純資産価額方式は時価純資産法に類似する(「全く異なる」は誤り)。引当金・準備金は負債に含めない。

図解で確認:税務基礎出典:財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)、国税庁タックスアンサー No.4638 取引相場のない株式の評価、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.119(当社にて要約)

遵守事項一覧チェックシート

じゅんしゅじこういちらんちぇっくしーとM&A実務倫理・行動規範

M&A支援機関登録制度で公表される、中小M&Aガイドラインに基づく支援機関の遵守事項を番号付きで一覧にした資料。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&A支援機関登録制度は、中小M&Aガイドラインの遵守等を宣言した支援機関を登録する制度です。登録支援機関が守るべき事項を番号付きで一覧にしたものが遵守事項一覧チェックシートで、ガイドライン第3版への改訂に合わせ、改訂後のものが登録制度のホームページで公表されています。支援機関は、改訂後の遵守事項一覧に即して、ホームページの掲載内容や、契約締結前に顧客へガイドライン遵守を説明する資料を整備します。たとえば遵守事項1は、善管注意義務をもって業務を行うこと、依頼者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図らないこと、仲介者の場合はいずれの依頼者にも公平・公正であることを求めています。スキルマップは、各スキル項目に対応する遵守事項を示しています。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い遵守事項1の⑶(いずれの依頼者にも公平・公正)は「仲介者の場合」の義務。FAは一方当事者の利益のために支援する。
  • よく問われる点第3版対応では、改訂後の遵守事項一覧に即してHP掲載内容や契約前の顧客説明資料を整備する必要がある。
  • 義務か・望ましいか遵守事項41は、ガイドラインの「M&A専門業者」に関する記載事項について、趣旨に則った対応をするよう「努める」もの。

別名・略称:遵守事項図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.181、中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.7、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録(当社にて要約)

小企業者

しょうきぎょうしゃM&A実務

小規模企業振興基本法で定める、業種を問わず、おおむね常時使用する従業員が5人以下の事業者。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

小規模企業振興基本法は、中小企業基本法の「小規模企業者」(おおむね従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下)を対象とする法律ですが、その中でもさらに規模の小さい事業者を「小企業者」として定義しています。小企業者は、おおむね常時使用する従業員の数が5人以下の事業者で、業種を問いません。つまり製造業でも、従業員がおおむね5人以下なら小企業者に当たります。同法の基本原則は、個人事業者をはじめとする小企業者が多数を占める我が国の小規模企業について、事業の持続的な発展を図ることを旨としています。似た言葉が多いので、どの法律の、何人以下の区分なのかを整理して覚えることが大切です。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い小企業者は「業種を問わず」おおむね5人以下。小規模企業者は20人以下(商業・サービス業は5人以下)。
  • ひっかけに注意「小企業者は商業又はサービス業を主たる事業とする者に限られる」は誤り。業種を問わない。
  • よく問われる点小企業者を定義しているのは小規模企業振興基本法。中小企業基本法の用語ではない。

図解で確認:中小企業政策出典:小規模企業振興基本法(当社にて要約)

小規模企業者

しょうきぼきぎょうしゃM&A実務

中小企業基本法で、おおむね常時使用する従業員が20人(商業・サービス業は5人)以下の事業者。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業者の中でも、特に規模の小さい事業者を指す言葉で、中小企業基本法第2条第5項が定めています。おおむね常時使用する従業員が20人以下の事業者で、商業(卸売業・小売業)又はサービス業を主たる事業とする者は5人以下です。中小企業者の定義と違って資本金の基準はなく、従業員数だけで判断します。また、この定義も「おおむね」の範囲であるため、施策によって扱いが異なることがあります。例えば、事業承継・M&A補助金の公募要領では、サービス業のうち宿泊業・娯楽業を20人以下として扱っています。小規模企業者は小規模企業振興基本法の対象でもあり、同法ではさらに、業種を問わず従業員おおむね5人以下の「小企業者」という区分も置かれています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「資本金5千万円以下『かつ』従業員5人以下」のように資本金基準を置く選択肢は誤り。小規模企業者は従業員数だけで判断する。
  • 数字を覚える原則「20人以下」、商業(卸売・小売)・サービス業は「5人以下」。製造業も5人以下とするのは誤り。
  • よく問われる点事業承継・M&A補助金の公募要領では、サービス業のうち宿泊業・娯楽業を20人以下として扱う。

図解で確認:中小企業政策出典:中小企業基本法、事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)、小規模企業振興基本法(当社にて要約)

小規模企業振興基本法

しょうきぼきぎょうしんこうきほんほうM&A実務

中小企業基本法の基本理念にのっとり、小規模企業の振興の基本原則・基本方針等を定める法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業の中でも特に規模の小さい小規模企業に焦点を当てた法律です(平成26年法律第94号)。中小企業基本法の基本理念にのっとり、小規模企業の振興について基本原則・基本方針などを定め、国と地方公共団体の責務を明らかにし、施策を総合的かつ計画的に進めることを目的としています。中小企業基本法が「成長発展」を掲げるのに対し、この法律は、多様な主体との連携・協働により事業の「持続的な発展」を図ることを基本原則としている点が特徴です。対象の小規模企業者は中小企業基本法の定義によりますが、さらに業種を問わず従業員おおむね5人以下の「小企業者」も定義しています。国は、小規模企業者の事業の承継又は廃止を円滑にするための施策も講じます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い基本原則は事業の「持続的な発展」。事業規模の拡大による「成長発展」を基本原則とする選択肢は誤り。
  • 数字を覚える政府が定める小規模企業振興基本計画は「おおむね5年ごと」に変更する(10年ごとは誤り)。
  • よく問われる点業種を問わず、おおむね従業員5人以下の「小企業者」を定義している。

図解で確認:中小企業政策出典:小規模企業振興基本法、小規模企業振興基本法、小規模企業振興基本法(当社にて要約)

小規模宅地等の特例

しょうきぼたくちとうのとくれいM&A実務財務・税務

相続等で取得した一定の宅地等について、相続税の課税価格に算入する価額を減額できる特例。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

亡くなった人が事業や居住に使っていた土地に多額の相続税がかかると、事業や生活を続けにくくなることがあります。そこで、一定の宅地等については、相続税の課税価格に算入する価額を減額できる特例が設けられています(租税特別措置法69条の4)。相続税の計算では、この特例を適用して減額した後の価額を基に課税価格を計算します。一方、申告が必要かどうか(財産の価額の合計額が基礎控除額を超えるか)は、特例を適用しない価額で判定します。そのため、特例を使って税額が出なくなる場合でも、特例を使うには申告が必要です。事業承継では、個人事業者向けの個人版事業承継税制と、事業用の小規模宅地特例とは選択制になっています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「特例で基礎控除以下になれば申告不要」は誤り。申告要否は特例を適用しない価額で判定し、特例を使う場合は申告が必要。
  • 似た用語との違い個人版事業承継税制と事業用小規模宅地特例は選択制。
  • 数字を覚える遺産に係る基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数。

別名・略称:小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例、事業用小規模宅地特例図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算、国税庁タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録(当社にて要約)

商業登記

しょうぎょうとうき法務

会社の商号・本店・役員などの事項を登記簿に記録し、広く一般に公示する制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

取引の相手方が会社の基本的な情報を確認できるようにするための制度で、手続は商業登記法が定めます。M&Aでは、クロージング後の役員交代、商号変更、本店移転や、合併・会社分割などで登記が必要になります。登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更登記をしなければなりません(会社法915条1項)。登記すべき事項は、登記の後でなければ善意の第三者(事情を知らない第三者)に対抗できません(908条1項)。申請の際は、株主総会や取締役会の決議を要する事項では議事録を、株主全員の同意を要する事項では同意を証する書面を添付し(商業登記法46条)、総会決議を要する場合は株主リストも添付します(商業登記規則61条)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える変更登記は、変更が生じた時から2週間以内に本店所在地で行う。
  • ひっかけに注意「総会決議を要する登記には株主全員分の株主リストを添付」は誤り。上位10名と、議決権割合が3分の2に達するまでの人数の少ない方。
  • よく問われる点登記すべき事項は、登記の後でなければ善意の第三者に対抗できない。

別名・略称:商業登記法、登記事項図解で確認:法務基礎出典:会社法、商業登記法、商業登記規則(当社にて要約)

商号続用者の責任

しょうごうぞくようしゃのせきにん法務

事業の譲受会社が譲渡会社の商号を使い続けるとき、譲渡会社の債務も弁済する責任を負うこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業譲渡では、譲受会社は引き受けると決めた債務だけを引き継ぐのが原則です。しかし、譲受会社が譲渡会社と同じ商号(会社名)を使い続けると、取引先は相手が変わったことに気づかず、債権を回収できなくなるおそれがあります。そこで会社法22条1項は、商号を続用する譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負うとしています。ただし、事業を譲り受けた後遅滞なく、譲渡会社の債務を負わない旨を登記するか(免責登記)、譲受会社・譲渡会社から債権者に通知すれば、責任を免れます(22条2項)。商号を続用しなくても、債務を引き受ける旨を広告すると弁済責任を負います(23条1項)。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点責任を免れるには、譲受け後遅滞なく免責の登記をするか、債権者に通知する(22条2項)。債務を引き継がない合意だけでは足りない。
  • 数字を覚える譲受会社が責任を負う場合、譲渡会社の責任は、譲渡日後2年以内に請求等をしない債権者に対して消滅する(22条3項)。

別名・略称:免責登記図解で確認:法務基礎出典:会社法(当社にて要約)

商工団体

しょうこうだんたいM&A実務

商工会議所・商工会・中小企業団体中央会・商店街振興組合連合会など、中小企業の身近な相談窓口となる団体。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、商工団体を支援機関の一つとして挙げ、中小企業の経営全般に関する地域の身近な相談窓口として中小企業支援を行っているとしています。経営指導員等は、法務・税務の技術的な事項よりも一般的な経営相談を受けることが多く、会員向け研修や日々の巡回による経営指導を通じて経営者と接点を持ち続けます。中小M&Aでの役割は、身近な相談相手として窓口機能を生かし、適切な支援機関に紹介することです。特に60歳を超える経営者に対し、事業計画策定やニーズ調査等を通じて気付きの機会を積極的に提供することが期待されます。会員同士が顔見知りのことも多く、当事者が特定されやすいため、情報の取扱いには注意が必要です。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い商工団体の役割は窓口として適切な支援機関に紹介すること。マッチングから諸手続の進捗管理までの総合的な支援はM&A専門業者。
  • 数字を覚える気付きの機会を積極的に提供することが期待されるのは、特に「60歳を超える」経営者。
  • ひっかけに注意「事業承継・引継ぎ支援センターは商工団体の例」は誤り。センターは公的機関に当たる。

別名・略称:商工会議所、商工会図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.17、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.109、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.110(当社にて要約)

少数株主

しょうすうかぶぬしM&A実務法務

経営者など会社を支配する株主以外で、会社の株式の一部だけを持つ株主。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業では、創業時の出資者や親族などが少しずつ株式を持っていることがあります。M&A、特に全株式を譲渡する株式譲渡では、こうした少数株主の株式も集める必要があるため、その存在と属性(どういう立場の人か)が後のプロセスで課題になりがちです。知識・スキルマップは、ヒアリングの段階で少数株主の存在・属性を確認することを求め、経営者と特別な関係(旧配偶者や旧配偶者の子等)にある場合は株式の整理を行う上での論点になりうるとしています。最終契約の段階で少数株主から株式譲渡の同意が得られない事態を避けるため、必要に応じて事前に調整しておくことも重要です。同意が得られずスクイーズアウトを行うと、関係がさらに悪化する可能性が高いとされます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点経営者と特別な関係にある少数株主の例として「旧配偶者や旧配偶者の子」が挙げられている。
  • よく問われる点確認はヒアリング(初期)の段階で行う。最終契約段階で同意が得られない事態を避けるため、必要に応じ事前に調整する。
  • よく問われる点少数株主を押印者から除外すると争いに発展し、スクイーズアウトをせざるを得なくなるおそれがある。

図解で確認:法務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.28、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.116、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.77(当社にて要約)

譲渡会社の競業禁止

じょうとがいしゃのきょうぎょうきんしM&A実務法務

事業を譲渡した会社が、一定の地域・期間、同じ事業を行ってはならないという会社法の定め。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業を買った側は、売った側がすぐ近くで同じ事業を始めると、引き継いだ取引先や顧客を奪われてしまいます。そこで会社法21条は、事業を譲渡した会社は、当事者が別段の意思表示をしない限り、同じ市町村と隣接する市町村の区域内で、譲渡の日から20年間は同一の事業を行ってはならないと定めています(1項)。当事者が競業しない特約を結ぶ場合、その効力は譲渡の日から30年の期間内に限られます(2項)。また、不正の競争の目的で同一の事業を行うことは、地域や期間にかかわらず禁止されます(3項)。個人商人の営業譲渡にも、商法16条に同じ規律があります。最終契約に競業避止の条項がなくても、この法定の競業禁止が働きます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える法定は同一・隣接市町村で20年間。特約で定める場合は30年の期間内に限り有効。
  • ひっかけに注意「最終契約に定めがなければ競業禁止は生じない」は誤り。事業譲渡では別段の意思表示がなければ法律上生じる。
  • よく問われる点会社法21条は事業譲渡の規律で、株式譲渡には適用がない。不正の競争の目的での同一事業は常に禁止。

別名・略称:競業禁止(事業譲渡)図解で確認:法務基礎出典:会社法、商法(当社にて要約)

譲渡承認

じょうとしょうにん法務

譲渡制限株式の譲渡について、会社が承認するかどうかを決定すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

譲渡制限株式を譲り渡したい株主や、取得した人は、会社に承認するかどうかの決定を請求します(会社法136条・137条。取得者からの請求は原則として名簿上の株主と共同)。決めるのは、定款に別段の定めがない限り株主総会、取締役会設置会社では取締役会で、決定内容は請求者に通知します(139条)。請求の際に「承認しないなら会社か指定買取人(会社が指定する買い手)が買い取ること」もあわせて請求でき、不承認のときは会社が買い取るか指定買取人を指定します(140条)。売買価格は協議で決め、まとまらなければ裁判所に価格の決定を申し立てます(144条)。会社が期限内に通知しないと、承認したものとみなされます(145条)。これをみなし承認といいます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える請求から2週間(定款で短縮可)以内に通知しないとみなし承認。不承認の通知から40日以内に買取りの通知がない場合も原則みなし承認(145条)。
  • よく問われる点承認機関は、定款に別段の定めがなければ取締役会設置会社は取締役会、非設置会社は株主総会。取り違えが頻出。
  • 数字を覚える価格決定の申立ては通知から20日以内。申立てがなく協議も調わなければ、1株当たり純資産額×株式数(144条)。

別名・略称:譲渡等承認請求、みなし承認、指定買取人図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法、会社法(当社にて要約)

譲渡制限株式

じょうとせいげんかぶしきM&A実務法務

譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式のこと(会社法2条17号)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

株式は原則として自由に譲渡できます(会社法127条)。しかし中小企業では、見知らぬ人が株主になると経営が不安定になるため、定款で「株式を譲渡で取得するには会社の承認が必要」と定めるのが一般的です。こうした定めのある株式が譲渡制限株式です。全部の株式に付けることができ(107条1項1号)、種類株式発行会社では一部の種類の株式だけに付けることもできます(108条1項4号)。譲渡制限は譲渡の禁止ではなく、会社の承認(譲渡承認)を求める仕組みです。承認を受けていない取得者は、相続などの一般承継の場合などを除き、株主名簿の名義書換を請求できません(134条)。そのためM&Aで株式を譲り受けるときは、譲渡承認の手続を経たかを必ず確認します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「譲渡制限株式は譲渡できない」は誤り。譲渡には会社の承認(譲渡承認)が必要、という意味である。
  • よく問われる点相続など一般承継で取得した場合は、譲渡承認がなくても名義書換を請求できる(会社法134条4号)。

別名・略称:株式の譲渡制限、譲渡制限図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法、会社法(当社にて要約)

譲渡対価(譲渡価額)

じょうとたいかM&A実務財務・税務

M&Aで譲り渡す株式や事業の代金として、譲り受け側が支払う金額。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aで最も関心の集まる条件の一つが、いくらで譲り渡すかという譲渡対価(譲渡価額)で、交渉の流れのなかで段階的に固まっていきます。基本合意の段階では、DD(デュー・ディリジェンス)前の時点での予定額を盛り込みますが、基本合意書は基本的に法的拘束力がなく、契約書サンプルでも譲渡価額の条項は拘束力を持たないとされています。その後、DDの結果を踏まえて調整され、最終契約で金額と支払時期・支払方法を定めます。バリュエーション(企業価値評価)で算出した額がそのまま譲渡額になるわけではなく、当事者が最終的に合意した額が譲渡額となります。譲り受け側の資金が足りない場合は、クロージング後に分割で支払う方法がとられることもあります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本合意で定める譲渡額は確定額で、DDの結果によっても変動しない」は誤り。DD前時点の予定額で、DD結果を踏まえて調整される。
  • よく問われる点基本合意書サンプルでは、譲渡価額の条項(第1〜3条)は法的拘束力を持たない。独占的交渉権や秘密保持は除外されていない。
  • よく問われる点バリュエーションの算出額がそのまま譲渡額になるのではなく、当事者が最終的に合意した額が譲渡額となる。

別名・略称:譲渡価額、譲渡額、譲渡代金図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.49、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.47、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.114(当社にて要約)

譲渡対価の分割払い

じょうとたいかのぶんかつばらいM&A実務財務・税務倫理・行動規範

譲渡対価の全額をクロージング時に支払わず、クロージング後に分けて支払うこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

譲渡対価に対して譲り受け側の資金が足りない場合に、残りをクロージング後に分割で支払う方法がとられることがあります。しかし、クロージング後の事業の状況や譲り受け側の状況によっては支払が滞る(不履行になる)リスクがあり、支払期間が長いほどリスクは高くなります。中小M&Aガイドラインは、支払・手続はクロージング時に実行するのが基本とし、分割払いをリスク事項と位置付けています。両当事者の調整が十分でない段階で安易に提案すべきではなく、提案する場合は組織的な判断を経て、リスクの詳細と顕在化した場合の結果をできる限り具体的に説明します。分割払いの不払いは、業界内での情報共有の仕組みの登録事由の例にも挙げられています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「支払期間が長期にわたるほど不履行リスクは低くなる」は誤り。長いほどリスクは高い。
  • 義務か・望ましいか安易に提案すべきでなく、提案するなら組織的な判断が必要。提案時にリスクと顕在化時の結果を具体的に説明するのは義務。
  • ひっかけに注意「残額を役員退職金や顧問料で支払う形にすれば不履行リスクはない」は誤り。これらも支払不履行等のトラブルの原因となりうる。

別名・略称:分割払い図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.53、参考資料12 最終契約におけるリスク事項についての説明書サンプル p.3、不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて(2025年2月) p.2(当社にて要約)

商人の報酬請求権(商法512条)

しょうにんのほうしゅうせいきゅうけん法務

商人が営業の範囲内で他人のために行為をしたとき、報酬の約束がなくても相当な報酬を請求できるとする規定。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

民法の委任(準委任を含む)では、受任者は特約がなければ報酬を請求できず、報酬は原則として委任事務を履行した後に請求します(民法648条)。これに対して商法512条は、商人(事業として取引を行う者)がその営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、報酬の約定がなくても相当な報酬を請求できると定めています。仲介者・FAなどのM&A支援機関は商人として、この規定が問題になりえます。例えば、契約書に報酬の定めがない場面や、契約関係のない相手方に報酬を求める場面です。なお民法でも、委任が途中で終了したときは既にした履行の割合に応じて報酬を請求でき、成果に対して報酬を支払う約定で成果の引渡しを要するときは、引渡しと同時に支払うとされています。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い民法の委任は特約がなければ無報酬(648条1項)。商人が営業の範囲内で他人のためにした行為は、約定がなくても相当な報酬を請求できる。
  • ひっかけに注意「委任が中途で終了したら報酬は一切請求できない」は誤り。既にした履行の割合に応じて請求できる。
  • ひっかけに注意「成果報酬の約定は請負でしか定められない」は誤り。委任でも可能で、成果の引渡しを要するときは引渡しと同時に支払う。

別名・略称:商法512条、報酬請求権図解で確認:法務基礎出典:商法、民法(当社にて要約)

消費税の課税対象

しょうひぜいのかぜいたいしょう財務・税務

国内で事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡・貸付け・役務の提供と、輸入取引のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

消費税がかかる取引かどうかは、まず「課税対象」に当たるかで判断します。課税対象は、①国内において、②事業者が事業として、③対価を得て行う、④資産の譲渡・貸付け及び役務の提供(資産の譲渡等)と、輸入取引です。法人の活動はすべて事業として行う取引になり、資産には有形資産だけでなく権利などの無形資産も含みます。一方、給与・寄附金・補助金・保険金・無償の取引などは課税対象外(不課税)です。また、課税対象であっても、土地や有価証券の譲渡などは非課税取引とされます。M&Aでは、事業譲渡は事業全体ではなく資産ごとに課否を判定する点が重要で、建物・機械・棚卸資産・のれんは課税、土地・有価証券・売掛金などの金銭債権は非課税です。株式譲渡は有価証券の譲渡なので非課税です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点事業譲渡は資産ごとに課否判定する。建物・設備・棚卸資産・のれん(営業権)は課税、土地・有価証券・金銭債権は非課税。
  • ひっかけに注意「法人の取引は事業として行うものとそうでないものに分かれ、後者は課税対象外」は誤り。法人の活動はすべて事業として行う取引。
  • よく問われる点給与・寄附金・補助金・保険金・無償取引は不課税。事業譲渡の譲受側は、課税資産部分を仕入税額控除の対象にできる。

別名・略称:資産の譲渡等、課税資産の譲渡等図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.6105 課税の対象、消費税法(当社にて要約)

情報提供受付窓口

じょうほうていきょううけつけまどぐちM&A実務倫理・行動規範

M&A支援機関登録制度の事務局が設ける、登録された仲介者・FAの支援をめぐる不適切事例等の情報を受け付ける窓口。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

登録された仲介者・FAの支援に問題があったとき、中小企業などがその情報を制度側に伝えるための窓口です。中小M&A推進計画で創設が打ち出され、M&A支援機関登録制度の事務局が設置しています。寄せられた情報は、他の中小企業への注意喚起や、ガイドラインの遵守状況の確認など制度の運営に使われ、政策立案の参考にもされます。事案に応じて支援機関へのヒアリングを行い、注意や対策の指示、場合によっては登録の取消しにつながることもあります。提供された情報は、個人や企業が識別できない形に加工して、市場実態の把握等に利用・公表されます。なお、一般社団法人M&A仲介協会も、会員の仲介者に関する苦情相談窓口を設けています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「当事者間の紛争を解決・助言する窓口」は誤り。紛争の解決や助言を目的とするものではない(M&A仲介協会の苦情相談窓口も同じ)。
  • 似た用語との違い情報提供受付窓口は登録制度事務局が設置し、登録された仲介者・FAが対象。苦情相談窓口はM&A仲介協会が設置し、幹事会員・正会員の仲介者が対象。
  • 数字を覚える情報提供数は2023年度32件、2024年度126件、2025年度80件(2月現在)。第3版改訂後も、営業以外に関する事案は減少していない。

図解で確認:中小企業政策出典:M&A支援機関登録制度公募要領(令和7年度、令和7年5月30日)抄録:p1,3-11,35-36、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.76、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.21(当社にて要約)

情報の非対称性

じょうほうのひたいしょうせい倫理・行動規範

M&Aの知識・情報や候補先の情報がM&A専門業者に偏り、依頼者が業務の妥当性を判断しにくい状態。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&A専門業者と依頼者の間では、M&Aに関する知識や情報、具体的な相手方候補先の情報などが専門業者の側に偏っています(偏在)。このように情報が偏っていると、依頼者は、専門業者の業務が適切かどうかを評価したり、チェック(モニタリング)したりすることが難しくなります。これが情報の非対称性です。中小M&Aガイドラインは、業務の専門性、仲介業務の構造的な利益相反のリスクとあわせて、情報の非対称性を、M&A専門業者に契約上の義務に限られない職業倫理の遵守が求められる理由の一つとしています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点情報の非対称性は、M&A専門業者に職業倫理の遵守が求められる理由の一つ。ほかの理由は業務の専門性と構造的な利益相反リスク。
  • 似た用語との違い情報の非対称性は依頼者と専門業者の間の情報の偏り。構造的な利益相反は譲り渡し側と譲り受け側の利益の対立。

図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.79(当社にて要約)

消滅時効

しょうめつじこう法務

権利を一定期間行使しないと、その権利が消滅する制度のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

時間がたつと証拠が失われ、権利関係もはっきりしなくなるため、民法は権利を一定期間行使しないと消滅させる消滅時効を定めています。債権は、権利を行使できることを知った時から5年、又は権利を行使できる時から10年行使しないと、時効で消滅します(民法166条1項)。人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、後者の10年が20年になります(167条)。不法行為による損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年です(724条)。労働基準法の賃金請求権は5年ですが、経過措置で当分の間は3年とされています(115条)。M&Aでは、未払残業代などがいつまで請求されうるかを判断するときに関係します。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える債権は知った時から5年・行使できる時から10年。不法行為は知った時から3年・行為時から20年。
  • ひっかけに注意「未払賃金の時効は2年」は誤り。賃金請求権は5年(当分の間は経過措置で3年)。2年は災害補償その他の請求権。
  • よく問われる点改正民法で商事時効(5年)は廃止され、民法の時効に一本化された。

図解で確認:法務基礎出典:民法、民法、労働基準法(当社にて要約)

除外合意

じょがいごういM&A実務法務

後継者が贈与等で取得した自社株式等の価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入しないとする合意。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

経営承継円滑化法の民法特例の一つです。先代経営者(旧代表者)から後継者に贈与された株式は、相続のときに遺留分を算定する基礎の財産に含まれるため、他の相続人から遺留分侵害額の請求を受けると、事業に欠かせない株式が分散するおそれがあります。除外合意は、旧代表者の推定相続人と会社事業後継者の全員の合意により、書面で、後継者が贈与等で取得した株式等の全部又は一部の価額を、遺留分算定の基礎財産に算入しないと定めるものです。これにより、事業継続に不可欠な株式についての遺留分侵害額請求を未然に防げます。令和元年7月施行の改正で、個人事業主の事業用資産にも適用できるよう拡充されました。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「後継者と旧代表者の2者の合意で成立し、他の推定相続人の同意は不要」は誤り。推定相続人と会社事業後継者の「全員の合意」で「書面」により行う。
  • 似た用語との違い除外合意は株式等を遺留分算定の基礎財産に「算入しない」。固定合意は算入するが、価額を「合意時の価額」に固定する。
  • よく問われる点除外合意は個人事業主の事業用資産にも使える。固定合意は会社の株式等だけが対象。

図解で確認:中小企業政策出典:中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録(当社にて要約)

職業倫理

しょくぎょうりんり倫理・行動規範

M&A専門業者に求められる、契約上の義務に限られない職業上の倫理のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&A専門業者は、依頼者との契約に基づいて善管注意義務や忠実義務を負います。しかし中小M&Aガイドラインは、それにとどまらず、契約上の義務に限られない職業倫理の遵守を求めています。理由として挙げられているのは、①業務に高い専門性があること、②M&Aの知識・情報や候補先の情報が専門業者に偏り、依頼者が業務の妥当性を評価しにくいこと(情報の非対称性)、③仲介業務には構造的な利益相反のリスクがあることです。そのため、契約上の義務を負うかどうかにかかわらず、職業倫理として依頼者の意思を尊重し、その利益を実現する対応が求められます。仲介者は、いずれの依頼者に対しても公平・公正でなければなりません。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「職業倫理は契約で定めた義務の範囲に限られる」は誤り。契約上の義務を負うかにかかわらず求められる。
  • よく問われる点職業倫理が求められる理由は、業務の専門性・情報の非対称性・仲介の構造的な利益相反リスク。

図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.79、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.80、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.10(当社にて要約)

所在不明株主

しょざいふめいかぶぬし法務

会社からの通知・催告が5年以上届かず、5年間配当も受け取っていない株主のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

長年連絡が取れない株主がいると、株主総会の運営やM&Aでの株式の集約に支障が出ます。会社法は、会社からの通知・催告が5年以上継続して到達しない株主には通知・催告を要しないとし(196条1項)、さらに継続して5年間剰余金の配当を受け取っていない株主の株式は競売できるとしています(197条1項)。市場価格のない株式は、裁判所の許可を得て競売以外の方法で売却でき、会社が買い取ることもできます(197条2項・3項)。代金は株主に交付します。事業承継のニーズが高い非上場の中小企業の株式会社は、経営承継円滑化法の特例により、都道府県知事の認定と所要の手続を経れば、この「5年」を「1年」に短縮できます(令和3年8月施行)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える会社法の原則は5年、経営承継円滑化法の特例を使えば1年。
  • よく問われる点特例の認定は都道府県知事。根拠は経営承継円滑化法(12条1項1号ホ・15条)で、会社法の改正ではない。

図解で確認:法務基礎出典:会社法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.124(当社にて要約)

所在不明株主に関する会社法の特例

しょざいふめいかぶぬしにかんするかいしゃほうのとくれいM&A実務

円滑化法の認定を受けた非上場の中小企業者が、所在不明株主の株式を売却等できるまでの期間を5年から1年に短縮できる特例。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

長年連絡がつかない株主(所在不明株主)がいると、事業承継やM&Aで株式を集約するときの障害になります。会社法では、株主への通知が5年以上続けて届かず、5年間配当も受け取っていない所在不明株主の株式を、競売や売却(会社自身の買取りを含む)で処分できます。しかし5年は長いため、経営承継円滑化法は、都道府県知事の認定を受けた非上場の中小企業者である株式会社について、この5年を1年に短縮できる特例を設けています。ただし株主の権利を守るため、会社法の公告・個別催告に先立って、特例によることを明示した異議申述手続(利害関係人が一定期間内に異議を述べられる旨の公告と個別催告)を行う必要があり、二重の手続保障となっています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える会社法の原則は「5年」、特例では「1年」に短縮。異議申述の期間は「3か月以上」。
  • ひっかけに注意「特例の異議申述手続を行えば、会社法の公告・個別催告は不要」は誤り。特例の手続を先に行い、会社法の手続も行う(二重の手続保障)。
  • ひっかけに注意「上場会社も含め認定なしで使える」「会社法改正で新設された」は誤り。根拠は経営承継円滑化法で、知事の認定を受けた非上場の中小企業者が対象。

別名・略称:所在不明株主の特例図解で確認:中小企業政策出典:事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(当社にて要約)

書類・情報の偽造・変造

しょるい・じょうほうのぎぞう・へんぞう倫理・行動規範

第三者が作成した書類・情報を、正当な権限なく違法・不当に偽造・変造・改変すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、決算書、契約書、DD報告書など、ほかの人や機関が作った書類・情報を基に判断が積み重ねられます。その内容が勝手に書き換えられれば、当事者は誤った前提で意思決定をしてしまいます。そこでスキルマップの倫理・行動規範#47は、大分類「情報管理」の中の「不適切行為の禁止」として、第三者が作成した書類・情報を正当な権限なく違法、不当に偽造、変造又はその他改変等を行ってはならないとしています。偽造は権限なく他人名義の書類等を作ること、変造は既存の書類等の内容を権限なく変えることを指します。

例成約を急ぐために、税理士が作成した決算書の数字や、DD報告書の指摘事項を書き換えて相手方に示す行為は、これに当たります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点#47は倫理・行動規範の大分類「情報管理」に属し、小分類は「不適切行為の禁止」。
  • 似た用語との違い#41は取得した情報の正しさを自ら確認するよう「努める」規定。#47は第三者作成の書類・情報の改変を「してはならない」禁止規定。

別名・略称:改ざん図解で確認:情報管理出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.13、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12(当社にて要約)

ショートリスト

しょーとりすとM&A実務

ノンネーム・シートに関心を示した候補先から、具体的に検討可能な先に絞り込んだ一覧表のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

ロングリストの候補先にノンネーム・シートを送り、関心を示した先の中から、具体的に検討できる候補先を絞り込んだ一覧です。候補先は数社程度となることが多いです。譲り渡し側と相談しながら、その課題・ニーズや希望、期待できるシナジーを具体化して抽出し、過去の取引関係等の情報も引き出して精度を高めます。譲り渡し側のニーズに合った合理的な選定基準(ロジック)を示して納得感を高め、選定に至る過程を記録します。また、リスト化の段階で、公表情報や社内データベース、業界内の情報共有の仕組み等を使い、反社会的勢力への該当や過去のトラブルの有無などから不適切な譲り受け側をスクリーニングする必要があります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点候補先とのNDA締結前の段階なので、ショートリストに記載する候補先情報は公表情報のみとしなければならない。
  • ひっかけに注意「ショートリストは譲り渡し側の社内で幅広く共有する」は誤り。外部や譲り渡し側の社内に流出しないよう注意する。
  • ひっかけに注意「不適切な譲り受け側のスクリーニングは最終契約の直前で足りる」は誤り。リスト化の段階でスクリーニングを行う。

図解で確認:マッチング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.56(当社にて要約)

知る限り・知り得る限り

しるかぎり・しりうるかぎり法務

表明保証の範囲を、表明する者の認識(主観)によって限定する文言のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

表明保証では、譲り渡し側が全く知らない事実まで保証させると負担が重くなりすぎることがあります。そこで「甲の知る限り」「甲の知り得る限り」のように、主観による限定を加えることがあります。「知る限り」は、現に認識していることに限られます。「知り得る限り」は、現に認識していなくても認識できたであろう場合を含みます。そのため「知り得る限り」の方が広い概念で、保証の範囲も広がります。だれの主観を対象に、どの程度限定するかは事案により異なります。なお、こうした限定を加えても、譲り渡し側が現に認識している誤りは保証の対象から外れません。事実と異なることを知っている場合は、開示して除外事項として契約書に明記するなどの対応が必要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「『知る限り』の方が保証の範囲が広い」は誤り。認識できたであろう場合まで含む「知り得る限り」の方が広い。
  • ひっかけに注意「『知り得る限り』と加えれば、社長が認識している誤りも保証の対象外になる」は誤り。現に認識していれば対象になる。

別名・略称:甲の知る限り図解で確認:最終契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.33、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.34(当社にて要約)

信義誠実の原則

しんぎせいじつのげんそく法務倫理・行動規範

権利の行使と義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならないという原則(民法1条2項)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

信義誠実の原則(信義則)は、民法の冒頭に置かれた基本原則で、契約の解釈や当事者の責任を判断するときの土台になります。権利の濫用も許されません(民法1条3項)。M&Aでは、法的拘束力のない基本合意の段階でも、相手方に契約成立を強く信頼させた後に正当な理由なく交渉を打ち切った場合などに、信義則上の義務違反として損害賠償責任が問われることがあります(いわゆる契約締結上の過失)。また、契約に書いてある条項でも、過大な手数料条項や過度に長いテール条項・競業避止条項は、信義則や公序良俗によって効力が制限されることがあります。中小M&A専門人材の倫理・行動規範も、第1項目に「常に信義に従い、公正、誠実に業務を遂行すること」を掲げています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「法的拘束力がない基本合意なら、交渉を打ち切っても一切責任を負わない」は誤り。不当な破棄は信義則上の責任が問われうる。
  • よく問われる点基本合意書の多くの条項は法的拘束力を持たないが、独占交渉権・秘密保持等は拘束力を持たせるのが一般的。

別名・略称:信義則、契約締結上の過失図解で確認:法務基礎出典:民法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.10(当社にて要約)

申告分離課税(株式等の譲渡所得)

しんこくぶんりかぜい財務・税務

株式等の譲渡所得を、給与などほかの所得と分けて税額を計算する課税方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

個人の会社オーナーが自社株式を譲渡して利益を得た場合、その所得は給与所得などと合算せず、分けて税額を計算します。これが申告分離課税です。株式等の譲渡所得は「上場株式等に係る譲渡所得等」と「一般株式等に係る譲渡所得等」に区分され、中小企業の株式のような非上場株式は一般株式等に当たります。所得の金額は、譲渡価額から取得費(払込代金や購入代金に、購入手数料・名義書換料などの費用を含む)と譲渡費用を差し引いて計算します。非上場株式の譲渡益には所得税15%と住民税5%がかかり、所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わるため、合計20.315%です。株式譲渡では、株主である経営者個人はこの分離課税で課税関係が終了します。なお、令和8年度改正による税率の見直し等は令和9年以後の適用で、基準日後の改正です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える所得税15%+住民税5%+復興特別所得税(所得税額の2.1%=0.315%)=20.315%。住民税を除いた15.315%と混同しない。
  • ひっかけに注意「他の所得と合算し超過累進税率で課税する総合課税」は誤り。上場株式等と一般株式等もそれぞれ別の区分で計算する。
  • よく問われる点一般株式等の譲渡損失は給与所得等と通算できず、上場株式等の譲渡益とも原則通算できない。3年繰越控除は上場株式等の制度。

別名・略称:分離課税、株式譲渡所得、一般株式等に係る譲渡所得等図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)、租税特別措置法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.118(当社にて要約)

人事DD

じんじでぃーでぃーM&A実務

買収後の組織や人事制度の変更の必要性を把握し、労務トラブルの可能性を排除するためのDD。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

知識・スキルマップで「その他DD」の一つとして整理されている調査です。M&Aの後に社員が辞めてしまったり、給与制度の違いで不満が出たりしないよう、人に関する情報を事前に調べます。調査対象は、人件費(報酬・給与体系、退職金)、経営陣、従業員、人材採用基準、人材教育です。報酬・給与体系や退職金は、譲り渡し側と譲り受け側の間に乖離がないか、統合するならどう直すか、統合の費用や人員削減時の割増退職金はいくらかを検証します。経営陣は各人のマネジメントスキルやチーム内の人間関係を、従業員は譲渡後に他社に移らないための雇用条件・インセンティブの設計を検討します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「人事DDは労働関連法令の遵守状況の確認のみが目的」は誤り。買収後の組織構造・人事制度変更の必要性の把握と、労務トラブルの可能性の排除が目的。
  • よく問われる点譲り渡し側が他社の子会社なら親会社からの出向者を把握する。M&A後に出向者が親会社に戻ると部門の機能が低下するリスクがある。
  • 義務か・望ましいか企業文化や制度の乖離の程度と統合方法の検証など、PMIの計画や企業文化に関する情報も併せて収集することが「望ましい」。

別名・略称:人事労務DD、人事・労務DD図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.128(当社にて要約)

新設合併

しんせつがっぺいM&A実務法務

合併で消滅する会社の権利義務の全部を、合併で新たに設立する会社に引き継がせる合併。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

新設合併は、2以上の会社が合併して新しい会社を設立し、合併する会社はすべて消滅して、その権利義務の全部を新設会社が引き継ぐ方式です(会社法2条28号)。既存の会社の一方が残る吸収合併と違い、当事会社がすべて消えて新しい会社になる点が特徴です。権利義務はまとめて移る(包括承継)ため、個々の契約相手方の同意は原則として要りません。合併の手続に問題があった場合でも、法律関係を安定させるため、合併の無効は効力が生じた日から6か月以内に、訴えをもってのみ主張できます(828条1項8号)。吸収合併と並んで、組織再編の基本の用語として定義を区別できるようにしておきましょう。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い吸収合併は既存の存続会社が権利義務を承継。新設合併は合併で設立する会社が承継し、当事会社はすべて消滅する。
  • 数字を覚える合併の無効の訴えは効力が生じた日から6か月以内。非公開会社の株式発行の無効(1年以内)と区別する。

図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

新設分割

しんせつぶんかつM&A実務法務

会社が事業に関する権利義務の全部又は一部を、分割で新たに設立する会社に承継させる会社分割。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

新設分割は、会社分割のうち、分割によって新しい会社をつくり、その会社に事業を引き継がせる方式です(会社法2条30号)。1社で行うことも、2以上の会社が共同で行うこともできます。相手となる会社がまだ存在しないため、契約ではなく新設分割計画を作成し(共同新設分割では共同で作成、762条)、設立される会社は、その成立の日(設立の登記をした日)に計画の定めに従って分割会社の権利義務を承継します(764条1項)。設立の登記は、株主総会決議の日や債権者保護手続が終わった日などのうち最も遅い日から2週間以内にします(924条)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い新設分割は「新設分割計画」を作成し設立会社の成立の日に承継。吸収分割は「吸収分割契約」を締結し効力発生日に承継。
  • 数字を覚える会社分割の無効は、効力が生じた日から6か月以内に訴えをもってのみ主張できる(828条)。

別名・略称:新設分割計画図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

親族内承継

しんぞくないしょうけいM&A実務

経営者の親族に事業を引き継ぐ事業承継のパターンのこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継の主なパターンは、親族内承継、従業員承継、社外の第三者への引継ぎ(M&A)の3つです。親族内承継は経営者の子などの親族が継ぐ形で、親族であることから一般に社内外の関係者に心情的に受け入れられやすい傾向があります。また、後継者を早く決められるので、5〜10年といわれる後継者の育成期間を確保しやすいとされます。親族内承継の手法として、自己株式(金庫株)の活用(後継者の納税資金の確保や少数株主からの買取り等)や、種類株式(配当優先・無議決権株式、拒否権付株式)の活用が挙げられます。近年は親族内に後継者がいない企業が増え、親族外承継(従業員承継や第三者承継)が増えています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「親族内承継も中小M&Aに含まれる」は誤り。中小M&Aガイドラインは親族内承継と従業員承継を中小M&Aに含めない。
  • 数字を覚える後継者の育成に必要な期間は5〜10年といわれる。親族内承継は早期に後継者を決められ、この期間を確保しやすい。
  • 似た用語との違い「事業引継ぎ」(中小M&A+従業員承継)にも親族内承継は含まれない。

