本文へ移動
M&A検定ドリル中小企業M&A実務能力・倫理検定の対策サイト

倫理・行動規範48か条と禁忌肢

本試験 15問程度禁忌肢の設定を検討中

倫理・行動規範は15問程度の出題が想定され、中小M&Aガイドラインに明らかに違反する行為を選ぶと不合格につながる「禁忌肢」の設定が検討されています。出題の柱は、スキルマップの使命と倫理・行動規範48か条と、中小M&Aガイドライン第2章の支援機関(特にM&A専門業者)向けのルールの2つです。

1. 使命と倫理・行動規範48か条

中小企業庁の「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識・スキルマップ」が、支援者の使命と、それを実現するための倫理・行動規範を示しています。試験の倫理科目の出発点です。

使命

M&Aに係る専門的知見と高い倫理観を基に、中小企業をはじめとした依頼者・関係者に、質の高いマッチングと、M&Aの一連のプロセスの着実かつ円滑な実行に向けた支援を提供する。これにより依頼者の利益の実現を図るとともに、事業と希少な経営資源の引継ぎによる事業の継続・成長に貢献し、国民経済の発展に寄与する。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.7(当社にて要約)

倫理・行動規範48か条

使命を果たすための行動の原則です。スキルマップに示された「条文初期案」で、強制力を持つ規程ではなく、M&A専門人材が満たすべき要素を抽出したものとされています。各条の下に、その条に反する行為の例を示しました(当社による例示)。例の見出しは、条文の書き方で次のように分けています。

本試験の禁忌肢は、検討会資料で「中小M&Aガイドラインに明らかに違反する行為やトラブルに直結する行為」とされているだけで、具体的な行為は公表されていません。

基本原則

  1. 第1条常に信義に従い、公正、誠実に業務を遂行することこの条に反する行為の例仲介者が、交渉をまとめるため、譲り受け側が実際には言っていない「この価格が最終提示で、断れば撤退する」という話を譲り渡し側に伝え、合意を急がせる。相手方の発言を偽って伝え、事実に基づかずに顧客の判断を動かしており、公正・誠実な業務とはいえない。

善管注意義務・職業倫理

  1. 第2条職業倫理を遵守し、善管注意義務をもって業務にあたることこの条に反する行為の例FAが、譲り渡し側社長の経営者保証をどう扱うかを社長と相談しないまま最終契約書をまとめ、保証の解除や移行について何も定めずに締結させる。成立後の大きなトラブルにつながる論点の検討を怠っており、専門家として求められる注意を払っていない。
  2. 第3条質の高い支援を提供するため、不断の自己研鑽に努めること(実務経験を通じた知識・スキルの向上/適切な助言・指導・援助の能力と支援者としての人間性の向上/社会・経済・法律・技術・環境等への関心による幅広い視野と柔軟な発想の深化)この条に反する行為の例仲介会社の担当者が、中小M&Aガイドラインが改訂されたと知りながら内容を確かめず、改訂前の古い説明資料のまま依頼者に契約内容を説明し続ける。知識の更新を怠り、依頼者に最新のルールに沿った質の高い支援を提供できていない。
  3. 第4条質の高い支援を提供するため、自身と異なる強みや専門性を持つ支援者や士業等専門家等と積極的に連携することこの条に反する行為の例仲介者が、譲渡に伴う税負担の論点について自社に十分な知見がないのに、税理士への確認を勧めず、自分の推測のまま譲り渡し側社長にスキームを助言する。自社で足りない専門性を他の専門家との連携で補おうとせず、誤った助言のおそれを放置している。
  4. 第5条M&A成立後の事業の成功(成長・継続等)が重要であることに鑑み、成立後の成功につながるマッチング・調整その他支援を実施すること。仮にも、M&Aの成立のみを目的として支援を実施しないことこの条に反する行為の例仲介者が、従業員の雇用や取引先の引継ぎについて譲り受け側の方針を確かめないまま、最も早く契約できるという理由だけで譲り渡し側に成約を急がせる。成立後の事業の継続を顧みず、M&Aの成立そのものを目的にした支援になっている。
  5. 第6条顧客の意思を尊重し、利益実現のための対応をすることこの条に反する行為の例譲り渡し側社長が地元企業への引継ぎを希望しているのに、仲介者がその希望を聞き流し、自社の都合で選んだ遠方の候補先だけをロングリストに載せて打診する。顧客が示した意向を無視して手続を進めており、顧客の意思を尊重していない。
  6. 第7条顧客や関係者の利益を犠牲にして支援者自ら又は関係者の利益を追求してはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り受け側から別に謝礼を受け取る約束をしたうえで、譲り渡し側には「この金額が相場です」と説明し、相場より低い価格で合意させる。自社の利益のために、依頼者である譲り渡し側の利益を犠牲にしている。
  7. 第8条M&Aのプロセスを進める上でのリスクや懸念点等が譲り受け側又は譲り渡し側にて判明した場合は取引の相手側へ適切に開示を行うよう、助言を行うことこの条に反する行為の例FAが、譲り渡し側社長から未払残業代があると打ち明けられたのに「聞かれない限り言わなくてよい」と助言し、譲り受け側に知らせないまま交渉を進めさせる。判明した簿外債務のリスクを相手方に開示させず、成立後のトラブルの火種を残している。
  8. 第9条顧客が第三者からのセカンド・オピニオンを得ることを妨げてはならない。また、適宜セカンド・オピニオンを得られることを顧客へ伝えること禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り渡し側社長から「顧問税理士にも譲渡額を見てもらいたい」と相談され、「秘密保持の約束があるので外部には見せられない」と言って相談をやめさせる。顧客がセカンド・オピニオンを得る機会を奪い、助言の妥当性を確かめられなくしている。
  9. 第10条顧客に対する依頼(資料提供依頼等)については、その目的や意図について説明し、顧客の情報提供の負担について留意することこの条に反する行為の例仲介者が、何に使うのかを説明しないまま、譲り渡し側に過去数年分の帳簿や全取引先の契約書を一度に求め、「とにかく全部出してください」と急かす。依頼の目的が分からないまま、顧客に必要以上の準備の負担をかけている。
  10. 第11条契約内容(仲介・アドバイザリー契約)について、顧客が適切な意思決定をできるよう、顧客の理解度に鑑みながら十分な説明を明確に行うことこの条に反する行為の例仲介者が、契約前の説明で手数料の率だけを伝え、最低手数料や専任条項・テール条項があることには触れないまま、譲り渡し側社長に仲介契約書へ署名させる。重要な条件を理解させないまま契約させ、顧客が適切に意思決定する機会を奪っている。
  11. 第12条取引中に締結される契約(秘密保持契約、基本合意、最終契約等)は顧客と十分に相談し、顧客の納得感のもと締結されるものであり、無理やりに案件を推進させてはならない禁忌肢になりうる行為の例譲り渡し側社長が最終契約の表明保証の条項に納得できないと言っているのに、仲介者が「今さら変えれば破談になります」と押し切り、そのまま署名させる。顧客と十分に相談せず、納得のないまま契約を締結させ、案件を無理に進めている。
  12. 第13条締結する契約について顧客が十分に検討する時間を与えることこの条に反する行為の例仲介者が、仲介契約の内容を説明したその場で「今日中に署名いただかないと候補先が離れます」と告げ、契約書を持ち帰って検討することを認めない。契約を検討する時間を与えず、即時の判断を迫っている。
  13. 第14条仲介者は、顧客同意にかかわらず、その取引において当事者となり、又は自己の利益関係者の代理人となってはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り渡し側社長の同意を得たうえで自社の子会社を譲り受け側にし、そのまま仲介者として譲渡額の交渉を取り仕切る。仲介者が自ら取引の当事者側に立っており、顧客の同意があっても許されない利益相反である。
  14. 第15条仲介者は、顧客に対し利益相反事項があると判断されるときはこれを顧客に開示しなければならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り受け側との仲介契約を変更し、譲り渡し側に契約前に説明した額より譲り受け側の手数料を大きく増やしたのに、そのことを譲り渡し側に知らせないまま仲介を続ける。依頼者の利益に影響しうる相手方の手数料の増額という利益相反事項を、依頼者に隠している。
  15. 第16条仲介者は、どちらか一方の顧客に有利な支援を行い、いずれか一方の利益を不当に害するような対応を行わぬよう、中立的な立ち位置の確保など、適切な利益相反管理を行わなければならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、今後も案件を依頼してくれるリピーターの譲り受け側を優遇し、譲り渡し側の希望より低い価格で合意するよう譲り渡し側を説得する。中立の立場を捨てて一方に便宜を図り、もう一方の利益を不当に害している。
  16. 第17条仲介者は、譲り渡し側・譲り受け側双方の顧客と仲介契約を締結する仲介者であるということを双方の顧客に書面で開示し、承諾を取得することこの条に反する行為の例仲介者が、譲り受け側とも仲介契約を結んで手数料を受け取ることを譲り渡し側に伝えず、「社長の側に立って交渉します」とだけ説明して契約する。双方から依頼を受ける立場を隠し、顧客が利益相反の有無を判断できないようにしている。
  17. 第18条仲介者は、バリュエーション、デュー・ディリジェンス(DD)といった、一方の顧客の意向を踏まえた内容となりやすい工程に係る結論を決定しない。また、顧客に対し、必要に応じて士業等専門家の意見を求めるよう伝えることこの条に反する行為の例仲介者が、両当事者の間に立ちながら自ら株価を算定して「これが正しい企業価値です」と結論づけ、専門家に意見を求める必要はないと伝える。一方の意向が反映されやすい評価の結論を仲介者が決め、専門家に相談する道も閉ざしている。
  18. 第19条支援者は顧客に対し、案件の進捗状況を定期的に報告すること。顧客から進捗報告等の要求があった際には滞りなく進捗の報告を行うことこの条に反する行為の例打診先から断りが続いているのに、仲介者が譲り渡し側に報告せず、社長から状況を聞かれても「進めています」とあいまいに答えて月額報酬を受け取り続ける。案件の進捗を顧客に伝えず、顧客が方針を見直す判断材料を与えていない。
  19. 第20条支援者は顧客の合理的な意思決定に必要であると思われる情報について積極的に取得し、提供することこの条に反する行為の例FAが、譲り受け候補の財務状況や事業実態を確認しないまま、譲渡対価を払えるかどうかの判断材料を譲り渡し側に示さず、基本合意へ進める。顧客の意思決定に必要な相手方の情報を取得・提供しておらず、判断を誤らせるおそれがある。
  20. 第21条顧客からの贈答・接待等について、公平な支援を妨げるような社会通念上許容される範囲を超える金銭・物品等を受け取ってはならない。また、支援者から顧客への社会通念上許容される範囲を超えた贈答・接待等も厳に慎むこと禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り受け候補の社長から高額な接待や贈り物を繰り返し受け、その会社を他の候補先より優先して譲り渡し側に紹介する。社会通念を超える接待・贈答を受け、その見返りに支援の公平さをゆがめている。

広告・営業

  1. 第22条広告・営業内容について、虚偽・誇大又は誤解を生じる表示や、隠ぺいをしてはならない。また、他の者を誹謗中傷する広告・比較広告も厳に慎むこと禁忌肢になりうる行為の例仲介会社が、実際には意向を確かめていないのに「御社の買収を希望している企業があります」と書いたダイレクトメールを中小企業に送る。存在しない意向をあるかのように見せる虚偽の営業で、相手の判断を誤らせている。
  2. 第23条不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれがあることを告げる行為を行ってはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、契約を取るため譲り渡し側社長に「この業種なら必ず相場以上の価格で売れます」と言い切り、仲介契約の締結を勧める。成立の可能性や価格という不確実な事項を、確実であるかのように告げている。
  3. 第24条不当な目的・品位を損なう広告又は宣伝等の行為により顧客を勧誘してはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介会社の営業担当者が、社名や仲介契約を勧める目的を伏せて「経営相談」を装い、中小企業の社長と面談の約束を取り付けて契約を勧める。本当の目的を隠して接触し、相手が冷静に判断できない状態で勧誘している。
  4. 第25条広告・営業先から停止意思(M&Aの実施意向がない旨、当該仲介者・FAと契約締結しない旨又は引き続き広告・営業を受けることを希望しない旨)を表示された場合には、ただちに広告・営業を停止しなければならない禁忌肢になりうる行為の例社長から「M&Aをするつもりはないので、今後の電話は不要です」と断られたのに、仲介会社の営業担当者が担当を替えて電話をかけ続ける。停止意思を示した相手への営業をただちに止めず、相手の事業や生活を妨げている。

品位

  1. 第26条常に見識と品位の保持・向上に努め、業界に対する信頼を高めることこの条に反する行為の例仲介会社が、契約獲得件数だけで担当者を評価し、強引な営業への苦情が繰り返し寄せられても、社内で原因を調べず対策も取らない。業界の信頼を損なう行為を放置しており、見識と品位の向上に努めていない。
  2. 第27条品位を損なう事業を営んだり参入してはならない。また、これらの事業に自己の名義を利用させてはならない禁忌肢になりうる行為の例M&A支援の経験がある者が、強引な勧誘で苦情が相次いでいると知っている仲介会社に、報酬と引き換えに「顧問」として自分の氏名と経歴を広告に使わせる。品位を損なう事業と知りながら自己の名義を使わせ、その事業に信用を与えている。
  3. 第28条職業上の誠実性、社会的信頼、品位を損なう行為や、公序良俗に反する行為をしてはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り受け候補の社長との会食の席で酒に酔って店員に暴言を吐き、店の備品を壊して警察を呼ばれる騒ぎを起こす。支援者としての品位と社会的信頼を損なう行為で、顧客や業界に対する信頼も傷つける。
  4. 第29条関係者を誹謗・中傷してはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り渡し側社長が他社と比べて検討していると知り、根拠もなく「あの仲介会社は情報を漏らすことで有名です」と伝えて契約を引き留める。根拠のない悪評で他の支援者をおとしめ、顧客の判断もゆがめている。
  5. 第30条関係者を欺罔・脅迫する行為、不当な要求をする行為をしてはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、手数料の引下げを求めた社長に「応じなければ取引先や金融機関に御社の経営難を知らせます」と告げ、元の手数料のまま払わせる。相手を脅して自社に有利な条件をのませる不当な要求である。
  6. 第31条不当な手段により、関係者の業務を妨害してはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、依頼者が契約を解除して別のFAに依頼したことに腹を立て、そのFAが交渉中の候補先に連絡し、根拠なく「この案件は問題がある」と伝えて交渉を止めさせる。不当な手段で他の支援者と当事者の交渉を妨げている。

法令等の遵守

  1. 第32条社会規範及び法令を遵守することこの条に反する行為の例仲介会社が、成約後に当事者間で起きた代金の支払をめぐる争いについて、弁護士でないのに一方の代理人として相手方と示談交渉し解決報酬を受け取ることを、自社のサービスとして続ける。報酬を得る目的で法律事件の代理を業として行う非弁行為にあたり、弁護士法72条に反する。
  2. 第33条顧客等又は関係者に対し負うべき法令上又は契約上の支援者自らの義務を正当な理由なく履行しない行為をしてはならない禁忌肢になりうる行為の例FAが、契約でクロージングまでの支援を引き受けていたのに、最終契約の締結後は連絡に応じず、代金の入金確認や登記の段取りを依頼者任せにする。正当な理由なく、契約上引き受けた義務を果たしていない。
  3. 第34条顧客等又は関係者の権利やプライバシー、名誉又は信用等を侵害してはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り受け候補の関心を引くため、譲り渡し側社長の健康状態や家族の事情を本人に断りなく候補先に話す。顧客の私的な事情を無断で明かし、プライバシーを侵害している。
  4. 第35条M&A関連機関(公的機関・所属している業界団体等)が制定するM&Aに関連するガイドラインや指針等を遵守することこの条に反する行為の例仲介者が、専任条項を設けた仲介契約の期間を、ガイドラインが最長でも6か月〜1年以内を目安とするのに3年とし、依頼者が他の仲介者・FAに依頼できないようにする。公的なガイドラインの目安を守らず、専任条項で依頼者を長期間不当に拘束している。
  5. 第36条M&Aのプロセスで顧客の法令違反、社会通念上不適切な目的での行動、懸念点等が判明した場合は、自己や顧客の利益を優先するのではなく、専門機関や士業等専門家への相談も含めて対応策を検討することこの条に反する行為の例FAが、DDの準備中に譲り渡し側の決算で売上が水増しされていると気付いたのに、成約を優先して社長に是正を助言せず、専門家にも相談しないまま交渉を続ける。顧客の不適切な行為を知りながら、成約を優先して対応策の検討を怠っている。

不適切な個人・組織、反社等との関係

  1. 第37条反社会的勢力等となること又は反社会的勢力等に対する利益の供与、便益の提供又はその他反社会的勢力等と事実上交流する等の行為をしてはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り受け候補の会社が反社会的勢力と関係していると知りながら、成約手数料を得るためにマッチングを進め、その会社に便宜を図る。反社会的勢力に利益を与える取引に加担しており、市場と顧客を危険にさらしている。
  2. 第38条反社等不適切な顧客・関係者であるかどうかを取引開始前に確認することこの条に反する行為の例仲介者が、急ぎの案件だからと、譲り受け側の代表者や株主が反社会的勢力に当たらないかを確認しないまま仲介契約を結ぶ。取引開始前に求められる相手方の確認を怠り、不適切な相手を見逃すおそれがある。
  3. 第39条不適切な個人・組織の情報を取得した場合は、当該情報を所属している組織内で共有することこの条に反する行為の例担当者が、ある譲り受け側が過去の案件で最終契約の義務を守らなかったと知りながら社内に共有せず、別の担当者がその会社とのマッチングを進めてしまう。不適切な相手の情報を個人の手元にとどめ、組織として被害を防ぐ機会を失わせている。

情報管理

  1. 第40条情報の取得・管理・活用は、法令・指針等を遵守して適切に行うことこの条に反する行為の例仲介会社の営業担当者が、取引先を装って電話をかけ、中小企業の決算の内容や社長の連絡先を聞き出して営業リストを作る。偽りの手段で情報を取得しており、法令に沿った適切な情報の取得といえない。
  2. 第41条取得した情報はその情報の正しさを支援者自ら確認するよう努めることこの条に反する行為の例仲介者が、譲り渡し側から受け取った売上の資料を確認せずにそのまま企業概要書へ載せ、数字の誤りに気付かないまま候補先に開示する。情報の正しさを確かめず、事実と異なる情報で相手方の判断を誤らせるおそれがある。
  3. 第42条顧客情報の取り扱いに十分な注意を払うこと。顧客に関する情報を厳格に管理し、悪用、顧客の承諾なしに流用してはならない(業務上知り得た情報を自ら又は関係者の利益のために利用しない/インサイダー取引防止のため未公表の重要事実にあたり得る情報を顧客又は関係者以外に伝達せず、故意・過失を問わずインサイダー取引を行わない/退職時等の顧客・関係者の情報の他社への持ち出し等、不正な競争に関する禁止行為又はこれに準ずる行為を行わない/取引の記録・書類の保持に十分注意する)禁忌肢になりうる行為の例仲介会社を辞める担当者が、在職中に扱った譲り渡し側の企業概要書や顧客リストを持ち出し、転職先での営業に使う。業務で知った顧客情報を無断で持ち出して自分の利益に使っている。
  4. 第43条取得した情報を開示する場合は、顧客又は関係者と必ず事前に情報の開示及び開示範囲・期間等について話し合うこと。秘密保持契約を締結している場合は、その内容と照らし合わせて違反する事項がないか確認することこの条に反する行為の例仲介者が、譲り渡し側社長に開示先や範囲を相談しないまま、秘密保持契約を結ぶ前の候補先にまで社名入りの企業概要書を送る。開示の範囲を顧客と事前に話し合わず、秘密情報の流出を招いている。
  5. 第44条仲介者の場合、依頼者の情報がもう一方の依頼者(一方依頼者)の不利益につながるリスクを含むときは、一方依頼者に対する善管注意義務の履行の観点から当該情報を開示することが求められる。秘密保持契約がある場合も開示すべきか判断が求められ、開示が難しいと判断した場合でも、開示以外の手段(例えば、支援の打ち切り等)により一方依頼者の利益保護のための支援を行い、善管注意義務を果たさなければならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り受け側に事業を続ける資金の当てがないと知ったのに、秘密保持を理由に譲り渡し側へ伝えず、支援を打ち切ることもなく成約させる。一方の依頼者に不利益となるリスクを放置し、善管注意義務を果たしていない。
  6. 第45条取引終了後においても、取引で使用した書類等の使用停止及び適切な管理(一定期間の保存、アクセス制限、使用停止等)を行わなければならない。顧客との取り決めに応じて、情報の破棄及び破棄証明を行う必要がある場合もあることに留意すること禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、案件の終了後も譲り渡し側の決算書や企業概要書を社内の共有フォルダに残し、案件に関係のない社員も見られる状態のまま放置する。取引で使った書類のアクセス制限などの管理を怠り、情報漏えいのおそれを残している。
  7. 第46条顧客や支援者自らの職務に関与させた者に対しても、情報の取り扱いに関して適切な指導・監督を行うことこの条に反する行為の例仲介会社が、営業の電話を外部の会社に委託しながら、顧客情報の扱い方を指示せず、委託先が営業リストをどう管理しているかも確認しない。職務に関与させた委託先への指導・監督を怠り、情報の不適切な扱いを招くおそれがある。
  8. 第47条第三者が作成した書類・情報を正当な権限なく違法、不当に偽造、変造又はその他改変等を行ってはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介者が、譲り受け候補の関心を引くため、譲り渡し側の顧問税理士が作成した試算表の利益の数字を書き換え、企業概要書に添付して候補先に渡す。第三者が作成した書類を権限なく改変し、相手方を誤認させている。