図解で確認:事前相談出典:事業承継対策(中小機構)、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.29(当社にて要約)

信用保証協会

しんようほしょうきょうかいM&A実務

中小企業が民間金融機関から融資を受ける際に、その債務を保証する公的機関。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業が金融機関からお金を借りるとき、信用保証協会が保証することで融資を受けやすくする仕組みがあります。事業承継・M&Aの場面では、主に3つの形で関わります。1つ目は経営承継円滑化法の金融支援で、都道府県知事の認定を受けた中小企業者は、中小企業信用保険法の特例により、通常とは別枠の保証を利用できます(普通保険で2億円、無担保保険で8,000万円、特別小口保険で2,000万円の別枠)。ただし認定後も、民間金融機関・信用保証協会・日本公庫が独自に審査します。2つ目は、中小企業等経営強化法の認定事業者の民間融資に対する信用保証です。3つ目は経営者保証の解除で、融資に協会の保証が付いている場合は協会の確認も必要となり、時間を要する可能性があります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「知事の認定を受ければ金融機関や信用保証協会の審査を経ずに融資を受けられる」は誤り。認定後も各機関が独自に審査する。
  • 数字を覚える経営承継円滑化法の別枠は、普通保険+2億円、無担保保険+8,000万円、特別小口保険+2,000万円。
  • よく問われる点融資に信用保証協会等の保証が付いている場合、保証の解除には当該機関の確認も必要で、時間を要する可能性がある。

図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.119、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.127、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録(当社にて要約)

SWOT分析

すうぉっとぶんせきM&A実務

会社の内部環境と外部環境を、強み・弱み・機会・脅威の4要素に整理して分析する手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

ビジネスDDの自社分析で、譲り渡し側の会社全体を見渡すときに使うのがSWOT分析です。内部環境と外部環境を、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の4要素に整理します。自社分析では、まず会社の活動を機能に分けてバリューチェーン(開発・調達・製造・物流・販売・サービスといった、価値を生む活動のつながり)を把握し、機能ごとに競合他社と比べて強み・弱みや課題を抽出します。そのうえで、全社的な分析としてSWOT分析を行います。他社と比べるため、機能の分け方は同じ業界の他社と同じ粒度にすることが大切です。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いSWOTは自社分析で行う全社的な分析。外部環境要因を見るのはPEST分析、競争要因を見るのはファイブフォース分析。
  • よく問われる点強みと思われる機能でも、付加価値に比べてコストがかかりすぎる等の問題があり得るため、複数の観点から分析する。
  • よく問われる点他社と比較するため、機能への分解は同じ業界の他社と同じ粒度で行う。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.99(当社にて要約)

スクイーズアウト

すくいーずあうと法務

少数株主の同意がなくても、その株式を取得して会社から退出させること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

全株式を譲り受け側に譲渡したいのに、一部の少数株主が売却に応じない場合などに検討されます。会社法上の主な方法は二つです。議決権の10分の9以上を持つ特別支配株主なら、株式等売渡請求により、対象会社の承認(取締役会設置会社では取締役会決議)を得て、他の株主全員から株式を取得できます。9割に届かない場合は、株主総会の特別決議による株式併合で、少数株主の株式を1株未満の端数にする方法があり、端数が生じる反対株主には買取請求権があります。ただし知識・スキルマップは、スクイーズアウトを行うと少数株主との関係がさらに悪化する可能性が高いとしています。また、譲り渡し側が特例有限会社の場合は特別決議の要件が厳しく、スクイーズアウトが困難又は不可となることがあります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い議決権9割以上なら株式等売渡請求(株主総会決議は不要)、9割未満なら株式併合(株主総会の特別決議)。
  • 数字を覚える特例有限会社の特別決議は総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上。株式会社の特別決議(出席株主の3分の2以上)と区別。
  • よく問われる点少数株主を押印者から除外すると争いに発展し、スクイーズアウトをせざるを得なくなるおそれがある。

別名・略称:スクイーズ・アウト図解で確認:法務基礎出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.77、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.115、会社法(当社にて要約)

スクリーニング

すくりーにんぐM&A実務倫理・行動規範

支援者が依頼者と契約を結ぶ前に、依頼者の信頼性を確かめるために行う一定の調査のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

知識・スキルマップの「事前相談」の段階で求められる手続です。M&Aでは、本来紹介すべきでない相手(反社会的勢力や、事業を引き継ぐ意思・能力のない者等)が関わると、関係者に大きな損害が出ます。そこで、依頼者と支援者が何らかの契約を結ぶ前に、ヒアリング等を使った初期調査を徹底します。一般的な反社会的勢力への該当性に加えて、公表情報や社内データベース等から譲り受け側の過去のトラブル情報も確認し、最終契約を履行して対象事業を引き継ぐ意思・能力があるかを確かめます。調査の方法・範囲・実施主体は案件ごとに判断します。そして一度で終わりにせず、必要に応じて都度確認し、最終契約の締結まで信頼性を確認し続けます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「契約締結前に一度実施すれば足りる」は誤り。その後も必要に応じて都度確認し、最終契約の締結まで依頼者の信頼性を確認する。
  • よく問われる点スキルマップの流れでは、スクリーニングは依頼者との秘密保持契約の締結より前に位置付けられている。
  • よく問われる点反社会的勢力への該当性だけでなく、譲り受け側が最終契約を履行し事業を引き継ぐ意思・能力を持つかも確認する。

図解で確認:事前相談出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.24(当社にて要約)

スタンドアローン・イシュー

すたんどあろーん・いしゅーM&A実務財務・税務

カーブアウトで事業を切り出すときに生じる、人員・契約・設備・システム等をどう分けるかという問題。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業の一部を切り出すと、それまで譲り渡し側の会社と共有していたものを分けなければなりません。切り出した事業が単独(スタンドアローン)でやっていけるかを確かめるために検討する項目を、まとめてスタンドアローン・イシューと呼びます。スキルマップは次の6つを挙げています。①人員の分け方(分離後の組織図、転籍する人員は足りるか・多すぎないか)②業務フローの分離(取引先の抵抗・流出、ブランド・商標変更のコスト、許認可の維持、仕入れの数量割引の喪失)③契約の移管範囲(再締結が必要な契約)④共通費の配賦 ⑤資産・設備の分離(セキュリティウォールの設置と費用負担、新設が必要な設備、知的財産の譲渡範囲)⑥システム・インフラの分離(新規ライセンス費用、ITコストの妥当性)。財務DDでも把握すべき事項とされています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点検討する6項目は、人員・業務フロー・契約・共通費の配賦・資産設備・システムインフラ。
  • ひっかけに注意「システムや物流センターの分離は業務上の問題で財務には影響しない」は誤り。費用を含めて検討すべき事項。
  • よく問われる点オペレーション上の分析では、人事・サプライチェーン・システム等、特定領域の専門家の関与が必要となることがある。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.110、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.111(当社にて要約)

スタンドアローン・コスト

すたんどあろーん・こすとM&A実務財務・税務

切り出された事業が、元の会社から独立して運営するために新たに必要となる費用。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社の一部の事業だけを切り出して譲り渡すカーブアウトでは、それまで譲り渡し側の会社全体で共用していたシステムや設備、共通の機能が使えなくなることがあります。その結果、切り出された事業が単独で運営していくために、システムの再構築や新規ライセンスの取得、設備の新設などの費用が新たに発生します。これをスタンドアローン・コストといいます。財務DDで正常収益力(事業の実力としての利益)を検討するときは、M&A後の変化を反映するプロフォーマ調整として、スタンドアローン・コストを追加します。IT DDでも、譲り渡し側の企業内でシステムを共用している場合は、再構築の必要とその費用を考慮する必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いスタンドアローン・コストの追加はプロフォーマ調整(M&A後の変化の反映)。一時的な損益を除く正常化調整ではない。
  • ひっかけに注意「システムや物流センターの分離は業務上の問題で財務に影響しないので検討不要」は誤り。分離に伴う費用を検討する。
  • よく問われる点カーブアウト財務諸表で共通費が精緻に見積もられている例は稀。提出された数字と実際に必要な費用のずれに注意。

図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.106、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.127、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.110(当社にて要約)

税効果会計

ぜいこうかかいけい財務・税務

会計上と税務上の資産・負債の額の差について、法人税等の額を適切に期間配分する会計処理。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会計上の利益と、法人税を計算するときの所得は、費用や収益の扱いの違いから一致しないことがあります。そのままでは、損益計算書の税引前当期純利益と法人税等の額が対応せず、税引後の利益がゆがみます。税効果会計は、この差のうち将来解消されるもの(一時差異)について法人税等の額を期間配分し、両者を合理的に対応させる処理です。貸借対照表には、将来の税金を減らす効果を繰延税金資産、増やす効果を繰延税金負債として計上します。M&Aの財務DDでは、会計方針の着眼点の一つとして税効果会計の適用状況を確認します。また、調整後純資産を求めるときの含み損益は、税効果を考慮して検証します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点財務DDで調整後純資産を求めるとき、含み損益は税効果を考慮して検証する。
  • よく問われる点繰延税金資産・負債は、BSに計上されていても変動しうる項目の例(ほかに未払税金、退職給付引当金、リース債務等)。
  • よく問われる点税効果会計の適用は、財務DDで把握する会計方針の着眼点の一つ(減損会計、リース会計基準の適用等と並ぶ)。

別名・略称:税効果、繰延税金資産、繰延税金負債図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.105、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.109(当社にて要約)

成功報酬

せいこうほうしゅうM&A実務

主にクロージング時等の案件完了時に、仲介者・FAに支払う手数料のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aが成立したときに支払う手数料で、多くの仲介者・FAの手数料の中心になります。算定は、譲渡額・移動総資産額・純資産額など一定の価額(基準となる価額)に、一定の方式で計算を施すものが多く、特にM&A専門業者ではレーマン方式(価額を階層に分け、階層ごとの料率を掛けて合算する方法)が広く使われています。その場合でも最低手数料が定められていることが多いです。どの価額を基準にするか、最低手数料をいくらにするかは業者ごとに異なるため、比較検討することが望ましいとされます。着手金・月額報酬・中間金を請求せずに成功報酬だけを請求する形を「完全成功報酬型」といいます。手数料とは別に交通費等の実費を求められることもあります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点基準となる価額は譲渡額・移動総資産額・純資産額等。債務超過企業は純資産がゼロ以下となるため、通常は譲渡額や移動総資産額を基準とする。
  • よく問われる点計算額が最低手数料を下回るときは最低手数料を適用する。最低手数料を成功報酬に「加算」するのではない。
  • 似た用語との違い完全成功報酬型は着手金・月額報酬・中間金を請求せず成功報酬のみ。M&Aプラットフォームでは譲り受け側にこの型が多い。

別名・略称:完全成功報酬型図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.39、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.64、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.59(当社にて要約)

正常収益力

せいじょうしゅうえきりょくM&A実務財務・税務

過去の損益から一時的な影響を除き、M&A後の変化も反映して求める、事業の基礎的な収益力。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

財務DDで、譲り渡し側の会社が「普段どれくらい稼げるのか」を見極めるために求めるのが正常収益力です。決算書の利益には、一度きりの出来事の影響や、M&A後には変わる費用が混ざっているため、2段階で調整します。1つ目の正常化調整では、過年度の損益計算書から突発的・一時的な取引の影響を除きます。反対に、営業外・特別損益に入っていても毎年のように発生している事業関連の損益は取り込みます。2つ目のプロフォーマ調整では、M&A後に想定される費用・収益の増減を反映します。例は、廃止した事業の影響の除外、カーブアウトの場合の本社費用の除外、スタンドアローン・コストの追加などです。調整後の収益力は事業計画に反映し、バリュエーション(企業価値の評価)の調整に使います。

例当期にだけ生じた役員退職慰労金は、一時的なものとして除いて考えます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い正常化調整は過去の一時的・突発的な影響を除く調整。プロフォーマ調整はM&A後に想定される費用・収益の変化を反映する調整。
  • ひっかけに注意「スタンドアローン・コストの追加は正常化調整の例」は誤り。M&A後の変化を反映するプロフォーマ調整の例。
  • よく問われる点営業外・特別損益に計上されていても、経常的に発生している事業関連損益は除かずに取り込む。

別名・略称:正常化調整、プロフォーマ調整図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.106、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.102(当社にて要約)

生前贈与加算

せいぜんぞうよかさん財務・税務

相続開始前の一定期間内に被相続人から受けた暦年課税の贈与財産を、相続税の課税価格に加える制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

生前贈与加算は、暦年課税による生前の贈与と相続税の関係を定めた制度です。相続や遺贈で財産を取得した人が、相続開始前7年以内に被相続人から暦年課税の贈与を受けていた場合、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算し、すでに納めた贈与税額は相続税から控除します。基礎控除110万円以下で贈与税がかからなかった贈与も加算の対象です。加算期間は令和5年度改正で3年から7年に延長され、延長部分(3年超7年以内)の贈与財産は、合計額から100万円を控除して加算します。改正は令和6年1月1日以後の贈与から段階的に適用されるため、相続開始が令和8年12月31日以前であれば加算期間は3年です。つまり基準日(令和8年3月末)時点で相続が発生した場合の加算期間は3年です。相続時精算課税による贈与は別のルールで、年110万円の基礎控除部分は加算しません。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える加算期間は相続開始前7年以内(相続税法19条)。ただし段階適用のため、相続開始が令和8年12月31日以前なら3年。
  • よく問われる点延長部分(3年超7年以内)の贈与財産は、合計額から100万円を控除して加算する。
  • ひっかけに注意「基礎控除110万円以下の贈与は加算されない」は誤り。暦年課税の贈与は110万円以下でも加算対象(精算課税の基礎控除部分は加算しない)。

図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)、相続税法(当社にて要約)

税務申告等の適正(表明保証)

ぜいむしんこくとうのてきせい財務・税務法務

対象会社が税金や社会保険料等を適法・適正に申告・納付してきたことを、譲り渡し側が表明保証する事項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約では、譲り渡し側が対象会社の状態について「この内容は真実で正確です」と表明し保証する(表明保証)のが一般的です。税務申告等の適正はその主な事項の一つです。契約書サンプルでは、対象会社が過去7年間、国内外において法人税をはじめとする各種税目と社会保険料等の公租公課を適法かつ適正に申告し、適時に支払を完了していること、クロージング日以前の事業に関して課税処分がなされるおそれがないことを保証する形が示されています。クロージング後に申告漏れが見つかると譲り受け側が追徴課税を負担するおそれがあるため、税務DDとあわせて、この条項と補償の定めでリスクに備えます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える契約書サンプルでの対象期間は「過去7年間」(例示)。
  • ひっかけに注意「税務の表明保証は事業譲渡だけで用い、株式譲渡では用いない」は誤り。株式譲渡で表明保証される主な事項の一つ。
  • よく問われる点対象は法人税等の税金だけでなく、社会保険料等の公租公課の申告・納付も含む。

別名・略称:税務に関する表明保証、税務の表明保証図解で確認:最終契約(税務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.35、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.145、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.119(当社にて要約)

税務調査

ぜいむちょうさ財務・税務

税務当局が、納税者の申告内容が正しいかを確かめるために行う調査。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社は法人税などを自ら計算して申告しますが、その内容は後から税務当局の調査で確かめられることがあります。調査で誤りが見つかると、追加の税金(追徴課税)を払うことになります。M&Aの税務DDでは、対象企業の経営陣や顧問税理士へのインタビュー、過去の税務申告書のレビューとあわせて、過去の税務調査・税務訴訟を把握し、調査の結果・指導事項・議論となった点などを分析して、潜在的な税務リスクをつかみます。最終契約でも税務調査への備えを定めます。株式譲渡契約のサンプルでは、クロージング前の取引等に関して税務調査を受けた場合、譲り渡し側と譲り受け側が相互に協力して対応するとされています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「過去の税務調査は決着済みなので、指導事項や議論となった点を分析する必要はない」は誤り。結果・指導事項・議論となった点等を分析する。
  • 義務か・望ましいか顧問税理士は、顧問先のDDに積極的に協力することが望ましい。
  • よく問われる点株式譲渡契約サンプルでは、クロージング前の取引等に関する税務調査に譲り渡し側・譲り受け側が相互に協力して対応する。

図解で確認:税務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.112、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.119、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.21(当社にて要約)

税務DD

ぜいむでぃーでぃーM&A実務財務・税務

過去の申告誤りによる追徴課税など、潜在的な税務リスクを把握するために行うDD。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社が過去に税金の申告を誤っていると、後で追徴課税を受けることがあります。株式譲渡等で会社を引き継ぐと、クロージング後に申告漏れや記載ミスが見つかった場合に譲り受け側が納税を負担するおそれがあり、多額なら経営不振に陥る可能性もあります。そのため必要に応じて行うのが税務DDで、範囲・対象年度・手法は依頼者と協議して決めます。主な手続は、経営陣や顧問税理士へのインタビュー、過去の税務申告書のレビュー、過去の税務調査・税務訴訟の把握、過去の組織再編・資本取引の税務処理の把握、税務上の欠損金の使用可能性や各種税制の適用状況の把握等です。消費税や源泉所得税等の諸税も個別に検証します。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか顧問税理士は、顧問先が対象となるDDに資料提供やインタビュー等で積極的に協力することが「望ましい」。「守秘の観点から協力を控える」は誤り。
  • 数字を覚える役員退職金の損金算入の実務上の限度額の目安は「最終月額報酬×役員勤続年数×功績倍率」。不相当に高額な超過部分は損金算入されない。
  • 似た用語との違い税務DDは財務DDの一部に含まれることがある。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.119、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.112、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.21(当社にて要約)

誓約事項

せいやくじこうM&A実務法務

最終契約で、当事者がクロージングの前後に守ることを約束する事項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約では、株式と代金の受渡しだけでなく、その前後に当事者が守るべきことも約束します。これが誓約事項(コベナンツ)です。クロージング後の誓約事項として、譲り渡し側には、競業避止義務(同じ事業をしない義務)、従業員の引き抜きの禁止、業務の引継ぎへの協力義務、在庫・売掛金の精算や分割支払など譲渡後の手続への誠実な対応などが設定されます。譲り受け側には、経営者保証の解除義務、従業員の雇用継続義務、本店所在地の変更や社名の維持、株式の追加取得に関する取り決めなどが設定されます。クロージング後の違反は救済が難しいため、現実的に実現できる内容か確認し、明確に規定します。事業の引継ぎやPMIを円滑に進める観点からも、適切な内容を盛り込んでおくことが望ましいとされます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点競業避止義務・従業員の引き抜き禁止・引継ぎへの協力は「譲り渡し側」の例。経営者保証の解除・雇用継続・社名の維持は「譲り受け側」の例。
  • 似た用語との違いクロージング前の違反はクロージングの回避等で対応できる。クロージング後の違反は補償や契約解除による救済となり、対応の難易度が高い。
  • ひっかけに注意「完全合意条項があっても、誓約事項は口頭で合意すれば足りる」は誤り。口頭合意は担保されないため、全て具体的に条文化する。

別名・略称:コベナンツ図解で確認:最終契約出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.147(当社にて要約)

成約の目的化

せいやくのもくてきか倫理・行動規範

M&Aを成立させること自体が目的となり、依頼者の真の利益につながらない成約が目指されるおそれ。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&A専門業者の経済的利益とM&Aの成立は強く結びついています。そのため、M&Aの成立が目的化し、必ずしも依頼者の真の利益の確保につながらない形での成約が目指されるおそれがあると、中小M&Aガイドラインで指摘されています。また、新規参入の増加により、支援経験や知見の乏しい人材が支援に携わるケースもあり、善管注意義務の履行の観点から適切に業務を進められないおそれもあります。こうした問題への対応として、ガイドラインは、仲介者・FAが知識・能力の向上と適正な業務遂行を通じて「支援の質の確保及び向上」を図る必要があるとしています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点対応策は「支援の質の確保・向上」で、柱は①知識・能力の向上、②適正な業務遂行の2つ。
  • ひっかけに注意M&Aの成立のみを目的に、依頼者の真の利益につながらない成約を進めるのは禁忌肢になりうる。

図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.80(当社にて要約)

税理士業務の制限

ぜいりしぎょうむのせいげん法務倫理・行動規範

税理士又は税理士法人でない者は、税理士業務を行ってはならないとする規定(税理士法52条)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

税理士業務とは、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つをいいます(税理士法2条1項)。このうち税務相談は、申告等に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応じることです。税理士法52条は、税理士又は税理士法人でない者は、これらの業務を行ってはならないと定めています。M&Aの仲介者・FAは、譲り渡し側のオーナーから「株式を売ったら税金はいくらになるか」と聞かれることがありますが、資格がないのに個別具体的な税額を計算して助言すると、この規定に違反するおそれがあります。本試験のサンプル問題(中小M&A市場の改革に向けた検討会の資料)でも、資格のない支援者が、株主が支払う税金の額を無償で試算する行為は、適法に行えないものとされています。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い弁護士法72条(非弁行為)と異なり、「報酬を得る目的」は要件ではない。無償でも違反になる。
  • 数字を覚える違反は2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(税理士法59条1項4号)。
  • ひっかけに注意税理士でない仲介者が、オーナーの株式譲渡の具体的な税額を計算して申告方法を助言するのは禁忌肢になりうる。

別名・略称:税理士法52条図解で確認:法務基礎出典:税理士法、税理士法、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.16(当社にて要約)

セカンド・オピニオン

せかんど・おぴにおんM&A実務倫理・行動規範

支援機関との契約時や助言の妥当性を確かめたいときに求める、他の支援機関の意見・助言。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

「他の支援機関への相談」とも呼ばれます。中小M&Aを行おうとする人が、仲介者・FAなどの支援機関と契約を結ぶときや、受けた助言が妥当か確かめたいときに、別の支援機関に意見を聞くことです。ガイドラインは2つに分けています。元の支援機関と同様の業務を行う者(例:別の仲介者)の意見が「狭義のセカンド・オピニオン」、異なる業務を行う者、特に公認会計士・税理士・弁護士等の士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センターの意見が「広義のセカンド・オピニオン」です。専任条項がある契約でも、依頼者が意見を求めたい部分を明確にしたうえで、妨げる合理的な理由がなければ、セカンド・オピニオンを求めることは基本的に許容されます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い他の仲介者に意見を求めるのは「狭義」。仲介契約の妥当性を弁護士に聞く、引継ぎ支援センターに相談するのは「広義」。
  • ひっかけに注意「セカンド・オピニオンは支援機関と契約した後に限って求められる」は誤り。契約締結時や助言の妥当性を検証したい場合等に求める。
  • よく問われる点専任条項があっても、意見を求めたい部分を明確にし、妨げる合理的な理由がなければ基本的に許容される。相談先の限定など情報管理上の配慮は認められる。

別名・略称:セカンドオピニオン図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.19、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.40(当社にて要約)

責任(免責)条項

せきにんめんせきじょうこうM&A実務法務

仲介契約・FA契約で、損害を与えた場合の法令上の損害賠償責任の要件や範囲を修正する条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介契約・FA契約の履行に関して、一方の当事者が他方に損害を負わせた場合、本来は法令(民法等)に従って損害賠償責任が生じます。責任(免責)条項は、その責任の要件や賠償すべき損害の範囲等を契約で修正するものです。なお、ガイドラインはこうした条項の法的な有効性には言及していません。中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAの一定の関与により依頼者に損害が発生した場合に、仲介者・FAに適切に負担を求められる内容になっているかを、契約前に確認しておくことが望ましいとしています。この条項は、契約締結前に書面で説明すべき重要事項の一つにも挙げられています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「免責条項を依頼者に説明すれば、その条項は法的に有効になる」は誤り。説明したことと条項の法的効力の有無は別の問題。
  • よく問われる点ガイドラインは免責条項の法的な有効性には言及していない。依頼者側は、損害発生時に適切に負担を求められる内容かを予め確認することが望ましい。
  • よく問われる点責任(免責)に関する事項は、仲介契約・FA契約前に書面で説明すべき重要事項の一つ。

別名・略称:免責条項、責任条項図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.41、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.87、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.88(当社にて要約)

善管注意義務

ぜんかんちゅういぎむ法務倫理・行動規範

受任者が、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務(民法644条)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

人に仕事を任せる契約(委任)では、任された人(受任者)がどの程度の注意を払うべきかが問題になります。民法644条は、受任者は委任の本旨(委任の目的)に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理しなければならないと定めています。これが善管注意義務です。無償の委任でも負い、「自分の財産を扱うのと同じ注意」では足りません。会社と役員の関係も委任の規定に従うため、取締役は会社に対して善管注意義務を負います(会社法330条)。M&Aの仲介者・FAも、この義務に基づき専門家として相応の注意を尽くす必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える条文番号の入れ替えに注意。民法644条=善管注意義務、645条=報告義務、646条=受取物の引渡し。
  • ひっかけに注意「無償の委任なら自己の財産と同一の注意で足りる」は誤り。無償でも善管注意義務を負う。
  • よく問われる点取締役も会社に対して善管注意義務を負う(会社法330条で委任の規定に従う)。

別名・略称:善良な管理者の注意義務図解で確認:法務基礎出典:民法、会社法(当社にて要約)

善管注意義務(M&A専門業者)

ぜんかんちゅういぎむえむあんどえーせんもんぎょうしゃ倫理・行動規範

M&A専門業者が依頼者との契約に基づき、善良な管理者の注意をもって業務を処理する義務。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAなどのM&A専門業者は、依頼者との契約に基づき、仲介業務・FA業務の依頼の本旨に照らして、善良な管理者の注意をもってその業務を処理する義務(善管注意義務)を負うとしています。依頼者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ってはならない忠実義務も、ガイドラインはこの善管注意義務に含めて扱っています。M&Aへの意思決定を支援する場面では、想定される重要なメリット・デメリットを知り得る限り明示的に説明することと、契約前の相談段階でも、相談者の企業情報の取扱いについて善管注意義務を負っていると自覚することが留意点とされています。倫理・行動規範も「職業倫理を遵守し、善管注意義務をもって業務にあたること」を掲げています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点義務の根拠は依頼者との契約。ただし職業倫理は契約上の義務に限られない。
  • ひっかけに注意「契約締結前の相談者の企業情報には善管注意義務は及ばない」は誤り。相談段階でも負っていると自覚する。
  • ひっかけに注意メリットだけを強調してデメリットを説明しないのは不適切。重要なメリット・デメリットを知り得る限り明示的に説明する。

図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.79、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.80、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84(当社にて要約)

専任条項

せんにんじょうこうM&A実務倫理・行動規範

依頼者が、並行して他の仲介者・FAにマッチング支援等を依頼することを禁止する条項のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介契約・FA契約に置かれることがある条項です。同じ候補先に複数の業者から重ねて打診されて相手の心証が悪くなることや、譲り渡し側の情報が広がることを防ぐ点で、一定の合理性があります。一方で、他の支援機関に意見を聞けないと、受けた助言が妥当か判断できません。そこでガイドラインは、禁止される行為(他の仲介者・FAへのセカンド・オピニオンや、他の業者を使ったマッチング等)を予め確認すること、対象範囲を可能な限り限定することを求めています。依頼者が意見を求めたい部分を明確にし、妨げる合理的な理由がなければ、セカンド・オピニオンは基本的に許容されます。契約期間や中途解約に関する事項も併せて確認します。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える専任条項がある場合の契約期間は、最長でも6か月〜1年以内が目安。テール期間の目安(最長でも2〜3年以内)と取り違えない。
  • 似た用語との違い専任条項は契約期間中にほかの仲介者・FAに依頼しない約束。テール条項は契約終了後の手数料の約束。
  • よく問われる点セカンド・オピニオンを許容する場合、相手方情報の開示禁止や相談先を秘密保持義務のある者・公的機関に限る等の情報管理上の配慮は認められる。

図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.40、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.103、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.104(当社にて要約)

専門家活用枠

せんもんかかつようわくM&A実務

事業承継・M&A補助金の枠の一つで、M&AのときのFA・仲介・DD等の専門家費用を補助するもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aを進めるには、FA・仲介業者への手数料やDD(買収前の調査)の費用など、専門家への支払が大きな負担になります。専門家活用枠は、その費用の一部を補助する事業承継・M&A補助金の枠です。株式や経営資源を譲り受ける予定の中小企業等を支援する買い手支援類型(Ⅰ型)と、譲り渡す予定の中小企業等を支援する売り手支援類型(Ⅱ型)があり、同じ経営資源の引継ぎについて買い手・売り手がそれぞれ1申請できます。買い手支援類型では、費用を計上するかどうかにかかわらずDDの実施が必須です。補助金は事業完了後の精算払いです。12次公募以降は、売上高100億円を目指す「100億宣言」企業向けに、補助上限2,000万円の特例もあります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える補助率は買い手支援類型2/3以内、売り手支援類型1/2以内(営業利益率の低下や赤字なら2/3以内)。上限600万円、DD実施で+200万円、下限50万円。
  • よく問われる点FA・仲介費用は登録業者のものだけが対象で、登録確認は「交付決定時」。財務・法務のDD費用やマッチングサイトの利用料は登録不要。
  • 数字を覚える補助事業期間内にクロージングしなかった場合は、上限が300万円に変わり、原則DD費用のみが対象。

別名・略称:買い手支援類型、売り手支援類型図解で確認:中小企業政策出典:事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)、事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)、事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)(当社にて要約)

総合課税

そうごうかぜい財務・税務

給与・配当などの各種所得を合算し、超過累進税率で所得税を計算する課税方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

個人の所得税は、原則として給与所得や配当所得などの各種所得を合計し、所得が多いほど税率が高くなる累進税率で計算します。これを総合課税といい、株式の譲渡所得のように他の所得と分けて計算する申告分離課税と対比されます。M&Aでは、オーナー経営者が手にするお金の税負担を比べる場面で重要です。株式譲渡なら、経営者個人は譲渡益に対する20.315%の分離課税で課税関係が終わります。一方、事業譲渡では譲渡代金は会社に入り、益金に法人税等が課されます。その資金を配当や役員報酬で経営者に還流すると総合課税となり、税率は15.105%〜55.945%とされます。そのため、分離課税となる役員退職慰労金の支給と併せて検討することもあり得ます。非上場株式の配当所得は原則として総合課税で確定申告の対象となり、配当控除が適用されます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い配当・役員報酬で還流すると総合課税(15.105%〜55.945%)。役員退職慰労金と株式譲渡益は分離課税。
  • よく問われる点非上場株式の配当は原則総合課税で確定申告の対象。1回の配当が10万円×配当計算期間の月数÷12以下の少額配当は申告不要を選べる。
  • ひっかけに注意「事業譲渡の譲渡代金は株主である経営者個人に帰属する」は誤り。法人に帰属し、益金に法人税等が課される。

図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.118、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.31(当社にて要約)

相続時精算課税

そうぞくじせいさんかぜいM&A実務財務・税務

贈与時に一定の贈与税を納め、贈与者の相続時に贈与財産を相続財産に加えて精算する制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

相続時精算課税は、暦年課税に代えて選択できる贈与税の制度です。原則として、その年1月1日に60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫(推定相続人である直系卑属又は孫)への贈与で選択できます。贈与のときは、年110万円の基礎控除(令和6年1月1日以後の贈与)を差し引いた後、特定贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除を超える部分に、一律20%で贈与税が課されます。その後、贈与者が亡くなったときに、贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算し、精算します。一度選択すると、その贈与者からの贈与には暦年課税に戻れません。事業承継税制の特例措置と組み合わせると、60歳以上の贈与者から18歳以上の後継者へ、推定相続人以外でもこの制度を使えます。選択する場合も、贈与税の期限内申告が必要です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える贈与者60歳以上・受贈者18歳以上(その年1月1日時点)。特別控除は累計2,500万円、超える部分は一律20%。基礎控除は年110万円。
  • ひっかけに注意「選択後も翌年以降は暦年課税を選び直せる」は誤り。その贈与者からの贈与には暦年課税は適用されない。
  • よく問われる点事業承継税制の特例措置と組み合わせると、推定相続人以外の後継者(親族外を含む)への贈与にも使える。

図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4103 相続時精算課税の選択、相続税法、国税庁タックスアンサー No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)(当社にて要約)

相続人等に対する売渡請求

そうぞくにんとうにたいするうりわたしせいきゅうM&A実務法務

相続などで譲渡制限株式を取得した者に、会社がその株式を売り渡すよう請求できる制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

相続で株式が分散し、会社にとって好ましくない者が株主になるのを防ぐための仕組みです。定款にこの定めを置いておくと、相続その他の一般承継(権利義務をまとめて引き継ぐこと)で譲渡制限株式を取得した者に、会社が売渡しを請求できます(会社法174条)。請求するたびに、株主総会の特別決議で、請求する株式の数と相手方を決めます。相手方となる相続人等は、その総会で原則として議決権を行使できません。請求は、会社が相続等があったことを知った日から1年を経過するとできなくなります。オーナー経営者が亡くなった場合、後継者が相続した株式が、少数株主側の決議によって売渡請求の対象になるリスクがある点が、事業承継の論点になります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える会社が相続等があったことを知った日から1年を経過すると、請求できない。
  • よく問われる点定款の定めが必要で、対象は譲渡制限株式に限る。請求のたびに株主総会の特別決議で株式数と相手方を定める。
  • ひっかけに注意「売渡請求の相手方も総会で議決権を行使できる」は誤り。原則として議決権を行使できない。

別名・略称:相続人等への売渡請求図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

贈答・接待

ぞうとう・せったい倫理・行動規範

顧客との間でやりとりされる金品の贈答や接待のことで、倫理・行動規範が範囲を制限しているもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

支援者が顧客から高額な贈答や接待を受けると、その顧客を優遇したくなり、公平な支援が損なわれるおそれがあります。中小M&A専門人材の倫理・行動規範は、顧客からの贈答・接待等について、公平な支援を妨げるような、社会通念上許容される範囲を超える金銭・物品等を受け取ってはならないとしています。反対に、支援者から顧客への社会通念上許容される範囲を超えた贈答・接待等も、厳に慎むよう求めています。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか顧客から範囲を超える金品を「受け取ってはならない」。支援者から顧客への範囲を超えた贈答・接待は「厳に慎む」。
  • ひっかけに注意「贈答・接待は一切禁止」は誤り。基準は公平な支援を妨げるような、社会通念上許容される範囲を超えるかどうか。
  • よく問われる点買い手から高額な接待・金品を受け、その買い手を優先するのは禁忌肢になりうる。

図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.11(当社にて要約)

組織再編税制

そしきさいへんぜいせい財務・税務

合併・会社分割・株式交換などの組織再編成について、法人税の課税関係を定めた仕組み。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

合併や会社分割で会社の資産・負債が別の会社に移ると、法人税法上は原則として、移転時の価額(時価)で譲渡したものとして所得を計算し、譲渡損益に課税します(法人税法62条)。合併の場合、譲渡損益は被合併法人の最後事業年度に計上します。ただし、一定の要件を満たす適格組織再編成(適格合併・適格分割など)に当たれば、資産・負債を帳簿価額で引き継ぎ、譲渡損益の計上が繰り延べられます。非適格の分割型分割・合併では、株主にみなし配当が生じることがあります。欠損金は、適格合併なら被合併法人の未処理欠損金を引き継げるのが原則ですが、支配関係が5年前から継続していない場合は、共同事業要件を満たさない限り引継ぎ・使用が制限されます。さらに、形式的に要件を満たしても、法人税の負担を不当に減少させる行為や計算は税務署長が否認できます(法人税法132条の2)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「適格合併なら支配関係の期間にかかわらず欠損金を常に全額引き継げる」は誤り。支配関係5年未満は共同事業要件等を満たさないと制限される。
  • ひっかけに注意「形式的に適格要件を満たせば否認されない」は誤り。組織再編成に係る行為計算否認(法人税法132条の2)で否認されうる。
  • 似た用語との違い非適格株式交換等で時価評価課税が生じるのは完全子法人の保有資産(完全親法人ではない)。非適格合併では欠損金を引き継げない。

図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法、法人税法、法人税法(当社にて要約)

組織再編の無効の訴え

そしきさいへんのむこうのうったえ法務

合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の無効を、裁判で主張するための訴え。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

組織再編は、多くの株主・債権者・取引先に影響するため、後からいつでも無効を主張できるとすると法律関係が不安定になります。そこで会社法828条は、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の無効は、効力が生じた日から6か月以内に、訴えをもってのみ主張できるとしています(1項7号〜13号)。つまり、決まった期間内に裁判を起こす方法でしか無効を争えず、期間を過ぎれば手続に問題があっても原則として争えなくなります。株式発行の無効の訴えにも期間制限があり、非公開会社では効力発生日から1年以内とされています(828条1項2号)。M&Aの手続に瑕疵がないよう、決議や債権者保護手続を確実に行うことが大切です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える組織再編の無効の訴えは効力が生じた日から6か月以内。非公開会社の株式発行の無効の訴えは1年以内。
  • ひっかけに注意「無効はいつでも、どのような方法でも主張できる」は誤り。訴えをもってのみ、期間内に主張できる。

図解で確認:法務基礎出典:会社法(当社にて要約)

組織的な判断

そしきてきなはんだん倫理・行動規範

明確な基準のもと、担当者1人に限らない組織的なプロセスで行い、記録され事後に検証できる判断。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、担当者個人の判断に任せると問題が起きやすい場面で、「組織的な判断」を求めています。組織的な判断とは、明確化された基準の下での、一担当者限りではない組織的なプロセスによる判断であって、組織的に記録され、事後に検証可能であるものをいいます。たとえば、停止意思を示した営業先への広告・営業の再開は、慎重に検討した上で組織的な判断によらなければなりません。また、最終契約の不履行など不適切な行為をした譲り受け側の情報を得たときは、担当者レベルに留めず組織的に共有し、その譲り受け側に新たな支援を行う場合は、情報の精査と譲り渡し側への不利益を考慮した上で、組織的な判断によらなければなりません。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点組織的な判断の3要素:明確化された基準/一担当者限りでない組織的なプロセス/組織的に記録され事後に検証可能。
  • よく問われる点求められる場面は、停止意思を示した者への営業再開、不適切な譲り受け側への新たな支援など。
  • ひっかけに注意全面的に営業を拒否した相手に担当者判断で営業を再開するのは禁忌肢になりうる。

図解で確認:広告・営業出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.102(当社にて要約)

その他禁止行為(倫理・行動規範)

そのたきんしこうい倫理・行動規範

倫理・行動規範#48。列挙された規範のほか、善管注意義務や職業倫理から見て不適切な行為を禁じる定め。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

スキルマップの倫理・行動規範は、基本原則、善管注意義務・職業倫理、広告・営業、品位、法令等の遵守、反社会的勢力等との関係、情報管理、その他禁止行為の8つの大分類、全48条で構成されています。最後の#48「その他禁止行為」は、いわば受け皿の規定です。前段は、上に掲げた規範のほかにも、支援者としての善管注意義務(専門家として通常求められる注意を尽くす義務)や職業倫理の観点から不適切と認められる行為をしてはならないとしています。後段は、自己の関係者による不適切な行為を予見・認識しながら、それを停止等させる措置を講じない行為を禁じています。なお、倫理・行動規範は強制力を持つ規程ではなく、専門人材が満たすべき要素を抽出した条文初期案です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「個別に列挙されていない行為は、不適切でも禁止の対象にならない」は誤り。善管注意義務・職業倫理の観点から不適切な行為も禁止される。
  • ひっかけに注意「倫理・行動規範は強制力を持つ規程で、条文に違反しない限り問題ない」は誤り。強制力のない条文初期案で、#48が受け皿になる。
  • よく問われる点後段は、関係者の不適切な行為を予見・認識しながら、停止等の客観的に可能かつ有用な措置を講じないことを禁じる。

別名・略称:倫理・行動規範#48図解で確認:その他禁止行為出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.13、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.10、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.3(当社にて要約)

損益計算書(PL)

そんえきけいさんしょ財務・税務

一会計期間の収益と費用を対応させて記載し、企業の経営成績を示す書類。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

損益計算書は、1年などの一会計期間に会社がどれだけ稼ぎ、どれだけ費用を使い、最終的にいくら利益が出たかを示す決算書です。M&Aでは収益力を見る基本資料になります。中身は営業損益計算・経常損益計算・純損益計算の3区分で、段階ごとに利益を示します。売上高から売上原価を引いて売上総利益、そこから販売費及び一般管理費を引いて営業利益、受取利息・支払利息などの営業外損益を加減して経常利益、固定資産売却損益などの特別損益を加減して税引前当期純利益、最後に法人税等を引いて当期純利益です。費用・収益は発生した期間に割り当て(発生主義)、費用と収益を相殺せず総額で記載し(総額主義)、収益とそれに対応する費用を並べて表示します。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い支払利息は営業外費用(経常利益の段階)、固定資産売却損は特別損失(税引前当期純利益の段階)。販管費や営業外費用と入れ替えた選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意「売上総利益に営業外損益を加減したものが営業利益」は誤り。営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を引いたもの。
  • よく問われる点収益は実現主義、費用は発生主義が原則。費用と収益を直接相殺して損益計算書から除去してはならない(総額主義)。