その他禁止行為

  1. 第48条上記のほか、支援者としての善管注意義務や職業倫理の観点から不適切と認められる行為をしてはならない。また、自己の関係者による不適切な行為について予見・認識しながら、これを停止等させるための客観的に可能かつ有用な措置を講じない行為をしてはならない禁忌肢になりうる行為の例仲介会社の上司が、部下が停止意思を示した会社への営業を続けていると報告を受けながら、注意も指示もせずに放置する。関係者の不適切な行為を認識しながら、止めるための措置を講じていない。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.10〜p.13、スキルマップ(中小企業庁)

2. ガイドラインが支援機関に求めるルール

48か条は原則を示したものです。中小M&Aガイドライン(第3版)第2章は、同じ考え方を、仲介者・FAが実際の場面で守るべき具体的なルールにしています。試験では「この場面でどうすべきか」という形で問われやすいので、条文とあわせて押さえます。

前提:仲介者とFAの違い

ルールの多くは、売り手と買い手の双方から依頼を受ける「仲介者」に向けたものです。まず、一方だけから依頼を受けるFAとの違いを確認します。

仲介者

  • 譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約し、双方から手数料を受けるのが通常
  • 一方の利益だけを優先できない。双方の意向を把握し、M&Aの成立を目指す
  • 構造的な利益相反のリスクがあるため、バリュエーション・DDの結論を決めない等の措置が必要

FA(ファイナンシャル・アドバイザー)

  • 譲り渡し側か譲り受け側の一方と契約し、その一方から手数料を受ける
  • 依頼者にとって有利な条件での成立を目指す
  • 厳格な入札で譲渡額を最大化したい場合や、株主等への説明責任が重い場合に向く
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.9(中小M&Aガイドライン第3版からの引用部分を当社にて要約)

仲介者の禁止行為(利益相反)

仲介者は双方から手数料を受け取るため、一方に肩入れする利益相反のおそれを構造的に抱えています。そこで仲介者は、少なくとも次の行為をしてはならず、仲介契約書でこれらを行わない旨を仲介者の義務として定めなければなりません。どれも禁忌肢の典型です。

  1. 譲り受け側から追加で手数料を取得し、その譲り受け側に便宜を図る(ニーズに反したマッチングの優先、不当に低額な譲渡価額への誘導等)
  2. リピーターとなる依頼者を優遇し、便宜を図る
  3. 希望額より高く(低く)成立した場合に、正規の手数料とは別に、希望額との差分の一定割合を報酬として要求する
  4. 一方から伝達を求められた事項を他方に伝えない、又は告げていない事項を偽って伝える
  5. 一方にとってのみ有利又は不利な情報を認識したのに、その当事者に伝えず秘匿する

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99〜p.100(当社にて要約)

広告・営業の停止

営業先から「M&Aをする意向がない」「この仲介者・FAと契約しない」「今後の営業を希望しない」のいずれかの意思(停止意思)を示されたら、拒まずにただちに広告・営業を停止しなければなりません。停止意思は組織的に記録・共有し、再開する場合は担当者限りではない組織的な判断が必要です。全面的に拒否した相手への再開は当然できません。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84〜p.85(当社にて要約)

最終契約のリスクと説明の義務

M&Aのトラブルは、最終契約を結んだ後(クロージング後の支払・手続など)に表面化しがちです。そこでガイドラインは、仲介者・FAが依頼者に説明すべきリスクを、「認識の有無に関わらず説明するもの」と「認識した段階で説明するもの」の2段階に分けています。どちらに当たるか、説明が「しなければならない」か「望ましい」かが問われやすい点です。

対応レベル対象となるリスク仲介者・FAに求められること
① 認識の有無に関わらず対応ア 譲り渡し側の経営者保証の扱い
イ デュー・ディリジェンス(DD)の非実施
ウ 表明保証の内容
依頼者に説明しなければならない。経営者保証は相談先(弁護士・支援センター・金融機関)の説明、最終契約での位置付けの検討
② 認識した段階で対応エ クロージング後の支払・手続
オ 最終契約後の支払の調整・修正
カ 譲り渡し側の資産・貸付金の最終契約後整理
キ 最終契約からクロージングまでの期間
認識した段階で、詳細と顕在化した場合の結果を具体的に説明することが望ましい。リスクを生む条項を提案するなら組織的な判断が必要
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.96(当社にて加工して作成)

3. 出題範囲の11分野で確認する

ここまでの内容を、試験の出題範囲(倫理・行動規範の11分野)の順に、図解と出典つきの要点で確認できます。条文が範囲になっている分野は、上の48か条の該当する条へリンクしています。

使命

練習問題 4問(初級 1・中級 2・上級 1) | この分野を演習する

出題範囲:使命

図解|使命

専門人材の使命は、依頼者の利益から国民経済の発展へつながる

専門的知見と高い倫理観に基づく支援を土台に、顧客・関係者と社会の両方に貢献する。

  1. 国民経済の発展事業の継続・成長の実現に貢献し、国民経済の発展に寄与する
  2. 事業と経営資源の引継ぎ収益性や社会的意義のある事業と、希少な経営資源を引き継ぐ
  3. 依頼者の利益の実現M&Aによって依頼者の利益の実現を図る
  4. 質の高い支援専門的知見と高い倫理観で、マッチングと一連のプロセスを支える
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.7、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.16(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)使命(中小M&A専門人材)中小M&A専門人材

中小M&A専門人材はどのような人材と定義されているか

中小M&A専門人材は、取引の円滑化・適正化と顧客利益の最大化に向けた支援を通じて、中小企業と日本経済の発展に貢献する人材と定義されています。

くわしい解説を読む

中小企業庁のスキルマップ(中小M&A専門人材の使命・倫理・知識をまとめた資料)は、まず目指す人材像を定義しています。背景には、中小企業の経営者の高齢化が進み休廃業の増加が見込まれるなか、事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県に設置された事業承継の公的相談窓口)だけで全ての中小企業を支援するのは現実的でなく、民間のM&A専門業者による支援も強化する必要がある、という問題意識があります。そのうえで中小M&A専門人材を、「M&A取引の円滑化・適正化、顧客利益の最大化に向けた支援を通じて、中小企業の持続性・競争力向上に貢献し、日本の経済発展・生産性向上に寄与する」人材と定義しています。

覚えておく事実

  • この定義の出所は、令和6年度中小企業活性化・事業承継総合支援事業(中小M&Aに係る資格に関する調査事業)の仕様書である。
  • スキルマップは、中小企業の経営者に占める70歳以上の割合が過去最高となっていることを背景に挙げている。
  • 多くの経験と高いスキルを持ち、質の高い支援ができるM&A専門業者・専門人材を増やすことが重要とされている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意定義には「日本の経済発展」と「生産性向上」の両方への寄与が入っている。どちらかが掲げられていないとする選択肢は誤り。
  • よく問われる点定義の4要素(円滑化・適正化/顧客利益の最大化/持続性・競争力向上/経済発展・生産性向上)の入れ替えに注意。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.16

中小M&A専門人材の使命は国民経済の発展への寄与

専門的知見と高い倫理観をもとに質の高い支援を提供し、依頼者の利益の実現と事業の引継ぎを通じて、国民経済の発展に寄与することが使命です。

くわしい解説を読む

スキルマップは、中小M&A専門人材の「使命」を、中小M&Aガイドライン(第3版)の策定趣旨などを踏まえて定めています。使命は3つの段に分けると分かりやすくなります。①手段:M&Aに係る専門的知見と高い倫理観をもとに、中小企業をはじめとした依頼者や関係者に、質の高いマッチング(相手探し)の提供や、M&Aの一連のプロセスを着実かつ円滑に進めるための支援を行います。②顧客への貢献:M&Aによる依頼者の利益の実現を図ります。③社会への貢献:収益性または社会的意義等を有する事業と希少な経営資源を引き継ぐことで、事業の継続と成長の実現に貢献し、もって国民経済の発展に寄与します。

覚えておく事実

  • 使命の基礎として挙げられているのは「M&Aに係る専門的知見」と「高い倫理観」の2つである。
  • 引継ぎの対象は「収益性又は社会的意義等を有する事業」と「希少な経営資源」で、収益性のある事業に限られない。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点使命の最終目的は「国民経済の発展に寄与」。「M&A業界の発展」や「地域経済」とする選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意「収益性のある事業に限って引継ぎを支援する」は誤り。社会的意義を有する事業も使命の対象。
  • よく問われる点使命には、依頼者の利益の実現(顧客への貢献)と、事業の継続・成長を通じた国民経済の発展(社会への貢献)の両方が含まれる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.7

仲介者・FAの選定等

練習問題 10問(初級 4・中級 4・上級 2) | この分野を演習する

出題範囲:仲介者・FAの選定等

図解|仲介者・FAの選定等

仲介者とFAは、契約の相手と目指すものが違う

倫理・行動規範の前提として、仲介者とFAの違いを明確に理解しておく必要がある。

仲介者FA
契約の相手譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約する譲り渡し側か譲り受け側の一方と契約する
手数料双方から支払を受けるのが通常契約した一方から支払を受ける
立場一方の利益だけを優先できず、双方共通の目的であるM&A成立を目指す依頼者にとって有利な条件でのM&A成立を目指す
活用される場面最も有利な条件より、円滑に手続を進めることを重視する場合最も有利な条件を重視する場合や、厳格な入札方式を望む場合
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.9、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.17、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.18(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)FAセカンド・オピニオン仲介者