別名・略称:PL、P/L図解で確認:財務基礎出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)(当社にて要約)

損益分岐点

そんえきぶんきてん財務・税務

売上高と総費用がちょうど等しくなり、利益がゼロになる売上高(売上規模)のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

損益分岐点は、「いくら売れば赤字を脱するか」「売上がどこまで落ちても赤字にならないか」を考えるための指標です。まず費用を、売上に応じて増減する変動費と、売上に関係なく一定の固定費に分けます。売上高から変動費を引いた残りを限界利益といい、固定費を回収するもとになる利益です。限界利益がちょうど固定費と同じになる売上高が損益分岐点で、損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率(限界利益÷売上高)で求めます。実際の売上高が損益分岐点をどれだけ上回っているかの余裕を示すのが安全余裕率で、損益分岐点が低く売上高が高い企業ほど高くなります。

例仮の数値で、売上高2,000万円・変動費1,200万円・固定費600万円なら、限界利益率は40%、損益分岐点売上高は600÷0.4=1,500万円です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「損益分岐点売上高=固定費÷変動費率」は誤り。分母は限界利益率(限界利益÷売上高)。
  • よく問われる点販売量で求めるときは、固定費÷1個当たり限界利益(販売単価−1個当たり変動費)。変動費を下げると限界利益が増え、損益分岐点は下がる。
  • よく問われる点安全余裕率は、損益分岐点が低く実際の売上高が高い企業ほど高い。

別名・略称:損益分岐点売上高、限界利益図解で確認:財務基礎出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

損害賠償(債務不履行)

そんがいばいしょう法務

債務者が約束どおりに債務を果たさないとき、債権者が生じた損害を金銭で償うよう求めること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、秘密保持契約(NDA)や最終契約で定めた義務に違反した場合などに問題になります。民法415条により、債務者が債務の本旨に従った履行をしないときや履行が不能なとき、債権者は損害賠償を請求できます。ただし、契約と取引上の社会通念に照らして、債務者の責めに帰することができない事由(落ち度があるとはいえない事情)によるときは除かれます。賠償の範囲は、通常生ずべき損害と、当事者が予見すべきであった特別の事情による損害です(416条)。これらの規定の多くは任意規定(契約で変えられる規定)なので、株式譲渡契約では表明保証違反の補償条項などで、範囲・上限・期間を別に定めます。違約金を定めた場合は、賠償額の予定と推定されます(420条)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「請求には不法行為と同様に相手の故意・過失の立証が必要」は誤り。不履行があれば請求でき、責めに帰さない事由は除外事由である。
  • ひっかけに注意「違約金は違約罰と推定される」は誤り。民法420条3項により、違約金は賠償額の予定と推定される。
  • 似た用語との違い補償条項は、民法の損害賠償(帰責事由・予見可能性)とは別に、範囲・上限・期間を契約で定める特約。

別名・略称:債務不履行、債務不履行責任、損害賠償図解で確認:法務基礎出典:民法、民法(当社にて要約)

損金

そんきん財務・税務

法人税の所得計算で差し引く金額。原価・費用・損失の3つからなる。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人税の所得は「益金−損金」で計算します。損金は、別段の定めがあるものを除き、①売上原価などの原価、②販売費・一般管理費その他の費用、③資本等取引以外の取引による損失、の3つです。収益や費用の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(公正処理基準)に従って計算します。ただし、会計上の費用がそのまま損金になるとは限りません。②の費用のうち、減価償却費などの償却費以外のものは、事業年度末までに債務が確定していないと損金に算入できません(債務確定基準)。たとえば引当金の繰入額は債務が確定していないため、別段の定めがなければ原則として損金になりません。役員給与のように、税法が損金算入を制限している項目もあります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「償却費以外の費用は、期末までに債務が確定していなくても損金に算入される」は誤り(債務確定基準)。
  • よく問われる点引当金の繰入額は債務が確定していないため、別段の定めがなければ原則として損金不算入。
  • 似た用語との違い会計は「収益−費用=利益」、税務は「益金−損金=所得」。会計上の費用がすべて損金になるわけではない。

別名・略称:損金の額図解で確認:財務基礎出典:法人税法(当社にて要約)

損金不算入

そんきんふさんにゅう財務・税務

会計上は費用でも、法人税の所得計算で損金に算入しない(課税所得を減らさない)こと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人税は、会計上の利益ではなく、益金から損金を差し引いた所得に課税されます。会計上は費用として処理したものでも、税法の定めにより損金として認められないものがあり、これを損金不算入といいます。損金不算入となった額だけ所得が大きくなり、税額が増えます。代表例は、①定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも該当しない役員給与、②不相当に高額な役員給与・役員退職給与の部分、③一般の寄附金のうち損金算入限度額を超える部分、④法人による完全支配関係がある法人間の寄附金(全額)です。M&Aの税務DDでは、こうした税務処理が適正に行われているかを確認します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点法人による完全支配関係がある法人間の寄附は、支出側で全額損金不算入、受領側で受贈益の全額が益金不算入。
  • ひっかけに注意「個人オーナーが100%支配する兄弟会社間の寄附も同じ扱い」は誤り。法人による完全支配関係がある場合に限る。
  • よく問われる点不相当に高額な役員退職給与の判定要素は、業務に従事した期間、退職の事情、同業種・同規模法人の支給状況等。

別名・略称:損金の額に算入しない図解で確認:財務基礎出典:法人税法、法人税法、法人税法(当社にて要約)

た行

待機期間(禁止期間)

たいききかんきんしきかん法務

事前届出の後、一定期間は株式取得や合併などの実行が禁止される期間のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事前届出をしても、すぐに取引を実行できるわけではありません。独占禁止法では、届出をした会社は、届出受理の日から30日を経過するまで株式取得をしてはなりません(10条8項)。合併・分割・株式移転・事業譲受けにも準用されます。公正取引委員会は、必要があると認める場合にはこの期間を短縮できます。外為法の対内直接投資等の事前届出でも、届出受理の日から30日を経過するまで投資を実行できず(27条2項)、国の安全等の審査が必要なときは4か月まで延長されます(27条3項)。このため、届出が必要な取引では、待機期間を踏まえてクロージング日程を設定する必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える独占禁止法も外為法も、届出受理の日から30日。外為法は審査が必要なとき4か月まで延長できる。
  • よく問われる点独占禁止法の待機期間は、公正取引委員会が必要と認めれば短縮できる(10条8項ただし書)。
  • ひっかけに注意「届出をすれば直ちにクロージングできる」は誤り。待機期間中は株式取得等を実行できない。

別名・略称:待機期間、禁止期間図解で確認:法務基礎出典:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)、外国為替及び外国貿易法(外為法)(当社にて要約)

対抗要件

たいこうようけん法務

取得した権利を、契約の当事者以外の第三者に主張するために必要な要件。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

権利を取得しても、それだけでは第三者(同じものを二重に譲り受けた者など)に「自分の権利だ」と主張できない場合があります。民法は、不動産の物権変動は登記(177条)、動産の譲渡は引渡し(178条)、債権の譲渡は譲渡人から債務者への通知か債務者の承諾(467条1項)を対抗要件と定めています。債権譲渡を債務者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書による通知・承諾が必要です。M&Aでは事業譲渡で特に重要です。事業譲渡は個々の資産を一つずつ移す特定承継なので、不動産の移転登記、動産の引渡し、売掛債権の譲渡通知など、資産ごとに対抗要件を備えなければなりません。合併のような包括承継でも、不動産の移転登記は必要です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点債権譲渡を債務者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書による通知・承諾が必要。確定日付のない通知では足りない。
  • ひっかけに注意「譲渡制限特約のある売掛債権の譲渡は無効」は誤り。譲渡は有効で、悪意・重過失の譲受人に債務者が履行を拒めるにとどまる。
  • よく問われる点合併でも不動産の移転登記は必要だが、合併による移転登記は登記権利者が単独で申請できる。

図解で確認:法務基礎出典:民法、民法(当社にて要約)

第三者承継

だいさんしゃしょうけいM&A実務

親族や自社の役員・従業員以外の第三者に事業を引き継ぐ事業承継。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継は、誰に引き継ぐかによって、親族内承継、従業員承継(役員・従業員への承継)、第三者承継(社外への引継ぎ)に分けられます。中小M&Aガイドラインの「中小M&A」は、後継者不在の中小企業の事業を、M&Aの手法により社外の第三者が引き継ぐ場合をいい、親族内承継や従業員承継は含みません。事業承継ガイドラインの5つのステップでも、4番目は、親族内・従業員承継では事業承継計画の策定、社外への引継ぎではM&A等のマッチング実施と分かれています。事業承継・引継ぎ支援センターは、第三者承継を、①センター自らの助言・紹介、②センターに登録された民間支援機関への橋渡し(有償)、③後継者人材バンクの3つの方法で支援します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「MBOは社外の第三者に事業を引き継ぐ第三者承継の手法」は誤り。役員・従業員による承継は中小M&A(社外への引継ぎ)に含まれない。
  • ひっかけに注意「センターは第三者承継の専門機関で、親族内承継・従業員承継の相談は受け付けない」は誤り。承継の形を問わずワンストップで支援する。
  • よく問われる点センターに登録された民間M&A支援機関によるマッチング・成約支援は有償。

別名・略称:社外への引継ぎ図解で確認:事前相談出典:事業承継・引継ぎポータル(中小機構):事業承継について/親族内承継支援/第三者承継支援、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.29、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16(当社にて要約)

第三者割当の引受

だいさんしゃわりあてのひきうけM&A実務

対象会社が行う第三者割当による新株発行を引き受け、株式を取得するM&Aの手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

既存の株主から株式を買う株式譲渡とは違い、対象会社が新しく発行する株式(募集株式)を譲り受け側が引き受けることで、株式を取得する手法です。株式取得の対価(払込金)は株主ではなく対象会社に入るため、対象会社に資金需要がある場合に有効です。一方、新株発行に伴う株式発行手続や法務手続の費用負担が大きいというデメリットがあります。また、資金需要がないのに、取締役が会社の支配権を維持する目的で第三者割当による募集株式の発行等を行うと、不公正発行(不当な目的での発行)として株主から差止めを請求されるリスクがあるため注意が必要です。

例設備投資の資金が必要な会社が、提携先に新株を引き受けてもらう場合。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い第三者割当の対価は対象会社に入る。株式譲渡の対価は既存株主(経営者等)に入る。「経営者の手取りが増える」は誤り。
  • よく問われる点資金需要がないのに取締役が支配権維持の目的で発行すると、不公正発行として株主から差止めを請求されるリスクがある。
  • ひっかけに注意「株式発行手続・法務手続の費用負担が小さいことがメリット」は誤り。費用負担が大きいことがデメリット。

別名・略称:第三者割当、第三者割当増資図解で確認:事前相談出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.32(当社にて要約)

貸借対照表(BS)

たいしゃくたいしょうひょう財務・税務

決算日時点のすべての資産・負債・純資産を記載し、企業の財政状態を示す書類。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

貸借対照表は、決算日(貸借対照表日)という一時点で、会社が何を持ち(資産)、何を返す義務があり(負債)、株主の持分がいくらあるか(純資産)を示す決算書です。損益計算書が一定期間の成績を示すのに対し、貸借対照表は一時点の財政状態を示します。右側(貸方)の負債・純資産は資金をどこから集めたか(調達源泉)、左側(借方)の資産はその資金を何に使ったか(使途)を表すため、資産の合計と負債・純資産の合計は一致します。資産は流動資産・固定資産・繰延資産に、負債は流動負債・固定負債に区分し、配列は原則として流動性配列法(流動的な項目から先に並べる方法)によります。短期の安全性は流動比率、長期の安全性は自己資本比率・固定比率で見ます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い一定時点の財政状態を示すのが貸借対照表、一会計期間の経営成績を示すのが損益計算書。入れ替えた選択肢は誤り。
  • よく問われる点受取手形割引高・保証債務などの偶発債務や担保提供資産は注記する。のれん・特許権は無形固定資産、子会社株式は投資その他の資産。
  • ひっかけに注意固定比率(固定資産÷自己資本)は「低いほど」安全。流動比率・自己資本比率は「高いほど」安全で、向きが逆。

別名・略称:BS、B/S図解で確認:財務基礎出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

退職給付債務

たいしょくきゅうふさいむ財務・税務

従業員に将来支払う退職金などについて、会社が負っている債務。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

退職金制度がある会社は、従業員が退職するときに退職金などを支払う義務を負います。この将来の支払に関する債務が退職給付債務です。中小企業では、これが貸借対照表に計上されていない(未計上の)ことがあり、その場合は帳簿に表れない簿外債務になります。公認会計士がM&A前に支援する場面でも、未計上の退職給付債務は未払残業代と並んで問題になりやすい例とされています。バリュエーションでは、時価純資産法で簿外負債として時価評価し、財務DDでは、借入金ではないが実質的に負債に近いデットライクアイテムとして、ネットデットとあわせて検証します。なお、中小企業退職金共済等の掛金で退職給付が完結する場合は、退職給付引当金は計上されません。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い退職給付債務・資産除去債務はデットライクアイテム。保険積立金・有価証券はキャッシュライクアイテム(入れ替えに注意)。
  • よく問われる点時価純資産法では、未計上の退職給付債務も簿外負債として時価評価する。保険の解約返戻金は簿外資産の例。
  • ひっかけに注意「中小企業退職金共済の掛金で退職給付が完結する場合も、退職給付引当金を別途計上しなければならない」は誤り。計上されない。

図解で確認:財務DD出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料(全体) p.5、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.112(当社にて要約)

退職所得

たいしょくしょとく財務・税務

退職により一時に受け取る退職手当等による所得。退職所得控除後の残額の2分の1が所得金額となる。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

退職所得は、退職によって一時に受け取る退職手当等による所得です。所得金額は、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を差し引き、その残額に2分の1を掛けて求めます。退職所得控除額は、勤続年数20年以下なら40万円×勤続年数(80万円未満なら80万円)、20年超なら800万円+70万円×(勤続年数−20年)で、1年未満の端数は1年に切り上げます。退職所得は他の所得と分離して課税され、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収で課税関係が原則として完結します。申告書を出さない場合は支払額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算します。M&Aでは、対価の一部を役員退職金として受け取ると、株式譲渡益の課税(20.315%)との比較で手取りが変わるため、組み合わせて検討されます。

例仮の数値で、役員勤続24年3か月は25年として、控除額は800万円+70万円×5年=1,150万円です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える控除額は20年以下が40万円×年数(最低80万円)、20年超が800万円+70万円×(年数−20年)。1年未満の端数は1年に切り上げる。
  • ひっかけに注意「退職所得は給与所得と合算して総合課税」は誤り。他の所得と分離して課税する。
  • よく問われる点受給に関する申告書を出せば源泉徴収で原則完結。出さない場合は支払額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算する。

別名・略称:退職所得控除図解で確認:税務基礎出典:所得税法、国税庁タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(当社にて要約)

対内直接投資等

たいないちょくせつとうしとう法務

外為法上の外国投資家が行う、非上場会社の株式や持分の取得などの投資のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

外国からの投資のうち、国の安全などに関わるものを確認するため、外為法は「対内直接投資等」を規制しています。外国投資家には、非居住者である個人、外国の法令に基づく法人等のほか、外国投資家が直接・間接に議決権の50%以上を持つ会社なども含まれます(26条1項)。外国投資家による非上場会社の株式・持分の取得は、原則として対内直接投資等に当たります(26条2項1号。外国投資家からの譲受けを除く)。上場会社の株式は、一定割合(1%を下らない政令で定める率)以上の取得が対象です。国の安全等の観点で審査が必要となるおそれがある業種等では、あらかじめ財務大臣及び事業所管大臣に届け出なければなりません(27条1項)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える届出受理の日から30日は実行できない。審査が必要なときは4か月まで延長、審議会が申し出れば5か月(27条)。
  • ひっかけに注意「国内の会社は外国投資家に当たらない」は誤り。外国投資家が議決権の50%以上を持つ会社は外国投資家になりうる。
  • よく問われる点事前届出が必要な業種かどうかを確かめずにクロージングするのは不適切。届出が必要なら、待機期間が過ぎるのを待つ。

別名・略称:対内直接投資の事前届出、外国投資家図解で確認:法務基礎出典:外国為替及び外国貿易法(外為法)、外国為替及び外国貿易法(外為法)(当社にて要約)

第二会社方式

だいにがいしゃほうしきM&A実務

債務超過企業が優良事業だけを別会社に切り出し、残った不採算部門を特別清算等で整理する方式。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

債務超過(負債が資産を上回る状態)の企業が事業を引き継ぐ場面で使われる手法です。事業譲渡や会社分割を活用して、収益性の高い優良な事業だけを別会社(第二会社)として切り出し、元の会社に残った不採算部門は特別清算等の手続で整理します。このように事業の一部だけを引き継ぐ形をとれますが、譲り渡し側の債権者の同意が必要とされている点に注意が必要です。中小M&Aガイドラインの参考資料1「中小M&Aの主な手法と特徴」で、主な手法に付随する対応として紹介されています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「第二会社方式では譲り渡し側の債権者の同意は不要」は誤り。債権者の同意が必要とされる。
  • よく問われる点切り出しに使うのは事業譲渡や会社分割。残った不採算部門は特別清算等の手続で整理する。

図解で確認:事前相談出典:参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.3(当社にて要約)

代表取締役

だいひょうとりしまりやく法務

株式会社を代表し、会社の業務を執行する取締役。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社が契約を結ぶとき、会社を代表して署名・押印するのが代表取締役です。取締役会設置会社では、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定し、解職します(会社法362条2項・3項)。ただし、代表取締役が何でも一人で決められるわけではなく、重要な財産の処分・譲受けや多額の借財などは取締役会の決議が、事業譲渡等は株主総会の特別決議が必要です。M&Aの基本合意や最終契約の締結では、知識・スキルマップが、合意する者がM&A実施上の適切な代表権を持っているか、組織的な決裁を経ているかを確認することを求めています。あわせて、合意の有効性を担保するため実印での押印を求めることが望ましく、実印で押印できない理由がある場合は何らかの問題が付随する可能性があるとしています。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか代表権と組織的な決裁の確認は「求められる」、実印での押印は「望ましい」。
  • ひっかけに注意「取締役会非設置会社では譲渡制限株式の譲渡承認を代表取締役が単独で決める」は誤り。定款に別段の定めがなければ株主総会の決議。
  • よく問われる点取締役会設置会社では代表取締役の選定・解職は取締役会が行う。重要な財産の処分等は取締役会で決議しなければならない。

別名・略称:代表権図解で確認:法務基礎出典:会社法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.77、会社法(当社にて要約)

棚卸資産

たなおろししさん財務・税務

商品・製品・半製品・仕掛品・原材料など、販売や製造のために保有する資産(在庫)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

貸借対照表の流動資産に載る、いわゆる在庫です。仕入れた商品や完成した製品のほか、作りかけの仕掛品や原材料も含みます。中小会計要領では原則として取得原価(仕入れたときや作ったときの金額)で計上し、評価基準は原価法か低価法(期末の時価が取得原価を下回るときに時価で評価する方法)とします。評価方法には個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法などがあります。時価が取得原価より著しく下がったときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上します。M&Aの財務DDでは、実態をつかみにくい資産として、架空計上などの粉飾がないかに注意して確かめます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「時価が下がれば必ず評価損を計上する」は誤り。著しく下落しても、回復の見込みがあると判断した場合は計上しない。
  • よく問われる点財務DDで粉飾等の不適切な会計処理に留意すべき「実態が把握しづらい資産」の例は、棚卸資産と債券等。
  • よく問われる点運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務。現金・預金はこの算式に入らない。

別名・略称:たな卸資産、在庫図解で確認:財務基礎出典:中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108(当社にて要約)

断定的判断の提供

だんていてきはんだんのていきょう倫理・行動規範

不確実なことを断定的に告げたり、確実だと誤認させるおそれのあることを告げたりする行為。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aが成立するかどうかや、その条件は不確実な事項です。中小M&A専門人材の倫理・行動規範は、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれがあることを告げる行為を行ってはならないとしています。中小M&Aガイドラインも、M&Aの成立の可能性やその条件について確定的な判断を下す広告・営業を禁止しています。仲介者がバリュエーションを示す場合は、確定的なものではない旨や、必要に応じて士業等専門家等のセカンド・オピニオンを求められる旨等を明示する必要があります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「必ず○億円で売れます」と断定する、成約を確実と誤認させるのは禁忌肢になりうる。
  • よく問われる点バリュエーションを示すときは、確定的なものではない旨、必要に応じセカンド・オピニオンを求められる旨等を明示する必要がある。

図解で確認:広告・営業出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.11、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.85(当社にて要約)

チェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)

ちぇんじ・おぶ・こんとろーるじょうこう法務

株主の異動や支配権の変動などがあると、契約の相手方に解除権などが生じると定める条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

対象会社が結んでいる賃貸借契約、取引基本契約、フランチャイズ契約などには、「会社の株主や支配権が変わったら、相手方は契約を解除できる」といった条項が入っていることがあります。これがチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項です。株式譲渡では、契約の当事者である対象会社そのものは変わらないため、原則として契約相手方の承諾なく契約が引き継がれます。しかしCOC条項があると、株主が変わることで相手方に解除権が生じたり、事前の同意や通知が必要になったりします。法務DDでは、COC条項があれば取引先からの同意取得の要否や売上への影響の大きさ等を確認し、譲り渡し側・譲り受け側と協議して対応を検討します。賃貸借契約にCOC条項がある場合は、契約継続のため事前に賃貸人等との協議が必要になることもあります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点COC条項は株式譲渡(支配権の変動)で問題になる。解除権が生じるのは契約の「相手方当事者」。
  • ひっかけに注意「明示的なCOC条項がなければ心配ない」は誤り。短期の更新条項があると実質的にCOC条項のように機能しうる。
  • 似た用語との違い事業譲渡は契約ごとに相手方の承諾が必要(民法539条の2)。株式譲渡は原則不要だがCOC条項は別。合併は包括承継で原則不要。

別名・略称:COC条項、チェンジ・オブ・コントロール条項図解で確認:法務DD出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.22、民法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.118(当社にて要約)

チャイニーズ・ウォール

ちゃいにーず・うぉーるM&A実務倫理・行動規範

金融機関の内部で、融資部門と仲介業務・FA業務を行う部門との間に設ける情報隔壁。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

金融機関は、融資を通じて貸付先の詳しい経営情報を持っています。同じ金融機関が融資先の譲り渡しについて仲介やFAを行うと、融資で得た情報の扱いが問題になるうえ、債権者として構造的に優越的な地位に立ちやすく、顧客の利益が損なわれるおそれがあります。そこで、融資部門と仲介業務・FA業務部門の間に情報隔壁(チャイニーズ・ウォール)を設けることが望ましいとされ、両部門間の情報共有の範囲・方法を含めて、適正な利益相反管理態勢を整備することが求められます。これは金融機関の内部(対内的)の情報管理で、外部との関係で行う厳格な情報管理(ファイア・ウォール)とは区別されます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い対内的(融資部門と仲介・FA部門の間)=チャイニーズ・ウォール。対外的(外部との関係)=ファイア・ウォール。
  • 義務か・望ましいかチャイニーズ・ウォールは設けることが「望ましい」。「法令上義務付けられている」は誤り。
  • よく問われる点融資先の譲り渡しで仲介・FAを行う場合は、債権者として構造的に優越的な地位に立ちやすい点に配慮する。

別名・略称:情報隔壁図解で確認:情報管理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.109(当社にて要約)

着手金

ちゃくしゅきんM&A実務

主に仲介契約・FA契約の締結時に支払う手数料のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者・FAの手数料(報酬)の一つです。手数料には一般的な法規制がなく、どのような料金体系にするかは各仲介者・FAに任されています。よく見られる形は、契約締結時の着手金、毎月の月額報酬、基本合意締結時等の中間金、クロージング時等の成功報酬の4つです。着手金は依頼の最初の段階で発生する手数料で、請求する業者としない業者に分かれます。また、後で成功報酬が発生したときに、その成功報酬に含める(成功報酬の内金とする)扱いにすることもあります。そのため、着手金が成功報酬に含まれるか、別払いかを確認することが必要です。仲介契約書サンプルでは、取引が成立しなくても返還しないが、解除時の清算の対象にはなり得る形が示されています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点着手金が成功報酬に含まれる(内金)か別途かで総額が変わる。別途なら成功報酬から差し引かず加算する。計算問題で頻出。
  • 似た用語との違い着手金は成功報酬に含める「こともある」。成功報酬に含まれることが「多い」のは中間金。
  • ひっかけに注意「着手金は不返還なので解除時の清算の対象に一切ならない」は誤り。サンプルでは不返還の定めに解除時の清算の場合を除く留保がある。

図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.39、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.63、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.5(当社にて要約)

仲介者

ちゅうかいしゃM&A実務倫理・行動規範

譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約(仲介契約)を結び、マッチング支援等を行う支援機関。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aを支援する業者の代表的な形の一つです。仲介者は譲り渡し側と譲り受け側の両方と仲介契約を結び、それに基づく仲介業務として、相手探しから成約までを支援します。株式譲渡の場合は、会社ではなく株主である経営者個人が契約の当事者になることもあります。双方から依頼を受けるため、手数料も双方から受け取るのが通常で、一方の利益だけを優先して扱うことはできません。そのかわり双方の意向を一元的に把握し、M&Aの成立という共通の目的に向けて調整できます。そのため、最も有利な条件よりも円滑な手続を重視する場合に向くとされます。金融機関や士業等専門家が同様の業務を行えば、仲介者としてガイドラインが適用されます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える登録制度に報告された2024年度の案件では約8割が仲介、約2割がFAの支援を受けた(譲渡側は仲介4,024件・FA916件)。
  • 似た用語との違い仲介者は双方から手数料を受け取り、一方の利益のみを優先できない。FAは一方から受け取り、依頼者に有利な条件での成立を目指す。
  • よく問われる点金融機関・士業等専門家・M&Aプラットフォーマーでも同様の業務を行えば仲介者としてガイドラインが適用。名称でなく業務の性質・内容で判断。

別名・略称:仲介契約、仲介業務図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.17、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.40、登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果(M&A支援機関登録制度)(当社にて要約)

仲介者が講ずべき最低限の措置

ちゅうかいしゃがこうずべきさいていげんのそち倫理・行動規範

仲介者が利益相反のリスクを最小限にするため、最低限講じる必要があるとされる3つの措置。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、仲介者に、利益相反のリスクを最小限とするための3つの措置を求めています。①両当事者と仲介契約を締結する仲介者であること(両当事者から手数料を受領する場合はその旨)を、両当事者に伝えること。②バリュエーション(企業価値の評価)やDDなど、一方当事者の意向が反映されやすい工程の結論を決定せず、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝えること。③仲介契約の締結に当たり、両当事者間で利益の対立が想定される事項を各当事者に明示的に説明し、その後も利益対立に関わる情報(一方にのみ有利・不利な情報を含む)を認識したら、各当事者に適時に明示的に開示することです。倫理・行動規範では、①について双方の顧客に書面で開示し、承諾を取得することを求めています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「利益対立事項は成約後にまとめて説明」「手数料を多く払う当事者にだけ伝えれば足りる」は誤り。契約締結時に両当事者へ。
  • ひっかけに注意「契約締結時に説明すれば、後で認識した利益対立情報は開示不要」は誤り。認識したら適時に明示的に開示する。
  • よく問われる点一方にのみ不利な情報を成約まで開示しない、双方から手数料を受け取ることを一方に隠すのは禁忌肢になりうる。

別名・略称:利益相反の3つの措置図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.11(当社にて要約)

仲介者の禁止行為(5類型)

ちゅうかいしゃのきんしこういごるいけい法務倫理・行動規範

中小M&Aガイドラインが、仲介者が行ってはならないとする5つの利益相反行為のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者は両当事者に対して中立・公平でなければならず、不当に一方の利益・不利益となる利益相反行為をしてはなりません。中小M&Aガイドライン第3版は、少なくとも次の5つを行ってはならないとしています。①譲り受け側から追加で手数料を取り、その譲り受け側に便宜を図る(ニーズに反したマッチングの優先、不当に低額な譲渡価額への誘導など)。②リピーターとなる依頼者を優遇し便宜を図る。③希望額より高く(低く)成立したときに、正規の手数料とは別に希望額との差分の一定割合を報酬として求める。④一方から伝えるよう求められた事項を他方に伝えない、又は告げていない事項を偽って伝える。⑤一方にとってのみ有利又は不利な情報を認識したのに、その当事者に伝えず秘匿する。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいかこれらを行わない旨を、仲介契約書で仲介者の義務として定め「なければならない」。
  • よく問われる点譲り受け側の追加支払は、本来は譲り渡し側に支払われる譲渡額に含まれ得るものと考えられている。
  • ひっかけに注意買い手から追加報酬を受け取り売り手を安値に誘導する、希望額との差額の一部を報酬に上乗せするなどは、典型的な禁忌肢。

別名・略称:利益相反行為の禁止、リピーターの優遇図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.100、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.71(当社にて要約)

中間金

ちゅうかんきんM&A実務

基本合意の締結時等、案件が完了する前の一定の時点に支払う手数料のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

「マイルストーンフィー」や「中間報酬」とも呼ばれる、仲介者・FAの手数料の一つです。案件が完了する前の節目、例えば基本合意の締結時等に、その時点までの成果に対して発生します。中間金は、後で成功報酬が発生したときに、その成功報酬に含まれる(成功報酬の内金となる)とすることが多いのが特徴です。仲介契約書サンプルでは、中間金は基本合意後に支払う形が例示され、取引が成立しなくても返還しない(解除時の清算を除く)とされています。手数料の計算問題では、中間金が成功報酬の内金なのか、別払いなのかで支払総額が変わる点が問われます。

例中間金が内金なら、成功報酬の額から支払済みの中間金を差し引いて残りを支払います。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点中間金は成功報酬に含まれる(内金)とすることが「多い」。内金なら支払総額は成功報酬の額のままで、成功報酬から差し引いて清算する。
  • 似た用語との違いマイルストーンフィー=中間金、リテーナーフィー=月額報酬。
  • 数字を覚える支払時期の典型:着手金=契約締結時、中間金=基本合意締結時等、成功報酬=クロージング時等。

別名・略称:マイルストーンフィー、中間報酬図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.39、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.63、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.5(当社にて要約)

忠実義務

ちゅうじつぎむ法務倫理・行動規範

相手のために忠実に職務を行い、相手の利益を犠牲にして自分や第三者の利益を図らない義務。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

忠実義務は、会社法と中小M&Aガイドラインの両方に出てくる言葉です。会社法では、取締役は法令・定款・株主総会の決議を守り、会社のため忠実にその職務を行わなければならないとされています(355条)。中小M&Aガイドラインでは、M&A専門業者(仲介者・FA)は依頼者との契約に基づき、善管注意義務とともに、依頼者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ってはならない忠実義務を負うとしています。ガイドラインは忠実義務を善管注意義務に含めて扱っています。さらに、業務の専門性、情報の非対称性、仲介の構造的な利益相反のリスクから、契約上の義務に限られない職業倫理の遵守が求められています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点ガイドライン上の忠実義務の根拠は依頼者との契約。ガイドラインは忠実義務を善管注意義務に含めて扱う。
  • ひっかけに注意依頼者の利益を犠牲にして自社や第三者の利益を図る行為は、忠実義務違反の典型で禁忌肢になりうる。

図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:会社法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.79、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.80(当社にて要約)

中小M&A

ちゅうしょうえむあんどえーM&A実務

後継者不在の中小企業の事業を、M&Aの手法により社外の第三者である後継者が引き継ぐこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインが対象とする場面を示す言葉です。後継者がいない中小企業を「譲り渡し側」、その事業を引き継ぐ社外の第三者を「譲り受け側」と呼びます。ガイドラインでいう譲り受け側には、まだ決まっていない譲り受け側の候補者も含むことがあります。経営者の親族が継ぐ「親族内承継」や、役員・従業員が継ぐ「従業員承継」は、事業承継ではあっても中小M&Aには含めません。また、ガイドラインは代表的な会社形態である株式会社を念頭に、譲り渡し側が上場株式や店頭登録株式を発行していない場合を前提にしています。

例後継者のいない町工場の株式を、それまで関係のなかった同業他社が買い取る場合が中小M&Aに当たります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「従業員承継(役員・従業員による承継)も中小M&Aに含まれる」は誤り。親族内承継と従業員承継は中小M&Aに含めない。
  • よく問われる点ガイドラインは株式会社を念頭に、譲り渡し側が上場株式・店頭登録株式を発行していない場合を前提とする。「譲り受け側」には候補者も含むことがある。
  • 似た用語との違い「事業引継ぎ」は中小M&Aと従業員承継を併せた総称。中小M&Aだけでは従業員承継を含まない。

図解で確認:M&A実務の基礎出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.25(当社にて要約)

中小M&Aガイドライン

ちゅうしょうえむあんどえーがいどらいんM&A実務

中小M&Aの当事者となる中小企業と支援機関の手引き・行動指針を示すため、中小企業庁が策定したガイドライン。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

後継者がいない中小企業にとってM&Aは有力な選択肢ですが、経営者の多くはM&Aの知識や経験がありません。そこで中小企業庁は令和2年3月、後継者不在の中小企業の中小M&Aについて、当事者となる中小企業と支援機関の手引き・行動指針を示す中小M&Aガイドラインを策定しました。平成27年3月の「事業引継ぎガイドライン」を全面改訂したものです。その後、M&A支援機関登録制度で、登録時にガイドラインの遵守宣言が求められるようになりました。第2版では、レーマン方式・最低手数料の留意点、重要事項の書面交付と説明、直接交渉の制限条項の留意点などが盛り込まれました。第3版では、相手方の手数料の説明、営業・広告の規律、利益相反の具体化、経営者保証や不適切な譲り受け側への対応が追記されました。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える初版は「令和2年3月」、第2版は「令和5年9月」、第3版は「令和6年8月」。前身の事業引継ぎガイドラインは「平成27年3月」。
  • 似た用語との違いレーマン方式・重要事項の書面交付・直接交渉の制限は「第2版」。相手方の手数料、営業・広告の規律、利益相反の具体化、経営者保証・不適切な譲り受け側は「第3版」。
  • よく問われる点M&A支援機関登録制度(令和3年8月創設)では、登録時にガイドラインの遵守宣言が求められる。

図解で確認:中小企業政策出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.1、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.10、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.13(当社にて要約)

中小M&A推進計画

ちゅうしょうえむあんどえーすいしんけいかくM&A実務

中小企業庁が令和3年4月に、今後5年間に官民で取り組む中小M&Aの推進策を取りまとめた計画。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aを進めるうえでは、中小企業がM&A支援機関を信頼して相談できることが欠かせません。そこで中小企業庁は令和3年4月28日、今後5年間の官民の取組を「中小M&A推進計画」として取りまとめました。この中で、M&A支援機関に対する信頼感の醸成という課題への対応として、①事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)で、登録を受けた支援機関の支援に係る費用だけを補助対象とする登録制度の創設、②登録支援機関の支援をめぐる問題等についての情報提供受付窓口の創設、が打ち出されました。これを受けて、同年8月にM&A支援機関登録制度が創設されました。また、計画を踏まえて同年10月には、M&A仲介等の自主規制団体として一般社団法人M&A仲介協会が設立されています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える取りまとめは「令和3年4月」で、「今後5年間」の官民の取組。登録制度の創設は同年「8月」、M&A仲介協会の設立は同年「10月」。
  • よく問われる点打ち出した2つの対応は、登録制度の創設(補助金の対象を登録機関の支援に限る)と、情報提供受付窓口の創設。

図解で確認:中小企業政策出典:M&A支援機関登録制度公募要領(令和7年度、令和7年5月30日)抄録:p1,3-11,35-36、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.83(当社にて要約)

中小M&A専門人材

ちゅうしょうえむあんどえーせんもんじんざいM&A実務倫理・行動規範

スキルマップが、中小M&Aの支援の担い手として想定し、定義している人材。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aの支援に必要な知識・スキルや倫理を整理したスキルマップは、その担い手を中小M&A専門人材と呼び、「M&A取引の円滑化・適正化、顧客利益の最大化に向けた支援を通じて、中小企業の持続性・競争力向上に貢献し、日本の経済発展・生産性向上に寄与する」人材と定義しています。この定義の出所は、令和6年度の中小企業活性化・事業承継総合支援事業(中小M&Aに係る資格に関する調査事業)の仕様書です。目の前の取引を円滑・適正に進めることにとどまらず、顧客の利益の最大化を通じて、中小企業の持続性・競争力と日本経済への貢献まで視野に入れた人材像です。スキルマップは、この人材が担う使命と、守るべき倫理・行動規範もあわせて示しています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「定義に生産性向上への寄与は掲げられていない」は誤り。「日本の経済発展・生産性向上に寄与する」人材と定義されている。
  • よく問われる点定義の構成要素は、取引の円滑化・適正化、顧客利益の最大化、中小企業の持続性・競争力向上、経済発展・生産性向上への寄与。

別名・略称:専門人材図解で確認:使命出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.16、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.3(当社にて要約)

中小企業活性化協議会

ちゅうしょうきぎょうかっせいかきょうぎかいM&A実務

収益力改善、事業再生、廃業・再チャレンジの課題を支援するため、国が47都道府県に設置する公正中立な機関。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

業績が悪化した中小企業が、収益力の改善や事業の再生、あるいは廃業と再出発(再チャレンジ)を考えるときの公的な相談先です。国が47都道府県に設置する公正中立な機関で、地方銀行出身者や公認会計士等が統括責任者(PM)・補佐(SM)として配置されています。まず第一次対応(窓口相談)で課題を抽出して助言し、必要に応じて第二次対応(収益力改善支援、再生計画策定支援、廃業・再チャレンジ支援)に進むか、よろず支援拠点等を紹介します。協議会での私的整理は、金融機関等の債権者以外に窮状を知られにくく、風評による信用低下を避けやすいとされます。2003年の発足当初は、主に債権放棄等の抜本再生に向けた金融調整を担っていました。再生M&Aでは、事業承継・引継ぎ支援センターとの連携が進んでいます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点第一次対応(窓口相談)までは無料。第二次対応で外部専門家に依頼する場合は、活動費等の一部を負担する。
  • 数字を覚える令和5年4月1日から、経営者保証GLの要件充足の確認は活性化協議会が行う。センターの経営者保証コーディネーター業務は令和5年3月末で廃止。
  • 数字を覚える2024年度の橋渡し件数は、センター→協議会230件、協議会→センター452件。

別名・略称:活性化協議会図解で確認:中小企業政策出典:中小企業活性化協議会による支援(中小機構)、事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.38(当社にて要約)

中小企業基本法

ちゅうしょうきぎょうきほんほうM&A実務

中小企業施策の基本理念・基本方針等を定め、国と地方公共団体の責務等を明らかにする法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

国や自治体が中小企業を支援するときの、おおもとの考え方を定めた法律です(昭和38年法律第154号)。中小企業に関する施策の基本理念・基本方針などを定め、国と地方公共団体の責務等を明らかにすることで、施策を総合的に進め、国民経済の健全な発展と国民生活の向上を図ることを目的としています。第2条では、施策の対象となる「中小企業者」と「小規模企業者」の範囲を、業種ごとの資本金・従業員数で定めています。ただし、この定義は国の施策の対象とする中小企業者の「おおむね」の範囲を示したもので、具体的な範囲は施策ごとに定めます。そのため、経営承継円滑化法などの個別法や補助金の公募要領では、政令で業種を追加するなど独自の範囲が置かれることがあります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本法の数値基準が全ての中小企業施策に一律に適用される」は誤り。定義は「おおむね」の範囲で、具体的な範囲は施策ごとに定める。
  • よく問われる点経営承継円滑化法では、政令でゴム製品製造業・ソフトウェア業等・旅館業の範囲を拡大している(補助金の公募要領にも同様の特例がある)。
  • 似た用語との違い中小企業基本法は「成長発展」を掲げるのに対し、小規模企業振興基本法は事業の「持続的な発展」を基本原則とする。

図解で確認:中小企業政策出典:中小企業基本法、中小企業基本法、小規模企業振興基本法(当社にて要約)

中小企業者

ちゅうしょうきぎょうしゃM&A実務

中小企業基本法で、業種ごとに定める資本金又は常時使用する従業員数の基準のいずれかを満たす会社・個人。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

国の中小企業施策の対象となる事業者の範囲を示す言葉で、中小企業基本法第2条第1項が業種ごとに定めています。会社は資本金(出資の総額)か常時使用する従業員数のどちらか一方を満たせばよく、個人は従業員数で判定します。製造業・建設業・運輸業その他の業種は、資本金3億円以下又は従業員300人以下です。卸売業は1億円以下又は100人以下、サービス業は5千万円以下又は100人以下、小売業は5千万円以下又は50人以下です。(例:資本金2億円・従業員80人の卸売業者は、資本金は基準を超えますが、従業員が100人以下なので該当します。)なお、この定義は施策の対象の「おおむね」の範囲で、個別法や補助金ごとに異なる範囲が定められることがあります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「資本金3億円以下『かつ』従業員300人以下」は誤り。いずれか一方を満たせば足りる。資本金基準は会社だけ、従業員基準は会社と個人に適用。
  • 数字を覚える製造業その他3億円・300人、卸売業1億円・100人、サービス業5千万円・100人、小売業5千万円・50人。
  • 似た用語との違い卸売業とサービス業は従業員基準が同じ100人だが、資本金基準は1億円と5千万円。小売業(50人)とサービス業(100人)の入れ替えにも注意。