仲介者・FAは複数を比較して選ぶことが重要べき・求められる

仲介者・FAを選ぶときは、業務形態、業務範囲、契約期間、手数料体系、実績、利用者の声などを確認し、複数の中から比較して決めることが重要です。

くわしい解説を読む

中小企業がM&Aを進めるとき、多くは仲介者やFA(フィナンシャル・アドバイザー:一方の当事者だけを支援する助言者)に支援を依頼します。依頼先によって支援の範囲や手数料、得意分野が異なるため、中小M&Aガイドラインは、ホームページや担当者から情報を確認したうえで、複数の仲介者・FAの中から比較検討して決めることが重要としています。確認する項目は、業務形態(仲介かFAか)、業務範囲・内容、契約期間、報酬(手数料)体系、M&A取引の実績(取り組んだ件数・年数など)、利用者の声などです。加えて、いわゆる「相性」も重要なことがあります。仲介とFAのどちらが自分に適しているかも検討すべきとされています。

覚えておく事実

  • 契約の名称は「仲介契約」「FA契約」のほか、「業務委託契約」「アドバイザリー契約」などとされることもある。
  • 仲介業務とFA業務のどちらかしか扱わない支援機関もあれば、どちらを依頼するか相談できる支援機関もある。
  • M&A支援機関登録制度のホームページでは、登録機関の種類、専従者数、手数料の算定基準(報酬率・最低手数料の額など)を確認できる。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点確認項目は業務形態・業務範囲・契約期間・報酬体系・実績・利用者の声。加えて「相性」も重要なことがあるとされる。
  • ひっかけに注意「『業務委託契約』などの名称なら仲介契約・FA契約に当たらない」は誤り。名称はさまざまで、名称だけでは決まらない。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.37

仲介者は双方の調整役、FAは依頼者側の助言者

仲介者は双方から依頼を受けるため一方の利益だけを優先できず、M&Aの成立を目指して調整します。FAは依頼者に有利な条件での成立を目指します。

くわしい解説を読む

M&Aの支援者には、譲り渡し側と譲り受け側の両方から依頼を受ける「仲介者」と、どちらか一方だけから依頼を受ける「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」があります。仲介者は双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益だけを優先的に扱うことはできません。その一方で、双方の意向を一元的に(一か所でまとめて)把握できる立場にあり、双方に共通する目的であるM&Aの成立を目指して助言や調整を行います。FAは一方の当事者だけから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえ、依頼者にとって有利な条件でM&Aが成立するよう助言や調整を行います。立場によって、支援者が目指すものが変わります。

覚えておく事実

  • 仲介者は、契約締結に当たり、両当事者の間で利益相反のおそれがあると想定される事項を、各当事者に明示的に説明する必要があるとされる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「仲介者は譲り渡し側に最も有利になるよう譲渡額の最大化を目指す」は誤り。依頼者に有利な条件を目指すのはFA。
  • 似た用語との違い仲介者は「一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできない」、FAは「依頼者にとって有利な条件」を目指す。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.42、参考資料11 M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル p.2

仲介者とFAの使い分け(活用例)

手続を円滑に進めることを重視するなら仲介者、最も有利な条件での成立や、債権者・株主との関係で有利な条件が必要ならFAが活用例とされています。

くわしい解説を読む

中小M&Aガイドラインは、仲介者とFAがそれぞれどんな場合に向いているかを例示しています。仲介者は、譲渡額の最大化(譲り受け側なら最小化)など自社に最も有利な条件で成立させることだけを重視するのではなく、仲介者が双方とそれぞれ連絡を取り合うことで手続を円滑に進めることを重視する場合に活用されます。FAは、自社に最も有利な取引条件での成立を重視する場合のほか、債権者や株主などの関係者との関係で、譲渡額をはじめ最も有利な取引条件での成立を目指す必要がある場合に活用されます。

例債務整理の手続を要する債務超過企業が、譲渡額の最大化を特に重視して厳格な入札方式で譲り渡す場合

覚えておく事実

  • 厳格な入札方式とは、最も有利な条件を示した入札者を譲り受け側とする方式をいう。
  • 経営者が株主等に最善のM&Aをしたと合理的に説明できるよう、利益相反のおそれが生じない支援機関を選ぶ必要がある場合も、FAの活用例とされる。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点債務超過企業の厳格な入札や、株主への説明責任がある場合は「FA」が活用例。仲介者を勧める選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意「仲介者は自社に最も有利な条件で成立させることだけを重視する場合に活用される」は誤り。それはFAの活用例。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.42

仲介者は相手方にも同じ業務を提供し手数料も受け取る

仲介者は依頼者の相手方にも同様の業務を提供し、相手方からも手数料を受けるのが通常です。FAは相手方に業務を提供せず、手数料も依頼者からだけ受けます。

くわしい解説を読む

仲介契約やFA契約を結ぶ前に、支援機関は依頼者に契約の重要事項を説明します。その説明書のサンプル(重要事項説明書サンプル)は、最初に仲介契約とFA契約の違いを説明しています。仲介者は、M&Aの当事者双方から依頼を受け、依頼者の相手方(候補先を含む)にも依頼者と同様の業務を提供します。手数料も、依頼者だけでなく相手方から受け取るのが通常です。FAは当事者の一方だけから依頼を受け、相手方に同様の業務を提供することはなく、相手方から手数料も受け取りません。説明書では、自社との契約がどちらの類型かをチェック欄に印を付けて示します。

覚えておく事実

  • 中小M&Aガイドラインでは、仲介者は利益相反のリスクを最小限とするため、最低限の措置を講じることが必要とされている。
  • 措置の一つは、双方と契約する仲介者であること(両当事者から手数料を受け取るならその旨)を両当事者に伝えること。
  • 措置の一つは、バリュエーション(企業価値評価)やDD(デュー・ディリジェンス:買い手側などが行う調査)など一方の意向を踏まえた内容となりやすい工程の結論を決定しないこと。
  • 措置の一つは、利益相反のおそれがある事項(一方にだけ有利・不利な情報を含む)を認識したら、各当事者に適時に明示的に開示すること。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「仲介者は依頼者に有利な条件の実現を目指す」は誤り。それはFA。仲介者は一方の利益のみを優先できない。
  • 似た用語との違いFAは相手方から手数料を受け取らない。仲介者は相手方からも手数料を受け取るのが通常。

出典:参考資料11 M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル p.2

倫理・行動規範は仲介者とFAの違いの理解が前提

スキルマップは、倫理・行動規範の前提として、仲介者とFAの違いを明確に理解している必要があるとしています。

くわしい解説を読む

M&A支援者がどう行動すべきかは、自分が仲介者なのかFAなのかで変わります。仲介者は双方と契約し、通常は双方から手数料を受けるため、一方の利益だけを優先できず、双方の意向を一元的に把握してM&Aの成立を目指します。FAは一方と契約してその一方から手数料を受け、依頼者に有利な条件での成立を目指します。スキルマップは、中小M&Aガイドライン第3版の仲介者・FAの比較表(契約の相手方・特徴・活用例)を引用し、この違いの理解を倫理・行動規範の前提に置いています。さらに、依頼者が仲介者・FAを選ぶ場面で、M&A専門業者が留意すべき点も示しています。

覚えておく事実

  • M&A専門業者は、依頼者が業務形態・業務範囲・契約期間・報酬体系・実績・利用者の声などを確認し、複数の中から比較検討して決めることが重要である点に留意する。
  • M&A専門業者は、依頼者にとって「相性」も重要であることを踏まえ、どちらの形態が依頼者に適しているかに留意する。
  • 仲介者の活用例は、最も有利な条件だけを重視せず、仲介者が双方とやり取りして円滑に手続を進めることを重視する場合とされる。
  • FAの活用例には、債務整理を要する債務超過企業の厳格な入札や、株主等に最善のM&Aと合理的に説明する必要がある場合がある。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点事例問題では、債務超過企業の入札や株主への説明責任があれば「FA」、円滑な手続を重視するなら「仲介者」が適する。
  • 義務か・望ましいか仲介者・FAの違いは、倫理・行動規範の前提として「明確に理解している必要がある」とされる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.9

セカンド・オピニオンは狭義と広義を区別する望ましい

他の支援機関の意見を聞くセカンド・オピニオンは有効です。重要な事項で中立的な意見が欲しいときは、士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センターへの相談が望ましいとされます。

くわしい解説を読む

セカンド・オピニオンとは、仲介者・FAの選定や契約のとき、または契約後に受けた助言が妥当かを確かめるときに、他の支援機関から意見や助言を求めることです。依頼者の意思決定を後押しし、安心してM&Aを進めるうえで有効とされています。ただし、同業の仲介者・FAから意見を求める場合(狭義のセカンド・オピニオン)は、相談先が営業の機会と捉えるなどして、意見が中立性・客観性を欠く内容になる可能性が指摘されています。そのため、譲渡対価の決定や最終契約の内容など重要な事項について中立的・客観的な意見を求めるときは、M&Aに詳しい士業等専門家や、全国に設置された事業承継・引継ぎ支援センターへの相談(広義のセカンド・オピニオン)が望ましいとされます。

覚えておく事実

  • 狭義のセカンド・オピニオンは、同業他社(ほかの仲介者・FA)から意見や助言を求めることをいう。
  • 広義のセカンド・オピニオンは、M&Aに詳しい士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センターに相談することをいう。
  • スキルマップの倫理・行動規範は、顧客がセカンド・オピニオンを得ることを妨げてはならず、得られることを顧客へ伝えることとしている。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか重要事項で中立的な意見を求めるなら「広義」への相談が「望ましい」。「同業の仲介者・FAへの相談が望ましい」は誤り。
  • 似た用語との違い弁護士など士業等専門家や支援センターへの相談は「広義」、ほかの仲介者・FAへの相談は「狭義」。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.43、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.10

仲介者は利益相反のリスクがあるため業務に一定の制限があるしなければならない

仲介者には利益相反のリスクがあるため、ガイドラインは一部の業務を提供しないことを含む措置を講じることとしています。依頼者は自分に必要な支援をよく検討して選びます。

くわしい解説を読む

仲介者は譲り渡し側と譲り受け側の両方から依頼を受けるため、一方に有利にすれば他方に不利になるという利益相反のリスクを抱えています。そこで中小M&Aガイドラインは、仲介者について、一部の業務を提供しないことを含めて一定の措置を講じることとしています(ガイドライン第2章Ⅱ5「仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」)。また、支援機関によって業務範囲はさまざまです。M&Aの手続全体のうち特定の工程だけに絞って支援する仲介者・FAもあれば、全工程を行う場合でも特定の業種や地域に特化した仲介者・FAもあります。そのため依頼者は、どのような支援が自分にとって必要かをよく検討して判断する必要があります。