図解で確認:中小企業政策出典:中小企業基本法(当社にて要約)

中小企業診断士

ちゅうしょうきぎょうしんだんしM&A実務

中小企業支援法に基づき経済産業大臣が登録する、中小企業の経営診断・助言の専門家。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業診断士は、中小企業支援法11条に定める中小企業の経営診断の業務に従事する者として経済産業大臣が登録した専門家で、中小企業の成長戦略の策定や実行のアドバイスを主な業務とします。M&A専門業者・金融機関・商工団体に所属する者や、ほかの士業資格を兼ねる者も多くいます。中小M&Aでは、企業の「健康診断」ツールであるローカルベンチマークを使った見える化や磨き上げ、商流や収益構造から事業の将来性やシナジーを分析するビジネスDD、M&A後の生産性向上を支える経営デザインシートの活用など、幅広い工程での支援が期待されます。企業概要書の作成を支援する場合は、譲り渡し側経営者と相談のうえ、正確な作成に留意する必要があります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いビジネスDDの主な実施機関は中小企業診断士・コンサル等。法務DDは弁護士、会計・税務DDは会計士・税理士等。
  • 似た用語との違いローカルベンチマーク=企業の健康診断(見える化)、経営デザインシート=将来像の構想(ポストM&Aの生産性向上)。
  • よく問われる点根拠は中小企業支援法11条で、登録するのは経済産業大臣。

図解で確認:中小M&A市場動向出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.121、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.122、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.84(当社にて要約)

中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)

ちゅうしょうきぎょうのかいけいにかんするきほんようりょう財務・税務

中小企業が会社法上の計算書類等を作るときに参照する、簡便な会計処理や注記を示したもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

上場会社などが従う詳細な会計基準は、中小企業には負担が大きすぎます。そこで平成24年に中小企業の会計に関する検討会が策定したのが中小会計要領です。「中小企業の会計に関する指針」(中小指針)より簡便な会計処理が適当な中小企業を対象とし、経営者が理解しやすいこと、利害関係者への情報提供に役立つこと、会計と税制の調和を図ること、作成の負担を最小限にすることをねらいとします。会社計算規則に準拠し、国際会計基準の影響を受けないものとされます。利用は法令で強制されないため、「利用が想定される会社」という表現が使われます。M&Aでは、譲り受け側に出す財務書類がこうした基準に沿っていないと信頼できないとみなされ、不利な条件での交渉や不成立につながり得るため、事前に適正な財務書類を作ることが望まれます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点利用の想定から除かれるのは、金融商品取引法の規制対象会社と会計監査人設置会社。特例有限会社・合名・合資・合同会社も利用できる。
  • ひっかけに注意「国際会計基準の改正に合わせて随時内容を取り込む」は誤り。要領は国際会計基準の影響を受けないものとされる。
  • よく問われる点選んだ会計処理は毎期継続して適用する。変更には合理的な理由が必要で、変更した旨・理由・影響を注記する。

別名・略称:中小会計要領図解で確認:財務基礎出典:中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.111(当社にて要約)

中小PMIガイドライン

ちゅうしょうぴーえむあいがいどらいんM&A実務

プレPMIを含むPMIプロセス全般について、中小企業のPMIの「型」を示した中小企業庁のガイドライン。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aは成立して終わりではなく、その後の経営統合(PMI)がうまくいくかどうかで、期待した効果を得られるかが決まります。そこで中小企業庁は令和4年3月に中小PMIガイドラインを策定・公表し、中小企業がPMIに取り組むための「型」を示しました。対象はクロージング後の取組だけでなく、M&A成立前の取組(プレPMI)も含めたPMIプロセス全般です。譲り受け側が取り組むべき内容を、会社の規模等に応じて「基礎編」と「発展編」に分けて紹介しており、PMIの成功・失敗事例も盛り込まれています。内容を動画で解説する「中小PMIガイドライン講座」も公表されています。令和6年3月には、このガイドラインのステップを踏まえて取り組むためのPMI実践ツールが策定されました。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える策定・公表は「令和4年3月」(中小企業庁)。PMI実践ツールの「令和6年3月」と混同しない。
  • よく問われる点取組を会社の規模等に応じて「基礎編」と「発展編」に分けて紹介している。M&A成立前の「プレPMI」も対象に含む。

別名・略称:プレPMI図解で確認:クロージング後(PMI)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.21、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録(当社にて要約)

中小法人等

ちゅうしょうほうじんとう財務・税務

資本金1億円以下の普通法人など、法人税の中小企業向け特例を使える法人。大法人の100%子法人等は除く。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人税には、中小企業の負担を軽くするための特例がいくつもあります。年800万円以下の所得に対する軽減税率、繰越欠損金の全額控除、貸倒引当金、交際費等の定額控除限度額、欠損金の繰戻還付などです。これらを使えるのが、期末の資本金が1億円以下の普通法人などの中小法人等です。ただし、資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の大法人(相互会社等を含む)による完全支配関係がある法人、つまり大法人の100%子会社等は対象から外れます。このため、中小企業が大企業に全株式を譲渡して100%子会社になるM&Aでは、譲渡後にこれらの特例が使えなくなり、税負担が増える可能性がある点に注意が必要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「資本金1億円以下なら常に中小法人の特例が使える」は誤り。資本金5億円以上の大法人の100%子法人等は使えない。
  • 数字を覚える大法人は資本金5億円以上。その100%子法人になると、繰越欠損金の控除限度は所得の50%に制限され、交際費等の定額控除限度額も使えない。
  • 数字を覚える軽減税率は年800万円以下の部分。本法は19%、基準日時点は租税特別措置法により15%(所得が年10億円超の事業年度は17%)。

図解で確認:財務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について、法人税法、法人税法(当社にて要約)

中小法人の軽減税率

ちゅうしょうほうじんのけいげんぜいりつ財務・税務

資本金1億円以下の普通法人等の所得のうち、年800万円以下の部分に適用される低い法人税率。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業の税負担を軽くするための制度です。普通法人の法人税の基本税率は23.2%ですが、期末資本金1億円以下の普通法人等については、所得のうち年800万円以下の部分に低い税率が適用されます。法人税法本則の税率は19%で、租税特別措置法により、令和9年3月31日までに開始する事業年度は15%(所得が年10億円を超える事業年度は17%)とされています。ただし、資本金5億円以上の大法人に100%支配されている子法人などは、資本金1億円以下でも対象外です。M&Aで大企業グループの100%子会社になると、軽減税率のほか、繰越欠損金の控除限度など中小企業向けの特例も使えなくなる点に注意が必要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「資本金1億円以下なら常に軽減税率を使える」は誤り。資本金5億円以上の大法人の100%子法人等は対象外。
  • 数字を覚える本則19%、租特で15%(所得年10億円超の事業年度は17%)。対象は所得のうち年800万円以下の部分だけ。
  • よく問われる点大法人の100%子法人は、繰越欠損金の控除限度も所得の50%に制限される。

別名・略称:法人税の軽減税率、大法人の100%子法人図解で確認:税務基礎出典:法人税法、租税特別措置法、国税庁タックスアンサー No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について(当社にて要約)

中途解約

ちゅうとかいやくM&A実務法務

契約期間が満了する前に、契約を途中で終わらせること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介契約・FA契約には契約期間が定められますが、支援に不満がある場合などに、依頼者が期間の途中で契約を終わらせたいこともあります。特に問題になるのが、ほかの仲介者・FAとの契約を禁じる専任条項がある場合です。専任条項に長期間拘束されると、依頼者が適時にほかの仲介者・FAに依頼できなくなるおそれがあります。そこで中小M&Aガイドラインは、専任条項を設ける場合の契約期間を最長でも6か月〜1年以内を目安として定めるべきとし、加えて、依頼者が任意の時点で中途解約できることを明記する条項等を設けることが望ましいとしています。契約の解除・中途解約に関する事項は、契約締結前に依頼者に説明する重要事項の一つです。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか任意の時点で中途解約できる条項は設けることが「望ましい」。専任条項がある場合の契約期間は最長6か月〜1年以内を目安と定める「べき」。
  • 数字を覚える専任条項がある場合の契約期間の目安は6か月〜1年以内、テール期間の目安は2〜3年以内(入れ替えに注意)。
  • よく問われる点「契約の解除・中途解約に関する事項」は、契約締結前に説明する重要事項の項目の一つ。

図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.104、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.87、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.40(当社にて要約)

中立性・公平性

ちゅうりつせい・こうへいせい倫理・行動規範

仲介者が一方の利益だけを図らず、中立・公平な立場で譲り渡し側・譲り受け側双方の利益の実現を図ること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者は譲り渡し側と譲り受け側の双方から依頼を受けるため、どちらか一方に肩入れしないことが求められます。知識・スキルマップは、仲介者は一方当事者の利益のみを図ることなく、中立性・公平性をもって双方の利益の実現を図ることが求められるとしています。そのため、FA(一方当事者だけを支援するアドバイザー)と異なり、仲介者は一方当事者に有利となる交渉の支援を行うことはできません。一方の利益を優先するような調整はすべきでなく、中立性の関係上、依頼者の意向に沿った対応ができなかった場合は、その説明が必要です。倫理・行動規範も、中立的な立ち位置の確保など、適切な利益相反管理を行わなければならないとしています。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いFAは依頼者に有利となる交渉の支援ができるが、仲介者は一方当事者に有利となる交渉の支援はできない。
  • よく問われる点中立性の関係上、依頼者の意向に沿った対応ができなかった場合は、その旨を説明する必要がある。
  • ひっかけに注意報酬の多い側など一方当事者に有利となるよう交渉・調整するのは禁忌肢になりうる。

図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.70、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.74、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99(当社にて要約)

調整後純資産

ちょうせいごじゅんしさん財務・税務

帳簿上の純資産に、含み益・含み損や簿外債務などを反映して求め直した純資産。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

貸借対照表の純資産は帳簿価額で計算されているため、資産の時価が帳簿価額と違っていたり、帳簿に載っていない債務があったりすると、会社の実態を表しません。そこで財務DDでは、帳簿上の純資産(総資産−総負債)を出発点に、含み益を加え、含み損と簿外債務などを差し引いて調整後純資産を求めます。含み損益は税効果を考慮して検証します。純資産・調整後純資産は企業の財務健全性を確認する指標で、ネットデットとともに、その分析結果はバリュエーションだけでなく、M&Aスキーム、最終契約書、買収後のファイナンス、会計上の影響などの検討材料になります。

例仮の数値で、帳簿上の純資産80、土地の含み益30、含み損10、未払残業代などの簿外債務15なら、調整後純資産は85です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点調整後純資産=純資産+含み益−含み損−簿外債務等。含み損を加算したり、簿外債務を差し引かない計算は誤り。
  • よく問われる点含み損益は税効果を考慮して検証する。
  • 似た用語との違い帳簿価額のままの純資産を株式価値とするのが簿価純資産法。調整後純資産は財務DDで実態を反映させた純資産。

図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.1(当社にて要約)

帳簿価額(簿価)

ちょうぼかがく財務・税務

会計帳簿や貸借対照表に計上されている資産・負債の金額。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

資産は原則として取得したときの金額などで帳簿に載せるため、時間がたつと、帳簿価額(簿価)と、評価時点での実際の価値である時価がずれることがあります。M&Aのバリュエーション(企業価値評価)では、貸借対照表の純資産をそのまま株式価値とみる簿価純資産法があります。関係者がイメージしやすく、費用をかけずに算定できる一方、簿価と時価が大きくずれている場合や、帳簿に載っていない簿外資産・負債がある場合は、本来の株式価値を表さないことがあります。また、親子会社間の合併など共通支配下の取引では、移す資産・負債を時価で評価し直さず、移転直前の適正な帳簿価額で引き継ぎます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い簿価純資産法は簿価のまま、時価純資産法は資産・負債を時価評価し直す。修正簿価純資産法は不動産・有価証券など一部だけを時価評価する。
  • よく問われる点共通支配下の取引(グループ内の合併等)では時価評価せず、適正な帳簿価額で引き継ぐ。

別名・略称:簿価、帳簿金額図解で確認:財務基礎出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料(全体) p.4、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.2(当社にて要約)

直接交渉の制限

ちょくせつこうしょうのせいげんM&A実務倫理・行動規範

依頼者が、仲介者・FAを介さずに候補先と直接交渉や接触をすることを禁じる条項のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介契約・FA契約や秘密保持契約に置かれることがある条項です。交渉の窓口を仲介者・FAに一本化することで交渉が円滑に進む点に、一定の合理性があるとされます。一方で、範囲が広すぎると依頼者の事業や自由な判断を妨げます。そこでガイドラインは3つの限定を示しています。①制限される候補先は、基本的に仲介者・FAが関与・接触し紹介した候補先に限る(依頼者が自ら発見した候補先と直接交渉しないことを明示的に了解している場合を除く)。②制限される交渉は、依頼者と候補先のM&Aに関する目的のものに限る。③有効期間は、基本的に仲介契約・FA契約が終了するまでに限る。契約終了後の手数料逃れには、テール条項で対応し得るとされます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「手数料逃れ防止のため直接交渉の制限は契約終了後も2〜3年有効とすべき」は誤り。有効期間は契約終了までに限定すべき。契約終了後はテール条項の役割。
  • よく問われる点3つの限定:紹介した候補先のみ/M&Aに関する目的のみ(通常の事業取引の交渉は禁じない)/契約終了まで。
  • よく問われる点秘密保持契約など仲介契約・FA契約とは別の契約にも同様の条項が置かれていることがあるため留意する。

別名・略称:直接交渉の制限に関する条項図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.40、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.104(当社にて要約)

直接法・間接法

ちょくせつほう・かんせつほう財務・税務

営業活動によるキャッシュ・フローの2つの表示方法。直接法は取引ごとの総額、間接法は利益からの調整で示す。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

キャッシュ・フロー計算書のうち、営業活動によるキャッシュ・フローは、直接法か間接法のどちらかで表示します。直接法は、売上による収入や仕入による支出など、主要な取引ごとにお金の出入りを総額で並べる方法です。間接法は、税金等調整前当期純利益(税金を引く前の利益)を出発点に、お金の動きとずれている項目を足し引きして求める方法です。調整するのは、減価償却費のように費用でも支出を伴わない項目(非資金損益項目)と、売上債権・棚卸資産・仕入債務など営業活動に関係する資産・負債の増減などです。資産が増えればその分お金は減ったので引き、負債が増えればその分お金が手元に残ったので足す、と考えます。なお、投資活動・財務活動は主要な取引ごとに総額で表示しなければなりません。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点間接法では、減価償却費は加算、売上債権の増加は減算、棚卸資産の減少と仕入債務の増加は加算する。
  • ひっかけに注意「投資活動・財務活動は純額表示が原則」は誤り。主要な取引ごとに総額で表示しなければならない。
  • よく問われる点法人税等の支払額は営業活動の区分に入るため、間接法で営業キャッシュ・フローを計算するときも差し引く。

別名・略称:直接法、間接法図解で確認:財務基礎出典:連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準(企業会計審議会、平成10年3月13日)(当社にて要約)

賃貸借契約

ちんたいしゃくけいやく法務

当事者の一方が物を使用・収益させ、相手方がその対価として賃料を支払う契約。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

店舗・事務所・工場の建物や土地を借りて事業をしている中小企業は多く、M&Aでは、その賃貸借契約を譲り受け後も続けられるかが重要な確認事項になります。民法612条により、賃借人は賃貸人の承諾がなければ賃借権を譲渡したり転貸(又貸し)したりできず、無断で第三者に使わせると賃貸人は契約を解除できます。そのため、事業譲渡で店舗の賃借権を譲り受け側に移すには、賃貸人の承諾が必要です。一方、株式譲渡では賃借人である会社自体は変わりません。ただし、契約にチェンジ・オブ・コントロール条項(株主の変更などを契機に通知や承諾を求める条項)がある場合は、契約を続けるために、事前に賃貸人等との協議・交渉が必要になることがあります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「事業譲渡で店舗の賃借権を移すのに賃貸人の承諾は不要」は誤り。賃借権の譲渡には賃貸人の承諾が必要(民法612条1項)。
  • 似た用語との違い株式譲渡では賃借人の会社は変わらないが、COC条項があれば事前に賃貸人等との協議・交渉が必要になりうる。
  • よく問われる点建物の賃貸借は、登記がなくても引渡しがあれば、その後に建物の物権を取得した者に対抗できる(借地借家法31条)。

別名・略称:賃借権図解で確認:法務基礎出典:民法、参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.1、借地借家法(当社にて要約)

追徴課税

ついちょうかぜい財務・税務

過去の申告の誤りや申告漏れが後から分かり、追加で課される税金。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

税金の申告に誤りや漏れがあると、後で税務調査などにより判明したときに、不足分の税金が追加で課されます。期限までに申告しなかった場合や少なく申告した場合には、本来の税金のほか加算税や延滞税がかかることもあります。M&Aで特に問題になるのは、株式譲渡のように会社そのものを引き継ぐ場合です。クロージング後に過去の申告漏れや記載ミスが見つかると、譲り受け側が納税を負担するおそれがあり、追徴課税が多額だと経営不振に陥る可能性もあります。そのため、税務DDで過年度の申告に潜む税務リスクを把握し、最終契約では税務申告等の適正についての表明保証などで手当てします。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「追徴課税の負担は法律上当然に譲り渡し側株主に帰属するので、契約で定める必要はない」は誤り。譲り受け側が負担するおそれがある。
  • よく問われる点税務DDでは、過去の税務調査の結果・指導事項・議論となった点を分析し、過年度の申告に潜む税務リスクを把握する。

図解で確認:税務DD出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.119、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.112、国税庁タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税(当社にて要約)

低額譲受け(みなし贈与)

ていがくゆずりうけ財務・税務

著しく低い価額で財産を譲り受けたとき、時価との差額を贈与により取得したものとみなす扱い。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

親族内承継などで、後継者が先代経営者から非上場株式を額面など時価よりかなり低い価格で買い取ることがあります。このとき相続税法7条により、著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合は、その対価と時価との差額を、譲渡した人から贈与により取得したものとみなします(みなし贈与)。その結果、買い取った側(譲受人)に贈与税が課されることがあります。ここでいう時価は、相続税法上の評価、つまり財産評価基本通達などによる評価額で判断します。非上場株式であれば、取得する株主の区分などに応じて、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式などで評価した価額です。ただし、資力を喪失して債務の弁済が困難な人が、扶養義務者から弁済に充てるために譲り受けた場合は、弁済が困難な部分はみなし贈与になりません。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点みなし贈与として贈与税が課されるのは、譲り受けた側(譲受人)。時価は財産評価基本通達等による評価額で判断する。
  • ひっかけに注意「著しく低い価額の譲受けは例外なくみなし贈与」は誤り。資力喪失で弁済困難な人が扶養義務者から弁済に充てるため譲り受けた場合、弁済困難な部分は除かれる。

別名・略称:みなし贈与図解で確認:税務基礎出典:相続税法、国税庁タックスアンサー No.4638 取引相場のない株式の評価、財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)(当社にて要約)

定款

ていかん法務

会社の目的・商号・組織・運営などについて定めた、会社の根本となる規則。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社法には、「定款で定めた場合に限り」効力を持つ規定や、定款で別の定めをすることを認める規定が多くあり、M&Aではまず定款を確認することが欠かせません。例えば、株式の譲渡に会社の承認を要するという譲渡制限(107条)、種類株式の内容(108条)、相続人等に対する売渡請求(174条)、簡易手続の基準の引下げなどは、定款の定めによります。定款の変更は株主総会の特別決議で行い、全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更には、より厳しい特殊決議が必要です。法務DDでは、定款・登記簿・株主名簿・議事録を照らし合わせ、株式の譲渡承認や株主総会決議の手続に瑕疵(手続上の欠陥)がないかを確認します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「譲渡制限は株式の譲渡を禁止する定め」は誤り。譲渡による取得に会社の承認を要するという定めである。
  • 似た用語との違い定款変更は原則として特別決議。全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更は特殊決議(頭数の半数以上かつ議決権の3分の2以上)。
  • よく問われる点中小企業では過去の株式移動の承認議事録がない例が多く、瑕疵の治癒を前提条件やクロージング後の誓約事項にすることがある。

別名・略称:定款変更図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法、会社法(当社にて要約)

定期同額給与

ていきどうがくきゅうよ財務・税務

1か月以下の一定期間ごとに支給され、その事業年度の各支給時期の支給額が同額である役員給与。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社が役員に払う給与は利益の調整に使われやすいため、法人税では損金に算入できるものが限られています。損金になるのは、定期同額給与、事前確定届出給与(所定の時期に確定額を支給する定めに基づくもの)、業績連動給与(同族会社では原則使えない)のいずれかに当たるものです。定期同額給与は、毎月など1か月以下の一定期間ごとに支給し、その事業年度の各支給時期の支給額が同じである給与をいいます。これらに当たる場合でも、不相当に高額な部分は損金に算入されません。M&A後に役員報酬を期中で増減すると定期同額給与に当たらなくなり得るため注意が必要です。また税務DD(税務面の調査)では、役員給与が損金算入の要件を満たしているかや過大な役員給与がないかが、典型的な確認事項になります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「定期同額給与に該当すれば、不相当に高額な部分を含めて全額損金」は誤り。不相当に高額な部分は損金不算入。
  • よく問われる点損金算入できる役員給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれか。業績連動給与は同族会社では原則使えない。
  • よく問われる点M&A後に役員報酬を期中で増減すると、定期同額給与に該当しなくなり得る。

図解で確認:財務基礎出典:法人税法(当社にて要約)

停止意思

ていしいし倫理・行動規範

広告・営業先が示す、M&Aをしない・契約しない・営業を受けたくないといった意思のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAの広告・営業に職業倫理の遵守を求め、広告・営業先から停止意思を示されたときの対応を具体的に定めています。停止意思とは、①M&Aの実施意向がない旨、②当該仲介者・FAと契約を締結しない旨、③引き続き広告・営業を受けることを希望しない旨のいずれかです。仲介者・FAは停止意思を拒んではならず、ただちに広告・営業を停止しなければなりません。停止意思の内容は組織的に記録し、共有しなければなりません。営業を再開するには、慎重に検討した上で組織的な判断によらなければならず、将来にわたって又は一定期間すべての広告・営業を明確に拒否した者への再開は当然できません。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点停止意思は3類型のいずれか一つで足りる。示されたらただちに停止し、内容を組織的に記録・共有し「なければならない」。
  • ひっかけに注意「担当者の判断で一定期間後に再開できる」は誤り。再開は組織的な判断による。全面的に拒否した者への再開は不可。
  • ひっかけに注意停止を求められた後も「一度だけ」と営業を続ける、停止意思を記録・共有しないのは禁忌肢になりうる。

図解で確認:広告・営業出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.85、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.11(当社にて要約)

TSA(移行期間業務委託契約)

てぃーえすえーM&A実務

カーブアウトで短期間に分けられない不動産やシステム等について、一定期間、譲り渡し側との共有関係を続けるための契約。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

カーブアウトでは、基幹システムや物流センターのように、クロージングまでに完全に分けるのが難しいものがあります。無理に切り離すと、切り出した事業が動かなくなってしまいます。そこで、一定期間は譲り渡し側との共有関係を続け、その間に分離を進めるために結ぶのが移行期間業務委託契約(TSA)です。TSAは、株式譲渡契約などの最終契約に付随する契約として結びます。スキルマップは、移行期の措置を、最終的に切り分けた後の姿とは別に整理しておく必要があるとしています。

例切り出した事業部門が、当面は譲り渡し側の基幹システムを使い続け、その間に自前のシステムへ移ります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点TSAは最終契約の「付随契約」として結ぶもの。
  • ひっかけに注意「クロージング時点で共用関係を全て解消できないなら、カーブアウトは断念すべき」は誤り。TSA等で一定期間共有を続けて対処できる。
  • よく問われる点移行期の措置は、最終的に切り分けた後の姿とは別に整理しておく。

別名・略称:TSA、移行期間業務委託契約図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.110(当社にて要約)

DCF法

でぃーしーえふほう財務・税務

将来のフリー・キャッシュ・フローと継続価値を、WACCで現在価値に割り引いて事業価値を求める評価手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

DCF法は、インカムアプローチの代表的な手法です。知識・スキルマップは、次の手順で算定するとしています。(1)過去の業績分析等を踏まえて予測期間(一般に3〜5年程度)を決め、その期間の事業計画を策定してフリー・キャッシュ・フロー(FCF)を算出します。(2)割引率である加重平均資本コスト(WACC)を算定します。(3)予測期間後の一定成長期間における継続価値(ターミナルバリュー)を算定します。(4)予測期間のFCFと継続価値をWACCで割り引いて事業価値を求めます。(5)事業価値に現預金などの非事業用資産を加えて企業価値とし、有利子負債を差し引いて株主価値を算出します。将来の収益力を反映できる反面、前提条件次第で結果が大きく変わり、事業計画書も必要です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える予測期間は一般に3〜5年程度。割引率はWACC(非流動性ディスカウント率ではない)。
  • よく問われる点事業価値+非事業用資産=企業価値、企業価値−有利子負債=株主価値。名称と順序の入れ替えに注意。
  • ひっかけに注意DCF法で予測期間について算出するのはフリー・キャッシュ・フロー。EBITDAとする選択肢は誤り。

図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.48(当社にて要約)

適格現物分配

てきかくげんぶつぶんぱい財務・税務

金銭以外の資産を株主に分配する現物分配のうち、受け手が完全支配関係のある内国法人のみであるもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

現物分配とは、会社が株主に対して、金銭ではなく子会社株式などの資産そのものを分配することです。そのうち、資産の移転を受ける者が、分配の直前に完全支配関係のある内国法人(普通法人・協同組合等)のみであるものを適格現物分配といいます。適格現物分配では、分配する法人は資産を帳簿価額で譲渡したものとされるため譲渡損益が生じず、受け取った法人の収益は益金不算入で、源泉徴収も不要です。このため、グループ内で子会社株式などを親会社へ移す手段となります。一方、株主に個人が含まれている場合は適格現物分配にならず、非適格の現物分配は時価による譲渡として課税されます。完全支配関係のある法人間の取引には、このほかグループ法人税制による譲渡損益の繰延べなどの取扱いもあります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点移転を受ける者が、直前に完全支配関係のある内国法人「のみ」であることが要件。個人株主がいる場合は適格にならない。
  • よく問われる点分配法人は帳簿価額で譲渡したものとされ譲渡損益なし。受け取った法人の収益は益金不算入で、源泉徴収も不要。
  • 似た用語との違い非適格の現物分配は時価による譲渡として課税される。

別名・略称:現物分配図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法、法人税法、法人税法(当社にて要約)

適格組織再編成

てきかくそしきさいへんせい財務・税務

法人税法上の要件を満たし、資産・負債を帳簿価額で引き継いで課税を繰り延べられる合併・分割などの組織再編成。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

合併や分割は、法人税法上は原則として時価で資産を譲渡したものとして課税されますが、適格組織再編成に当たれば帳簿価額で引き継げ、譲渡損益の計上が繰り延べられます。適格の基本要件は、被合併法人などの株主に、合併法人などの株式以外の資産(金銭等)を交付しないことです。ただし、配当金、反対株主の買取請求代金、合併法人が3分の2以上保有する場合の少数株主への金銭交付は、金銭等の交付から除かれます。そのうえで、①完全支配関係(100%)、②支配関係(50%超)+一定要件、③共同事業要件のいずれかに当たる必要があります。②では、従業者のおおむね80%以上の引継ぎ見込み、主要な事業の継続見込み、支配関係の継続見込みなどが求められ、分割では主要な資産・負債の移転も必要です。①の完全支配関係では、これらは原則不要で、完全支配関係の継続見込み等が求められます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点株式以外の資産(金銭等)を交付すると原則非適格。ただし配当金・反対株主の買取請求代金は金銭等の交付から除かれる。
  • 似た用語との違い支配関係(50%超)では従業者おおむね80%以上の引継ぎ・事業継続等が必要。完全支配関係(100%)ではこれらは原則不要。
  • ひっかけに注意「支配関係の合併は、金銭等を交付しなければ従業者引継ぎ等を問わず適格」は誤り。

別名・略称:適格合併、適格分割図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法、法人税法(当社にて要約)

手数料体系

てすうりょうたいけいM&A実務倫理・行動規範

仲介者・FAが採用する手数料の種類の組合せと、その算定方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者・FAに支払う手数料は、主に4種類の組合せで決まります。着手金は主に契約締結時、月額報酬(リテーナーフィー)は毎月一定額、中間金(マイルストーンフィー)は基本合意締結時など案件完了前の一定の時点、成功報酬は主にクロージング時などの案件完了時に支払います。着手金・月額報酬・中間金を請求せず成功報酬だけを請求する形は、いわゆる完全成功報酬型と呼ばれます。交通費等の実費を別途請求することもあります。仲介者・FAの手数料には一般的な法規制がなく、金額や体系は各社によって異なります。そのため、手数料の算定基準を自社のホームページ等で公表し、透明性を高めることが望ましいとされます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いリテーナーフィー=月額報酬、マイルストーンフィー=中間金。成功報酬に含まれる(内金とする)ことが多いのは中間金。
  • よく問われる点仲介者・FAの手数料には一般的な法規制がない。どの体系を採るかは各社に委ねられる。
  • 義務か・望ましいか依頼者から手数料の交渉を申し入れられたら誠実に対応を検討「しなければならない」。算定基準のHP公表は「望ましい」。

別名・略称:料金体系図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.39、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.63、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.91(当社にて要約)

デットライクアイテム

でっとらいくあいてむ財務・税務

有利子負債ではないが、実質的な負債として扱う項目。リース債務・退職給付債務などが例。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

財務DDで会社の実質的な負債状況を把握するときは、有利子負債と現金の差(ネットデット)だけでなく、それに似た性質の項目も検証します。負債に類する項目をデットライクアイテムといい、リース債務、退職給付債務、資産除去債務、偶発債務などが例です。反対に、現金に類する項目をキャッシュライクアイテムといい、有価証券、保険積立金、事業外資産などが例です。ネットデット(ネットキャッシュ)とこれらの項目は、企業の実質的な負債状況を把握するための指標・要素とされます。こうした分析の結果は、バリュエーションだけでなく、M&Aスキームや最終契約書などの検討材料にもなります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意保険積立金はキャッシュライクアイテム、退職給付債務・資産除去債務はデットライクアイテム。分類を入れ替えた選択肢は誤り。
  • よく問われる点リース債務や偶発債務もデットライクアイテムの例。有価証券・事業外資産はキャッシュライクアイテムの例。

別名・略称:キャッシュライクアイテム図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108(当社にて要約)

デュー・ディリジェンス(DD)

でゅー・でぃりじぇんすM&A実務

譲り渡し側の各種リスク等を精査するため、主に譲り受け側が専門家に依頼して行う調査のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社や事業を引き継ぐ前に、帳簿に表れない借金や法律上の問題などのリスクがないかを調べる手続です。主に譲り受け側が、FAや士業等専門家に依頼して実施します。調査項目はM&Aの規模や実施する人の意向等で異なりますが、一般的には資産・負債等に関する財務DDと、株式・契約内容等に関する法務DDが中心です。そのほか、ビジネス(事業)DD、税務DD、人事労務DD、知的財産DD、環境DD、不動産DD、ITDD等があります。調査の密度も様々で、中小M&Aの実務では、本格的なDDは行わず、譲り渡し側の数年分の税務申告書の確認と経営者へのヒアリング等だけで終えることもあります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点DDは一方当事者の意向が反映されやすいため、仲介者は自らDDを実施せず、報告書の結論も決定しない。資料整理のサポートやスケジュール管理は可能。
  • よく問われる点税務DDは財務DDに、人事労務DDは法務DDに一部含まれることがある。
  • 義務か・望ましいか仲介者・譲り渡し側FAは、DDの結果を譲り渡し側にもできる限り開示して共有するよう、譲り受け側に働き掛けることが「望ましい」。

別名・略称:DD、デューデリジェンス図解で確認:DD(全体)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.21、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.47、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.95(当社にて要約)

データルーム

でーたるーむM&A実務倫理・行動規範

DDに関わる者がアクセスできる、資料を保管する場所のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

DDでは大量の資料を譲り渡し側から譲り受け側やDD実施機関に開示するため、その保管・閲覧の場所としてデータルームを設けます。譲り渡し側の会議室やDD実施機関の事務所等に物理的に設ける方法と、ネット上のバーチャルデータルーム(VDR)を使う方法があり、どちらにするか、併用するかを検討します。物理的な設置は、資料が多い・老朽化してデータ化が難しい場合や、当事者の事務所が離れていない場合、現場の状況把握や対面での調査が必要な場合等に多く行われます。利用時間の制限、受付締め切り時間の設定、入室の事前届出制などの運用ルールを作り、従業員にM&Aの検討が知られないよう周知・徹底します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点VDRはクロージング後に閉鎖するが、表明保証違反の発覚時等に開示範囲・時期を確認できるよう、データの保存・バックアップの仕組みが必要。
  • ひっかけに注意「VDRでも資料のやり取りは手軽なメールで行う」は誤り。セキュリティが確保された環境下でやり取りすることが望ましい。
  • よく問われる点物理的なデータルームでは、窓や扉の開閉による会話の流出や、人の出入りの事実の流出にも留意する。

別名・略称:バーチャルデータルーム、VDR図解で確認:DD(全体)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.86(当社にて要約)

テール条項

てーるじょうこうM&A実務倫理・行動規範

仲介契約・FA契約が終わった後でも、一定期間内に成立したM&Aについて手数料を請求できるとする条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者・FAが候補先を紹介したのに、契約が終わった直後に依頼者とその候補先が直接M&Aをすると、仲介者・FAは報酬を受け取れません。これを防ぐために置かれるのがテール条項で、M&Aが成立しないまま契約が終了した後の一定期間(テール期間)内に成立したM&Aにも手数料が発生すると定めます。一方で、期間が長すぎたり対象が広すぎたりすると、依頼者が別の支援機関を使いにくくなります。そのため中小M&Aガイドラインは、テール期間の目安と対象の範囲を示し、テール条項は譲り渡し側の自由な経営判断を損なわない限度で活用されるべきだとしています。

例契約終了から1年後に、その仲介者が以前紹介した会社と成約した場合は、手数料の対象になり得ます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚えるテール期間は最長でも2〜3年以内が目安。専任条項がある場合の契約期間の目安(6か月〜1年以内)と取り違えない。
  • ひっかけに注意「契約終了後に成立したM&Aはすべて対象」は誤り。対象は基本的に、その仲介者・FAが関与・接触し紹介した譲り受け側とのM&Aに限る。
  • よく問われる点第3版で新設:専任条項がなく依頼者に選ばれなかった業者は、同じ候補先を紹介していてもテール条項を根拠に手数料を請求すべきでない。

別名・略称:テール期間図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.40、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.41、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.105(当社にて要約)

当期純利益

とうきじゅんりえき財務・税務

税引前当期純利益から法人税・住民税等を差し引いた、損益計算書の最終的な利益。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

損益計算書(PL)は、段階ごとに利益を計算します。売上高から売上原価を引いて売上総利益、販売費及び一般管理費を引いて営業利益、営業外損益(受取利息や支払利息など)を加減して経常利益、特別損益(固定資産売却損益など)を加減して税引前当期純利益、そこから法人税・住民税等を引いたものが当期純利益です。その期に最終的に残った利益を示し、税引後利益とも呼ばれます。バリュエーションでは、マルチプル法の一つであるPER倍率法が、上場企業等の業界平均のPER(株価収益率)を対象会社の当期純利益に当てはめて株主価値を算定します。なお、法人税の所得は会計上の利益とは別に、益金と損金で計算します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点経常利益±特別損益=税引前当期純利益。支払利息は営業外費用、固定資産売却損は特別損失。
  • 似た用語との違いPER倍率法は当期純利益から株主価値を、EV/EBITDA倍率法はEBITDAから企業価値(EV)を算定する。
  • ひっかけに注意「法人税の課税標準は当期純利益そのもの」は誤り。益金から損金を控除した所得の金額が課税標準。

別名・略称:純利益、税引後利益図解で確認:財務基礎出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、法人税法(当社にて要約)

同族会社

どうぞくがいしゃ財務・税務

上位3人以下の株主等とその特殊関係者が、発行済株式の50%超を持つ会社(法人税法2条10号)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人税法上の区分で、少数の株主グループに支配されている会社を指します。株主等の3人以下と、これらと政令で定める特殊の関係のある個人・法人が、自己株式を除く発行済株式の総数の50%を超える株式を持つ場合などが当たります。オーナーとその一族が株式の大半を持つ会社が典型です。同族会社には税務上の制約があり、たとえば役員給与のうち業績連動給与(利益などの指標に連動して支払う給与)は、原則として損金に算入できません。M&Aでは、税務DDで役員給与の損金算入要件を確認するときなどに関係します。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える判定の基準は、株主等の「3人以下」とその特殊関係者が、自己株式を除く発行済株式の「50%超」を持つこと。
  • ひっかけに注意「同族会社でも業績連動給与は要件を問わず損金算入できる」は誤り。同族会社は原則として業績連動給与を損金算入できない。
  • 似た用語との違い相続税の株式評価で使う「同族株主」とは別の概念。同族会社は法人税法上の会社の区分。

図解で確認:税務基礎出典:法人税法、法人税法(当社にて要約)

同族株主

どうぞくかぶぬし財務・税務

株主の1人とその同族関係者の議決権合計が30%以上(筆頭グループが50%超の会社は50%超)の場合の、その株主と同族関係者。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

同族株主は、取引相場のない株式(非上場株式)を相続税・贈与税の計算で評価するときに、どの評価方式を使うかを決めるための区分です。株主の1人とその同族関係者の議決権の合計が30%以上である場合、その株主と同族関係者を同族株主といいます。ただし、筆頭株主グループの議決権が50%超の会社では、50%超のグループだけが同族株主です。同族株主のいる会社で、同族株主が取得した株式は原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式等)で評価し、同族株主以外の株主が取得した株式は配当還元方式で評価します。さらに、中心的な同族株主のいる会社では、議決権5%未満で役員でない同族株主等も配当還元方式となります。同族株主のいない会社では、議決権15%未満のグループに属する株主が配当還元方式となります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える同族株主の判定は議決権30%以上。筆頭グループが50%超の会社では、50%超のグループのみが同族株主。
  • よく問われる点中心的な同族株主のいる会社で議決権5%未満の役員でない同族株主等は配当還元方式。同族株主のいない会社では15%未満のグループが配当還元方式。

図解で確認:税務基礎出典:財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)、国税庁タックスアンサー No.4638 取引相場のない株式の評価、財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)(当社にて要約)

登録事由(情報共有の仕組み)

とうろくじゆう倫理・行動規範

業界内での情報共有の仕組みで、譲り受け側の情報を登録・共有する対象となる事由。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

経営者保証を移行させる想定なのに実施せず、譲り渡し側の現預金等を回収して倒産に至らせるような不適切な譲り受け側を排除するため、業界内での情報共有の仕組みが設けられています。中立・公平な運営主体が登録事由を設定し、参加者の報告等を確認したうえで参加者全体に共有します。登録事由の例は、①最終契約で経営者保証等の解除が譲り受け側の義務(努力義務を含む)とされたのに、合理的な期間を過ぎても解除されない、金融機関への相談を速やかに始めない等のとき、②分割払いの譲渡対価や、期日の到来だけが支払要件の後払いの退職慰労金が、期日を過ぎても支払われないときです。登録事由はこれらに限られず、必要に応じて追加・修正します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点経営者保証等の解除が「努力義務」として合意された場合も、解除されなければ登録事由の対象になる。
  • ひっかけに注意「包括的な登録事由で個別に判断する場合も、迅速さを優先して弁明の機会は設けない」は誤り。共有前に弁明の機会等の救済措置を設けることが相当。
  • よく問われる点共有された譲り受け側との取引停止を参加者に強制すると独占禁止法上違法となる可能性がある。取引可否は参加者が自ら判断する。

図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて(2025年2月) p.2、不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて(2025年2月) p.1(当社にて要約)

登録免許税

とうろくめんきょぜい財務・税務

不動産の所有権移転登記や会社の資本金増加の登記など、登記等を受けるときに課される税。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、不動産の名義を移したり、資本金や役員を変えたりする際に登記が必要になり、そのたびに登録免許税がかかります。不動産の所有権移転登記では、不動産の価額(固定資産課税台帳の価格)に税率を掛けて計算します。税率は移転の原因で異なり、相続又は法人の合併による移転は1,000分の4(0.4%)、売買・贈与・事業譲渡・会社分割などその他の原因による移転は1,000分の20(2%)です。土地の売買には軽減税率1,000分の15があります。会社の登記では、資本金の増加登記が増加額の1,000分の7(最低3万円)、吸収合併による資本金の増加は1,000分の1.5(消滅会社の資本金を超える部分は1,000分の7)、吸収分割による資本金の増加は1,000分の7、役員変更登記は1件3万円(資本金1億円以下は1万円)です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「会社分割による移転登記は合併と同じ0.4%」は誤り。会社分割はその他の原因として2%。0.4%は合併・相続。
  • 数字を覚える資本金の増加登記は1,000分の7(最低3万円)。役員変更登記は1件3万円(資本金1億円以下は1万円)。
  • 数字を覚える土地売買の軽減税率1.5%は、基準日時点の規定では令和8年3月31日まで。基準日後に令和11年3月31日まで延長されている。