覚えておく事実

  • 当事者同士でほぼ基本合意ができた段階で、クロージングまでの手続だけを仲介者・FAに依頼するケースは増えつつある。
  • M&Aプラットフォームで譲り受け側を自ら見つけ、マッチング後の契約交渉等から仲介者・FAを活用するケースもある。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「全工程を担う支援機関を選ぶのが前提で、特定の工程に絞った支援機関は対象外」は誤り。
  • 義務か・望ましいか依頼者は、どのような支援が自身にとって必要かよく検討して判断する「必要がある」とされる。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.37

仲介者は双方と契約し、FAは一方とだけ契約する

仲介者は譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約を結び、双方から手数料を受けるのが通常です。FAは一方とだけ契約し、その一方から手数料を受けます。

くわしい解説を読む

仲介者とFAの最も基本的な違いは、誰と契約し、誰から手数料を受け取るかです。仲介者は、譲り渡し側(会社や事業を譲る側)と譲り受け側(譲り受ける側)の双方と契約を締結し、双方から手数料の支払を受けることが通常です。FA(フィナンシャル・アドバイザー)は、譲り渡し側か譲り受け側のどちらか一方と契約を締結し、その一方から手数料の支払を受けます。中小M&Aガイドラインの比較表では、この契約関係を前提に、仲介者は双方から依頼を受けているため一方の利益のみを優先的に扱えず、FAは一方のみから依頼を受けているため依頼者に有利な条件を目指す、と役割の違いを説明しています。

覚えておく事実

  • 活用例として、仲介者は手続を円滑に進めることを重視する場合、FAは自社に最も有利な取引条件での成立を重視する場合が挙げられている。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い仲介者=双方と契約・双方から手数料(通常)、FA=一方と契約・その一方から手数料。入れ替えた選択肢に注意。
  • ひっかけに注意「FAも双方と契約し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指す」は誤り。それは仲介者の説明。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.42

基本原則

練習問題 4問(初級 2・中級 1・上級 1) | この分野を演習する

出題範囲:基本原則

図解|基本原則

倫理・行動規範は、基本原則を土台に全48条で組み立てる

強制力を持つ規程ではなく、M&A専門人材が満たすべき要素を抽出したもの。

  1. 使命専門的知見と高い倫理観で支援し、顧客と社会に貢献する
  2. 基本原則常に信義に従い、公正、誠実に業務を遂行すること
  3. 個別の規範善管注意義務・職業倫理、広告・営業、品位、法令等の遵守、反社等、情報管理
  4. その他禁止行為上記のほか、善管注意義務や職業倫理から不適切な行為をしてはならない
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.7、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.10、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.13(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)禁忌肢倫理・行動規範(スキルマップ)信義誠実の原則

倫理・行動規範は強制力のない条文初期案で全48条

スキルマップの倫理・行動規範は、強制力を持つ規程ではなく、M&A専門人材が満たすべき要素を抽出した条文初期案で、8つの大分類・全48条からなります。

くわしい解説を読む

スキルマップには、中小M&A専門人材が守るべき倫理・行動規範がまとめられています。これは強制力を持つ規程としてではなく、専門人材が満たすべき要素を抽出した「条文初期案」と位置付けられています。大分類は、基本原則、善管注意義務・職業倫理、広告・営業、品位、法令等の遵守、不適切な個人・組織や反社会的勢力等との関係、情報管理、その他禁止行為の8つで、条文は第1条から第48条まであります。第1条の基本原則は「常に信義に従い、公正、誠実に業務を遂行すること」です。一方、資格試験の合格者の登録制度では、倫理規程の遵守と、違反したときの処分(氏名公表等)への同意を登録の要件とすることが想定されています。

覚えておく事実

  • 登録制度では、登録時の講習と定期的な講習(1〜2年ごと等)の受講も要件として想定されている。
  • 登録者はデータベースで氏名が公表され、倫理規程違反が認められる場合には氏名公表・登録取消し等が想定されている。
  • 資格試験では、倫理・行動規範の問題について禁忌肢の設定も検討されている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「違反に罰則がある強制力のある規程」は誤り。強制力を持つ規程ではなく、満たすべき要素を抽出した条文初期案。
  • 数字を覚える大分類は「8つ」、条文は「全48条」。「大分類2つ・全12条」などの選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意「情報管理や反社会的勢力との関係は大分類に含まれない」は誤り。どちらも大分類に含まれる。

出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.10、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.11、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12

善管注意義務・職業倫理

練習問題 50問(初級 14・中級 24・上級 12) | この分野を演習する

出題範囲:善管注意義務・職業倫理

図解|善管注意義務・職業倫理

仲介者の利益相反は、3つの措置と5つの禁止で防ぐ

仲介者は双方に中立・公平でなければならず、5つの禁止は仲介契約書に義務として定める。

最低限の3つの措置

  • 双方と契約する仲介者であること(双方から手数料を受けるならその旨)を伝える
  • バリュエーション・DDの結論を決めず、専門家の意見を求めるよう伝える
  • 利益対立が想定される事項を契約時に説明し、関連情報は適時に開示する

禁止される5類型

  • 譲り受け側から追加手数料を得て、便宜を図る
  • リピーターとなる依頼者を優遇し、便宜を図る
  • 希望額との差額の一定割合を、正規の手数料とは別に要求する
  • 伝えるよう求められた事項を伝えない、又は偽って伝える
  • 一方にのみ有利・不利な情報を認識したのに、伝えず秘匿する
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.100、中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.6(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)構造的な利益相反情報の非対称性職業倫理善管注意義務(M&A専門業者)贈答・接待仲介者が講ずべき最低限の措置仲介者の禁止行為(5類型)忠実義務中立性・公平性利益相反(仲介者)相手方の手数料(仲介者)一方依頼者への情報開示(仲介者)支援の質の確保・向上自己契約・双方代理善管注意義務チャイニーズ・ウォール報告義務倫理・行動規範(スキルマップ)

追加手数料と引換えに便宜を図ることの禁止しなければならない

仲介者が譲り受け側(買い手)から上乗せの手数料を受け取り、その見返りに買い手を有利に扱うことは、利益相反としてガイドラインで禁止されています。

くわしい解説を読む

仲介者は譲り渡し側(売り手)と買い手の双方から依頼を受け、どちらにも中立・公平に支援する立場です。ところが、買い手が当初の手数料に上乗せして払う代わりに、仲介者が譲渡額を不当に低くまとめたり、売り手の意向に反してその買い手を優先して引き合わせたりすることがあり得ます。ガイドラインは、買い手が追加の手数料を払ってまでその売り手とのM&Aを実現したいのなら、その支払は仲介者への手数料ではなく、本来は売り手に払われる譲渡額に含まれ得たお金だと考えます。そのため、追加手数料を対価に売り手の利益に反して買い手に便宜を図る行為は利益相反にあたり、禁止行為とされています。

覚えておく事実

  • 禁止される典型例の一つは、仲介者が買い手から追加の手数料を受け取る代わりに、譲渡額を不当に低い額へ誘導すること。
  • もう一つの典型例は、仲介者が追加の手数料と引換えに、売り手の意向に反してその買い手とのマッチング(引き合わせ)を優先すること。
  • こうした行為を防ぐ観点からも、依頼者が相手方の手数料を確認することが重要とされ、仲介者には相手方の手数料を説明することが求められている。
  • 売り手は、相手方が仲介者に払う手数料のほか、DD(買収前の詳しい調査)で使う他の支援機関への支払も意識する必要がある。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「上乗せ手数料を売り手に伝えれば受け取って調整してよい」は誤り。追加手数料を対価に一方へ便宜を図る行為そのものが禁止される。
  • よく問われる点追加の支払は「仲介者への手数料」ではなく「売り手に払われる譲渡額に含まれる可能性があるもの」と考えられている。
  • 義務か・望ましいかガイドライン上の「禁止行為」。望ましくない行為ではなく、してはならない行為として書かれている。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.71

仲介者がしてはならない利益相反行為5つしなければならない

仲介者は、追加手数料での便宜・リピーター優遇・差額報酬・伝達の怠りや偽り・情報の秘匿の5つをしてはならず、しないことを仲介契約書に義務として定めなければならないとされています。

くわしい解説を読む

仲介者は売り手と買い手の双方から依頼を受けるので、両方に中立・公平でなければならず、不当に一方の得や損になる利益相反行為をしてはなりません。特に、仲介者自身や第三者の利益を図る目的での利益相反行為は決して行ってはならないとされます。中小M&Aガイドライン第3版は、少なくとも次の5つを行ってはならないと具体化しました。①買い手から追加で手数料を受け取り、その買い手に便宜を図る。②リピーター(繰り返し依頼してくる依頼者)を優遇して便宜を図る。③希望額と成立額の差額の一定割合を、正規の手数料とは別に報酬として求める。④伝えるよう頼まれたことを相手に伝えない、又は言っていないことを偽って伝える。⑤一方にだけ有利・不利な情報を知りながら、その当事者に伝えず隠す。

覚えておく事実

  • 追加手数料による便宜やリピーター優遇でいう「便宜」とは、当事者のニーズに反したマッチングの優先や、不当に低い譲渡価額への誘導などを指す。
  • 差額報酬とは、売り手なら希望額より高く、買い手なら希望額より低く成立したときに、仲介者が正規の手数料とは別に差額の一定割合を求めること。
  • 仲介者は、5つの行為をしないことを仲介契約書の中で自らの義務として定めなければならない(参考資料の仲介契約書サンプルも参照)。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い「双方から手数料を受け取る旨を事前に伝える」は5類型ではなく、リスクを抑えるために求められる措置。禁止行為と混同しない。
  • よく問われる点差額報酬は「正規の手数料とは別に」「差分の一定割合」を求める行為。着手金・全額などに入れ替えた選択肢は誤り。
  • 義務か・望ましいか5つの行為は「行ってはならない」。行わない旨の契約書への明記も「定めなければならない」義務。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.6、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.9、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99