図解で確認:税務基礎出典:登録免許税法、登録免許税法、国税庁タックスアンサー No.7191 登録免許税の税額表(当社にて要約)

特殊決議

とくしゅけつぎ法務

株主の頭数と議決権の数の両方に要件がある、特別決議より厳しい株主総会の決議。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

株主総会の決議には、要件の軽い順に普通決議・特別決議・特殊決議があります。特殊決議は、議決権を行使できる株主の半数以上(頭数)で、かつその株主の議決権の3分の2以上の多数で行います(会社法309条3項)。特別決議は議決権の数だけで決まりますが、特殊決議では株主の人数も数える点が違います。代表的なのは、発行する全部の株式に譲渡制限を付ける定款変更です。株式を自由に譲渡できなくなるという、株主にとって大きな変更だからです。公開会社が合併や株式交換で消滅・完全子会社となり、その株主に譲渡制限株式等を交付する場合の承認も同じ要件です。さらに、株主ごとに異なる取扱いを定める定款変更は、総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上という、より厳しい要件になります(309条4項)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い特別決議は出席株主の議決権の3分の2以上。特殊決議は議決権を行使できる株主の半数以上(頭数)かつ議決権の3分の2以上。
  • よく問われる点全部の株式に譲渡制限を付ける定款変更は特殊決議。定款変更一般は特別決議である点と区別する。
  • 数字を覚える株主ごとに異なる取扱いを定める定款変更は、総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上。

図解で確認:法務基礎出典:会社法(当社にて要約)

独占業務

どくせんぎょうむ法務倫理・行動規範

法律で、一定の資格を持つ者でなければ行えないと定められている業務のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aの支援では、法律・税務・登記・許認可など多くの手続が関わりますが、その一部は資格者だけが行える独占業務です。報酬を得る目的で一般の法律事件に関する法律事務を業として扱うことは弁護士(弁護士法72条)、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士(税理士法52条)、登記・供託の手続の代理や法務局に提出する書類の作成は司法書士(司法書士法3条・73条)、官公署に提出する書類や権利義務・事実証明に関する書類の作成を報酬を得て業として行うことは行政書士(行政書士法1条の3・19条)の業務です。資格のない支援者は、こうした業務を自ら行わず、必要に応じて専門家につなぐことが求められます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える行政書士法19条は令和8年1月施行の改正で「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」と明確化された。司法書士法違反は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。
  • ひっかけに注意仲介者が手数料に含める形で変更登記の申請書や許認可の申請書を作成・代理するのは、独占業務違反のおそれがあり禁忌肢になりうる。
  • 似た用語との違い弁護士法72条は報酬目的が要件。税理士法52条は無償でも違反。

別名・略称:司法書士の独占業務、行政書士の独占業務図解で確認:法務基礎出典:司法書士法、行政書士法、弁護士法(当社にて要約)

独占禁止法

どくせんきんしほう法務

公正で自由な競争を確保するため、私的独占や不当な取引制限などを禁止する法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは企業結合規制が問題になります。会社は、株式取得、合併、会社分割、共同株式移転、事業譲受け等によって、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、これらを行ってはなりません。この規制は会社の規模にかかわらず適用されます。さらに、一定規模以上の企業結合は、あらかじめ公正取引委員会に届け出なければなりません。株式取得では、国内売上高合計額200億円超の会社が、国内売上高50億円超の会社の株式を取得し、議決権保有割合が20%又は50%を超えることとなる場合です。届出をした会社は、届出受理の日から30日を経過するまで株式取得等をしてはなりません。違反には、株式処分などの排除措置が命じられることがあります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える株式取得の届出基準は取得会社200億円超・対象会社50億円超・議決権20%又は50%超。事業全部の譲受けの相手方基準は30億円超。
  • 数字を覚える届出受理の日から30日を経過するまで実行できない(公取委は短縮できる)。外為法の待機期間も30日で混同しやすい。
  • ひっかけに注意「届出基準を下回る中小企業同士のM&Aには適用されない」は誤り。競争の実質的制限の禁止は規模にかかわらず適用される。

別名・略称:独禁法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律図解で確認:法務基礎出典:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)(当社にて要約)

独占交渉権

どくせんこうしょうけんM&A実務法務

基本合意の有効期間中、譲り渡し側が他の者とM&Aの交渉をしないことで、譲り受け側が得る独占的な交渉の権利。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

基本合意書に盛り込まれることが多い権利で、基本合意書の中でも法的拘束力を認めるのが通常です。基本合意書サンプルでは、譲り渡し側株主は有効期間中、他のいかなる者とも対象会社に係るM&A取引(株式譲渡、事業譲渡、増資の引受け、合併、株式交換、会社分割、資本業務提携等)の交渉を行ってはならないと定めています。譲り受け側はDDに費用をかけるため、基本的には独占交渉権を求めます。一方、譲り渡し側にとっては、付与すると案件の確度にかかわらず他の候補先を探しにくくなり、特に候補先が複数いる場合は選択肢を狭めます。そのため、トップ面談等も踏まえて取引の確度を見極めたうえで判断します。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか付与の有無と期間は、支援者側の都合ではなく当事者の意思に基づき決定されるべき。「支援者が自らの判断で決める」は誤り。
  • よく問われる点譲り受け側のDDに相応のコストがかかる場合に必要となることが多い。DDのコストが低い場合やDDを実施しない場合はこの限りでない。
  • ひっかけに注意「基本合意書は拘束力がないので独占交渉権を付与しても他社と並行交渉できる」は誤り。独占交渉権には拘束力を認めるのが通常。

別名・略称:独占的交渉権図解で確認:意向表明/基本合意出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.13、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.69、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.21(当社にて要約)

特定役員退職手当等

とくていやくいんたいしょくてあてとう財務・税務

役員等としての勤続年数が5年以下の人が受ける、その期間に対応する退職手当等。2分の1課税が適用されない。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

退職所得は通常、収入金額から退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1が所得金額となりますが、勤続期間が短い場合には例外があります。役員等としての勤続年数が5年以下の人が受ける、その役員等勤続年数に対応する退職手当等を特定役員退職手当等といい、2分の1課税が適用されません。役員等には、法人の取締役・執行役・会計参与・監査役等や、みなし役員が含まれます。勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げるため、役員期間が4年11か月でも5年として扱われ、特定役員退職手当等に当たります。また、役員以外で勤続5年以下の人が受ける短期退職手当等は、退職所得控除後の金額のうち300万円を超える部分に2分の1課税が適用されません。M&Aでは、買収後に就任した役員を短期で退任させて退職金を払う場合などに論点になります。

例仮の数値で、役員期間4年2か月(5年に切上げ)、退職金1,000万円なら、控除200万円を引いた800万円が所得金額です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える役員等勤続年数5年以下で2分の1課税なし。4年11か月は切上げで5年となり該当する。
  • 似た用語との違い役員以外の短期退職手当等(勤続5年以下)は、控除後300万円を超える部分だけ2分の1課税が適用されない。
  • ひっかけに注意特定役員退職手当等に2分の1を掛ける計算は誤り。控除額は通常どおり、端数切上げ後の勤続年数で計算する。

別名・略称:短期退職手当等図解で確認:税務基礎出典:所得税法、国税庁タックスアンサー No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(特定役員退職手当等)、国税庁タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(当社にて要約)

特別決議

とくべつけつぎM&A実務法務

出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する、株主総会の重い決議のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社の根本に関わる重要な事項は、普通決議より要件の重い特別決議で決めます(会社法309条2項)。議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数。定款で3分の1以上まで緩和できる)、出席株主の議決権の3分の2以上(定款で引上げ可)の賛成で可決します。M&Aに関係する主な事項は、事業譲渡等の承認(467条1項)、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の承認、定款変更、特定の株主からの自己株式取得、株式併合、相続人等への売渡請求、募集事項の決定などです。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「総株主の議決権の3分の2以上」は誤り。基準は出席株主の議決権の3分の2以上。
  • 数字を覚える定足数は議決権の過半数が原則。定款で3分の1まで下げられるが、それ未満にはできない。
  • 似た用語との違い監査役の解任は特別決議、取締役の解任は原則として普通決議。

図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

特別支配株主の株式等売渡請求

とくべつしはいかぶぬしのかぶしきとううりわたしせいきゅう法務

総株主の議決権の10分の9以上を持つ株主が、他の株主全員に株式の全部を売り渡すよう請求できる制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

少数株主の同意がなくても、その株式を金銭で取得する(キャッシュアウト)ための会社法の制度で、全株式をそろえてからM&Aを進めたい場面で使われます。特別支配株主とは、総株主の議決権の10分の9(定款で引上げ可)以上を、自分と自分の完全子法人(発行済株式の全部を持つ会社など)で持っている者をいいます。請求するときは、対価として交付する金銭の額や算定方法、その割当て、取得日などを定め、対象会社に通知して承認を受けます。取締役会設置会社では、この承認は取締役会の決議で行い、株主総会の決議は要りません。新株予約権がある場合は、あわせてその売渡しも請求できます(会社法179条〜179条の3)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える要件は総株主の議決権の10分の9以上(定款で引上げ可)。85%など9割未満の株主は使えない。
  • ひっかけに注意「株主総会の特別決議で承認する」は誤り。対象会社の承認で足り、取締役会設置会社では取締役会決議による。
  • よく問われる点対価は金銭で、売渡株主の株式の数に応じて金銭を割り当てる内容でなければならない。

別名・略称:株式等売渡請求、株式売渡請求、特別支配株主図解で確認:法務基礎出典:会社法(当社にて要約)

特別清算

とくべつせいさん法務

解散して清算中の株式会社について、裁判所の監督の下で行われる特別な清算手続。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社を解散して清算(財産を換金して債務を払い、会社を消滅させる手続)するときに、通常の清算では進めにくい事情がある場合に使われる、裁判所が関与する手続です。資料では、破産・民事再生・会社更生と並ぶ倒産手続の一つとして扱われています(株式譲渡契約サンプルの表明保証「倒産手続等の不存在」)。中小M&Aで登場するのは主に第二会社方式です。債務超過企業が事業譲渡や会社分割で収益性の高い優良事業だけを別会社(第二会社)に移し、残った不採算部門を特別清算等の手続で整理します。中小M&Aガイドラインは、中小企業活性化協議会の関与下で事業譲渡等を行い、その後の譲り渡し側の会社を特別清算手続で整理する手法が見られるとしています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「第二会社方式では譲り渡し側の債権者の同意は不要」は誤り。債権者の同意が必要とされる。
  • よく問われる点特別清算等で整理するのは、優良事業を第二会社に切り出した後に残る不採算部門(旧会社)。
  • よく問われる点GLでは、旧会社の整理は特別清算のほか、特定調停手続を実施する手法も挙げられている。

別名・略称:特別清算手続図解で確認:法務基礎出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.127、参考資料1 中小M&Aの主な手法と特徴 p.3、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.33(当社にて要約)

特別補償

とくべつほしょうM&A実務法務

譲り受け側が特に認識している特定のリスクについて、通常の補償とは別に定める譲り渡し側の補償。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約では、表明保証(契約時点の事実が正しいと約束すること)に違反があった場合に、譲り渡し側が損害を補償するのが一般的です。譲り受け側は、自分が違反を知っていても責任に影響しないとするプロ・サンドバッギング条項を求めることがあります。株式譲渡契約サンプルの注記は、この条項の下では、無許認可による行政処分や未払残業代の請求のように、DDで開示されて譲り受け側が認識していたリスクが現実化しても譲り渡し側は免責されないため、事後に紛争化しやすいと指摘しています。そこで譲り渡し側は、条項の削除や修文を検討する必要があり、その際、譲り受け側が特に認識したリスクについては、特別補償という形で別途規定することもありうるとされています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「プロ・サンドバッギング条項を設けると特別補償は定められない」は誤り。認識したリスクを特別補償として別途規定することもありうる。
  • ひっかけに注意「プロ・サンドバッギング条項は合理性を欠き無効」は誤り。条項そのものに合理性がないわけではないとされる。
  • よく問われる点開示済みでも免責されない例として、無許認可による行政処分、未払残業代の請求が挙げられている。

図解で確認:最終契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.25(当社にて要約)

特例承継計画

とくれいしょうけいけいかくM&A実務

法人版事業承継税制の特例措置を受けるため、後継者や承継後5年間の経営計画等を記載し、都道府県知事の確認を受ける計画。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継税制の特例措置は、一般措置より有利な内容(全株式が対象、納税猶予割合100%など)ですが、使うためには、事前に特例承継計画を作って都道府県知事の確認を受ける必要があります。計画には、後継者(特例後継者)、後継者が株式を取得するまでの経営計画、承継後5年間の経営計画などを記載します。作成にあたっては、認定経営革新等支援機関(国が認定した支援機関)の指導・助言を受けなければなりません。特例後継者は、候補が2人又は3人以上いる場合でも、中小企業者が定めた3人までに限られます。特例後継者の相続開始や、不正の手段で確認を受けたことなどは、確認の取消し事由になります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える知事確認の申請期限は、基準日(令和8年3月末)時点の規則では「令和8年3月31日」。基準日後の令和8年度改正で令和9年9月30日まで延長された。
  • ひっかけに注意「提出期限は令和9年12月31日」は誤り。令和9年12月31日は、特例措置の対象となる贈与・相続等の期限。
  • よく問われる点認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成する。定められる特例後継者は最大3人。

図解で確認:中小企業政策出典:中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則、国税庁タックスアンサー No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)(当社にて要約)

トップ面談

とっぷめんだんM&A実務

譲り渡し側と譲り受け側の経営者同士が直接会って行う面談のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

書類だけでは分からない相手の人柄や考え方を確かめる、交渉の中で重要な機会です。中小M&Aガイドラインは、トップ面談を、譲り受け側の経営理念・企業文化や経営者の人間性等を直接確認するための場であり、その後の円滑な交渉のためにも重要だとしています。一方で、自分の態度や表情も相手に直接伝わりやすく、不用意な言動は信頼を損なうおそれがあるため、誠意ある態度で真摯に臨む必要があります。交渉の進め方は当事者の関係や事業の類似性等で様々で、トップ面談の時期や方法も一つではありません。支援者は、段取りや想定質問の意図を事前に依頼者へ説明し、相手から受けた質問は全て依頼者に開示します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「初回トップ面談で譲渡額を詳細に交渉・決定すべき」は誤り。詳細な条件交渉はディールブレイクにつながるリスクがあり、初回の位置づけを依頼者と共有しておく。
  • ひっかけに注意「トップ面談は仲介者・FA同士の実務者協議」は誤り。譲り渡し側・譲り受け側の経営者同士の面談。
  • よく問われる点交渉に向け、希望条件を明確にし優先順位を付け、絶対に譲歩できない点を固めておくことが望ましい。

図解で確認:マッチング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.46、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.64、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.63(当社にて要約)

取締役会設置会社

とりしまりやくかいせっちがいしゃ法務

取締役会を置く株式会社、又は会社法の規定により取締役会を置かなければならない株式会社。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社の機関設計(どの機関を置くか)の一つで、M&Aでは「どの機関の決議で手続を進めるか」を判断する前提になります。取締役会はすべての取締役で組織し、業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、代表取締役の選定・解職を行います。重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、支店など重要な組織の設置などは、個々の取締役に任せられず、取締役会で決めなければなりません(会社法362条4項)。そのため、株主総会の決議がいらない子会社株式の売却や事業の一部譲渡でも、取締役会決議が必要になる場合があります。また、取締役会設置会社の株主総会は、会社法と定款に定めた事項に限って決議できます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い事業譲渡等の承認は株主総会(467条)、重要な財産の処分・多額の借財は取締役会(362条4項)。どちらの決議かを区別する。
  • よく問われる点特別支配株主の株式等売渡請求の承認は、取締役会設置会社では取締役会決議による。株主総会決議は不要。
  • 義務か・望ましいか取締役会設置会社では、株主総会の招集通知を書面で発しなければならない(株主の承諾があれば電磁的方法でもよい)。

別名・略称:取締役会図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法、会社法(当社にて要約)

取引相場のない株式の評価

とりひきそうばのないかぶしきのひょうか財務・税務

非上場株式など取引相場のない株式を、相続税・贈与税の計算のために財産評価基本通達で評価すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

相続・遺贈・贈与で取得した財産は、取得の時の時価で評価します(相続税法22条)。実務上の時価は財産評価基本通達により評価し、非上場の中小企業の株式も、この通達の「取引相場のない株式」の評価方法で計算します。まず、株式を取得した人が経営支配力を持つ同族株主等かどうかで方式が分かれます。同族株主等が取得した株式は原則的評価方式、同族株主以外の株主等が取得した株式は特例的評価方式(配当還元方式)です。原則的評価方式では、従業員数・総資産価額(帳簿価額)・取引金額で会社規模を大会社・中会社・小会社に区分し、大会社は原則として類似業種比準方式(純資産価額方式も選択可)、小会社は原則として純資産価額方式、中会社は両者の併用で評価します。こうして計算した税法上の株価は、M&Aで当事者が調整して決める株価とは別物です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点同族株主等が取得→原則的評価方式。同族株主以外の株主等が取得→配当還元方式(会社規模にかかわらない)。両者を逆にした選択肢は誤り。
  • 数字を覚える従業員数70人以上の会社は大会社。大会社は原則類似業種比準方式、小会社は原則純資産価額方式、中会社は併用。
  • ひっかけに注意「相続税評価額をそのままM&Aの譲渡価格として用いる」は誤り。M&Aの株価はバリュエーションを踏まえ当事者間で調整して決める。

別名・略称:非上場株式の評価、原則的評価方式図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4638 取引相場のない株式の評価、財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)、財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)(当社にて要約)

努力義務

どりょくぎむM&A実務倫理・行動規範

結果の実現そのものではなく、実現に向けて努めることを内容とする義務。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

契約で「〜するよう努める」と定めると、結果が実現しなくても、それだけで直ちに義務違反とはなりにくくなります。中小M&Aの最終契約では、従業員の雇用継続を譲り受け側の努力義務として定める例が示されています。特に問題になりやすいのが、譲り渡し側経営者の個人保証(経営者保証)の扱いです。クロージング後の保証の解除・移行が譲り受け側の義務とされず努力義務にとどまる場合や、解除されなかったときの契約解除・補償の条項がない場合は、譲り渡し側にとってのリスク事項として説明されます。一方、業界内での情報共有の仕組みでは、経営者保証等の解除が努力義務として合意された場合も、解除されなければ登録の対象となり得ます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「保証の解除・移行を譲り受け側の努力義務として定めれば、譲り渡し側のリスクは十分抑えられる」は誤り。努力義務にとどまることはリスク事項。
  • よく問われる点情報共有の仕組みの登録事由(経営者保証等の解除不履行)は、解除が努力義務として合意された場合も含む。
  • よく問われる点最終契約の主要内容の例では、従業員の雇用継続は譲り受け側の「努力義務」として定める例が示されている。

図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.49、参考資料12 最終契約におけるリスク事項についての説明書サンプル p.2、不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて(2025年2月) p.2(当社にて要約)

な行

仲立人

なかだちにん法務

他人間の商行為の媒介をすることを業とする者のこと(商法543条)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲立人は、自分は契約の当事者にも代理人にもならず、他人同士の契約(商行為)が成立するよう間を取り持つ(媒介する)ことを仕事にする者です(商法543条)。仲立ちに関する行為は、営業として行うと商行為になります(502条11号)。媒介した契約が成立すると、仲立人は遅滞なく結約書を作成して各当事者に交付し(546条1項)、その手続を終えた後でなければ報酬を請求できません(550条1項)。仲立人の報酬は当事者双方が等しい割合で負担します(550条2項)。ただしこれは任意規定(契約で変えられる規定)で、M&Aの仲介契約では各当事者と個別に報酬を定めるのが一般的です。M&A仲介が商法上の仲立人に当たるかは、当事者や取引の性質によって議論があります。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「仲介者は当事者双方の代理人」は誤り。仲立人(仲介者)は媒介をする者で、代理人ではない。
  • よく問われる点商法上、仲立人の報酬は当事者双方が平分負担(550条2項)。任意規定なので、M&A仲介では各当事者と個別に定めるのが一般的。

別名・略称:媒介図解で確認:法務基礎出典:商法、商法(当社にて要約)

二重徴求

にじゅうちょうきゅうM&A実務

同一の金融債権について、前経営者と後継者の双方から経営者保証を求めること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継で社長が交代したとき、金融機関が、退いた前経営者の保証はそのまま残し、さらに新しい社長(後継者)にも同じ借入金の保証を求めることがあります。これを二重徴求といいます。後継者にとって重い負担となり、事業承継の妨げにもなるため、事業承継時の経営者保証ガイドラインの特則は、二重徴求を原則として行わないとしています。例外的に許容され得る事例として、①前経営者の死亡後、相続が確定するまでの間など一時的に必要な場合、②前経営者への多額の貸付金等が残り、保証を外すと著しく公平性を欠くとして後継者が求める場合、③金融支援中や延滞先で多額の資産移転等があり、双方の保証なしには支援の継続が困難な場合、④双方が専ら自らの事情で保証の提供を申し出た場合、の4つが示されています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点代表者交代前の既存債権は前経営者、交代後の新規債権は後継者のみから保証を取る場合は、二重徴求に当たらない。「同一債権」について双方から取るのが二重徴求。
  • よく問われる点例外的に二重徴求が真に必要な場合は、その理由や保証がない場合の融資条件を、前経営者・後継者の双方に十分説明する。
  • ひっかけに注意「特則には法的拘束力があり、二重徴求は違法で当然に無効」は誤り。特則も法的拘束力のない自主的自律的な準則。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)、経営者保証に関するガイドライン(平成25年12月 経営者保証に関するガイドライン研究会)、事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)(当社にて要約)

日本政策金融公庫

にっぽんせいさくきんゆうこうこM&A実務

政府系金融機関。中小M&Aの相談先の一つで、「事業承継マッチング支援」を行っている。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aガイドラインは、譲り渡しを考える経営者の相談先として、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターとともに、政府系金融機関である日本政策金融公庫(日本公庫)も相談を受けているとしています。日本公庫の国民生活事業本部は、センター等と連携し、令和2年4月から「事業承継マッチング支援」を実施しています。後継者不在の小規模事業者と事業を譲り受けたい人を引き合わせ、その後の手続で専門家の支援が必要な場合はセンターに取り次ぎます。原則として日本公庫に事業資金の借入残高がある企業が対象ですが、商工会議所・商工会、税理士等の紹介があれば借入残高がなくても利用できます。事業を譲り受けて創業する人も対象で、譲渡・譲受希望者とも無料です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える事業承継マッチング支援は令和2年4月から、沖縄県を除く各都道府県で実施。譲渡・譲受希望者とも無料。
  • ひっかけに注意「政府系金融機関なので事業承継に関する相談は受け付けていない」は誤り。センターとともに相談を受けている。
  • よく問われる点原則は日本公庫に借入残高がある企業が対象だが、商工会議所・商工会・税理士等の紹介があれば残高がなくても利用できる。

別名・略称:日本公庫図解で確認:中小企業政策出典:参考資料5 日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援」 p.1、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.34(当社にて要約)

入札方式

にゅうさつほうしきM&A実務

最も有利な条件を示した入札者を譲り受け側とする方式(厳格な入札方式)のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

譲り受け側の候補先が複数いるときに、条件を競わせて相手を選ぶ方法です。中小M&Aガイドラインは、譲渡額の最大化を特に重視して厳格な入札方式で譲り渡したい場合を、FA(一方の依頼者だけを支援する支援機関)の活用例として挙げています。例えば、債務整理手続を要する債務超過企業のM&Aで、債権者との関係から最も有利な条件を目指す必要がある場合です。入札では、プロセスレターで手順・ルール・スケジュールを候補先に等しく示し、意向表明書の回答日を定めて記載内容を統一し、比較しやすい表に整理すると望ましいとされます。

例1次入札で暫定条件を出してもらい、DDを経て2次(最終)入札で最終条件を出してもらう進め方。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い厳格な入札で譲渡額の最大化を図る場合はFAの活用例。仲介者は双方の利益を図るため一方の利益のみを優先できない。
  • よく問われる点入札が複数回行われる場合は、その旨をプロセスレターに記載するのが一般的。1次はDD前の暫定条件、2次(最終)はDD後の最終条件。
  • よく問われる点債務超過企業でスポンサーを選ぶ際、透明性・公正性確保のため入札手続を行い、意向表明書が用いられることがある。

別名・略称:入札図解で確認:マッチング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.42、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.62、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20(当社にて要約)

ネットデット

ねっとでっと財務・税務

有利子負債から現金等の非事業資産を差し引いた額。純有利子負債ともいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

ネットデットは、会社が実質的にどれだけ借入れを抱えているかをみる指標です。有利子負債から現金等の非事業資産を差し引いて求め、非事業資産の方が多い場合はネットキャッシュといいます。財務DDでは、リース債務・退職給付債務など負債に類する項目(デットライクアイテム)や、有価証券・保険積立金など現金に類する項目(キャッシュライクアイテム)も含めて検証し、実質的な負債状況を把握します。ネットデットはバリュエーションに直結し、EV/EBITDA倍率法では「EBITDA×倍率−純有利子負債(有利子負債−現預金)」で株式価値を求めます。また、DD終了時点ではクロージング日のネットデットを正確に見込めないことがあるため、最終契約日とクロージング日の間の差分をどう調整するかも、譲り渡し側・譲り受け側と協議します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「ネットデットは有利子負債に現金等を加算して算出する」は誤り。差し引く。非事業資産が上回ればネットキャッシュ。
  • よく問われる点成約可能性判断の6項目の1つ(事業規模・営業利益・EBITDA・債務資産状況・有利子負債・ネットデット)。
  • よく問われる点価格調整の方法には、差額の全額調整、一定額を超えた部分のみの調整、上方又は下方のみの調整、上限の設定がある。

別名・略称:純有利子負債、ネットキャッシュ図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.4、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.113(当社にて要約)

ネームクリア

ねーむくりあM&A実務倫理・行動規範

譲り渡し側の同意を得て、譲り受け側の候補先に、譲り渡し側の社名を含む情報を開示すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

ノンネーム・シートで会社名を伏せて打診した後、関心を示した候補先に、初めて会社名を明かす手続です。具体的には、企業概要書を送付して譲り渡し側の名称を開示します。第3版では、ネームクリアの前に譲り渡し側の同意を取得することが明確にされました。秘密保持の観点から、同意は原則として開示先の候補先ごとに個別に取ります。早くマッチングしたい場合等に、一定の基準の下で仲介者・FAがネームクリア先を選ぶ例外もありますが、その場合はリスクを説明して意向を確認し、できるだけ具体的な基準を設定し、指示があれば速やかに中止すると確約しなければなりません。なお実務では、別の意味で使われることもあるため、関係者内ですり合わせます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点手順は、興味を示した候補先に対し、譲り渡し側の同意を取得し、候補先と秘密保持契約を締結した上で実施する。同意とNDAの両方が前提。
  • ひっかけに注意「基準を設けて選定を一任された場合は候補先とのNDA締結を省略できる」は誤り。一任の例外でもNDA締結は必須で、包括的な一任はすべきでない。
  • 似た用語との違いネームクリアは譲り受け側候補先に「譲り渡し側」の名称を開示すること。候補先の名称を譲り渡し側に示すことではない。

図解で確認:マッチング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.4、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.59、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.93(当社にて要約)

のれん

のれん財務・税務

企業結合の取得原価が、受け入れた資産・負債の時価の純額を上回る超過額。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

のれんは、M&Aで支払った金額のうち、受け入れた個々の資産・負債の時価の差額(時価純資産)を上回る部分です。パーチェス法で取得原価を配分(PPA)した後に残る超過額がのれんで、無形固定資産として計上します。日本の会計基準では、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、定額法その他合理的な方法で規則的に償却し、償却額は販売費及び一般管理費に表示します。金額に重要性が乏しい場合は、発生した事業年度の費用にできます。のれんも固定資産の減損の対象です。連結財務諸表でも、親会社の子会社に対する投資と子会社の資本を相殺消去した差額がのれんとなります。

例仮の数値で、対価3億円に対し、受け入れた資産・負債の時価純額が2億5,000万円なら、のれんは5,000万円です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える日本基準では20年以内の効果の及ぶ期間で規則的に償却する。「のれんは償却しない」は日本基準では誤り(非償却はIFRS)。
  • 似た用語との違い会計上ののれんは無形固定資産で償却額は販管費。税務上ののれんに当たる資産調整勘定は5年(60月)均等で損金算入。
  • ひっかけに注意「営業権(のれん)は有形固定資産に属する」は誤り。のれん・特許権は無形固定資産。

別名・略称:営業権図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(ASBJ)(当社にて要約)

ノンネーム・シート

のんねーむ・しーとM&A実務

譲り渡し側が特定されないよう、企業の概要を簡単に要約した企業情報のこと。ティーザーともいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

マッチングの最初の段階で、譲り受け側の候補先に「こういう会社の譲渡に関心はありますか」と打診するために使う資料です。まだ候補先と秘密保持契約を結んでいない段階で渡すため、譲り渡し側が特定されない内容にし、情報漏えいに細心の注意を払います。記載例は、大まかな所在地、業種、事業規模、業績、M&Aの検討理由等です。どの程度の情報で会社が特定されてしまうかは業界・業種で違い、ニッチな業界ほど特定のリスクが高くなります。記載する情報は譲り渡し側の合意を得る必要がある一方、候補先が検討に必要で興味を持つような情報を含める工夫も求められます。関心を示した先とは秘密保持契約を結び、企業概要書へ進みます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いノンネーム・シートは社名を伏せ、NDA締結「前」に関心を打診する資料。企業概要書(IM)は実名入りで、NDA締結「後」に提示する。
  • よく問われる点売上高等の財務情報を1円単位で記載すると、財務情報データベース等で対象企業が特定される可能性がある。
  • よく問われる点送付先はロングリストから選ぶ。情報拡散防止のため、数社に絞ったショートリスト先にのみ送るケースもある。

別名・略称:ティーザー、ノンネーム図解で確認:マッチング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.19、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.52、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20(当社にて要約)

は行

廃業・再チャレンジ枠

はいぎょう・さいちゃれんじわくM&A実務

事業承継・M&A補助金の枠の一つで、M&Aで譲り渡せなかった中小企業者等の株主等が再挑戦のために廃業する費用を補助するもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aで譲り渡し先を探したものの見つからず、既存の事業をたたんで新しい挑戦をしたいという経営者を後押しする枠です。事業承継・M&A補助金の枠の一つで、中小企業者等の株主や個人事業主が新たなチャレンジのために既存事業を廃業する費用(廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費等)を補助します。他の枠と併せて申請する方法(併用申請)と、この枠だけで申請する方法(単独申請)があります。単独申請では、2020年以降に売り手としてM&Aに着手し、事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼、M&A支援機関との契約、M&Aマッチングサイトへの登録のいずれかで3か月以上取り組んでいることが条件です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える単独申請(14次公募)は補助下限50万円・上限300万円以内、補助率2/3以内。売り手としてのM&Aの取組は「3か月以上」が条件。
  • 似た用語との違い単独申請は会社自体の廃業(解散・清算)の完了が要件で、一部廃業は不可。他の枠との併用申請では一部廃業も対象になる。
  • よく問われる点法人の廃業を単独申請する場合は、廃業する会社と支配株主・株主代表との共同申請が必須。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継・M&A補助金 14次公募のご案内(4枠総合パンフレット)(当社にて要約)

賠償額の予定

ばいしょうがくのよてい法務

債務不履行があった場合の損害賠償額を、当事者があらかじめ決めておくこと(民法420条1項)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

契約違反があったとき、実際の損害額を証明するのは手間がかかります。そこで当事者は、債務不履行の場合の損害賠償額をあらかじめ決めておくことができます(民法420条1項)。これが賠償額の予定です。賠償額を予定しても、履行の請求や契約の解除はできます(420条2項)。契約書で「違約金」と定めた場合は、賠償額の予定と推定されます(420条3項)。M&Aでは、秘密保持契約や仲介契約の違約金条項、直接交渉の禁止に違反した場合の違約金などで問題になります。知識・スキルマップは、法務DDの契約調査で、違約罰の設定など一定の義務を課す条項を確認する対象として挙げています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点契約で定めた「違約金」は賠償額の予定と推定される(民法420条3項)。賠償額の予定があっても履行請求・解除はできる。
  • 似た用語との違い違約罰は、債務不履行の制裁として違約金の請求に加えて実際に生じた損害の賠償も請求できるもの。賠償額の予定とは異なる。

別名・略称:違約金、違約罰図解で確認:法務基礎出典:民法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.118(当社にて要約)

配当還元方式

はいとうかんげんほうしき財務・税務

株式から受け取る1年間の配当金額を10%の利率で還元して、取引相場のない株式を評価する方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

配当還元方式は、取引相場のない株式の特例的評価方式です。同族株主以外の株主等、つまり会社の経営を支配する立場にない株主が取得した株式は、会社規模にかかわらずこの方式で評価します。その株式を所有することで受け取る1年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して、元本である株式の価額を求めます。還元とは、毎年その配当を生む元本はいくらかを逆算することで、配当金額を10%で割り戻すことに当たります。どの株主が配当還元方式の対象になるかは、同族株主の判定(議決権30%・50%基準など)によって決まります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える還元利率は10%(5%は誤り)。
  • よく問われる点同族株主以外の株主等が取得した株式は、会社規模にかかわらず配当還元方式で評価する。
  • よく問われる点中心的な同族株主のいる会社で議決権5%未満の役員でない同族株主等や、同族株主のいない会社で議決権15%未満のグループの株主も配当還元方式。

図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4638 取引相場のない株式の評価、財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)、財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)(当社にて要約)

破産

はさん法務

支払不能などに陥った債務者の財産を、裁判所が選任した破産管財人が管理・処分して清算する手続。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

債務者が支払不能(法人の場合は支払不能又は債務超過)にあるとき、裁判所が破産手続を開始します。支払を停止したときは支払不能と推定されます(破産法15条・16条)。開始後は、財産を管理・処分する権限が破産管財人に専属するため、会社の代表取締役が自分の判断で財産や事業を処分することはできません。それでも事業に価値が残っていれば、破産管財人が裁判所の許可を得て事業を譲渡し、事業そのものを存続させることがあります。この許可に当たって裁判所は労働組合等の意見を聴きます。許可のない行為は無効ですが、善意の第三者(事情を知らない第三者)には対抗できません(78条)。管財人は、裁判所の許可を得て破産者の事業を継続することもできます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「破産手続開始後も代表取締役が財産の管理処分権を持つ」は誤り。管理処分権は破産管財人に専属する。
  • よく問われる点管財人が事業を譲渡するには裁判所の許可が必要。許可のない行為は無効だが、善意の第三者には対抗できない。
  • 似た用語との違い民事再生は、破産手続開始の原因となる事実が生ずる「おそれ」の段階で申し立てられる。

別名・略称:破産手続、破産管財人図解で確認:法務基礎出典:破産法、破産法、破産法(当社にて要約)

発行済株式

はっこうずみかぶしき法務

株式会社がすでに発行している株式。その総数を発行済株式総数という。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社が定款で発行できると定めた株式のうち、実際に発行したものを指します。M&Aの手続の定義によく出てくる言葉で、会社法2条は、株式交換を「発行済株式の全部を既存の他の会社に取得させること」、株式移転を「発行済株式の全部を新たに設立する会社に取得させること」と定めています。株式譲渡でも、会社の全株式を譲り受け側に譲渡するのが典型です。中小M&Aガイドラインは、この場合、基本的に譲り渡し側経営者が全株式を保有しておく必要があるとしています。株式が親族などに分散していれば、他の株主からの買取り(とその資金の調達)が必要になることもあります。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い株式交換は発行済株式の全部を既存の会社に、株式移転は新たに設立する会社に取得させる。入れ替えに注意。
  • ひっかけに注意「株式交付は発行済株式の全部を取得する手続」は誤り。株式交付は他社を子会社にするための手続で、全部の取得は要しない。
  • 義務か・望ましいか全株式を譲渡する株式譲渡では、基本的に譲り渡し側経営者が全株式を保有しておく「必要」がある(GL)。

別名・略称:発行済株式総数図解で確認:法務基礎出典:会社法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.35(当社にて要約)

発生主義

はっせいしゅぎ財務・税務

費用や収益を、入金・出金の時点ではなく、取引が発生した期間に割り当てて計上する考え方。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会計では、お金を受け取った・支払った時ではなく、取引が発生した時点で収益や費用を計上します。これを発生主義といい、損益計算書を作るときの基本原則の1つです。たとえば、前払費用・前受収益は当期の損益から除き、未払費用・未収収益は当期に計上します。ただし収益は、未実現の収益を計上しないよう、原則として実現主義(販売やサービス提供をして対価を得た時に計上)によります。中小会計要領でも、費用は発生原因となる取引が発生した時又はサービスの提供を受けた時に計上するとしています。この結果、利益と資金の増減は一致しません。在庫の購入や借入金の元金返済は支出でも費用ではなく、減価償却費は費用でも支出を伴いません。利益が出ていても資金が足りずに倒産することがあり、これを黒字倒産といいます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い収益は原則として実現主義、費用は発生主義で計上する。両者を入れ替えた選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意「利益が出ていれば資金不足で倒産することはない」は誤り。利益と資金は一致せず、黒字倒産があり得る。
  • よく問われる点借入れは収入だが収益ではなく、元金返済は支出だが費用ではない。減価償却費・引当金は支出を伴わない費用。

別名・略称:発生主義の原則図解で確認:財務基礎出典:企業会計原則(企業会計審議会、最終改正昭和57年)本文の転載(Wikibooks)、中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

バリュエーション

ばりゅえーしょんM&A実務

企業又は事業の価値を定量的に評価すること。企業価値評価・事業価値評価ともいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社をいくらで譲るかを話し合うための土台になる作業です。知識・スキルマップは、その目的を「客観的事実に基づいたバリュエーションを行い、交渉の前提とすること」としています。評価額は、中小M&Aで譲渡額を決める際の目安の一つにすぎず、最終的な譲渡額は当事者同士の交渉で合意した金額になります。評価手法は様々で、企業の実態や事業の特性等に応じて選びます。大きく、純資産に着目するコストアプローチ(時価純資産法・簿価純資産法等)、上場同業他社や類似取引と比べるマーケットアプローチ(マルチプル法等)、将来のキャッシュフローや利益から算定するインカムアプローチ(DCF法等)に分類されます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「評価額がそのまま譲渡額として確定する」は誤り。評価額は譲渡額を決める際の目安の一つで、合意した金額が譲渡額となる。目的は交渉の「前提」とすること。
  • よく問われる点中小M&Aでは時価純資産法で算定されるケースが多い(DCF法ではない)。財産評価基本通達の純資産価額方式は時価純資産法に類似する。
  • 似た用語との違いマルチプル法=マーケットアプローチ、DCF法=インカムアプローチ、時価純資産法=コストアプローチ。

別名・略称:企業価値評価、事業価値評価図解で確認:バリュエーション出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.22、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.119、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.18(当社にて要約)

反社会的勢力

はんしゃかいてきせいりょく法務倫理・行動規範

暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋等や、これらに準ずる者のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aの相手方や関係者が反社会的勢力であれば、取引そのものが大きな問題になります。中小M&Aガイドラインの株式譲渡契約書サンプルは、反社会的勢力を、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等、これらに準ずる者と定義しています。そして、当事者が反社会的勢力でないことや、資金の提供・便宜の供与・経営への関与その他一切の関係・交流がないことを表明保証の対象とし、その違反は催告なしに書面通知で解除できる事由としています。中小M&A専門人材の倫理・行動規範も、反社会的勢力等への利益の供与や事実上の交流をしてはならず、反社等不適切な顧客・関係者でないかを取引開始前に確認することを求めています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点契約書サンプルでは、反社関係の表明保証違反は催告なしに書面通知で解除できる事由とされている。
  • よく問われる点対象会社の従業員については「甲の知る限り」と限定を付けて保証する形になっている。
  • ひっかけに注意反社チェックをせずに取引を始める、反社会的勢力と取引・交流するのは禁忌肢になりうる。

別名・略称:反社図解で確認:不適切な個人・組織、反社等との関係出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.32、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12(当社にて要約)

反対株主の株式買取請求

はんたいかぶぬしのかぶしきかいとりせいきゅうM&A実務法務

事業譲渡等や組織再編に反対する株主が、会社に株式を公正な価格で買い取るよう求める権利。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業譲渡等や合併・会社分割などは株主総会の多数決で決まるため、反対した少数株主にも会社から出ていく道を用意しておく必要があります。これが株式買取請求で、反対株主は会社に対し自分の株式を「公正な価格」で買い取るよう請求できます(会社法469条1項、785条1項、存続会社側は797条1項)。会社は効力発生日の20日前までに株主に通知し(公開会社や総会で承認済みの場合は公告で代替可)、株主は効力発生日の20日前の日から前日までに請求します。価格の協議が効力発生日から30日以内に調わないときは、その後30日以内に裁判所に価格の決定を申し立てられます(470条2項)。なお、簡易手続による場合などは買取請求ができません。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える通知は効力発生日の20日前まで、請求期間は効力発生日の20日前の日から前日まで。
  • よく問われる点いったんした買取請求は、会社の承諾がなければ撤回できない(785条7項)。
  • ひっかけに注意「簡易手続でも反対株主は常に買取請求できる」は誤り。簡易の譲受けや簡易分割の場合などは請求できない。

別名・略称:株式買取請求図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法、会社法(当社にて要約)

パーチェス法

ぱーちぇすほう財務・税務

「取得」とされる企業結合の会計処理方法。受け入れた資産・負債を時価で計上する。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aで他社や事業を手に入れたときの会計処理は、企業結合会計基準で決まります。企業結合のうち、共同支配企業の形成と共通支配下の取引(同じ親会社の下にある会社同士の合併など)以外は「取得」とされ、パーチェス法で処理します。パーチェス法では、取得企業は被取得企業から受け入れた資産と引き受けた負債を時価で計上し、取得原価との差額をのれん(又は負ののれん)とします。どちらが取得企業かは、通常は現金等を支払う側、株式を交付する側ですが、議決権比率や取締役の選解任権、規模などを総合的に考えて決めるため、株式を交付した側が実質的には取得される逆取得もあり得ます。一方、親子会社間や子会社同士の合併は共通支配下の取引で、資産・負債は帳簿価額で引き継ぎます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「株式を交付する企業が常に取得企業で、逆取得はない」は誤り。議決権比率等を総合勘案し、逆取得もあり得る。
  • 似た用語との違い子会社同士・親子会社間の合併は共通支配下の取引。時価評価せず適正な帳簿価額で引き継ぎ、原則として新たなのれんも生じない。

図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)(当社にて要約)

ヒアリングシート

ひありんぐしーとM&A実務

M&Aの相談を受けたときに依頼者へ確認する事項をまとめたシートのこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

知識・スキルマップの「事前相談」の段階で出てくる道具です。依頼者から効果的に情報を引き出すために作り、事前に送っておくと効率よくヒアリングできます。確認事項は3つに分けて整理します。①企業に関する情報(売上、利益、従業員数、財務内容、業種、商流、株主構成、成長戦略等)②経営者に関する情報(年齢、家族構成、M&Aを検討する背景・理由等)③M&Aに関する希望(期限、相手候補先、経済的な条件、代表者等の処遇等)です。質問の内容・量は依頼者の負担にならない程度にとどめます。また、作成にはM&Aのスキームに係る税務の知識も必要とされます。秘密保持契約を結ばずにヒアリングすると、得られる情報は限られます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点区分の当てはめが問われる:株主構成=企業に関する情報、家族構成=経営者に関する情報、代表者等の処遇=M&Aに関する希望。
  • よく問われる点M&Aを進める場合、譲り渡し側の親族又は社内に後継者候補がいないことを確認することが重要とされる。
  • よく問われる点秘密保持契約を締結しない場合は、依頼者から得られる情報が限定的になる点に留意する。

図解で確認:事前相談出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.27(当社にて要約)

非課税取引(消費税)

ひかぜいとりひき財務・税務

消費税の課税対象となる取引のうち、性格上又は社会政策的な配慮から消費税を課さない取引。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

消費税の課税対象(国内で事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等)に当たる取引でも、その性格上、又は社会政策的な配慮から、消費税を課さないものがあります。これが非課税取引です。代表例は、土地(借地権を含む)の譲渡・貸付け、株式・社債・合名会社等の持分などの有価証券等の譲渡、貸付金の利子・信用保証料・保険料などです。M&Aでは、株式譲渡は有価証券等の譲渡として非課税取引に当たり、消費税は生じません。事業譲渡では、譲渡する資産のうち土地・有価証券・売掛金などの金銭債権が非課税資産となります。ただし例外もあり、1か月未満の土地の貸付けや駐車場等は課税され、株式・出資形態のゴルフ会員権の譲渡も課税です。なお、給与や寄附金などは、そもそも課税対象外(不課税)であり、非課税とは区別されます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「株式譲渡には消費税がかかる」は誤り。株式・社債など有価証券等の譲渡は非課税取引。
  • よく問われる点土地の譲渡・貸付けは非課税だが、1か月未満の貸付けや駐車場等は課税。株式・出資形態のゴルフ会員権の譲渡も課税。
  • 似た用語との違い非課税は課税対象だが課税しない取引。給与・寄附金・補助金などは課税対象外(不課税)。

図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.6201 非課税となる取引、消費税法、国税庁タックスアンサー No.6105 課税の対象(当社にて要約)

引当金

ひきあてきん財務・税務

将来の特定の費用・損失のうち当期に負担すべき額を見積もって計上する、負債(又は資産の控除)の項目。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

将来に支払う費用や生じる損失でも、その原因が当期以前にあるなら、当期の費用として計上するのが適正です。そのために計上するのが引当金で、①将来の特定の費用又は損失であること、②発生が当期以前の事象に起因すること、③発生の可能性が高いこと、④金額を合理的に見積もれること、の4要件を満たす場合に計上します。代表例は、回収できないおそれのある債権に備える貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金です。M&Aの時価純資産法では、負債の網羅性を確認し、引当金の不足があれば追加で計上します。財務DDでも、引当金の計上基準を会計方針の着眼点の一つとして確認します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「将来の特定の費用なら、発生の可能性が低く金額を見積もれなくても計上する」は誤り。発生の可能性が高く、合理的に見積もれることが要件。
  • ひっかけに注意「時価純資産法では帳簿の引当金をそのまま用い、不足があっても追加計上しない」は誤り。不足があれば追加計上する。
  • 似た用語との違い回収不能が明らかな債権は貸倒損失、回収不能のおそれがある債権は貸倒引当金で処理する。

別名・略称:貸倒引当金、退職給付引当金、賞与引当金図解で確認:財務基礎出典:中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.48(当社にて要約)

非事業用資産

ひじぎょうようしさん財務・税務

事業の運営に使われていない資産。余剰の現預金、有価証券、保険積立金、遊休不動産など。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社が持つ資産には、本業に使う事業用資産と、本業には使っていない非事業用資産があります。DCF法では、事業が生むキャッシュフローから求めた事業価値に、非事業用資産(現預金等)を加えて企業価値とし、そこから有利子負債を差し引いて株主価値を求めます。財務DDでは、有利子負債から現金等の非事業資産を差し引いたネットデット(実質的な借入)を検証し、非事業資産の方が多ければネットキャッシュとなります。また中小企業では、社用車を経営者が個人で使っていたり、会社が絵画を持っていたりと、事業と個人の資産が混ざっていることがあります。こうした帰属の整理は、M&Aの成立前、できればDDの前から進めることが望ましいとされます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「事業価値から非事業用資産を差し引いて企業価値とする」は誤り。非事業用資産は加算し、有利子負債を控除して株主価値を出す。
  • よく問われる点ネットデット=有利子負債-現金等の非事業資産。非事業資産の方が多ければネットキャッシュになる。
  • 義務か・望ましいか資産の帰属整理は、仲介者・FAがDD実施前から方向性を検討することが望ましい。DDで判明するとクロージング後の処理になりやすい。

別名・略称:事業外資産、非事業資産図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.48、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.44、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.120(当社にて要約)

ビジネスDD

びじねすでぃーでぃーM&A実務

譲り渡し側のビジネスモデルを整理し、競争力・将来性・譲り受け側とのシナジーを調査・検証するDD。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業DDとも呼ばれ、会社の「稼ぐ力」と将来性を調べる調査です。譲り受け側が、譲り渡し側の将来性や買収によるシナジー効果(統合による相乗効果)を分析するため、商流や収益構造などのビジネスモデルを整理し、競争力・競争優位性・収益の源泉を調査・検証します。個別の調査の前に事業構造の全体像をつかみ、重要な論点を把握することが大切です(例:製造中心の事業なら製造プロセスを、収益への影響が大きい取引先は重点的に調べます)。市場・業界環境の分析にはPEST分析等を使います。譲り渡し側に事業計画があれば、その実現可能性をマネジメントインタビュー等で検証します。中小企業診断士は取り組みやすい立場にあるとされます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点ビジネスDDはPMIの計画策定・実行との関連性が高く、調査結果はPMI実施者とも可能な限り共有する。
  • 似た用語との違いビジネスDDの目的は将来性・シナジーの分析。法令違反や訴訟の確認は法務DD、収益力・財務リスクの把握は財務DD。
  • ひっかけに注意「診断士は財務・税務・法務も各士業と同等なので単独でDD全般を担う」は誤り。同等ではなく、公認会計士・税理士・弁護士等と連携が必要。

別名・略称:事業DD図解で確認:DD(個別)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.122、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.93(当社にて要約)

非支配株主持分

ひしはいかぶぬしもちぶん財務・税務

連結財務諸表で、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

親会社が子会社の株式を100%ではなく一部(たとえば80%)だけ持っている場合、子会社の資本の残りはほかの株主のものです。連結財務諸表では、親会社と子会社の財務諸表を合算したうえで、親会社の投資と、それに対応する子会社の資本(親会社持分)を相殺消去します。このとき、子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分を非支配株主持分として表示します。子会社の資産・負債は支配獲得日の時価で評価してから計算します。かつては少数株主持分と呼ばれていましたが、議決権の過半数を持たない株主でもほかの会社を支配し親会社となることがあり得るため、より正確な表現として平成25年の改正会計基準で非支配株主持分に変更されました。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点のれん=親会社の投資-子会社の資本(時価評価後)×親会社持分比率。非支配株主持分=子会社の資本×親会社以外の持分比率。
  • 似た用語との違い「少数株主持分」は旧称。平成25年改正会計基準で「非支配株主持分」に変更された。

別名・略称:少数株主持分図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(ASBJ)、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(ASBJ)、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(ASBJ)(当社にて要約)

否認権

ひにんけん法務

破産手続などの開始後に、債権者を害する行為や一部の債権者だけを優遇する行為の効力を覆す権利。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社が破産に向かう過程で財産を安く手放したり、特定の債権者にだけ返済したりすると、ほかの債権者への配当が減ってしまいます。そこで破産法は、破産手続開始後に、こうした行為の効力を否定できる否認権を定めています。破産者が債権者を害することを知ってした行為は、受益者がそのことを知らなかった場合を除き否認できます(160条1項1号、詐害行為否認)。相当の対価を得てした財産の処分(事業譲渡など)は、隠匿等の処分のおそれを現に生じさせ、破産者に隠匿等の意思があり、相手方がそれを知っていた場合に限り否認できます(161条1項)。支払不能後に既存債務について担保を提供したり弁済したりする行為も、債権者が悪意なら否認できます(162条、偏頗行為否認)。民事再生法にも同様の規定があります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える否認権は破産手続開始の日から2年、行為の日から10年を経過すると行使できない(176条)。義務のない担保供与等は支払不能前30日以内も対象。
  • よく問われる点相当対価での処分の否認は、隠匿等のおそれ・破産者の隠匿等の意思・相手方の悪意の3要件。相手方が役員・親族等なら悪意が推定される。
  • よく問われる点債務超過企業の事業を不当に安い価格で関係会社に譲渡すると、後の法的整理で否認される(効力を否定される)おそれがある。

別名・略称:詐害行為否認、偏頗行為否認図解で確認:法務基礎出典:破産法、破産法、破産法(当社にて要約)

非弁行為

ひべんこうい法務倫理・行動規範

弁護士でない者が、報酬目的で法律事件に関する法律事務を取り扱ったり周旋したりすることを業とすること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法律の専門家でない者が他人の法律問題に介入すると、当事者の利益を損なうおそれがあります。そこで弁護士法72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件・非訟事件その他一般の法律事件に関して、鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱い、又はその周旋をすることを業とすることを禁じています(他の法律に別段の定めがある場合を除く)。M&Aでは、仲介者・FAが報酬を得て当事者間の紛争の交渉を代理したり、法的な見解(鑑定)を示したりするとこれに当たるおそれがあります。中小M&Aガイドラインは、役務の範囲にかかわらず、当事者間の紛争解決に向けた支援は非弁行為に該当しうる旨を依頼者に説明しなければならないとしています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える違反は2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(弁護士法77条3号)。
  • 義務か・望ましいか紛争解決支援が非弁行為に該当しうる旨の説明は「しなければならない」。必要に応じ弁護士等の意見を求める旨の説明は「望ましい」。
  • ひっかけに注意資格のない仲介者・FAが報酬を得て、当事者間の紛争の和解交渉を代理するのは禁忌肢になりうる。

別名・略称:弁護士法72条図解で確認:法務基礎出典:弁護士法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.87(当社にて要約)

秘密情報

ひみつじょうほうM&A実務法務

秘密保持契約等で、第三者への開示や目的外の使用が禁じられる対象となる情報。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

どの情報を守るべきかをはっきりさせるため、契約書で定義されます。中小M&Aガイドラインの各契約書サンプルでは、秘密情報を次の3類型と定義しています。①取引の検討・交渉に関連して相手方から開示を受けた情報、②契約を締結した事実と契約の存在・内容、③交渉の経緯・内容に関する事実です。つまり、受け取った資料の中身だけでなく、「M&Aの話を進めている」という事実そのものも秘密です。一方、①のうち、開示時点で既に公知だったもの、受領者が既に正当に保有していたもの、開示後に受領者の責めによらず公知となったもの、正当な権限を持つ第三者から秘密保持義務なく入手したもの、秘密情報を使わず独自に開発したものは、秘密情報から除外されます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「除外事由は契約の存在や交渉経緯にも適用される」は誤り。除外事由が及ぶのは相手方から開示を受けた情報だけ。
  • ひっかけに注意「受領者の責めに帰すべき事由で公知になった情報は除外される」は誤り。秘密情報のままである。
  • よく問われる点「契約を締結した事実」自体も秘密情報に含まれる。

図解で確認:秘密保持契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.3(当社にて要約)

秘密保持契約(NDA)

ひみつほじけいやくM&A実務法務

相手から受け取った情報を外にもらさないことを約束する契約のこと。NDAやCAともいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、会社を譲ろうとしていること自体が秘密で、外にもれると従業員や取引先が動揺するおそれがあります。そこで、情報を渡す前に結ぶのが秘密保持契約です。主に2つの場面があります。①譲り受け側が、ノンネーム・シート(社名を伏せた概要)を見て関心を持ち、より詳しい情報を得るために譲り渡し側と結ぶ場合。②譲り渡し側や譲り受け側が仲介者・FAと結ぶ場合で、こちらは仲介契約・FA契約の中に秘密保持条項として入れられることが多いです。締結方法には双方押印と差し入れ型があり、情報漏えい防止の観点から選びます。士業等専門家や引継ぎ支援センター等に相談できるよう、相談先を秘密保持の対象から除外することも求められます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「ノンネーム・シートで関心を持った譲り受け側が詳細情報を得るために結ぶのは基本合意書」は誤り。結ぶのは秘密保持契約。企業概要書の交付はNDA締結後。
  • よく問われる点仲介者・FAとの秘密保持は、独立した契約でなく仲介契約・FA契約の中の秘密保持条項として定められることが多い。
  • 義務か・望ましいかNDAに直接交渉の制限・専任条項・テール条項等の重要事項が含まれる場合は、重要事項説明に準じた対応が「望ましい」。

別名・略称:NDA、CA、秘密保持契約図解で確認:秘密保持契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.25(当社にて要約)

評価損

ひょうかそん財務・税務

資産の時価や価値が帳簿価額より著しく下がったときに、帳簿価額を引き下げて計上する損失。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

資産を帳簿価額のまま載せておくと、実際の価値より大きく見え、決算書が実態を表さなくなります。そこで中小会計要領では、価値が大きく下がった資産について評価損を計上します。棚卸資産と有価証券は、時価が取得原価より著しく下落したとき、回復の見込みがあると判断した場合を除き評価損を計上します(有価証券は50%程度以上の下落が目安)。非上場株式は、大幅な債務超過などで価値がほとんどない場合に計上が必要です。固定資産は、災害などで著しく価値が下がったときに計上します。中小M&Aでは、譲り受け側に財務書類を出す前に、評価損などを検討して適正な財務書類をつくることが望まれます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「著しく下落しても、回復見込みの有無にかかわらず評価損は計上しない」は誤り。回復の見込みがあると判断した場合を除き計上する。
  • 数字を覚える有価証券の「著しい下落」は、取得原価から50%程度以上の下落が目安。
  • 義務か・望ましいか評価損等は譲り受け側への提出前に検討し、適正な財務書類の作成を支援することが望まれる。「成立後に計上」と助言するのは不適切。

図解で確認:財務基礎出典:中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月、中小企業の会計に関する検討会報告書(中小企業の会計に関する基本要領を含む)平成24年3月(当社にて要約)

表見代理

ひょうけんだいり法務

代理人が権限外の行為をしても、相手方に権限があると信じる正当な理由があれば本人に効果が及ぶ制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

代理人が本人のためにすることを示して権限内でした意思表示は、本人に直接効果を生じます(民法99条1項)。では代理人が権限を超えた行為をしたらどうなるでしょうか。本人に効果が及ばないのが原則ですが、それでは代理人を信じて取引した相手方が不利益を受けます。そこで民法110条は、代理人が権限外の行為をした場合でも、相手方に代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人に効果が帰属するとしています。これが表見代理です。M&Aでは、基本合意や最終契約の締結の際に、署名者に代表権があるか、必要な決裁手続を経ているかを確認することが大切です。取締役会設置会社では、重要な財産の処分や多額の借財に取締役会の決議が必要です(会社法362条4項)。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点効果が本人に及ぶには、相手方に「代理人の権限があると信ずべき正当な理由」が必要(民法110条)。
  • よく問われる点契約締結では、署名者の代表権と決裁手続(取締役会設置会社の重要な財産の処分は取締役会決議、会社法362条4項)を確かめる。

図解で確認:法務基礎出典:民法、会社法(当社にて要約)

標準原価

ひょうじゅんげんか財務・税務

材料などの消費量を能率の目安となるよう科学的・統計的に予定し、予定価格等で計算した原価。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

製品をつくるのにかかった費用(原価)の計算は原価計算基準に定められており、実際原価計算制度と標準原価計算制度があります。標準原価は、材料や作業時間などの消費量を、科学的・統計的な調査に基づいて「このくらいで作れるはず」という能率の尺度(目安)として予定し、予定価格又は正常価格を掛けて計算した原価です。実際にかかった原価と標準原価を比べることで、無駄や非効率を見つけられます。そのため標準原価を設定する最も重要な目的は原価管理の効率化で、棚卸資産の価額の算定や予算編成の基礎にも使われます。制度としての標準原価は、現実的標準原価又は正常原価であり、最高の能率を前提とした理想標準原価は含みません。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「理想標準原価も制度としての標準原価に含まれる」は誤り。制度上の標準原価は現実的標準原価又は正常原価。
  • よく問われる点標準原価を設定する最も重要な目的は原価管理。棚卸資産価額の算定や予算編成の基礎にも使われる。
  • 似た用語との違い臨時的な特殊原価調査(経営意思決定のための計算)は、制度としての原価計算の範囲外。

別名・略称:標準原価計算図解で確認:財務基礎出典:原価計算基準(企業会計審議会中間報告、昭和37年11月8日)本文の転載(Wikibooks)、原価計算基準(企業会計審議会中間報告、昭和37年11月8日)本文の転載(Wikibooks)(当社にて要約)

表明保証

ひょうめいほしょうM&A実務法務

契約の一方当事者が、一定の時点で一定の事項が真実かつ正確であることを相手方に表明し、保証すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、DD(買収前の調査)をしても会社の問題をすべて見つけられるとは限りません。そこで最終契約の中で、「このような問題はありません」と約束するのが表明保証条項です。一般に最終契約締結時とクロージング時の両時点を基準に行い、違反があったときの補償請求や契約解除の規定もあわせて設けるのが通常です。これにより、当事者の間で見えないリスクを分担します。主な表明保証事項は、株式関係、税務申告の適正、会社法の手続が適法であること、開示情報に虚偽がないこと、開示されていない偶発債務・訴訟がないことなどです。ただし無制限・過大に設定すると、譲り渡し側がクロージング後に過大なリスクを負うため、慎重な検討が必要です。

例労働紛争はないと表明保証していたのに実際は紛争があり、M&A後に和解した場合、和解金相当額を譲り渡し側が負担することが想定されます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点基準時点は一般に「最終契約締結時とクロージング時の両時点」。締結時だけ、クロージング時だけとする選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意「表明保証は譲り渡し側だけが行う」は誤り。譲り受け側も、設立・存続、締結の権限、反社会的勢力との関係の不存在等を表明保証する。
  • よく問われる点DD等で開示した情報でも、表明保証の対象から除外する規定がなければ、補償の対象とされるリスクが残る。

別名・略称:表明保証条項図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.22、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.140、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.145(当社にて要約)

表明保証保険

ひょうめいほしょうほけんM&A実務法務

表明保証違反があった場合に、譲り渡し側又は譲り受け側が被る損害を填補する保険。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

表明保証や補償の範囲をめぐっては、譲り渡し側は「売った後に責任を負いたくない」、譲り受け側は「隠れた問題で損をしたくない」と考え、交渉が難航することがあります。そこで使われるのが表明保証保険(M&A保険)で、表明保証違反のリスクを保険会社に引き受けてもらいます。売主用は譲り渡し側の損害を、買主用は譲り受け側の損害を填補(穴埋め)するもので、どちらの側でも加入できます。譲り渡し側は売却後の責任が軽くなり、譲り受け側は損害が補われるため、交渉が円滑になることがあります。代金の一部後払いやエスクローを譲り渡し側が拒む場合の代替手段にもなります。日本国内でも一部の損害保険会社が提供を始めています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「保険に加入すればDDは不要」は誤り。加入には一般にDDレポート等を保険会社に提出し、引受審査を経る必要がある。
  • よく問われる点クロージング以前に知っていた表明保証違反や、違反のおそれを合理的に予期できた事実は免責事由で、填補されない。
  • ひっかけに注意「加入できるのは譲り受け側だけ」は誤り。譲り渡し側(売主用)・譲り受け側(買主用)のどちらでも加入できる。

別名・略称:M&A保険図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.23、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.53、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.141(当社にて要約)

非流動性ディスカウント

ひりゅうどうせいでぃすかうんと財務・税務

中小企業の株式は上場株式より流動性が低いことを考慮して、算定した株式価値を減額する調整。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

上場会社の株式は市場で売買できますが、中小企業の株式は上場会社の株式に比べて流動性が低い(売りたいときに売りにくい)という違いがあります。そこで中小M&Aでは、EV/EBITDA倍率法などで算定した株式価値を、30%程度ディスカウントするケースもあるとされます。この調整を非流動性ディスカウントといいます。計算問題では適用する順序が問われます。まず対象会社のEBITDAに倍率を掛けて企業価値を求め、そこから純有利子負債を差し引いて株式価値を出し、その株式価値にディスカウントを適用します。

例仮の数値で、EBITDA8,000万円×5倍=4億円、純有利子負債5,000万円を差し引いた株式価値3億5,000万円に30%のディスカウントを適用すると、2億4,500万円です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える中小企業の株式は流動性が低いため、算定した株式価値を30%程度ディスカウントするケースがある。
  • ひっかけに注意ディスカウントは純有利子負債を控除した後の株式価値に適用する。EVに適用してから純有利子負債を控除する計算は誤り。
  • 似た用語との違いDCF法で将来キャッシュ・フローを割り引く率はWACCで、非流動性ディスカウントとは別物。

図解で確認:バリュエーション(財務)出典:参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.4(当社にて要約)

品位

ひんい倫理・行動規範

倫理・行動規範の大分類の一つで、見識と品位を保ち、業界への信頼を高めることを求める規範。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&A専門人材の倫理・行動規範は、全48条を8つの大分類に分けており、その一つが「品位」です。支援者には、常に見識と品位の保持・向上に努め、業界に対する信頼を高めることが求められます。そのうえで、品位を損なう事業を営んだり参入したりしてはならず、これらの事業に自己の名義を利用させてもなりません(名義貸しの禁止)。また、職業上の誠実性、社会的信頼、品位を損なう行為や、公序良俗に反する行為をしてはなりません。関係者を欺罔(だますこと)・脅迫する行為や、不当な要求をする行為も禁止されています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意品位を損なう事業に自己の名義を利用させる(名義貸し)のも禁止。自ら営まなければよい、は誤り。
  • ひっかけに注意相手方を脅して条件をのませる、関係者を欺く、不当な要求をするのは禁忌肢になりうる。

別名・略称:品位の保持図解で確認:品位出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12(当社にて要約)

PER倍率法

ぴーいーあーるばいりつほう財務・税務

類似上場企業等の業界平均のPERを対象会社の当期純利益に掛けて、株主価値を算定する手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

PER倍率法は、マーケットアプローチに属するマルチプル法(類似会社比較法)の1つです。対象会社と似た上場企業等の業界平均のPERを用いて、対象会社の当期純利益に掛けることで株主価値を算定します。マルチプル法には、使う倍率によって、EV/EBITDA倍率法(EBITDAから企業価値を算定)、PER倍率法(当期純利益から株主価値を算定)、PBR倍率法(簿価純資産から株主価値を算定)があり、どの指標に掛けて何が算定されるのかの組合せを正確に区別することが大切です。類似する会社は公開会社から選定します。中小M&Aでは主にEV/EBITDA倍率法が使われますが、PER倍率法・PBR倍率法も用いられます。

例仮の数値で、当期純利益3,000万円・業界平均PER12倍なら株主価値は3億6,000万円、簿価純資産2億円・PBR1.5倍ならPBR倍率法で3億円です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意PER倍率法で倍率を掛けるのは当期純利益。営業利益に掛ける計算は誤り。
  • 似た用語との違いPBR倍率法は簿価純資産に倍率を「掛けて」株主価値を算定する(簿価純資産を倍率で割るのは誤り)。
  • ひっかけに注意「類似会社を非公開会社の中から選定する」は誤り。マルチプル法の類似会社は公開会社から選定する。

別名・略称:PER図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42(当社にて要約)

PEファンド

ぴーいーふぁんどM&A実務

非上場企業の株式を取得して経営に関与し、企業価値を高めた後にエグジットするファンドのこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

知識・スキルマップで、譲り受け側の候補先を一覧にするロングリスト作成の場面で求められる知識として挙げられています。PEファンドは、非上場企業の株式を取得し、投資先企業にノウハウ・人材・ビジネスネットワーク等を提供しながら経営に関与して企業価値の向上に取り組み、最終的には株式を手放して投資を回収(エグジット)します。種類として、ベンチャーキャピタル、バイアウトファンド、再生ファンド、ディストレストファンドが挙げられます。メリットは、PEファンドのノウハウを活用した企業価値向上が可能なことです。PEファンドがスポンサーとなるLBOでは、中間持株会社を介して買収SPC(買収のための会社)を設立し、銀行団からの借入れで買収します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点PEファンドは最終的にエグジットする(永続的に保有しない)。種類はベンチャーキャピタル・バイアウトファンド・再生ファンド・ディストレストファンド。
  • よく問われる点LBOでは、ファンド→中間持株会社(HoldCo)→買収SPCの順に出資し、買収後にSPCと対象会社が合併した新会社が主に内部留保で借入を返済する。

図解で確認:マッチング出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.55、日銀レビュー「LBOファイナンスの動向とリスク管理」(2024年5月、2024-J-8)(当社にて要約)

PMI

ぴーえむあいM&A実務

M&Aのクロージング後の一定期間内に行う経営統合作業(Post-Merger Integration)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aはクロージングで終わりではありません。譲り受けた事業を円滑に続け、さらに成長させるために、クロージング後の一定期間内に行う経営統合作業をPMI(Post-Merger Integration)といいます。PMIを行うのは譲り受け側で、必要に応じてPMI支援機関が支援します。スキルマップは、PMIを経営統合、信頼関係の構築、業務統合の3つの領域に分けています。M&Aの「成功」は、当初期待した効果を実現できるかどうかで決まり、クロージング(成立)とは区別されます。そのため、譲り受け側とM&A支援者は成立だけを目的にせず、M&Aプロセスの段階からPMIを見据えて検討を始めることが望ましいとされます。DDの目的にも、PMIに向けた課題の整理が含まれます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いM&Aの「成功」は当初期待した効果の実現、「成立」はクロージング。成立だけを目的にしない。
  • よく問われる点PMIを実施するのは譲り受け側で、PMI支援機関が支援する。領域は経営統合・信頼関係の構築・業務統合の3つ。
  • ひっかけに注意「DDの目的は実行可否・譲渡額等の検討に限られ、PMIに向けた課題整理は含まない」は誤り。PMIに向けた課題整理も含まれる。

別名・略称:Post-Merger Integration、経営統合図解で確認:クロージング後(PMI)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.21、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.169、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.168(当社にて要約)

PMI実践ツール

ぴーえむあいじっせんつーるM&A実務

中小PMIガイドラインのステップを踏まえてPMIに取り組むために、中小企業庁が策定したツール。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aの成功は、成立したかどうかではなく、当初期待した効果を実現できるかで決まります。その鍵となるのがクロージング後の経営統合作業(PMI)で、中小企業庁は令和4年3月に中小PMIガイドラインでその「型」を示しました。これを実際の作業に落とし込むために作られたのがPMI実践ツールで、中小企業庁が令和6年3月に策定しました。ガイドラインの標準的なステップ・取組等を踏まえてPMIに取り組むためのもので、①PMI分析ワークシート、②PMIアクションプラン、③統合方針書の3つのツールがあります。あわせて、活用方法を解説した「PMI実践ツール活用ガイドブック」も公表されています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える策定は「令和6年3月」(中小企業庁)。中小PMIガイドラインは「令和4年3月」。
  • よく問われる点3つのツールは、PMI分析ワークシート・PMIアクションプラン・統合方針書。「PMIチェックリスト」は含まれない。

図解で確認:クロージング後(PMI)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.22、事業承継支援マニュアル(令和7年度版、令和7年11月 中小企業基盤整備機構)抄録(当社にて要約)

PMI推進枠

ぴーえむあいすいしんわくM&A実務

事業承継・M&A補助金の枠の一つで、M&A後のPMIに係る専門家費用や統合に伴う設備投資等を補助するもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aが成立した後、譲り受けた会社との経営統合(PMI)を進めるにも、専門家への依頼や設備投資の費用がかかります。PMI推進枠は、M&Aを行った又は行う予定の中小企業者等のPMIの費用を補助する事業承継・M&A補助金の枠です。PMIの専門家費用を補助する「PMI専門家活用類型」と、統合に伴う設備投資等を補助する「事業統合投資類型」の2つの類型があります。M&Aの成立前(クロージング前)に承継者がDDを実施していることが要件で、対象はクロージング後1年以内のPMIです。プレPMI(成立前の取組)やポストPMIは対象外で、親族間の承継やグループ内の再編も対象になりません。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚えるPMI専門家活用類型は上限150万円・補助率1/2以内・下限50万円。事業統合投資類型は上限800万円(賃上げで1,000万円)、補助率1/2又は2/3(小規模企業者)。
  • よく問われる点クロージング前に承継者がDDを実施していることが要件。対象はクロージング後「1年以内」のPMI。
  • よく問われる点2類型は前後関係があり同一公募回での同時申請は不可。PMI専門家活用類型は、専門家活用枠(買い手支援類型)との同時申請ができる。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継・M&A補助金 14次公募のご案内(4枠総合パンフレット)(当社にて要約)

ファイア・ウォール

ふぁいあ・うぉーるM&A実務倫理・行動規範

金融機関が、法令・指針等による秘密保持義務に基づき、外部との関係で行う厳格な情報管理。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

金融機関は中小企業の財務情報など多くの機微な情報を持っており、銀行法や中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針等(法令・指針等)による秘密保持義務を負っています。これに基づき、外部との関係で顧客情報を厳格に管理することをファイア・ウォールといいます。中小M&Aでは、特に地方の金融機関で顧客同士が顔見知りのことが多く、社名を伏せたノンネームの情報でも相互に相手を特定できてしまう可能性が高い点に注意が必要です。そのため、開示する情報の内容をよく吟味し、可能であれば早急に秘密保持契約を締結して、特に譲り渡し側の情報が外部に流出しないよう譲り受け側に注意を促します。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い外部との関係での厳格な情報管理=ファイア・ウォール。融資部門と仲介・FA部門の間の情報隔壁=チャイニーズ・ウォール。
  • よく問われる点ノンネームでも特定されやすいのは「地方」(顧客同士が顔見知り)。可能であれば早急に秘密保持契約を締結する。
  • よく問われる点根拠は、銀行法や中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針等の法令・指針等による秘密保持義務。

図解で確認:情報管理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.108、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.109(当社にて要約)

ファイブフォース分析

ふぁいぶふぉーすぶんせきM&A実務

新規参入の脅威、業界内の競合、売り手と買い手の交渉力、代替品の脅威の5つの要因で競争環境を分析する手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

ビジネスDDの競争環境分析で使う枠組みがファイブフォース分析です。譲り渡し側の会社が業界の中でどれだけ稼ぎやすい立場にあるかを、5つの競争要因から見ます。5つとは、①新規参入の脅威、②業界内の競合、③売り手(仕入先)の交渉力、④買い手(顧客)の交渉力、⑤代替品の脅威です。競争環境分析では、あわせて市場シェア、既存・潜在的な競合の特定、KSF(市場で競合に勝つための成功要因)とその持続性も検討します。競合は今の競争相手だけでなく、新規参入や代替品の登場といった潜在的な競合も含めて考えます。技術・ノウハウの構築が難しい、顧客の乗り換えコスト(スイッチングコスト)が高いなど参入障壁が高ければ、競合の影響は小さくなります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点5要因は新規参入の脅威・業界内の競合・売り手の交渉力・買い手の交渉力・代替品の脅威。「技術革新」「人口動態」(PEST)や「自社の強み」(SWOT)は含まない。
  • よく問われる点どの企業を競合とするかで分析の納得度が大きく変わるため、マネジメントインタビュー等で対象会社が競合と認識している会社を確認する。
  • よく問われる点参入障壁が高い(ノウハウ構築が難しい、スイッチングコストが高い)ほど、競合の影響は小さい。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.98(当社にて要約)

ファーストドラフト

ふぁーすとどらふとM&A実務

それまでの調整結果を踏まえ、スキームに応じた一般的な記載事項で作成する最終契約書の最初の案。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約の調整は、契約書の最初の案(ファーストドラフト)をたたき台にして進めます。仲介者・FAは、これまでの交渉で決まったことを踏まえ、株式譲渡・事業譲渡などのスキーム(手法)に応じて一般に記載する事項に基づいてドラフトを作り、依頼者にわかりやすく説明します。依頼者や依頼者の顧問弁護士がドラフトを作る場合でも、調整結果が抜け漏れなく記載されているか確認します。また、DDで新たに判明したリスクは随時ドラフトに反映し、DD後に遅滞なく最終契約の調整ができるようにします。ただし、最終的な契約書面を作ることは非弁行為(弁護士でない者が報酬を得て法律事務を行うこと)となりうるため、支援者はドラフトの作成にとどめ、最終化は当事者間で行います。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「支援者が最終契約書の完成版を作り、当事者は署名するだけにするのが望ましい」は誤り。非弁行為となりうるため、ドラフト(草案)の作成にとどめる。
  • ひっかけに注意「顧問弁護士がドラフトを作るなら、支援者による記載漏れの確認は不要」は誤り。調整結果を踏まえて抜け漏れを確認する。
  • ひっかけに注意「DDで新たに判明したリスクは、締結後に覚書で反映すれば足りる」は誤り。随時ドラフトに反映するよう努める。

図解で確認:最終契約出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.148(当社にて要約)

複式簿記

ふくしきぼき財務・税務

取引を、資産・負債の面と損益の面の両方から記録する簿記の方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社は日々の取引を帳簿に記録し、それをもとに決算書を作ります。記録の方法には、損益項目(収益・費用)だけを記録する単式簿記と、資産・負債の動きと損益の両方の視点から記録する複式簿記があり、現在は複式簿記が一般的です。複式簿記で記録すると、経営成績を示す損益計算書と、財政状態を示す貸借対照表を同時に作成できます。取引の記録には三大原則があり、網羅性(すべての取引を記録し、実在しない取引は記録しない)、立証性(検証できる書類に基づいて記録する)、秩序性(秩序立てて記録する)が求められます。法人税の青色申告をする法人は、一切の取引を複式簿記の原則に従って記録し、すべての取引を借方・貸方に仕訳する仕訳帳と、勘定科目別に整理する総勘定元帳を備えます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「複式簿記は損益項目だけを記録する方法」は誤り。それは単式簿記。資産・負債と損益の両面から記録するのが複式簿記。
  • よく問われる点記録の三大原則は網羅性・立証性・秩序性。「迅速性」「保守性」などを混ぜた選択肢は誤り。
  • 数字を覚える会計帳簿の保存期間は、会社法では帳簿閉鎖の時から10年間。7年は法人税法上の原則的な保存期間。

図解で確認:財務基礎出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)、法人税法施行規則、法人税法施行規則(当社にて要約)

含み損益

ふくみそんえき財務・税務

資産・負債の時価と帳簿価額との差額。時価が簿価を上回れば含み益、下回れば含み損という。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

帳簿に載っている金額(簿価)と今の価値(時価)との差を含み損益といいます。たとえば保有する土地や有価証券の時価が簿価より高ければ含み益、低ければ含み損です。帳簿上は表れないため、M&Aでは財務DDで洗い出し、実態に近い純資産を求めます。スキルマップでは、調整後純資産を「純資産+含み益-含み損-簿外債務・簿外資産」と示し、含み損益は税効果を考慮して検証するとしています。DDで含み損益や簿外債務が見つかった場合は、時価純資産法による評価に反映します。また、DDではリスクだけでなく、保有資産の含み益など譲り渡し側に有利な事項も見つかることがあり、それも譲渡額等に反映されるよう調整します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点DDで見つかった含み損益や簿外債務は、時価純資産法による評価に反映する。「時価純資産法では帳簿価額で評価するので反映不要」は誤り。
  • ひっかけに注意「含み益はリスク要因ではないので譲渡額の調整では考慮しない」は誤り。含み益などポジティブな事項も反映されるよう調整する。
  • よく問われる点調整後純資産を求めるとき、含み損益は税効果を考慮して検証する。

別名・略称:含み益、含み損図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.138、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.139(当社にて要約)

不正競争防止法

ふせいきょうそうぼうしほう法務

営業秘密の侵害など、事業者間の不正な競争を防止するための法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、DDなどで開示した技術情報・顧客情報などが、交渉が破談した後に相手方の事業へ流用されるといった場面で問題になります。同法の営業秘密とは、①秘密として管理され(秘密管理性)、②生産方法・販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報で(有用性)、③公然と知られていない(非公知性)ものをいいます(2条6項)。不正な手段で取得した営業秘密の使用・開示や、保有者から示された営業秘密を不正の利益を得る目的等で使用・開示する行為は不正競争に当たり、差止めや損害賠償を請求でき、悪質なものは刑事罰の対象にもなります。3要件を満たさない情報は同法で保護されにくいため、秘密保持契約による契約上の保護が重要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「NDAを結んで開示した情報なら、管理状況にかかわらず営業秘密に当たる」は誤り。秘密として管理されていること(秘密管理性)が必要。
  • ひっかけに注意「営業秘密は技術上の情報に限られる」は誤り。顧客名簿や販売方法など営業上の情報も含まれる。
  • 数字を覚える営業秘密侵害罪は、10年以下の拘禁刑若しくは2000万円以下の罰金(又は併科)。

別名・略称:不競法図解で確認:法務基礎出典:不正競争防止法、不正競争防止法、不正競争防止法(当社にて要約)

普通決議

ふつうけつぎ法務

株主総会の原則的な決議方法で、出席株主の議決権の過半数で決めるもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

株主総会で物事を決めるときの原則の方法が普通決議です(会社法309条1項)。議決権の過半数を有する株主が出席すること(定足数)を前提に、出席株主の議決権の過半数の賛成で可決します。定款で別段の定めをすることもできます。役員の選任(329条)や取締役の解任は、原則として普通決議です。ただし役員の選任・解任の決議では、定款で定めても定足数を3分の1未満に下げることはできません(341条)。M&Aに関わる重要な決定、たとえば事業譲渡や合併の承認は、より要件の重い特別決議が必要です。どの事項がどちらの決議かを区別しておくことが大切です。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い取締役の解任は原則として普通決議、監査役の解任は特別決議(会社法309条2項7号)。
  • 数字を覚える役員の選任・解任の決議は、定足数を3分の1未満にできない(341条)。
  • ひっかけに注意事業譲渡等や合併・会社分割の承認を「普通決議で足りる」とするのは誤り。特別決議が必要。

図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

復興特別所得税

ふっこうとくべつしょとくぜい財務・税務

所得税額(基準所得税額)の2.1%を上乗せして課される税。平成25年から令和19年までの各年分が対象。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

復興特別所得税は、平成25年から令和19年までの各年分の所得税に上乗せして課される税で、税額は基準所得税額(その年分の所得税額)の2.1%です。M&Aの税金計算では、税率の端数として頻繁に登場します。たとえば非上場株式の譲渡益にかかる所得税15%には15%×2.1%=0.315%が加わり、住民税5%と合わせて20.315%になります。源泉徴収の際も、源泉徴収義務者が所得税と併せて徴収・納付するため、20%の源泉所得税は20.42%、15%は15.315%となります。配当や退職金の源泉徴収税率を問う問題でも、この上乗せ後の数字が使われます。なお、令和8年度改正による復興特別所得税の税率引下げや防衛特別所得税の創設は、令和9年以後の適用で、基準日(令和8年3月末)後の改正です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える税率は基準所得税額の2.1%。「0.315%」は15%×2.1%の結果で、税率そのものではない。
  • 数字を覚える源泉徴収では20%→20.42%、15%→15.315%。課税期間は平成25年から令和19年まで(基準日時点の法令)。
  • よく問われる点令和8年度改正(税率1.1%への引下げ・防衛特別所得税1%の創設・課税期間の延長)は令和9年以後の適用で、基準日後の改正。合計税率は変わらない。