仲介契約書サンプルの利益相反禁止の条項しなければならない

ガイドラインの仲介契約書サンプルは第8条第4項で、仲介者が行わない5つの利益相反行為を定めています。FA契約では不要で、買い手との契約では高低を逆にします。

くわしい解説を読む

中小M&Aガイドラインは参考資料として、仲介契約書のサンプル(ひな形)を示しています。このサンプルは、売り手(契約書上の「甲」)と仲介者(「乙」)の契約を前提にしています。第8条第4項には、乙が行わない利益相反行為として5つが並び、ガイドラインが「仲介契約書に仲介者の義務として定めなければならない」とした内容を条文にしています。サンプルでは買い手候補を「候補先」と呼び、「候補先から追加で手数料を取得し候補先に便宜を図る行為」「リピーターとなる候補先を優遇し便宜を図る行為」のように書かれています。FA(一方の当事者だけから依頼を受ける助言者)の契約では、この項は置かないとされています。

覚えておく事実

  • サンプルは便宜の例として、「甲(売り手)のニーズに反したマッチングの優先的実施」と「不当に低額な譲渡価額への誘導」を挙げている。
  • 差額報酬の項目は、売り手(甲)の希望額より高額で成立した場合に、正規の手数料とは別に差額の一定割合を求める行為を禁じる。
  • 買い手との仲介契約で使うときは、「不当に低額」「高額」と書かれた部分の高低を逆にする必要がある。
  • 伝達の項目は、売り手(甲)と買い手候補(候補先)のどちらから伝達を求められた事項でも、伝えない・偽って伝えることを禁じる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「利益相反禁止の条項はFA契約にも同じく設ける」は誤り。サンプルの注で、FA契約では本項は不要とされる。
  • 似た用語との違い売り手との契約では「不当に低額への誘導」「希望額より高額で成立」。買い手との契約では高低を逆にする。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.7

仲介者が最低限講じる3つの利益相反対策しなければならない

仲介者は利益相反のリスクを最小限にするため、双方と契約していることを伝える、評価や調査の結論を決めない、利益が対立する事項を説明・開示する、の3つの措置が必要です。

くわしい解説を読む

仲介者は売り手と買い手の双方から依頼を受けるため、一方に肩入れするおそれ(利益相反のリスク)が構造的にあります。それでも中小M&Aでは仲介という形が多く使われ、不適切と断ずるのは現実的でないため、ガイドラインはリスクを最小限にする最低限の措置を求めています。①双方と仲介契約を結ぶ仲介者であること(双方から手数料を受け取る場合はその旨)を両当事者に伝える。②バリュエーション(企業価値評価)やDD(買収前の詳しい調査)のように一方の意向が反映されやすい工程の結論を決めず、必要に応じて士業等専門家の意見を求めるよう伝える。③利益が対立しそうな事項を契約締結時にあらかじめ明示的に説明し、後で認識した情報も適時に明示的に開示する。

覚えておく事実

  • 重要事項説明書(契約前に依頼者へ渡す説明書面)のサンプルは、利益が対立する一般的な例として、売り手は譲渡対価が高いほど、買い手は安いほど望ましい点を挙げている。
  • 利益相反が直ちに違法となるわけではなく、仲介という業態を不適切と断ずることは現実的でないとされている。
  • 仲介者には、リピーターになり得る買い手を優先する動機だけでなく、手数料が譲渡額に連動する場合に売り手を優先する動機もあると指摘されている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「仲介者がDDを自ら行い結論を出す」「仲介者が評価額を確定させる」は誤り。結論を決定しないことが措置の一つ。
  • ひっかけに注意「利益対立の事項はM&A成立後にまとめて説明」「契約時に説明すれば後の開示は不要」は、いずれも誤り。

出典:参考資料11 M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル p.2、参考資料11 M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル p.11、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.98

双方から手数料を受け取ることの事前説明べき・求められる

仲介者は通常、売り手と買い手の双方から手数料を受け取るため、契約前にその旨と、相手方の分も含めた手数料の中身を説明することとされています。

くわしい解説を読む

仲介者は売り手・買い手の双方と契約を結び、双方に手数料を請求するのが通常です。依頼者からすると、自分が払う手数料だけを見ていても、仲介者がどちらからいくら受け取るのかは分かりません。そこでガイドラインは、仲介者が契約締結前に、双方から手数料を受け取ることを説明し、さらに相手方も含めて双方から受け取る手数料の内容を説明することとしています。説明する内容は、報酬率、報酬基準額(手数料を計算するもとになる金額。譲渡額、純資産、移動総資産など)、最低手数料の額、報酬が発生するタイミング(着手金・月額報酬・中間金・成功報酬)などです。

覚えておく事実

  • 手数料の体系として着手金・月額報酬・中間金・成功報酬が例示されるが、金額や体系は仲介者・FAごとに異なる。
  • 着手金などを取らず成功報酬だけを請求する、いわゆる完全成功報酬型の仲介者・FAもいる。
  • 成功報酬は、譲渡額・移動総資産額・純資産額などの一定の価額に一定の方式で計算するものが多く、その場合でも最低手数料が定められていることが多い。
  • 仲介者・FAによっては、手数料のほかに交通費などの実費の支払を求めることがあり、留意が必要とされる。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点説明の対象は依頼者自身の手数料だけでなく、相手方の手数料も含む。
  • ひっかけに注意「双方から手数料を受け取ることは、成約後に伝えれば足りる」は誤り。仲介者は契約締結前にその旨を説明する。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.39

相手方の手数料が自分の利益に響く仕組み

買い手の予算の範囲で譲渡額と買い手の手数料が決まり、売り手の受取額は譲渡額から売り手の手数料を引いた額です。そのため相手方の手数料も自分の利益に影響します。

くわしい解説を読む

ガイドラインは、M&Aが成立したときのお金の流れを図で示し、相手方の手数料にも関心を持つべき理由を説明しています。まず買い手(譲り受け側)が、M&Aのために支払える予算を決めます。この予算を上回らない範囲で、売り手に払う譲渡額と、買い手が仲介者に払う手数料が決まります。つまり予算が同じなら、買い手の手数料が増えるほど譲渡額に回るお金は減ります。次に売り手(譲り渡し側)の受取額は、譲渡額から売り手が仲介者に払う手数料を引いた額です。売り手がM&Aをするかどうかの判断には、譲渡額よりも、この受取額のほうがより直接的に影響します。

覚えておく事実

  • 買い手の予算は、シナジー(統合による相乗効果)が想定以上に見込める場合や、想定外の工程が生じた場合などに増額されることもある。
  • 仲介者はDDを直接実施すべきでないとされ、買い手が別の支援機関にDDを頼むと、その費用も譲渡額に影響する場合がある。
  • 仲介者が双方から受け取る手数料の額は支援の内容に影響しうるため、中立・公平さを確かめる重要な要素とされる。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点譲渡額と買い手の手数料は、買い手の予算を上回らない範囲で決まる。売り手の受取額=譲渡額-売り手が払う手数料。
  • よく問われる点売り手の意思決定により直接影響するのは「譲渡額」ではなく「受取額」。
  • よく問われる点予算が変わらないまま買い手の手数料が増えると、譲渡額に回るお金が減り、売り手の受取額も減りうる。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.6、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.7、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.70

仲介契約を結ぶときに明示的に説明する事項しなければならない

仲介者は仲介契約を結ぶとき、双方と契約する仲介者であること(双方から手数料を受け取るならその旨)と、両者の利益が対立しそうな事項を明示的に説明する必要があります。

くわしい解説を読む

中小M&AガイドラインのQ&Aは、「利益相反のリスクを最小限とするために、仲介者が行わないといけないことは何か」という問いに、仲介契約の締結に当たって2つの事項を明示的に説明するよう答えています。1つ目は、売り手・買い手の両方と仲介契約を結ぶ仲介者であること、特に契約上、両方から手数料を受け取ることになっている場合はその旨です。2つ目は、両当事者の間で利益の対立が想定される事項です。仲介者は、利益が対立し得る双方から依頼を受けて利害を調整するため、一方の利益を優先したり害したりするリスクがあると指摘されています。依頼者がこの構造を知ったうえで契約できるよう、契約時の説明が求められています。

覚えておく事実

  • 仲介者が利益の対立しそうな事項を説明するタイミングは「仲介契約締結に当たり、予め」であり、M&Aの成立後ではない。
  • 仲介者は、契約後に利益の対立に関わる情報(一方にだけ有利・不利な情報を含む)を認識したときも、各当事者に適時に明示的に開示する。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいかこれらは利益相反のリスクを最小限とする最低限の措置として「講じることが必要」とされる。「望ましい」程度とする選択肢は誤り。
  • ひっかけに注意「双方から手数料を受け取る旨は、手数料の多い当事者にだけ伝えれば足りる」は誤り。両当事者に伝える。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.6、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.98、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.99

相手方の手数料の開示と増額したときの開示しなければならない

仲介者は、相手方の手数料の内容を契約前に書面で説明し、後で相手方の手数料を増やす場合はその内容を依頼者に開示するべきとされています。

くわしい解説を読む

相手方(取引の向こう側の当事者)が仲介者に払う手数料の額は、依頼者自身の利益に影響することがあります。また、仲介者が双方から受け取る手数料の額は、中立・公平な支援がされているかを確かめる重要な材料です。そこでガイドラインは、仲介者が契約締結前に、相手方の手数料に関する事項と、相手方を含めた手数料の総額がM&Aの成立や譲渡額などの条件に影響しうることを、書面(メールなどの電磁的方法を含む)を交付して説明するべきとしています。さらに、契約前に説明した相手方の手数料を後から増額する場合(マッチングした相手に別の手数料体系が適用される場合や、相手方との契約内容が変わった場合など)は、増額の内容を依頼者に開示するべきとされています。

覚えておく事実

  • 増額時に開示する基準を事前に合意してもよいが、基準は具体的かつ定量的に定めるべきで、定性的な基準や包括的に開示不要とする基準にすべきでない。
  • 少なくとも報酬率・報酬基準額・最低手数料のそれぞれについて、当初の額から増額するときの開示基準を依頼者と合意するべきとされる。
  • 依頼者の手数料を減額する場合は、相手方の手数料を増額していない旨を改めて説明するべきとされる。
  • FAも、相手方を支援するFAから支払を受ける場合は、支払額・支払の名目・支払時期を依頼者に説明するべきとされる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「大幅な増額があれば開示する」のような定性的な基準で足りる、は誤り。開示基準は具体的かつ定量的に定める。
  • よく問われる点相手方の手数料は「契約締結前」に「書面を交付して」説明する。手数料の総額が成立や譲渡額に影響しうる旨も含める。

出典:参考資料11 M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル p.7、参考資料11 M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル p.8、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.91