図解で確認:税務基礎出典:東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法、国税庁タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(当社にて要約)

不適切な譲り受け側

ふてきせつなゆずりうけがわM&A実務倫理・行動規範

経営困難な中小企業の窮状に乗じ、M&A後に資金を流出させ、経営者保証を残したまま連絡を絶つような譲り受け側。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aでは、経営が苦しい中小企業の窮状に乗じて会社を譲り受け、M&A後に会社の資金を私的に流出させ、経営者保証を解除しないまま負債を残して連絡を絶つ、不適切な譲り受け側が少なからず報告されています。譲り渡し側の経営者には、会社を手放したうえに保証債務だけが残ることになります。これを受けて、2024年8月の中小M&Aガイドライン第3版では、こうした事業者を市場から排除するための仲介者・FAの対応が追記されました。例えば、契約前の重要事項の説明で、譲り受け側に対して行う調査の概要や、業界内での情報共有の仕組みへの参加の有無を譲り渡し側に説明することが求められます。同じ月に金融庁も監督指針等を改訂し、金融機関に経営者保証ガイドラインに沿った対応を求めました。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える中小M&Aガイドライン第3版の公表と、金融庁の監督指針等の改訂は、いずれも「2024年(令和6年)8月」。
  • ひっかけに注意「不適切な譲り受け側のスクリーニングは最終契約の直前に行えば足りる」は誤り。ロングリスト・ショートリストのリスト化の段階で行う。
  • よく問われる点情報共有の仕組みを運営する業界団体等は、秘密保持契約で機密情報を共有できる先として追記することが望ましい。

図解で確認:中小M&A市場動向出典:参考資料13 中小M&A時の経営者保証の取扱いについて p.1、中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.3、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.10(当社にて要約)

不動産取得税

ふどうさんしゅとくぜい財務・税務

不動産を取得した者に課される道府県税。課税標準は固定資産課税台帳の登録価格。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

不動産取得税は、土地や家屋を取得したときに、取得した人に課される道府県税(地方税)です。M&Aでは、どのスキームで事業を移すかによって課税されるかどうかが変わるため、不動産を多く持つ事業の移転で重要になります。課税標準は取得時の不動産の価格(固定資産課税台帳の登録価格)で、標準税率は4%です。ただし、令和9年3月31日までの住宅又は土地の取得は3%で、宅地評価土地は課税標準が価格の2分の1になります。事業譲渡(売買)による取得は課税されます。一方、相続や法人の合併、政令で定める一定の要件を満たす分割による取得は、形式的な所有権の移転として課税されません。

例仮の数値で、宅地評価土地6,000万円と非住宅建物4,000万円を事業譲渡で取得すると、6,000万×1/2×3%+4,000万×4%=250万円です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える標準税率4%。令和9年3月31日までの住宅・土地の取得は3%、宅地評価土地は課税標準が2分の1。事業用の非住宅建物は4%。
  • ひっかけに注意「事業譲渡による取得は形式的な移転として非課税」は誤り。事業譲渡には非課税規定がなく課税される。
  • よく問われる点相続・合併・一定要件を満たす分割による取得は非課税。納税義務者は取得者で、国税ではなく道府県税。

図解で確認:税務基礎出典:地方税法、地方税法、地方税法(当社にて要約)

不動産DD

ふどうさんでぃーでぃーM&A実務

不動産の経済的価値とリスクを、経済的・法的・物理的の3つの側面から精査するDD。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社が工場・店舗・土地などの不動産を持っている場合に、その価値や問題点をM&Aの前に確かめるのが不動産DD(デュー・ディリジェンス=買収前の詳しい調査)です。目的は、不動産の経済的価値とリスクを精査することで、3つの側面に分けて調べます。経済的側面では、公示価格・基準地価・相続税路線価・固定資産税路線価から実勢価格(実際に取引される価格)を調べ、近隣の市場や開発計画から今後の変動も予測します。法的側面では、権利関係、契約状況、過去の売買記録、境界のほか、建築基準法上の既存不適格や消防法違反がないかといった法令への適合性を確認します。物理的側面では、築年数と劣化度合い、アスベスト・PCB等の有害物質、土壌汚染、地震・水害のリスクを調べ、修繕計画と予想費用も見積もります。必要に応じて現地調査も行います。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点既存不適格・消防法違反の確認は「法的側面」。アスベスト・土壌汚染・地震水害リスクは「物理的側面」。公示価格・路線価からの実勢価格の調査は「経済的側面」。
  • ひっかけに注意「不動産DDを行わなくても建物の劣化や収益性の低下にはつながらない」は誤り。必要な措置が取られず劣化を早め、企業価値を損なうおそれがある。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.131(当社にて要約)

不動産登記

ふどうさんとうき法務

土地・建物の表示や所有権などの権利関係を登記簿に記録して、広く公示する制度。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

不動産の物権変動(所有権の移転など)は、登記をしなければ第三者に対抗できません(民法177条)。M&Aでは、事業譲渡・会社分割・合併で不動産を引き継ぐときに移転登記が必要になります。権利に関する登記は、原則として登記権利者(権利を得る側)と登記義務者(権利を失う側)が共同で申請します(不動産登記法60条)。例外として、相続や法人の合併による権利の移転登記は、登記権利者が単独で申請できます(63条2項)。また、相続で所有権を取得した者は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に移転登記を申請する義務があります。事業用不動産がオーナー個人名義のまま相続登記されていない場合は、M&Aの前に整理が必要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「会社分割は包括承継なので単独申請できる」は誤り。単独申請の特則は相続と合併に限られ、会社分割は共同申請。
  • 数字を覚える相続登記は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請する義務がある。
  • よく問われる点住所等変更登記の義務化は令和8年4月1日施行で、基準日(令和8年3月末)時点では未施行。

別名・略称:相続登記、不動産登記法図解で確認:法務基礎出典:不動産登記法、不動産登記法、民法(当社にて要約)

負ののれん

ふののれん財務・税務

企業結合の取得原価が、受け入れた資産・負債の時価の純額を下回る不足額。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aで、受け入れた資産・負債の時価の差額(時価純資産)よりも安い対価で取得できた場合に生じる差額が負ののれんで、のれんの逆の状態です。負ののれんが生じると見込まれるときは、まず、すべての識別可能資産・負債が漏れなく把握されているか、取得原価の配分が適切かを見直します。それでもなお生じる額は、発生した事業年度の利益として処理し、損益計算書では原則として特別利益に表示します。のれんのように貸借対照表に計上して何年もかけて償却する処理ではない点が大きな違いです。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「負ののれんは負債に計上し、規則的に償却して利益に計上する」は誤り。現行基準では発生年度の利益とする。
  • 似た用語との違い負ののれんは原則として特別利益に表示する(営業外収益ではない)。資本剰余金に直接計上する処理も誤り。
  • よく問われる点利益に計上する前に、識別可能資産・負債の把握と取得原価の配分が適切かをまず見直す。

図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(ASBJ、最終改正平成31年1月16日)(当社にて要約)

不法行為責任

ふほうこういせきにん法務倫理・行動規範

故意又は過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者が負う損害賠償責任(民法709条)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

不法行為責任は、契約関係がない相手との間でも、故意や過失で他人に損害を与えた場合に生じる損害賠償責任です(民法709条)。従業員(被用者)が事業の執行について第三者に損害を加えたときは、雇っている会社(使用者)も賠償責任を負います(715条1項、使用者責任)。そのため、仲介業者の担当者による違法な勧誘や説明義務違反は、業者自身の責任の問題にもなります。中小M&Aガイドラインは、広告・営業について、過去の対応状況や頻度に照らし、営業先の事業活動や経営者の生活に多大な支障を与える過剰なものであれば、民法上の不法行為責任を負う可能性もあるとしています。損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効消滅します(724条)。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点過剰な広告・営業は民法上の不法行為責任を負う可能性がある。判断要素は過去の対応状況や頻度。
  • 数字を覚える不法行為の請求権は、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効消滅(724条)。

別名・略称:使用者責任図解で確認:法務基礎出典:民法、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84(当社にて要約)

フリー・キャッシュ・フロー(FCF)

ふりーきゃっしゅふろー財務・税務

DCF法で割り引く対象となる、予測期間の事業計画から算出するキャッシュ・フロー。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

フリー・キャッシュ・フロー(FCF)は、DCF法で企業の価値を求めるときに、将来の各年について見積もるお金の流れです。DCF法では、予測期間(一般に3〜5年程度)の事業計画からFCFを算出し、継続価値とともにWACCで割り引いて事業価値を求めます。試験のサンプル問題では、営業利益から税金分を差し引いた税引後の営業利益に、支出を伴わない減価償却費を足し戻し、運転資本の増加額と設備投資額を差し引いて計算しています。売上債権や棚卸資産が増えたり、仕入債務が減ったりすると運転資本が増え、その分FCFは減ります。(例:サンプル問題の数値では、営業利益100百万円・実効税率40%・減価償却費10百万円・運転資本の増加25百万円・設備投資20百万円から、60+10−25−20=25百万円です。)なお、一般に営業活動と投資活動のキャッシュフローの合計額もフリーキャッシュフローと呼ばれます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点サンプル問題の計算は、税引後営業利益+減価償却費−運転資本の増加額−設備投資額。
  • ひっかけに注意売上債権・棚卸資産の増加と仕入債務の減少は、いずれも運転資本の増加としてFCFを減らす。仕入債務の減少を加算するのは誤り。
  • 似た用語との違いDCF法で予測期間について算出するのはFCF。EBITDA(営業利益+減価償却費)とは別物。

別名・略称:FCF、フリーキャッシュフロー図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.14、J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

プレクロージング

ぷれくろーじんぐM&A実務法務

クロージングの前日までに、支援者が関係者を交えてクロージング書類や当日の手順を一通り確認すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

クロージング当日に書類の不備が見つかったり、手順で混乱したりすると、取引を完了できなくなるおそれがあります。そこで、クロージングの前日までに、支援者がクロージング書類や当日の手順などを関係者も交えて一通り確認しておきます。これがプレクロージングです。クロージング条項(前提条件)に関する書類の準備は、プレクロージングの時点で全て確認を終えておくことが望ましいとされます。プレクロージングを行うと、当日は形式的な書類と金銭の授受だけにとどめることができ、取引の安定性を確保できます。株主が複数いる場合は事前に捺印をもらうなどの工夫もします。取引金融機関でクロージングを行う場合は、金融機関の関係者や手続の事前手配も必要です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「プレクロージングはクロージングの翌日以降(1週間以内など)に行う書類の点検」は誤り。クロージングの「前日まで」に行う確認。
  • よく問われる点クロージング条項の充足確認は、基本的に弁護士の立会いの下で進めることが望まれる。
  • よく問われる点会社実印・銀行印・金庫の鍵等は、受渡し後の保管場所・管理方法・押印手続を事前に協議する。原本を保管しない側には写しを渡す。

図解で確認:クロージング出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.164(当社にて要約)

プロセスレター

ぷろせすれたーM&A実務

譲り渡し側から候補先に示す、入札プロセスの進め方やスケジュール等を記載した書面のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

複数の候補先と並行して交渉を進めるとき、特に入札で譲り受け側を選ぶときに使う書面です。譲り渡し側(を支援する仲介者・FA)が作り、譲り受け側の候補先に送ります。記載内容は、M&Aを検討する背景・目的、基本条件(対象会社の全株式の譲渡等)、スケジュール(各種書類の提出期限等)、譲り渡し側を支援する支援者の紹介、譲り渡し側への連絡方法等です。作成するかどうかは譲り渡し側の希望等を踏まえて判断し、小規模なM&A等では作成されないことも多いです。非入札案件や候補先が1社だけの場合は、入札案件ほど厳密な内容にしないことが多いです。作成は、譲り渡し側にとっても今後の流れを具体的にイメージするのに役立ちます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「プロセスレターは全てのM&Aで作成が必須」は誤り。作成要否は譲り渡し側の希望等で判断し、小規模なM&A等では作成されないことも多い。
  • よく問われる点作成した場合は候補先に等しく提供する。入札が複数回行われることや、複数の候補先と並行して調整を進めることを想定している場合はその旨を記載する。
  • 似た用語との違いプロセスレターは譲り渡し側から候補先へ提示する書面。意向表明書は譲り受け側が提出する書面。

図解で確認:マッチング出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.62(当社にて要約)

プロ・サンドバッギング条項

ぷろ・さんどばっぎんぐじょうこうM&A実務法務

譲り受け側が表明保証違反を知っていても、譲り渡し側の責任に影響しないとする条項。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約では、譲り渡し側が対象会社について一定の事実が正しいことを表明保証し、違反があれば補償します。では、譲り受け側がDDなどで違反を知っていた場合も補償を求められるでしょうか。これを「求められる」と定めるのがプロ・サンドバッギング条項で、譲り受け側が違反を知り又は知り得た場合でも、表明保証の効果や譲り渡し側の責任の有無・内容に影響しないとします。譲り受け側が設けたがることが多い条項です。譲り渡し側がDDで積極的に開示したリスク(例:無許認可による行政処分や未払残業代請求のリスク)が現実化しても免責されないため、意味を理解しないまま受け入れると事後に紛争化しやすくなります。譲り渡し側は削除や修文を検討し、認識済みのリスクは特別補償として別に定めることもあり得ます。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「プロ・サンドバッギング条項は合理性を欠き無効」は誤り。中小M&AではDD期間が短く資料も乏しいため、条項自体に合理性がないわけではない。
  • 似た用語との違いプロは譲り受け側の認識にかかわらず免責しない(譲り受け側に有利)。アンチは認識に応じて免責を認める(譲り渡し側に有利)。
  • よく問われる点譲り受け側が特に認識したリスクを、特別補償として別途規定することもあり得る。

別名・略称:サンドバッギング条項図解で確認:最終契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.24、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.25(当社にて要約)

分掌変更

ぶんしょうへんこう財務・税務

役員の地位や職務の内容を変えること。実質的に退職と同様の事情があれば退職給与として扱える。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

法人税では、役員が実際に退職していなくても、分掌変更によって地位や職務内容が大きく変わり、実質的に退職したのと同様の事情にある場合は、そのときに退職金として支給したものを退職給与として扱えます。例として、常勤役員が非常勤役員になる、取締役が監査役になる、分掌変更後の報酬が概ね50%以上減少する、といった場合が挙げられます。ただし、形式だけの分掌変更では認められず、代表権を持ち続けるなど実質的に経営上主要な地位にある場合は除かれます。また、未払金等に計上したものは、原則として退職金として支給したものに含まれません。M&Aでは、旧オーナーがクロージング後も会長などとして経営の引継ぎに関わる場面で問題になり、実質的に経営に関与し続けると、分掌変更による退職金が否認されるリスクがあります。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える例は常勤→非常勤、取締役→監査役、報酬の概ね50%以上の減少。いずれも実質的に退職と同様の事情にあることが必要。
  • ひっかけに注意「代表取締役さえ退けば、会長として代表権を持ち続けても認められる」は誤り。代表権を有する場合や経営上主要な地位にあれば除かれる。
  • ひっかけに注意「内定額を未払金に計上すればその時点で退職金として扱われる」は誤り。未払金等への計上分は原則含まれない。

図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金(当社にて要約)

PEST分析

ぺすとぶんせきM&A実務

政治・経済・社会・技術の4つの外部環境要因が、市場や自社に与える影響を分析する手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

ビジネスDDの市場・業界環境分析で使う代表的な枠組みがPEST分析です。譲り渡し側の会社を取り巻く外部環境が、これから追い風になるのか向かい風になるのかを整理するために使います。頭文字の4つの要因で調べることは次のとおりです。P(Politics=政治)は、政治・外交、規制・政策、税制などの動向です。E(Economy=経済)は、インフレ・デフレ、為替、金利、GDP成長率などの動向です。S(Society=社会)は、人口動態、世帯数、世論・社会の意識などの動向です。T(Technology=技術)は、技術革新や特許などの動向です。会社の内部ではなく、自社では左右できない外部の変化を見る分析です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点税制=P(政治)、金利・為替・GDP成長率=E(経済)、人口動態・世帯数=S(社会)、技術革新・特許=T(技術)。要因の入れ替えが狙われる。
  • 似た用語との違いPESTは外部環境要因の分析。5つの競争要因で見るのはファイブフォース分析、強み・弱み・機会・脅威で整理するのはSWOT分析。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.95(当社にて要約)

変更登記

へんこうとうきM&A実務法務

会社の登記事項に変更が生じたときに、本店所在地で行う登記のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社の商号・本店・役員などの登記事項は、取引の相手方が確認できるよう公示されています。そのため登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店所在地で変更登記をしなければなりません(会社法915条1項)。登記すべき事項は、登記の後でなければ善意の第三者(事情を知らない第三者)に対抗できません(908条1項)。M&Aでは、クロージング後の役員交代・商号変更・本店移転などで変更登記が必要になります。組織再編では、吸収合併は効力発生日から2週間以内に消滅会社の解散登記と存続会社の変更登記を(921条)、吸収分割は分割会社・承継会社の変更登記をします(923条)。新設型は、所定の日のうち最も遅い日から2週間以内に設立登記をし、新設会社はこの登記で成立します。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える登記事項に変更が生じたときは2週間以内に本店所在地で変更登記(915条1項)。
  • 似た用語との違い吸収合併・吸収分割は効力発生日が基準で、その後2週間以内に登記。新設合併・新設分割・株式移転は設立登記で会社が成立する。
  • よく問われる点故意又は過失で不実の登記をした者は、その不実を善意の第三者に対抗できない(908条2項)。

図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

包括承継・特定承継

ほうかつしょうけい・とくていしょうけいM&A実務法務

権利義務をまとめて引き継ぐ包括承継と、個別に一つずつ移す特定承継のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aのスキームを選ぶとき、権利義務がどう移るかは、だれの同意が必要かに直結します。包括承継は、権利義務をひとまとめに引き継ぐ方式で、合併が典型です。合併では消滅会社の労働契約も存続会社等に包括的に承継され、労働条件もそのまま維持されます。会社分割も、分割契約・分割計画の定めに従って権利義務がまとめて承継されます(会社法759条1項・764条1項)。特定承継は、権利義務や契約を一つずつ移す方式で、事業譲渡が該当します。事業譲渡では、債務や契約上の地位を移すのに債権者・契約相手方の個別の同意が要り、労働契約の承継にも労働者の個別の承諾が必要です(厚生労働省の事業譲渡等指針)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い合併・会社分割は包括承継、事業譲渡は特定承継。スキームごとの債権者・契約相手方・従業員の同意の要否が問われる。
  • よく問われる点合併では労働契約が包括的に承継され、労働条件もそのまま維持される。事業譲渡では労働者の個別の承諾が必要。

別名・略称:包括承継、特定承継図解で確認:法務基礎出典:事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(平成28年厚生労働省告示第318号・原文。令和8年告示第11号による改正前)、事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(平成28年厚生労働省告示第318号・原文。令和8年告示第11号による改正前)、会社法(当社にて要約)

報告義務

ほうこくぎむ法務倫理・行動規範

受任者が、委任事務の処理状況や経過・結果を委任者に報告する義務(民法645条)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仕事を任せた側(委任者)は、任せた仕事がどう進んでいるかを知らなければ適切な判断ができません。そこで民法645条は、受任者は委任者の請求があればいつでも委任事務の処理状況を報告し、委任が終わった後は遅滞なくその経過と結果を報告しなければならないとしています。また、委任事務の処理で受け取った金銭などは委任者に引き渡します(646条1項)。M&Aの仲介者は、候補先への打診状況や意向表明の内容などを依頼者に正確に報告する必要があります。中小M&A専門人材の倫理・行動規範も、顧客に案件の進捗状況を定期的に報告し、顧客から進捗報告等の要求があったときは滞りなく報告することを求めています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「委任者から請求がなければ報告しなくてよい」は誤り。委任終了後は請求がなくても遅滞なく経過と結果を報告する。
  • よく問われる点顧客から進捗の報告を求められても報告しないのは倫理・行動規範に反し、禁忌肢になりうる。
  • 数字を覚える民法644条=善管注意義務、645条=報告義務、646条=受取物の引渡し。

図解で確認:法務基礎出典:民法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.11(当社にて要約)

報酬基準額

ほうしゅうきじゅんがくM&A実務倫理・行動規範

成功報酬の算定で報酬率を掛ける基準となる価額。譲渡額・純資産・移動総資産等がある。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者・FAの成功報酬は、一定の価額に報酬率を掛けて計算するものが多く、その基準となる価額を報酬基準額といいます。主に、①譲渡額(譲受額)、②移動総資産額(主に譲渡額に負債額を加えた額)、③純資産額(資産と負債の差額)があります。移動総資産を基準にすると、同じ譲渡額でも負債(特に借入金)が多いほど手数料が高くなり、譲渡額や純資産を基準とする場合より報酬額は高くなります。譲り渡し側が債務超過の場合は純資産額がゼロ円以下になるため、通常は譲渡額や移動総資産額を基準とします。仲介者・FAは報酬率・報酬基準額・最低手数料の額・報酬の発生タイミングを書面で説明しなければならず、依頼者は最終的に支払う報酬の絶対額を確認することが重要です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点同じ報酬率でも、移動総資産を基準とすると、譲渡額・純資産を基準とする場合より報酬額は高くなる。
  • よく問われる点移動総資産=株式価額+有利子負債+その他の負債。企業価値=株式価額+ネット有利子負債。オーナー受取額=株式価額+役員借入金。
  • よく問われる点相手方手数料の開示基準の例:報酬基準額は「変更する場合に開示」、報酬率・最低手数料は当初から一定以上の増額で開示。

別名・略称:報酬率図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.69、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.88、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.37(当社にて要約)

法務DD

ほうむでぃーでぃーM&A実務法務

M&Aの実行や事業運営上の法務リスク(係争・紛争等)や契約上のリスクを把握するためのDD。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

主に弁護士が担う調査で、引き継ぐ会社や事業に法律上の問題がないかを調べます。株式譲渡の手法をとる場合は、譲り渡し側が抱える法的なリスクをそのまま引き継ぎやすいため、全般的かつ網羅的な法務DDを行うことが多いです。その場合、一般的に、株式・会社組織、重要な契約、資産及び負債、人事・労務、訴訟・紛争、許認可・コンプライアンス・環境問題等といった観点で調査します。また、簿外債務(帳簿に載っていない債務)や未払残業代等は問題・リスクが発覚しやすい論点なので、調査事項に含めて確認することが望ましいとされます。ディールブレイク(取引中止)につながるような法務上のリスクを検証できることが求められます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点法務DDで何らかの事項が検出されることが多いのは、特に株式・労務に関する事項。「環境と知的財産」は誤り。
  • 似た用語との違い株式譲渡は法的リスクをそのまま引き継ぎやすく、網羅的な法務DDが多い。事業譲渡は特定の事業・財産だけを引き継ぐため簿外債務等を遮断しやすい。
  • よく問われる点DD段階で従業員名簿等の個人データを提供するのも事業承継に伴う提供で本人同意は不要。ただし安全管理措置等を定めた契約が必要。

図解で確認:DD(個別)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.114、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.123、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会。取得時点の版は令和8年6月一部改正)(当社にて要約)

簿外債務

ぼがいさいむ財務・税務

会社が実際に負っているのに、貸借対照表に計上されていない債務。オフバランス債務ともいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

簿外債務は、帳簿(貸借対照表)に載っていないものの、実際には会社が負っている債務です。未払残業代、偶発債務、退職給付債務などが例として挙げられます。M&Aでは、譲り受け側が想定外の負担を負うリスクになるため、DDで確認されます。株式譲渡では会社の法人格がそのまま承継されるため、簿外債務を切り離せず、そのまま引き継がれます。そこで簿外債務が懸念される場合は、株式譲渡ではなく事業譲渡にスキームを変更し、必要な資産・負債だけを引き継ぐ方法があります。価値評価の面では、時価純資産法で負債の網羅性やオフバランス債務の有無を確認し、未計上があれば追加計上します。財務DDで調整後純資産を求めるときも簿外債務を差し引きます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い株式譲渡は法人格ごと承継するため簿外債務を分離できない。事業譲渡は対象の資産・負債を特定でき、簿外債務を分離できる。
  • ひっかけに注意簿外債務が懸念されるときのスキーム変更は「株式譲渡→事業譲渡」。逆方向の記述は誤り。
  • よく問われる点時価純資産法では、負債の網羅性・オフバランス債務の有無を確認し、未計上や引当金不足があれば追加計上する。

別名・略称:簿外負債、オフバランス債務図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.31、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.139、参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.2(当社にて要約)

簿外資産

ぼがいしさん財務・税務

会社の資産でありながら、貸借対照表に計上されていない資産。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

実際には価値があるのに、貸借対照表に載っていない資産があります。代表例として資料に挙げられているのが保険の解約返戻金で、解約すれば戻ってくるお金が帳簿に表れていないことがあります。財務DDの資産の分析では、簿外資産の有無と、架空計上など資産性のない資産の有無が重要な着眼点です。バリュエーションでは、時価純資産法で簿外資産・負債も時価評価して純資産を求めます。一方、貸借対照表の純資産をそのまま使う簿価純資産法は、簿外資産・負債がある場合に本来の株式価値を表さないことがあります。簿外資産が見つかった場合は、含み益と同じく譲り渡し側に有利な事項として、譲渡額等に反映されるよう調整します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点財務DDの資産分析の着眼点は、簿外資産の有無と、架空計上等の資産性のない資産の有無。
  • 似た用語との違い保険の解約返戻金は簿外資産の例、未計上の退職給付債務は簿外負債(簿外債務)の例。
  • ひっかけに注意「簿価純資産法は簿外資産・負債があっても本来の株式価値を表す」は誤り。表さないことがある。

図解で確認:財務DD出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料(全体) p.5、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.138(当社にて要約)

簿価純資産法

ぼかじゅんしさんほう財務・税務

貸借対照表の純資産(帳簿価額)を、そのまま株式価値とする評価手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

簿価純資産法は、コストアプローチに属する最もシンプルな評価手法です。決算書の貸借対照表に載っている純資産(資産の帳簿価額から負債を引いた額)を、そのまま株式価値とみなします。決算書があればすぐに計算でき、関係者がイメージしやすく、時価の算定などのコストをかけずに算定できる点がメリットです。一方、帳簿価額と時価が大幅にずれている場合や、貸借対照表に載っていない簿外資産・簿外負債がある場合には、本来の株式価値を表さないことがあります。中小M&Aでは、簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法(マルチプル法)で算定した価値を基に譲渡額を交渉するケースが多いとされます。ただし、算定額がそのまま譲渡額になるわけではなく、当事者同士が最終的に合意した金額が譲渡額です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点簿価と時価が大幅に乖離している場合や簿外資産・負債がある場合は、本来の株式価値を表さないことがある。
  • ひっかけに注意「算定された金額がそのまま譲渡額として確定する」は誤り。当事者同士が最終的に合意した金額が譲渡額となる。
  • 似た用語との違い不動産・有価証券など一部の資産・負債だけを時価評価するのが修正簿価純資産法。簿価純資産法は時価評価をしない。

別名・略称:簿価純資産図解で確認:バリュエーション(財務)出典:参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.1、参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.2(当社にて要約)

補償

ほしょうM&A実務法務

相手方の契約違反や表明保証違反が判明した場合等に、損害の補償を求めることができる旨の規定。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

表明保証は「問題はありません」という約束ですが、約束が破られたときにどうするかを決めておかなければ意味がありません。そのために最終契約に置くのが補償条項です。相手方の契約違反や表明保証違反が判明した場合に、損害の補償を求めることができると定めます。補償条項では、いつまでの期間、どの程度の補償を求められるかを決めます。株式譲渡契約書サンプルでは、補償総額の上限(譲渡価額の一定割合)、一定額を超える損害だけを対象とする下限、クロージング日から一定期間内の書面による請求に限る期間制限を設けています。期間や責任上限が定められていないと、譲り渡し側が過大な責任を負い、当事者間で争いになるリスクがあるため、その旨を当事者に説明する必要があります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点補償の期間の設定がない、責任上限の設定がない、適用場面が判然としない規定がある、の3つはリスク事項として説明の対象になる。
  • ひっかけに注意「クロージング条項の充足を確認したら、表明保証違反の補償請求権も放棄したことになる」は誤り。確認は補償請求権の放棄を意味しない。

別名・略称:補償条項図解で確認:最終契約出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.140、参考資料12 最終契約におけるリスク事項についての説明書サンプル p.3、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.24(当社にて要約)

補償期間

ほしょうきかんM&A実務法務

表明保証違反等に基づく補償を請求できる期間の制限。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

補償をいつまでも請求できると、譲り渡し側は譲渡代金を受け取った後も長く不安定な立場に置かれます。そのため最終契約では、補償を請求できる期間を区切るのが一般的です。株式譲渡契約サンプルでは、クロージング日から一定か月以内に書面で請求した場合に限り補償責任が生じると定めており、期間の考え方の一つとして、クロージング日から1〜n回目の決算日+1か月程度が目安として示されています。事業譲渡契約サンプルは「クロージング日から●年」という形で定めています。また知識・スキルマップは、DDが十分に行われないと、譲り渡し側が最終契約で負う表明保証の範囲や補償額・補償期間などの負担が増えうるとして、DDは譲り渡し側にとっても重要だとしています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える請求期限の目安の一つは、クロージング日から1〜n回目の決算日+1か月程度。
  • 似た用語との違い株式譲渡サンプルは「クロージング日から●か月」、事業譲渡サンプルは「クロージング日から●年」と、定め方が異なる。
  • ひっかけに注意「DDは譲り受け側のためのもので譲り渡し側には関係ない」は誤り。DDが不十分だと補償額・補償期間等の負担が増えうる。

別名・略称:補償請求期限図解で確認:最終契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.24、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.42、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.80(当社にて要約)

補償の上限・下限

ほしょうのじょうげん・かげんM&A実務法務

補償額の総額の上限と、一定額を超える損害が生じた場合にだけ補償するという下限の定め。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

表明保証違反による補償額に制限がないと、譲り渡し側の負担が大きくなりすぎるおそれがあります。そこで最終契約では、補償額に上限と下限を設けるのが一般的です。株式譲渡契約サンプルでは、表明保証違反の補償総額の上限を「本譲渡価額の●%」とし、下限については、一つの事由による損害が●円を超えるものだけを対象とし、その合計額が●円を超えた場合に限り補償義務が発生すると定めています。上限を高く設定するには相応の理由が求められ、100%に近い上限を設ける場合は妥当性を慎重に吟味する必要があるとされます。なお、事業譲渡契約サンプルでは、上限を「合計損害額●●円」という定額で定める形になっています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点下限は2段階。一つの事由の損害が一定額を超えるものだけを数え、その合計が一定額を超えたときに補償義務が発生する。
  • 義務か・望ましいか100%に近い上限を設定する場合は、その妥当性を慎重に吟味する必要がある。
  • 似た用語との違い補償の上限を定めるのは補償条項。完全合意条項は、合意内容を契約書の記載に限定する条項である。

別名・略称:補償上限、補償の上限図解で確認:最終契約(法務)出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.24、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.42(当社にて要約)

ま行

マッチング

まっちんぐM&A実務

譲り渡し側と譲り受け側が、M&Aの当事者となり得る者として接触すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aの流れの中で、相手探しの段階を指す言葉です。譲り渡し側と譲り受け側が「この相手とM&Aをするかもしれない」という立場で接触することをマッチングといい、両者の交渉はマッチングの後に始まります。仲介者・FAは、マッチングとその後の手続の進行を総合的に支える「マッチング支援等」を行います。ガイドラインが示す通常の流れは、候補先を一覧にしたロングリストを作り、ノンネーム・シートで関心を打診し、関心を示した先をショートリストに絞り、秘密保持契約を結んだ後に企業概要書を渡す、という順です。M&Aプラットフォームは、このマッチングの場をオンラインで提供するものです。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点通常の順序はロングリスト作成→ノンネーム・シートで打診→ショートリスト化→秘密保持契約の締結→企業概要書の交付。企業概要書はNDA締結の後。
  • よく問われる点交渉はマッチングの後に始まる。M&Aプラットフォームの支援は一般にマッチングまでで、その後の条件交渉は原則として当事者が行う。

図解で確認:マッチング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.16、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.19、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.20(当社にて要約)

マネジメントインタビュー

まねじめんといんたびゅーM&A実務

DDの一環として、DD実施機関が譲り渡し側の経営者から事業の強み・課題等を聞き取る面談。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

DDでは書類を調べるだけでなく、経営者から直接話を聞いて、書面に表れない情報を確かめます。それがマネジメントインタビューで、DD実施機関が実施する工程と位置付けられています。主な確認事項は、競合他社の強み・弱みを踏まえた譲り渡し側の強み・弱み、会社の経緯・歴史、課題、今後の方向性等です。あわせて、現経営者のリーダーシップ、経営能力、人柄、ビジョンの有無、事業に対するコミット(関与の度合い)等も確認すべき事項として整理します。経営者が話しやすい雰囲気を作り、書面外の情報を引き出すことが大切です。ビジネスDDでは、譲り渡し側の事業計画が実現できるかを、このインタビュー等で検証します。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいかインタビューのタイムスケジュールや質問票は、事前に譲り渡し側へ送付することが「望ましい」。「回答の準備を防ぐため送らない」は誤り。
  • ひっかけに注意「財務諸表の数値確認に限り、書面にない情報は対象外」は誤り。リーダーシップや人柄、ビジョン等の書面外の情報を引き出す。
  • ひっかけに注意「仲介者が自ら実施してDDの結論をまとめる」は誤り。DD実施機関が実施する工程。

図解で確認:DD(全体)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.88、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.93(当社にて要約)

マルチプル法(類似会社比較法)

まるちぷるほう財務・税務

対象会社に似た上場会社の評価倍率を、対象会社の財務指標に当てはめて価値を算定する評価手法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

マルチプル法(類似会社比較法)は、マーケットアプローチの代表的な手法です。評価対象会社と似ている会社を公開会社(上場会社)から選び、その株価と財務データから評価倍率を求め、対象会社の財務指標に当てはめて価値を算定します。使う倍率により算定するものが異なり、EV/EBITDA倍率法は企業価値(EV)を、PER倍率法は対象会社の当期純利益から株主価値を、PBR倍率法は簿価純資産から株主価値を算定します。中小M&Aでは主にEV/EBITDA倍率法が使われます。上場会社に比べて評価するため比較的客観性が高い一方、選ぶ類似会社が適切かどうかに注意が必要です。中小M&Aでは、簿価純資産法・時価純資産法とともによく使われる算定手法ですが、算定額がそのまま譲渡額になるわけではありません。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いEV/EBITDA倍率法は企業価値(EV)を、PER倍率法は当期純利益から株主価値を、PBR倍率法は簿価純資産から株主価値を算定する。
  • ひっかけに注意「中小M&AではPBR倍率法のみが用いられる」は誤り。主にEV/EBITDA倍率法が採用され、PER・PBR倍率法等も用いられる。
  • よく問われる点比較的客観性が高いが、選定する類似上場会社が適切かに注意が必要。

別名・略称:類似会社比較法図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42、参考資料2 中小M&Aの譲渡額の算定方法 p.1(当社にて要約)

マーケットアプローチ

まーけっとあぷろーち財務・税務

上場している類似企業の株価や、類似するM&Aの取引金額を参考に、株式・事業の価値を評価する考え方。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

マーケットアプローチは、バリュエーションの3つのアプローチの1つで、似た会社が市場でいくらと評価されているかを手がかりに価値を求めます。上場している同業他社の時価総額や、類似するM&Aの取引金額を参考にし、代表的な手法には市場株価法とマルチプル法があります。中小M&Aでは、マルチプル法(主にEV/EBITDA倍率法。PER倍率法・PBR倍率法なども使われます)を採用することが多いです。メリットは、比較的シンプルに算定でき、各手法の中で最も客観的な算定が可能なこと、評価時点の市場・業界動向に対する評価が加味されることです。一方、類似企業・類似取引が少ない場合や、譲り渡し側に固有の一時的な減益要因がある場合には、純粋な企業価値があらわれない可能性があります。一時的な減益要因が分かっているときは、その要因を除いた適切な正常収益を用いることが望まれます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点「最も客観的な算定が可能」とされるのはマーケットアプローチ。評価時点の市場・業界動向は加味される(「加味されない」は誤り)。
  • ひっかけに注意「一時的な減益要因があっても、その期の実績利益をそのまま用いる」は誤り。要因を控除した適切な正常収益を用いることが望ましい。
  • 似た用語との違い企業価値評価ガイドラインの比較では、市場での取引環境の反映はマーケット◎、固有の性質の反映はマーケット△。

図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.113、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.114(当社にて要約)

見える化・磨き上げ

みえるか・みがきあげM&A実務

経営状況・経営課題を把握すること(見える化)と、事業承継に向けて経営改善をすること(磨き上げ)。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業承継の準備段階で使われる言葉です。「見える化」は自社の経営状況や経営課題などを現状把握すること、「磨き上げ」はそれを踏まえて事業承継に向けた経営改善等を行うことです。事業承継ガイドラインの5つのステップ(準備の必要性の認識→見える化→磨き上げ→事業承継計画の策定/マッチング→実行)の2番目と3番目に当たります。中小M&Aガイドラインは、中小M&Aを実行するためには、その中でも最低限、株式・事業用資産等の整理・集約が必要だとしています。経営者だけでは難しい場合もあるため、まずは顧問税理士等の身近な支援機関に相談し、法的な論点の検討や交渉が必要なら弁護士の助言を得ることが望まれます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点中小M&Aの実行に最低限必要なのは「株式・事業用資産等の整理・集約」。見える化・磨き上げの全部を終えることまでは求めていない。
  • 似た用語との違い見える化=経営状況・経営課題の現状把握。磨き上げ=事業承継に向けた経営改善。入れ替えに注意。
  • 義務か・望ましいかまず顧問税理士等の身近な支援機関に相談することが「望ましい」。法的論点がある場合は弁護士の助言を得ることが「望まれる」。

別名・略称:見える化、磨き上げ図解で確認:事前相談出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.35、事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(令和元年12月、令和5年4月改定)(当社にて要約)

みなし大企業

みなしだいきぎょうM&A実務

中小企業の規模基準を満たしても、大企業の実質的な支配下にあるとして補助金の対象外とされる中小企業者。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

資本金や従業員数だけで見れば中小企業でも、実際には大企業に支配されている会社があります。補助金がそうした会社に流れないよう、事業承継・M&A補助金などの公募要領は、大企業の実質的な支配下にある会社を「みなし大企業」として補助対象から外しています。該当するのは次の5類型です。(ア)同一の大企業が発行済株式等の2分の1以上を所有、(イ)大企業が合計で3分の2以上を所有、(ウ)大企業の役員・職員を兼ねる者が役員総数の2分の1以上、(エ)(ア)〜(ウ)に当たる中小企業者が発行済株式等の全てを所有、(オ)(ア)〜(ウ)に当たる中小企業者の役職員を兼ねる者が役員の全て。判定上の「大企業」には、基準を超える海外企業や自治体等の公的機関も含まれます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える「同一の」大企業なら2分の1以上、「複数の大企業の合計」なら3分の2以上。合計が2分の1以上というだけでは該当しない。
  • よく問われる点中小企業投資育成株式会社、投資事業有限責任組合等が株式を保有する場合は、その保有比率をもってみなし大企業とはしない。
  • ひっかけに注意「資本金・従業員数が基準内なら、株主構成にかかわらず補助対象」は誤り。規模基準を満たしても、みなし大企業は対象外。

図解で確認:中小企業政策出典:事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)、事業承継・M&A補助金(14次公募)公募要領 専門家活用枠(抄録:p5-21, p64-66)(当社にて要約)

みなし配当

みなしはいとう財務・税務

自己株式の取得や非適格合併などで株主が受け取る金銭等のうち、資本金等の額を超える部分を配当とみなすもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社が株主にお金などを渡す方法は、通常の配当だけではありません。自己株式の取得(株主から自社株を買い取ること)、非適格合併、非適格分割型分割、資本の払戻し、解散による残余財産の分配などでも、株主は金銭等を受け取ります。このとき、受け取った額のうち、その株式に対応する資本金等の額を超える部分は、配当とみなされます。これがみなし配当で、「交付を受けた金銭等の額−資本金等の額のうち対応する部分」で計算します。市場での購入による自己株式の取得や、適格合併・適格分割型分割では、みなし配当は生じません。株主が個人なら、みなし配当は配当所得として総合課税となり、発行会社は源泉徴収を行います。株主が法人なら、受取配当等の益金不算入の対象です。

例仮の数値で、1株当たり資本金等の額5万円の株式200株を発行会社に1億円で譲渡すると、1億円−1,000万円=9,000万円がみなし配当です。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「市場で発行会社が自己株式を購入した場合も、売った株主にみなし配当が生じる」は誤り。市場購入による取得はみなし配当にならない。
  • よく問われる点適格合併・適格分割型分割ではみなし配当は生じない。非適格合併・非適格分割型分割・残余財産の分配などでは生じる。
  • 似た用語との違い個人株主は配当所得(総合課税・源泉20.42%)。法人株主は受取配当等の益金不算入の対象(完全子法人株式等なら全額)。

図解で確認:スキームの初期的な検討(税務上の留意事項)出典:法人税法、所得税法、国税庁タックスアンサー No.1536 株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合-法人の合併等、自己株式の取得等の場合-(当社にて要約)