広告・営業

練習問題 14問(初級 4・中級 6・上級 4) | この分野を演習する

出題範囲:広告・営業

図解|広告・営業

広告・営業は、内容と方法の両面で禁止がある

停止の意思を示されたら、拒まずに直ちに広告・営業を停止しなければならない。

内容の禁止

  • 虚偽・誇大・誤解を生じる表示や隠ぺい
  • 不確実な事項についての断定的判断
  • 意向のない・実在しない企業に意向があると偽る
  • 過大なバリュエーションの提示

方法の禁止

  • 名称・氏名・勧誘目的を告げない広告・営業
  • 検討時間を与えず即時の判断を迫る
  • 不当な目的・品位を損なう広告で勧誘する
  • 停止意思を示された後も続ける
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.85、中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.2(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)禁止される広告・営業組織的な判断断定的判断の提供停止意思不法行為責任

広告・営業の停止と再開のルールしなければならない

営業先が停止意思を示したら、仲介者・FAは拒まずに直ちに広告・営業をやめなければならず、再開するには担当者個人でなく組織としての判断が必要です。

くわしい解説を読む

中小M&Aガイドライン第3版は、仲介者・FAの広告・営業について、停止と再開のルールを明記しました。営業先から、M&Aを実施する意向がない、その仲介者・FAとは契約しない、広告・営業を受けたくない、のいずれかの意思(停止意思)を示されたら、これを拒んではならず、ただちに停止しなければなりません。停止意思の内容は組織的に記録し、共有しなければなりません。その後に営業を再開する場合は、組織的な判断(明確な基準のもとで、一担当者限りでない組織的な手順により行い、記録して後から検証できる判断)による必要があります。ただし、将来にわたって、又は一定期間、すべての広告・営業を明確に断った相手への再開は当然できません。再開後に改めて停止意思を示されたら、ただちに停止しなければなりません。

覚えておく事実

  • 仲介者・FAの広告・営業には、停止のルールなどガイドラインの規律を守ることに加え、職業倫理(専門家として守るべき倫理)の遵守も求められる。
  • 過去の対応状況や頻度から見て、営業先の事業活動や経営者の生活に多大な支障を与える過剰な広告・営業は、民法上の不法行為責任を負う可能性もある。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「停止意思を示した相手には、組織的な判断を経ても再開できない」は誤り。全面的に断った場合を除き、組織的な判断での再開はあり得る。
  • ひっかけに注意「担当者個人の判断で営業を再開してよい」は誤り。再開は、明確な基準の下で一担当者限りでない組織的なプロセスによる判断が必要。
  • 義務か・望ましいか停止と、停止意思の記録・共有は「しなければならない」。再開は「組織的な判断による必要がある」。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.2、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.8、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84

してはならない広告・営業の3つの型しなければならない

名乗らず勧誘目的も告げない営業、考える時間を与えず即決を迫る営業、M&Aの成立可能性や条件について嘘や誤解を招く営業は、してはならないとされています。

くわしい解説を読む

仲介者・FAの広告・営業は、中小企業がM&Aを進めるかどうかを適切に判断できるよう支えるものでなければなりません。そのためガイドラインは、次のような広告・営業を行ってはならないとしています。①仲介者・FAの名称、勧誘する人の氏名、契約を勧誘する目的であることを告げずに行うもの。②契約してM&Aを進めるかどうかの判断に必要な時間を与えず、その場での判断を迫るもの。③M&Aが成立する可能性やその条件など、判断に影響する事項について、虚偽、事実と違う、又は誤解を招くもの。なお、これらに限らず、職業倫理に則った広告・営業が求められます。

覚えておく事実

  • 虚偽・誤認を招く営業の例:買う(売る)意向のない企業、意向を確かめていない企業、実在しない企業について、意向があると偽る、又はそう誤認させるもの。
  • 虚偽・誤認を招く営業の例:譲渡額の水準について、過大なバリュエーション(企業価値の評価)を示すもの。
  • 虚偽・誤認を招く営業の例:売り手や買い手の財務状況・今後の見通しを、事実と違えて、又は実際より良く見せて誤認させるもの。
  • 虚偽・誤認を招く営業の例:M&Aの成立の可能性や条件のうち不確定な事項について、確定的な判断を下すもの。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「実在する企業なら、意向を確かめていなくても『関心を持つ企業がいる』と案内してよい」は誤り。意向未確認の企業も対象。
  • よく問われる点仲介者が評価額を示すなら、確定的なバリュエーションではない旨や、士業等専門家のセカンド・オピニオンを求められる旨等を明示する。
  • よく問われる点告げるべきは「名称」「氏名」「勧誘目的」の3つ。社名と目的を伏せ、経営相談を装って面談を取り付ける営業は禁止にあたる。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A p.2、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.8、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.85

情報提供窓口に寄せられた不適切な事例しなければならない

M&A支援機関登録制度の情報提供窓口には、重要事項説明をしないまま契約させる、停止意思が共有されず再び電話するなど、営業とそれ以外の両面で不適切な事例が寄せられています。

くわしい解説を読む

中小企業庁の検討会資料(令和8年3月)は、M&A支援機関登録制度の情報提供窓口に寄せられた情報の例を、営業以外の事案と営業に関する事案に分けて紹介しています。営業以外では、ガイドラインが求める方式の重要事項説明(契約前に重要な事項を書面で説明すること)をしないまま、専任条項(他の支援機関に依頼しない約束)や中途解約の違約金条項がある契約を結んだ例、重要事項説明や契約締結を対面でなく電話で済ませ、十分な説明がなかったとクレームになった例などがあります。営業では、社長に取り次ぐよう電話口の担当者に10分以上しつこく迫り、最後は一方的に電話を切った例などがあります。窓口の情報をもとに、支援機関への注意や対策の指示、場合によっては登録の取消しが行われます。

覚えておく事実

  • 専任条項がないのに、依頼者に選ばれなかった支援機関がテール条項(契約終了後も手数料を請求できる条項)に基づいて手数料を請求した事例がある。
  • 企業概要書から試算した譲渡価額をもとに支援機関が中間金を受け取り、後の算定額が試算を下回っても中間金を返さなかった事例がある。
  • 営業先から停止意思を受けても社内ですぐ共有する仕組みがなく、同じ支援機関の別の担当者が再び電話をかけた事例がある。
  • 支援機関が個人名義で会社名を出さず、営業先の社長の自宅宛てに「重要書類」と書いた郵便物などを度々送った事例がある。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点「社長への取次ぎを10分以上執拗に迫る」「社名を出さず自宅へ『重要書類』を送る」「停止意思を共有せず再架電」は不適切な営業の例。
  • よく問われる点より深刻なトラブルにつながりやすい「営業以外に関する事案」の情報提供は、減少していないとされている。

出典:第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.21

品位

練習問題 8問(初級 3・中級 3・上級 2) | この分野を演習する

出題範囲:品位

図解|品位

品位は、保つ努力と損なう行為の禁止からなる

常に見識と品位を保ち、業界に対する信頼を高めることが求められる。

品位の保持
  • 見識と品位の向上常に見識と品位の保持・向上に努め、業界に対する信頼を高めること
  • 品位を損なう事業品位を損なう事業を営まず、自己の名義も利用させてはならない
  • 信頼を損なう行為誠実性・社会的信頼・品位を損なう行為や公序良俗違反をしてはならない
  • 誹謗・中傷関係者を誹謗・中傷してはならない
  • 欺罔・脅迫・不当要求関係者を欺罔・脅迫し、不当な要求をしてはならない
  • 業務妨害不当な手段により、関係者の業務を妨害してはならない
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)品位公序良俗

法令等の遵守

練習問題 10問(初級 2・中級 5・上級 3) | この分野を演習する

出題範囲:法令等の遵守

図解|法令等の遵守

法令等の遵守は、自らの義務から顧客の違反対応まで及ぶ

法令を守るだけでなく、関係者の権利を守り、ガイドライン等にも従う。

法令等の遵守
  • 社会規範・法令社会規範及び法令を遵守すること
  • 自らの義務法令上・契約上の自らの義務を、正当な理由なく履行しないことの禁止
  • 権利・プライバシー顧客や関係者の権利・プライバシー・名誉・信用を侵害してはならない
  • ガイドライン等公的機関や業界団体が定めるM&Aのガイドライン・指針を遵守すること
  • 顧客の法令違反判明したら自己や顧客の利益を優先せず、専門家への相談も含め対応を検討
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)税理士業務の制限独占業務非弁行為

不適切な個人・組織、反社等との関係

練習問題 10問(初級 3・中級 4・上級 3) | この分野を演習する

出題範囲:不適切な個人・組織、反社等との関係

図解|不適切な個人・組織、反社等との関係

反社等との関係は、取引前の確認から組織での共有まで

反社会的勢力等となることや、利益供与・事実上の交流などをしてはならない。

  1. 取引前の確認反社等の不適切な顧客・関係者でないかを、取引開始前に確認する
  2. 関係を持たない利益の供与、便益の提供、事実上の交流などをしてはならない
  3. 組織内で共有不適切な個人・組織の情報を取得したら、所属組織内で共有する
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.24、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.31(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)コンプライアンスチェック反社会的勢力業界内での情報共有の仕組み組織的な判断登録事由(情報共有の仕組み)譲り受け側に対する調査

株式譲渡契約サンプルでの反社会的勢力の定義

株式譲渡契約のサンプルは、暴力団や総会屋など8つの類型を反社会的勢力と定め、それに当たらないことや一切の関係がないことを表明保証の対象にしています。

くわしい解説を読む

M&Aの最終契約では、売り手が買い手に対し、自分や会社について一定の事実が正しいことを約束します。これを表明保証といいます。中小M&Aガイドラインの参考資料にある株式譲渡契約のサンプルは、その一つとして反社会的勢力との関係がないことを定めています。反社会的勢力とは、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ(社会運動や政治活動を装って不正な利益を求める者)、特殊知能暴力集団等、そしてこれらに準ずる者です。売り手(株主)は、自分が反社会的勢力でなく、取引、資金の提供、便宜の供与、経営への関与その他一切の関係や交流がないことを保証します。対象会社とその役員についても同じ内容を保証します。

覚えておく事実

  • 対象会社の従業員については「甲(売り手)の知る限り」という限定を付けて、反社会的勢力でないことなどを保証している。
  • 反社会的勢力に関する表明保証の違反は、相当期間を定めた催告(是正の求め)をしなくても、書面で通知して契約を解除できる事由とされている。
  • 総会屋等とは、企業等を対象に不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「従業員についても売り手の認識を問わず無条件に保証している」は誤り。従業員は「甲の知る限り」と限定されている。
  • よく問われる点関係がないことの対象は「取引・資金の提供・便宜の供与・経営への関与その他一切の関係又は交流」と広い。