未払残業代

みばらいざんぎょうだいM&A実務財務・税務法務

従業員に本来支払うべきなのに支払われていない残業代。簿外債務の代表例。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

残業代の支払が適正にされていないと、後で従業員から請求され、会社が支払うことになります。こうした債務は貸借対照表に計上されていないことが多く、中小M&Aガイドラインでは簿外債務の例として未払残業代が挙げられています(偶発債務の例は紛争に関する損害賠償債務等)。株式譲渡では譲り渡し側の会社の法人格が変わらないため、未払残業代のような簿外債務も会社とともに譲り受け側が引き継ぐことになり、リスクが比較的高くなりやすいとされます。そのため譲り受け側は人事・労務DDで未払賃金・残業代の有無を確認します。公認会計士がM&A前に支援する場面でも、未計上の退職給付債務と並んで問題になりやすい例とされています。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い未払残業代は簿外債務(BSに表れない債務)の例。偶発債務の例は紛争に関する損害賠償債務等。
  • ひっかけに注意「クロージング後に顕在化しても譲り受け側に損害は生じない」は誤り。株式譲渡では会社ごと引き継ぐため、譲り受け側の負担になりうる。
  • よく問われる点株式譲渡は法人格に変動がないため、簿外債務・偶発債務リスクが比較的高く、より詳細なDDが行われる傾向がある。

別名・略称:残業代の未払い図解で確認:DD(個別)出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.48、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.118、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.112(当社にて要約)

民事再生

みんじさいせいM&A実務法務

再生債務者が業務や財産の管理を続けながら、裁判所の手続のもとで事業の再生を図る法的整理。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

民事再生は、裁判所の手続を使って債務を整理し、事業を立て直すための法的整理です。破産では管財人に財産の管理処分権が移りますが、民事再生では、再生債務者は手続開始後も業務を遂行し、財産を管理・処分する権利を持ち続けます(民事再生法38条1項、DIP型)。その代わり、債権者に対し公平かつ誠実に手続を追行する義務を負います(38条2項)。裁判所は、財産の処分や借財などを許可が必要な行為に指定でき、許可を得ない行為は無効です(41条)。手続開始後に事業の全部又は重要な一部を譲渡するには裁判所の許可が必要で、再生のために必要な場合に限り許可されます(42条1項)。許可の際は、知れている再生債権者や労働組合等の意見を聴きます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点債務超過の株式会社では、裁判所が株主総会の特別決議に代わる許可(代替許可)を与えられる。この場合、反対株主の株式買取請求は適用されない(43条)。
  • 似た用語との違い破産は管財人に管理処分権が専属。民事再生は原則として再生債務者が管理処分権を持ち続けるDIP型。
  • よく問われる点許可を得ずにした要許可行為は無効。ただし善意の第三者には対抗できない(41条2項)。

別名・略称:再生債務者、DIP型図解で確認:法務基礎出典:民事再生法、民事再生法、民事再生法(当社にて要約)

名義書換

めいぎかきかえ法務

株式を取得した人を、株主として株主名簿に記載・記録すること。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

株式を譲り受けても、株主名簿の記載を変えなければ、会社や第三者に自分が株主だと主張(対抗)できません(会社法130条1項)。そこで取得者は、会社に株主名簿への記載(名義書換)を請求します(133条1項)。この請求は、原則として株主名簿上の株主(又はその相続人などの一般承継人)と共同でしなければなりません(133条2項)。譲渡制限株式の場合は、譲渡承認を受けているときや相続などの一般承継のときなどを除き、名義書換を請求できません(134条)。また株券発行会社では、名義書換は会社に対する対抗要件にとどまり、第三者には株券の占有で対抗します(130条2項)。M&Aのクロージングでは、名義書換まで済んだかを確かめます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点請求は原則として名簿上の株主(又はその一般承継人)と共同で行う(133条2項)。取得者が単独で請求するのではない。
  • ひっかけに注意「相続で取得した譲渡制限株式は、譲渡承認がなければ名義書換できない」は誤り。一般承継は承認不要(134条4号)。

別名・略称:株主名簿の名義書換、名義書換請求図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

名義株

めいぎかぶM&A実務法務

実際には出資していない親族・知人等の名義になっている株式のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小M&Aに先立つ「株式の整理・集約」の場面で確認が求められる問題の一つです。株式譲渡で会社を引き継ぐ場合、基本的には譲り渡し側の経営者が全株式を持っておく必要があり、他の株主から株式を買い取ることもあります。そのとき、株主名簿の記載と実際に出資した人が違う株式、つまり名義だけ親族・知人等になっている株式があると、誰が本当の株主かがはっきりせず、手続の障害になります。そのため、株主名簿が正しく整備されているか、名義株がないか、株券発行会社なら株券が適切に管理されているかを確認します。公認会計士は、弁護士等と連携しながら名義株や所在不明株主の整理を支援することが期待されています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「名義株=所在が分からなくなった株主の株式」は誤り。それは所在不明株主の問題。名義株は出資者と名義人が異なる株式。
  • よく問われる点株式の整理・集約で確認する3点:株主名簿が正しく整備されているか、名義株がないか、(株券発行会社なら)株券が適切に管理されているか。
  • よく問われる点株式譲渡では、基本的に譲り渡し側経営者が全株式を保有しておく必要がある。他の株主からの買取りと資金調達が必要な場合もある。

図解で確認:事前相談出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.36、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.112(当社にて要約)

免責的債務引受・併存的債務引受

めんせきてきさいむひきうけ・へいぞんてきさいむひきうけ法務

引受人が債務を引き受けて元の債務者が免れる免責的引受と、両者が連帯して負う併存的引受。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

事業譲渡で買掛金などの債務を譲り受け側に移すときに使うのが債務引受です。併存的債務引受では、引受人が元の債務者と連帯して同じ内容の債務を負い(民法470条1項)、元の債務者も債務を負い続けます。債権者と引受人の契約でもできます(470条2項)。免責的債務引受では、引受人が同じ内容の債務を負い、元の債務者は債務を免れます(472条1項)。債権者と引受人の契約でもでき、債権者が債務者に通知した時に効力を生じます(472条2項)。また、債務者と引受人の契約に債権者が承諾することでも成立します(472条3項)。中小M&Aガイドラインの事業譲渡契約書サンプルでは、譲り受け側は承継対象債務以外の債務を承継しないことを確認します。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点免責的債務引受は、債権者と引受人の契約(債権者が債務者に通知した時に効力発生)か、債務者と引受人の契約+債権者の承諾で成立する(民法472条2項・3項)。
  • ひっかけに注意「債権者の承諾なく譲り渡し側を債務から解放できる」は誤り。承諾がなければ譲り渡し側は債務を免れない。

別名・略称:債務引受図解で確認:法務基礎出典:民法、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.38、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.39(当社にて要約)

持株会社

もちかぶがいしゃ財務・税務法務

他の会社の株式を保有し、その会社を傘下に置いて支配・管理することを主な目的とする会社。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

試験では主に、LBO(買収資金の多くを借入れで賄う買収)のスキームの中で登場します。日本銀行のレビューによると、PEファンドがスポンサーとなる一般的なLBOでは、①PEファンドが買収主体となる中間持株会社(HoldCo)を介して買収SPC(買収のために設ける特別目的会社)を設立し、②買収SPCが銀行団から借入れを行い、③HoldCoの出資金と借入金で対象企業を買収します。④買収後は、買収SPCと対象企業が合併してできた新会社が借入を返済します。さらに、HoldCoにも与信を提供して、スキーム全体のレバレッジ(借入れによって投資効率を高める効果)を高める案件もあるとされています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点出資の流れは、PEファンド→中間持株会社(HoldCo)→買収SPC。借入れを行うのは買収SPCで、相手は銀行団。
  • ひっかけに注意「買収後は会社分割する」「返済はファンドの追加出資で行う」は誤り。買収SPCと被買収企業が合併してできる新会社が借入を返済する。

別名・略称:中間持株会社、HoldCo図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:日銀レビュー「LBOファイナンスの動向とリスク管理」(2024年5月、2024-J-8)(当社にて要約)

や行

役員給与

やくいんきゅうよ財務・税務

法人が取締役などの役員に支給する給与。法人税では損金に算入できる形が限られる。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

中小企業では、オーナー経営者の報酬の決め方が法人税に直接影響します。法人税法では、退職給与等を除き、役員給与のうち①定期同額給与(1か月以下の一定期間ごとに同額を支給するもの)、②事前確定届出給与(所定の時期に確定額を支給する定めに基づくもの)、③業績連動給与のいずれかに当たるものだけが損金に算入されます。いずれかに当たっても、不相当に高額な部分は損金不算入です。また、同族会社は原則として業績連動給与を使えません。M&Aの税務DDでは、役員給与がこれらの要件を満たしているかを確認します。株式譲渡では潜在的な税務債務が会社にそのまま残るため、問題があれば表明保証・補償で手当てします。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「株主総会で決議された金額なら支給形態にかかわらず全額損金になる」は誤り。3類型のいずれかに当たらなければ損金不算入。
  • ひっかけに注意「定期同額給与なら不相当に高額な部分も含め全額損金」は誤り。不相当に高額な部分は損金不算入(法人税法34条2項)。
  • よく問われる点支給額が月ごとに変わると定期同額給与に当たらず、損金不算入となりうる。

別名・略称:役員報酬、事前確定届出給与、業績連動給与図解で確認:財務基礎出典:法人税法(当社にて要約)

役員退職給与

やくいんたいしょくきゅうよ財務・税務

役員の退職に際して法人が支給する退職金。役員退職金・役員退職慰労金ともいう。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

役員退職給与は、役員が退職するときに会社が支給する退職金で、M&Aでは譲り渡し側の経営者の退任に合わせて検討されます。会社側では、不相当に高額な部分を除いて損金に算入できます。相当な額かどうかは、業務に従事した期間、退職の事情、同業種・同規模の法人の支給状況などに照らして判断され、実務上の限度額の目安は「最終月額報酬×役員勤続年数×功績倍率」で計算します。損金に算入する時期は、原則として株主総会の決議等で額が具体的に確定した事業年度ですが、実際に支払った事業年度に損金経理すれば、その年度の損金にすることもできます。受け取る役員側は退職所得として分離課税となります。配当や役員報酬は総合課税となるため、事業譲渡で会社に入った対価を経営者に還流する際などに、役員退職慰労金の支給と併せて検討することもあり得ます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点実務上の限度額の目安は「最終月額報酬×役員勤続年数×功績倍率」。年額報酬を使う、倍率を足すなどの計算は誤り。
  • よく問われる点損金算入時期は原則、株主総会決議等で額が確定した事業年度。支払年度に損金経理すればその年度も可。内定額の未払計上は損金にならない。
  • 似た用語との違い役員退職慰労金は分離課税(退職所得)。配当・役員報酬で還流すると総合課税。

別名・略称:役員退職金、役員退職慰労金、功績倍率法図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.5208 役員の退職金の損金算入時期、法人税法、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.112(当社にて要約)

有利子負債

ゆうりしふさい財務・税務

銀行からの借入金など、元本の返済に加えて利息の支払を伴う負債。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

銀行からの借入金のように、返済とあわせて利息を払う必要がある負債です。M&Aのバリュエーションでは、企業価値から有利子負債を差し引いて株主価値を求めます。株式を買う人は会社の借入れも引き継ぐため、その分を差し引くという考え方です。有利子負債から現預金等を差し引いた額を純有利子負債(ネットデット)といい、中小M&Aでよく使われるEV/EBITDA倍率法では、株式価値=EBITDA×EV/EBITDA倍率-純有利子負債で計算します。財務DDでは、リース債務・退職給付債務など、借入金ではないが実質的に負債に近いデットライクアイテムもあわせて検証します。金融機関が買収資金の融資を審査するときは、有利子負債/EBITDA倍率なども確認します。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「株式価値=EBITDA×倍率+純有利子負債」は誤り。純有利子負債(有利子負債-現預金)は控除する。
  • よく問われる点ネットデット=有利子負債-現金等の非事業資産。非事業資産の方が多ければネットキャッシュ。
  • 似た用語との違いリース債務・退職給付債務・資産除去債務はデットライクアイテム。保険積立金・有価証券はキャッシュライクアイテム。

図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.48、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.108、中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料(全体) p.7(当社にて要約)

譲り受け側に対する調査

ゆずりうけがわにたいするちょうさM&A実務倫理・行動規範

譲り受け側に最終契約を履行し事業を引き継ぐ意思・能力があるかを、仲介者・FAが確かめる調査。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約の不履行などをする不適切な譲り受け側を排除するため、中小M&Aガイドラインは仲介者・FAに譲り受け側の調査を求めています。調査項目は、財務状況(譲渡対価を調達でき、M&A後に事業を継続運営できるか)、コンプライアンス(反社会的勢力への該当性や過去のM&Aトラブル)、事業実態、最終契約の実行可能性、その他の5つです。譲り渡し側には、仲介契約・FA契約の締結前に調査の概要を説明しなければならず、依頼があれば調査内容の見直しを検討しなければなりません。調査は遅くとも最終契約締結前までに行い、リスク事項を検出したら開示可能な範囲で譲り渡し側に報告し、取引実行の可否や規定すべき条項を協議しなければなりません。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える調査の概要の説明は契約締結前(プラットフォーマーは登録前)。調査の実施は遅くとも最終契約締結前まで。
  • よく問われる点譲り渡し側が債務超過の場合等は特に慎重に。保証債務が移らず簿外債務を遮断できる事業譲渡等では必要性が低い場合もある。
  • ひっかけに注意調査で問題を見つけたのに譲り渡し側へ報告せず成約を優先するのは禁忌肢になりうる。

別名・略称:譲り受け側調査図解で確認:支援機関向けの基本姿勢出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.100、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.101、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.102(当社にて要約)

よろず支援拠点

よろずしえんきょてんM&A実務

中小企業・小規模事業者の経営上のあらゆる相談に応えるため、国が全国に設置した無料の経営相談所。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

売上を伸ばしたい、経営を改善したいなど、中小企業・小規模事業者が抱える経営上のあらゆる相談に応えるため、国が全国に設置した無料の経営相談所です。課題の大小を問わず、何度でも無料で相談できます。チーフコーディネーターを中心とする専門スタッフが話を聞き、売上拡大や経営改善の課題に対して一歩踏み込んだ専門的な提案を行い、実現可能な解決策の提示からフォローアップまで支援します。また、相談内容に応じて適切な支援機関を紹介し、支援機関どうしの連携を調整(コーディネート)する役割もあります。中小企業活性化協議会が窓口相談の後に紹介する先の一つでもあり、事業承継・M&A補助金の申請時のアンケートでも、利用状況を問われる公的支援機関の一つとされています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点課題の大小を問わず「何度でも無料」で相談できる。事業承継に限らず、経営上のあらゆる相談に対応する。
  • 似た用語との違い事業承継の専門窓口は事業承継・引継ぎ支援センター、収益力改善・事業再生・廃業は中小企業活性化協議会。よろず支援拠点は経営全般の相談所。

図解で確認:中小企業政策出典:よろず支援拠点とは(よろず支援拠点全国本部・中小機構)、中小企業活性化協議会による支援(中小機構)(当社にて要約)

ら行

利益相反(仲介者)

りえきそうはんちゅうかいしゃ倫理・行動規範

双方から依頼を受ける仲介者が、一方の利益を優先したり、一方の利益を害したりするリスク。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者は、利益が対立しうる譲り渡し側と譲り受け側の双方と契約し、双方から手数料を受け取ることが多いため、どちらかに肩入れするリスクを構造的に抱えています。中小M&Aガイドラインは、こうした利益相反は直ちに違法となるものではないとしつつ、仲介者に最低限の措置を求めています。中小M&A専門人材の倫理・行動規範も、仲介者は顧客に対して利益相反事項があると判断されるときはこれを顧客に開示しなければならないとし、どちらか一方の顧客に有利な支援を行い、いずれか一方の利益を不当に害することのないよう、中立的な立ち位置の確保など適切な利益相反管理を行わなければならないとしています。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか利益相反事項の開示、適切な利益相反管理は、いずれも仲介者が「しなければならない」もの。
  • 似た用語との違い会社法の利益相反取引(取締役と会社の取引)とは別の概念。
  • ひっかけに注意利益相反事項を顧客に開示しない、一方の顧客だけに有利な支援を行うのは禁忌肢になりうる。

別名・略称:仲介者における利益相反のリスク、利益相反管理図解で確認:善管注意義務・職業倫理出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.98、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.11(当社にて要約)

利益相反取引(取締役)

りえきそうはんとりひきとりしまりやく法務

取締役と会社の利益がぶつかる取引で、株主総会や取締役会の承認が必要なもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

取締役が自分のために会社と取引すると、会社に不利な条件で取引するおそれがあります。そこで会社法は、取締役が自己又は第三者のために会社と取引すること(自己取引)や、会社が取締役の債務を保証するなど取締役以外の者との間で会社と取締役の利益が相反する取引(間接取引)をするときは、重要な事実を開示して株主総会(取締役会設置会社は取締役会)の承認を受けなければならないとしています(356条1項・365条)。承認を受けた取引には、民法108条(自己契約・双方代理)は適用されません。中小企業では、オーナー社長と会社の間の不動産賃貸や貸付金などがあり、M&A前に承認を受けていたかを法務DDで確かめます。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点利益相反取引で会社に損害が生じたときは、関与した取締役の任務懈怠が推定される(会社法423条3項)。
  • 似た用語との違い仲介者の利益相反(中小M&Aガイドライン)とは別の概念。こちらは会社法上の取締役と会社の取引の規律。
  • よく問われる点承認機関は、取締役会設置会社では取締役会、非設置会社では株主総会。

別名・略称:自己取引、間接取引図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

リスク事項説明

りすくじこうせつめいM&A実務倫理・行動規範

最終契約後・クロージング後に争いになり得るリスクについて、仲介者・FAが最終契約の締結までに依頼者へ行う説明。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

最終契約を結んだ後に、経営者保証が外れない、表明保証の責任が重いといったトラブルが起きることがあります。そこで中小M&Aガイドライン第3版は、仲介者・FAに、最終契約後・クロージング後に当事者間の争いに発展し得るリスクについて、最終契約の締結までに調整し、依頼者に説明することを求めています。リスクを減らした形で、残る場合は少なくとも当事者がリスクを理解した形で締結されるよう支援します。説明には参考資料12「リスク事項説明書」のサンプルを活用でき、経営者保証、DDの非実施、表明保証、クロージング後の支払・手続、最終契約後の支払の変動、資産・貸付金の整理、最終契約からクロージングまでの期間の7項目を挙げています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点説明・調整の時期は「最終契約の締結まで」。リスク事項が契約に含まれる場合は、締結前に顕在化したときの結果を可能な限り具体的に説明することが望ましい。
  • よく問われる点サンプルの7項目は代表的なものにすぎず、善管注意義務の観点から、必要に応じてその他のリスクも説明することが望まれる。
  • ひっかけに注意「譲り受け側も表明保証を行う規定がある」はリスク事項ではない。表明保証のリスク事項は、期間の設定なし・責任上限なし・適用場面が判然としない規定。

別名・略称:リスク事項説明書図解で確認:最終契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.4、参考資料12 最終契約におけるリスク事項についての説明書サンプル p.1、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.13(当社にて要約)

略式手続(事業譲渡等)

りゃくしきてつづきじぎょうじょうととうM&A実務法務

相手方が議決権の10分の9以上を持つ特別支配会社のとき、株主総会決議を省略できる手続。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

親会社が議決権のほとんどを持つ子会社で株主総会を開いても、結果は決まっています。そこで会社法は、相手方が特別支配会社(総株主の議決権の10分の9以上を持つ会社)である場合に、株主総会決議を省略できる略式手続を設けています。事業譲渡等では、事業譲渡等の相手方が自社の特別支配会社なら、自社の総会決議は不要です(468条1項)。組織再編でも、吸収合併等の存続会社等が消滅会社等の特別支配会社であれば、消滅会社等の総会決議は不要です(784条1項。譲渡制限株式等を対価とする公開会社の場合などの例外あり)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える基準は総株主の議決権の10分の9以上。3分の2や過半数ではない。
  • 似た用語との違い略式は相手方の持株割合(10分の9以上)で決まる。簡易は取引の規模(純資産額・総資産額の5分の1以下)で決まる。

別名・略称:略式事業譲渡図解で確認:法務基礎出典:会社法、会社法(当社にて要約)

流動比率

りゅうどうひりつ財務・税務

流動資産÷流動負債×100で求める、短期の支払能力(安全性)を見る指標。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

短期間で現金化される流動資産で、短期間に支払う流動負債をどれだけまかなえるかを見る指標です。流動資産÷流動負債×100で計算し、高いほど短期的な安全性が高いと判断します。100%を下回ると、近く支払うべき負債を流動資産だけでは払いきれないことを意味します。100%割れが続く場合は、増資や、短期借入金を長期借入金に借り換えることなどを検討します。貸借対照表から見る安全性の指標には、ほかに長期の安全性を見る自己資本比率(高いほど安全)と固定比率(低いほど安全)があり、指標によって良し悪しの向きが違う点に注意が必要です。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える流動比率=流動資産÷流動負債×100。100%を下回ると短期の支払能力に懸念がある。
  • ひっかけに注意「流動比率は低いほど安全」は誤り。流動比率は高いほど安全で、固定比率は低いほど安全。
  • よく問われる点100%割れが続く場合の対策の例は、増資や短期借入金の長期借換え。

図解で確認:財務基礎出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)会計・資金繰りの解説(複数ページ)(当社にて要約)

リリースレター

りりーすれたーM&A実務

DD実施機関の間で情報を連携するときに求められる、相互情報開示の手続でサイン等をする書面。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

DDでは、財務・法務・税務など分野ごとに別々のDD実施機関(会計事務所や法律事務所等)が調査することがあります。それぞれが同じ資料を譲り渡し側に何度も求めると負担が大きいため、譲り渡し側の負担軽減の観点から、DD実施機関の間で情報を連携することがあります。その際に、相互に情報を開示し合う手続(相互情報開示手続)として、リリースレターへのサイン等が求められるケースがあります。この場合、関係者が適切に対応する必要があります。相互情報開示手続には比較的時間がかかることが多いため、DDの準備段階で早めに調整することが必要です。知識・スキルマップでは「情報連携のための前準備」の項目に位置付けられています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点リリースレター(相互情報開示手続)は、譲り渡し側の負担軽減のためDD実施機関間で情報連携する場合に求められることがある。
  • よく問われる点相互情報開示手続には比較的時間がかかることが多いため、早めの調整が必要。

別名・略称:相互情報開示手続図解で確認:DD(全体)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.86(当社にて要約)

倫理・行動規範(スキルマップ)

りんり・こうどうきはんすきるまっぷ倫理・行動規範

中小M&A専門人材が満たすべき倫理上の要素を、48条の条文の形でまとめたもの。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

2025年に作成された「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」の一部で、M&A専門人材が満たすべき要素を抽出した条文初期案です。全48条で、基本原則、善管注意義務・職業倫理、広告・営業、品位、法令等の遵守、不適切な個人・組織・反社等との関係、情報管理、その他禁止行為の8つの大分類から成ります。第1条は「常に信義に従い、公正、誠実に業務を遂行すること」です。強制力を持つ規程ではありませんが、本検定試験の「倫理・行動規範」科目はこの内容とガイドラインから出題され、禁忌肢の設定も検討されています。試験合格者の登録制度では、倫理規程の遵守と違反時の処分(氏名公表等)への同意が登録要件として想定されています。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える全48条、大分類は8つ(基本原則/善管注意義務・職業倫理/広告・営業/品位/法令等の遵守/反社等との関係/情報管理/その他禁止行為)。
  • ひっかけに注意「強制力を持つ規程」は誤り。M&A専門人材が満たすべき要素を抽出した条文初期案である。
  • よく問われる点登録制度では、倫理規程の遵守と違反時の処分(氏名公表等)への同意が登録要件として想定されている。

図解で確認:基本原則出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.10、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.3(当社にて要約)

類似業種比準方式

るいじぎょうしゅひじゅんほうしき財務・税務

類似業種の株価を基に、配当・利益・純資産の3要素を比べて取引相場のない株式を評価する方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

類似業種比準方式は、財産評価基本通達で取引相場のない株式を評価する原則的評価方式の1つです。類似業種の株価を手がかりに、評価する会社の1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)の3つの要素を類似業種と比べて株価を求めます。類似業種の業種目や株価などは国税庁が公表しています。計算では、1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額で比べます。類似業種と比べて求めた価額には斟酌率(しんしゃくりつ)を掛けて調整し、その割合は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5です。会社規模が大会社であれば原則としてこの方式で評価し(純資産価額方式も選択可)、中会社では純資産価額方式と併用します。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える斟酌率は大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5。会社規模を問わず一律とする選択肢は誤り。
  • よく問われる点比準要素は1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)の3つ。
  • ひっかけに注意「大会社は原則純資産価額方式で、類似業種比準方式は選択できない」は誤り。大会社は原則として類似業種比準方式。

図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4638 取引相場のない株式の評価、財産評価基本通達(第1章総則・取引相場のない株式の評価 抜粋)(当社にて要約)

暦年課税

れきねんかぜい財務・税務

1月1日〜12月31日の1年間に受けた贈与財産の合計額から基礎控除110万円を引いて、贈与税を計算する方式。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

暦年課税は、個人から財産の贈与を受けたときの贈与税の基本的な計算方法です。1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与財産の価額を合計し、そこから基礎控除110万円を差し引いた額に税率を掛けて計算します。計算は財産を受け取った人(受贈者)ごとに行います。基礎控除は相続税法では60万円ですが、租税特別措置法で110万円とされています。税率は10%から55%の8段階の超過累進税率で、父母・祖父母などの直系尊属から、その年1月1日に18歳以上の人が受けた贈与には、一般税率より緩やかな特例税率が適用されます。最高税率55%となるのは、基礎控除後で一般税率は3,000万円超、特例税率は4,500万円超の部分です。非上場株式の贈与は、財産評価基本通達による評価額で計算します。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える基礎控除は年110万円(措置法。相続税法本法は60万円)。申告・納税は受贈者が、翌年2月1日〜3月15日に行う。
  • ひっかけに注意「贈与した人が申告する」「申告期限は贈与の日の翌日から10か月以内」は誤り。10か月は相続税の申告期限。
  • 似た用語との違い特例税率は直系尊属から18歳以上の者への贈与。兄弟間・夫婦間・18歳未満の子への贈与などは一般税率。

別名・略称:暦年贈与図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)、租税特別措置法、国税庁タックスアンサー No.4429 贈与税の申告と納税(当社にて要約)

連結財務諸表

れんけつざいむしょひょう財務・税務

親会社と子会社からなる企業集団全体を1つの会社のようにみて作る財務諸表。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

子会社を持つ会社では、親会社単体の決算書だけではグループ全体の状況が分かりません。そこで作るのが連結財務諸表です。親会社と子会社の個別財務諸表を合算し、グループ内の重複を取り除きます。具体的には、子会社の資産・負債を支配獲得日の時価で評価したうえで、親会社の子会社に対する投資と子会社の資本を相殺消去し、その差額をのれん(又は負ののれん)とします。子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は非支配株主持分とします。さらに、グループ会社同士の債権債務や取引高、グループ内取引による未実現損益も消去します。連結の範囲は原則としてすべての子会社です。

例仮の数値で、資本4億円の会社の株式80%を4億円で取得すると、のれん8,000万円・非支配株主持分8,000万円です。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点会社法上、連結計算書類の作成義務があるのは大会社かつ有価証券報告書提出会社のみ。「子会社があれば全株式会社に作成義務」は誤り。
  • 似た用語との違い支配が一時的な子会社等は連結の範囲に「含めない」(強制)。重要性の乏しい子会社は「除くことができる」(任意)。
  • ひっかけに注意「連結の範囲は持株比率で機械的に決まり、支配の有無は考慮しない」は誤り。支配力基準で判定する。

図解で確認:スキームの初期的な検討(財務上の留意事項)出典:企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(ASBJ)、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(ASBJ)、会社法(計算等の規定)(当社にて要約)

レーマン方式

れーまんほうしきM&A実務

基準となる価額を階層に分け、各階層の部分ごとに料率を掛けて合算し、報酬を算定する方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

仲介者・FAの成功報酬を計算するときによく使われる方法で、特にM&A専門業者で広く用いられています。基準となる価額(譲渡額・移動総資産額・純資産額等)を金額の階層に区切り、それぞれの階層に当たる部分にその階層の料率を掛けて、最後に合計します。ガイドラインの一例では、5億円以下の部分5%、5億円超10億円以下の部分4%、10億円超50億円以下の部分3%、50億円超100億円以下の部分2%、100億円超の部分1%です。階層ごとの料率が同じでも、基準となる価額の考え方によって報酬額は大きく変わり得るため、基準の考え方や報酬額の目安を確認することが重要です。

例ガイドラインの事例では、移動総資産額10億円に対し、5億円×5%+5億円×4%=4,500万円(税抜)と計算しています。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基準額全体に、その額が属する階層の料率を掛ける」は誤り。階層ごとの部分にそれぞれ料率を掛けて合算する。10億円なら5億×5%+5億×4%。
  • 数字を覚えるガイドラインの一例:5億円以下5%、5億円超10億円以下4%、10億円超50億円以下3%、50億円超100億円以下2%、100億円超1%。
  • よく問われる点計算額が最低手数料を下回れば最低手数料を適用。支払済みの着手金・中間金を控除する定めがあれば成功報酬から差し引く。

別名・略称:レーマン表図解で確認:アドバイザリー(仲介・FA)契約出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.64、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.65、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.67(当社にて要約)

労働基準法

ろうどうきじゅんほう法務

賃金・労働時間・解雇など、労働条件について使用者が守るべき最低基準を定める法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、主に法務DD(人事・労務の調査)とM&A後の雇用の場面で問題になります。知識・スキルマップは、就業規則や36協定(時間外労働のための労使協定)の有無、労務管理の状況、労働基準監督署の指導・是正勧告の有無、賃金の支払状況、未払残業代などの偶発債務を調査項目に挙げ、就業規則や36協定がない場合などを法令違反の例としています。賃金請求権は、行使できる時から5年間(当分の間は3年)で時効消滅するため、未払残業代は過去分がまとめて請求されるリスクがあります。また、使用者が労働者を解雇するには、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(20条)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「解雇予告手当を払えば解雇は有効になる」は誤り。合理的理由を欠き社会通念上相当でない解雇は無効(労働契約法16条)。
  • 数字を覚える賃金請求権の消滅時効は5年(当分の間は経過措置で3年)。2年は災害補償その他の請求権。
  • ひっかけに注意「就業規則の作成・変更には過半数代表者等の同意が必要」は誤り。労基法90条が求めるのは意見の聴取。

別名・略称:労基法図解で確認:法務基礎出典:労働基準法、労働基準法、労働基準法(当社にて要約)

労働協約

ろうどうきょうやく法務

労働組合と使用者との間で、労働条件などについて結ばれる協定。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

労働組合がある会社では、賃金や労働時間などの労働条件や、組合との関係のルールが労働協約で定められていることがあります。M&Aでは、法務DDで、労働組合の状況とあわせて、就業規則・労働協約・労使協定等の遵守状況を確認します。会社分割では、分割会社は分割契約等に、労働協約のうち承継会社等が承継する部分を定めることができ、組合員の労働契約が承継される場合は、承継会社等と労働組合の間で同じ内容の労働協約が締結されたものとみなされます(労働契約承継法6条)。事業譲渡では、厚生労働省の事業譲渡等指針が、過半数労働組合等との協議等で労働者の理解と協力を得るよう努めることが適当とし、協議事項の一つに労働協約の承継を挙げています。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点会社分割で組合員の労働契約が承継されると、労働協約は承継会社等との間で同一内容で締結されたものとみなされる。
  • 義務か・望ましいか事業譲渡での労働組合等との協議は「努めることが適当」とされ、遅くとも承継予定労働者との協議開始までに始める。
  • よく問われる点協議が行われていることを理由に、労働組合の適法な団体交渉の申入れを拒否できない。

図解で確認:法務基礎出典:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.121、事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(平成28年厚生労働省告示第318号・原文。令和8年告示第11号による改正前)(当社にて要約)

労働契約承継法

ろうどうけいやくしょうけいほうM&A実務法務

会社分割のときに、労働契約がどう承継されるかを定めた法律のこと。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

会社分割では、分割契約・分割計画の定めに従って権利義務がまとめて承継されるため、働く人の立場が知らないうちに変わるおそれがあります。そこで労働契約承継法は、会社分割に伴う労働契約の承継のルールを定めています。承継される事業に主として従事する労働者(主従事労働者)は、分割契約等に承継の定めがあれば、効力発生日に本人の同意なく承継会社等に承継されます(3条)。承継の定めがない主従事労働者は、書面で異議を申し出れば承継されます(4条)。主従事でない労働者が承継対象とされた場合は、異議を申し出れば承継されません(5条)。分割会社は、対象の労働者と労働組合に、期限までに承継の有無等を書面で通知しなければなりません(2条)。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚える総会承認が必要な場合の通知期限は、承認株主総会の日の2週間前の日の前日。通知日と異議申出期限日の間は少なくとも13日間。
  • ひっかけに注意「承継の定めがある主従事労働者は異議を述べれば承継を拒める」は誤り。異議は承継されないことに対してだけ認められる。
  • 似た用語との違い労働契約承継法は会社分割にだけ適用され、事業譲渡(個別の承諾)や合併(包括承継)には適用されない。

別名・略称:主従事労働者図解で確認:法務基礎出典:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(当社にて要約)

労働契約法

ろうどうけいやくほう法務

労働契約の成立・変更・終了など、労働者と使用者の契約関係の基本ルールを定める法律。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

M&Aでは、従業員の雇用をどう扱うか、統合後に労働条件をそろえられるかといった場面で問題になります。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効です(16条)。事業譲渡で譲受会社への承継に承諾しなかったことのみを理由とする解雇や、事業を譲渡することのみを理由とする解雇も、これに当たり認められません。また、労働条件は労使の合意で変更できますが、使用者は、合意なく就業規則の変更で労働条件を不利益に変更できないのが原則です(8条・9条)。ただし、変更後の就業規則を周知し、変更が合理的なもの(不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉状況等で判断)であれば、労働条件は変更後の就業規則によります(10条)。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点就業規則による不利益変更が認められるのは、変更後の規則の「周知」と変更の「合理性」の両方がある場合。
  • ひっかけに注意「承継を承諾しなかった従業員は、そのことだけを理由に解雇できる」は誤り。不承諾のみを理由とする解雇は認められない。
  • 似た用語との違い解雇予告(労基法20条)は手続の要件。予告や手当の支払があっても、労働契約法16条により解雇が無効になりうる。

別名・略称:労契法図解で確認:法務基礎出典:労働契約法、労働契約法、事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(平成28年厚生労働省告示第318号・原文。令和8年告示第11号による改正前)(当社にて要約)

路線価方式

ろせんかほうしき財務・税務

路線価を奥行価格補正率等で補正し、面積を掛けて土地を評価する相続税上の評価方法。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

相続税・贈与税で土地を評価するときは、原則として地目ごとに評価し、路線価が定められた地域では路線価方式を使います。路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額で、千円単位で表示されています。路線価方式では、その路線価を奥行価格補正率などで補正した後、面積を掛けて評価額を求めます。路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に評価倍率表の倍率を掛ける倍率方式で評価します。家屋は固定資産税評価額と同額(×1.0)です。賃貸中の土地・建物は、権利関係に応じて評価を調整します。M&Aの場面では、純資産価額方式で非上場株式を評価する際に、会社が保有する土地をこうした相続税評価額で評価します(課税時期前3年以内の取得分は通常の取引価額)。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「路線価に面積を掛けた額をそのまま評価額とし、補正は行わない」は誤り。奥行価格補正率等で補正した後に面積を掛ける。
  • 似た用語との違い路線価のない地域は倍率方式(固定資産税評価額×倍率)。家屋は固定資産税評価額×1.0(1.5倍などは誤り)。
  • よく問われる点賃貸中の土地・建物は、自ら使用している場合と同じではなく、権利関係に応じて評価を調整する。

別名・略称:路線価図解で確認:税務基礎出典:国税庁タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価、国税庁タックスアンサー No.4604 路線価方式による宅地の評価、国税庁タックスアンサー No.4606 倍率方式による土地の評価(当社にて要約)

ロングリスト

ろんぐりすとM&A実務

ノンネーム・シートの送付先を選ぶため、譲り受け側となり得る候補先の基礎情報をまとめた一覧表。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

マッチングの出発点になる候補先の一覧です。基本的には、譲り渡し側がノンネーム・シート(ティーザー)やIMの送付先を選ぶにあたり、譲り受け側となり得る候補先について、企業名・所在地・企業概要等の基礎情報をまとめます。候補先は数十社程度になることが多いです。作成にあたっては、初期調査やヒアリングの情報に基づき、シナジー(統合による相乗効果)が期待できる業界・企業について仮説を立てて検討します。競合他社や過去の取引先など、候補先の選定に影響する情報を聞き取ることも重要です。候補先にはPEファンドが含まれることもあり、その種類や仕組みの知識も求められます。

試験ではここを押さえる

  • 数字を覚えるロングリストは数十社程度、ショートリストは数社程度となることが多い。数の入れ替えに注意。
  • よく問われる点通常の流れはロングリスト→ノンネーム・シートで打診→関心を示した先をショートリスト化。情報拡散防止のため、先に数社へ絞ってから送付するケースもある。

図解で確認:マッチング出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.19、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.55(当社にて要約)

ローカルベンチマーク

ろーかるべんちまーくM&A実務

経済産業省が作成した、企業の経営状態を把握する「健康診断」のためのツール。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

ローカルベンチマーク(ロカベン)は、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うためのツールで、経済産業省が作成しました。企業の経営者等と金融機関をはじめとする支援機関等が、企業の状態を把握し、同じ目線で対話を深めるための基本的な枠組みで、事業性評価の「入口」として活用が期待されています。中小M&Aでは、準備段階に入る前から企業・事業の価値を高めるための「見える化」(経営状況・課題の把握)に活用でき、使うとほかの支援機関、特に金融機関との共通認識につながるとされます。似たツールに、事業の将来像を構想して戦略を立てる経営デザインシート(内閣府知的財産戦略推進事務局)があり、M&A後の統合の構想などに使われます。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違いローカルベンチマーク=経済産業省の健康診断ツール(見える化)。経営デザインシート=内閣府知的財産戦略推進事務局の将来構想ツール。
  • よく問われる点事業性評価の「入口」として、経営者と金融機関等の支援機関が同じ目線で対話するための枠組み。

別名・略称:ロカベン図解で確認:事前相談出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料(全体) p.76、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.121、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.106(当社にて要約)

わ行

WACC(加重平均資本コスト)

わっく財務・税務

DCF法で、将来のフリー・キャッシュ・フローと継続価値を現在価値に割り引くときに使う割引率。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

WACC(加重平均資本コスト)は、DCF法の割引率として使われる数値です。DCF法では、将来のキャッシュ・フローを現在の価値に置き直して(割り引いて)評価します。そのときに使う率が割引率で、DCF法ではWACCを用います。知識・スキルマップのDCF法の手順では、(1)予測期間のフリー・キャッシュ・フローを算出し、(2)割引率であるWACCを算定し、(3)予測期間後の継続価値を算定したうえで、(4)予測期間のフリー・キャッシュ・フローと継続価値をWACCで割り引いて事業価値を算定するとされています。インカムアプローチは、割引率・成長率・リスクプレミアム・残存価値などの前提条件次第で結果が大きく異なるため、WACCをどう設定するかは評価額を左右する重要な前提になります。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点DCF法の割引率はWACC。「非流動性ディスカウント率で割り引く」とする選択肢は誤り。
  • よく問われる点WACCで割り引く対象は、予測期間のFCFと予測期間後の継続価値(ターミナルバリュー)の両方。
  • ひっかけに注意前提条件(割引率等)次第で結果が大きく異なるのはインカムアプローチのデメリット。「前提に左右されず最も客観的」は誤り。

別名・略称:加重平均資本コスト図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42(当社にて要約)

割引率

わりびきりつ財務・税務

将来のキャッシュフローや収益を現在価値に換算するときに使う率。

くわしい解説と試験のポイント

くわしく

将来受け取るお金は、今すぐ受け取るお金と同じ価値とはみなしません。そこで、将来の金額を割引率で割り引いて現在価値に直します。インカムアプローチの代表であるDCF法では、予測期間(一般に3〜5年程度)のフリー・キャッシュフロー(FCF)と、その後の継続価値を、加重平均資本コスト(WACC)を割引率として割り引き、事業価値を求めます。割引率を高くするほど、算定される価値は小さくなります。インカムアプローチは将来の収益見込みを反映できる一方、割引率・成長率・リスクプレミアム等の前提条件次第で結果が大きく変わる点が弱みです。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点DCF法の割引率は加重平均資本コスト(WACC)。予測期間のFCFと継続価値の両方をWACCで割り引く。
  • ひっかけに注意「DDで簿外債務が見つかったら主に割引率を引き上げて反映する」は誤り。簿外債務や含み損益は時価純資産法の評価に反映する。
  • よく問われる点インカムアプローチの弱みは、割引率・成長率・リスクプレミアム等の前提次第で結果が大きく異なること。

図解で確認:バリュエーション(財務)出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.47、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.42、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.139(当社にて要約)