出典:参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.31、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.32、参考資料7 各種契約書サンプル(2025年12月15日時点版) p.34

情報管理

練習問題 18問(初級 5・中級 8・上級 5) | この分野を演習する

出題範囲:情報管理

図解|情報管理

情報は、取得から取引終了後まで管理し続ける

顧客や自らの職務に関与させた者にも、情報の取扱いについて適切に指導・監督する。

  1. 取得法令・指針を守って取得し、情報の正しさを自ら確認するよう努める
  2. 管理顧客情報を厳格に管理し、悪用や承諾のない流用をしてはならない
  3. 開示事前に顧客等と開示の範囲・期間を話し合い、NDA違反がないか確認
  4. 仲介者の判断一方の不利益につながる情報は、善管注意義務から開示が求められる
  5. 取引終了後書類の使用を停止し、保存やアクセス制限など適切に管理する
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.12、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.13(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)一方依頼者への情報開示(仲介者)顧客情報の管理書類・情報の偽造・変造チャイニーズ・ウォールファイア・ウォールインサイダー取引規制外部委託先の管理守秘義務データルームネームクリア

M&Aの秘密を守り、関係者に知らせる時期しなければならない

M&Aの情報は手続の全体を通じて秘密を守り、ごく一部を除く関係者には、原則として可能な限りクロージング後(早くとも最終契約締結後)に知らせるべきとされています。

くわしい解説を読む

中小M&Aでは、情報の漏えいが取引の失敗につながることがあります。社外はもちろん、親戚や友人、社内の役員・従業員に対しても、知らせる時期や内容に十分注意が必要です。最終契約(M&Aの条件を確定させる契約)の前に、親族や幹部役員などごく一部の関係者にだけ極秘で知らせることはあります。しかしそれ以外の関係者には、原則として可能な限りクロージング(株式の引渡しや代金の支払を行う決済の段階)の後、早くとも最終契約の締結後に知らせるべきです。取引先や従業員に意図せず情報が伝わったり、経営者が不用意な一言を発したりしてトラブルになり、M&Aが頓挫するケースも見られます。

覚えておく事実

  • 取引先や従業員に伝わった後にM&Aが頓挫すると、取引先を失う、従業員が辞めるなど、事業の継続に支障が出るおそれがある。
  • 売り手が自分で買い手を探し、取引先や同じ地域の同業者に打診するときも、同じように注意が必要である。
  • 関係者に知らせる時期については、まず売り手と買い手の双方で協議することとされる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「基本合意の後」「DDの前」に従業員・取引先へ知らせる、は誤り。原則はクロージング後、早くとも最終契約締結後。
  • 義務か・望ましいか「知らせるべきである」という書き方。ごく一部の関係者への極秘の伝達は、最終契約の前でもあり得る。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.31、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.30

金融機関の外部への情報管理(ファイア・ウォール)べき・求められる

金融機関は銀行法や監督指針等に即して外部への情報管理(ファイア・ウォール)を徹底し、特に地方では相手が特定されないよう開示内容を吟味することが求められます。

くわしい解説を読む

銀行などの金融機関は、取引先の中小企業の財務情報など、多くの機微な(人に知られたくない)情報を持っています。そのため、銀行法や「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」などの法令・指針に即して、情報管理を徹底する必要があります。金融機関は法令・指針による秘密保持義務を負い、外部との関係で厳格な情報管理を行っています。これをファイア・ウォールといいます。ただ、地方の金融機関では顧客同士が顔見知りのことも多く、社名を伏せた情報(ノンネーム)を出しても、売り手と買い手がお互いを特定できてしまう可能性が高くなります。そこで、開示する情報の内容をよく吟味し、可能であれば早急に秘密保持契約を結び、特に売り手の情報が漏れないよう買い手に注意を促すことが求められます。

覚えておく事実

  • 他の支援機関が進めるM&Aで、経営者保証(社長が会社の借入れを個人で保証すること)の解除や移行の相談を受けた場合も、その情報の管理を徹底することが求められる。

試験ではここを押さえる

  • 似た用語との違い外部との関係での厳格な情報管理=ファイア・ウォール。内部の融資部門と仲介・FA部門の間の情報隔壁=チャイニーズ・ウォール。
  • よく問われる点地方ではノンネームでも相手が特定されやすい点が留意点。秘密保持契約は「可能であれば早急に」締結する。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.108、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.109

金融機関の内部の情報管理(チャイニーズ・ウォール)べき・求められる

金融機関は、融資部門と仲介・FA部門の間に情報の壁(チャイニーズ・ウォール)を設けることが望ましく、適正な利益相反管理態勢の整備が求められます。

くわしい解説を読む

金融機関は融資をしながら、M&Aの仲介やFA(一方の当事者の助言役)を行うことがあります。顧客の利益を守る体制(利益相反管理態勢)として、内部の融資部門と、仲介業務・FA業務を行う部門の間に情報隔壁を設けることが望ましいとされます。これをチャイニーズ・ウォールといいます。特に、融資先が売り手となるM&Aで仲介・FAを行う場合、金融機関はお金を貸している債権者として、構造的にその会社より優越的な地位(強い立場)に立ちやすくなります。人的資源に限りがある金融機関もありますが、この点に配慮し、両部門の間での情報共有の範囲や方法も含め、法令・指針等に即して適正な利益相反管理態勢を整備することが求められます。

覚えておく事実

  • 融資先が返済条件の緩和や債務の減免を受けるなど事業再生局面にあると、金融機関は債権回収のため早期のM&Aを促す動機が構造的に強くなる傾向がある。
  • 事業再生局面にある融資先のM&Aを支援する場合でも、金融機関は売り手の意向を汲み、売り手の真意に即した支援を行うことが求められる。
  • そうした局面で金融機関が仲介者・FAとなるには、その前提として、利益相反管理態勢の上での整理が求められる。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいかチャイニーズ・ウォールは「設けることが望ましい」。適正な利益相反管理態勢の整備は「求められる」。
  • ひっかけに注意「事業再生局面の融資先では債権回収を優先し、早期の成約を重視する」は誤り。売り手の真意に即した支援が求められる。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.109

マッチングを複数の支援機関に頼むときの注意望ましい

複数の支援機関に買い手探しを頼むと、売り手の情報が必要以上に外へ出るおそれがあるため、単独か複数かは利点と留意点を把握して選ぶことが望ましいとされます。

くわしい解説を読む

マッチング(買い手候補との引き合わせ)では、売り手の情報が買い手候補に伝わるため、秘密保持の観点から注意が必要です。複数の支援機関に相談し、それぞれがマッチングを試みると、売り手の情報が必要以上に外部へ流れ、かえって売り手にとってリスクになることがあります。例えば、複数の支援機関が同じ売り手の情報を同じ買い手候補に紹介すると、案件が出回っているように感じられ、買い手候補の心証(受ける印象)が悪くなることがあり得ます。こうした事情から、売り手は基本的には一つの支援機関にマッチングを依頼することが多い傾向にあります。

覚えておく事実

  • 単独の支援機関に頼む利点は、秘密保持上の不利益やレピュテーションリスク(評判が傷つくリスク)が生じにくく、情報の管理も比較的容易なこと。
  • 単独の支援機関に頼む場合、紹介を受けられる候補先の顔ぶれや数は、その支援機関の力量などに左右される。
  • 複数の支援機関に頼む利点は、各支援機関のネットワークを活かして、幅広く候補先の紹介を受けられる場合があること。
  • 仲介契約・FA契約に専任条項(他の支援機関に依頼しない約束)や秘密保持の条項があると、他の支援機関に重ねて依頼するのは通常難しい。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「複数の支援機関に頼む方が情報管理が容易で、秘密保持上の不利益も生じにくい」は誤り。必要以上の情報流出のおそれがある。
  • 義務か・望ましいか単独依頼が義務なのではない。利点・留意点を踏まえて選ぶことが「望ましい」という書き方。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.31、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.44、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.45

その他禁止行為

練習問題 4問(初級 1・中級 2・上級 1) | この分野を演習する

出題範囲:その他禁止行為

図解|その他禁止行為

その他禁止行為は、自分と関係者の両方の行為に及ぶ

個別の条文に当たらなくても、善管注意義務や職業倫理から不適切な行為は禁止される。

自らの行為

  • 善管注意義務の観点から不適切と認められる行為
  • 職業倫理の観点から不適切と認められる行為

関係者の行為

  • 関係者の不適切な行為を予見・認識しながら放置すること
  • 停止等させる客観的に可能かつ有用な措置を講じないこと

組織の備え

  • 役員・従業員の違反行為を把握し対応する仕組みを整える
  • 外部委託先にも適正な業務遂行を確保させる
出典:中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.13、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.82、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.83(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)関係者の不適切な行為の放置その他禁止行為(倫理・行動規範)書類・情報の偽造・変造

支援機関向けの基本姿勢

練習問題 48問(初級 15・中級 22・上級 11) | この分野を演習する

出題範囲:支援機関としての基本姿勢/M&A専門業者/支援の質の確保・向上に向けた取組/各工程の具体的な行動指針/仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策/不適切な譲り受け側の排除に向けた取組/専任条項の留意点/直接交渉の制限に関する条項の留意点/テール条項の留意点

図解|支援機関向けの基本姿勢

最終契約のリスクは、重要性に応じて2段階で対応する

仲介者・FAは、双方が納得し、成立後のトラブルリスクを低減した形の最終契約を支援する。

認識の有無に関わらず対応

  • 譲り渡し側の経営者保証の扱い
  • DDを実施しないこと
  • 表明保証の内容

認識した段階で対応

  • クロージング後の支払・手続
  • 最終契約後の支払の調整・修正
  • 譲り渡し側の資産・貸付金の最終契約後の整理
  • 最終契約からクロージングまでの期間
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.95、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.96、中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ(2025年4月、2026/10/13誤植修正) p.186(当社にて加工して作成)

この分野の用語(用語集)外部委託先の管理業界内での情報共有の仕組み支援機関間の連携支援の質の確保・向上自主規制ルール(M&A仲介協会)遵守事項一覧チェックシート成約の目的化登録事由(情報共有の仕組み)譲り受け側に対する調査相手方の手数料(仲介者)一方依頼者への情報開示(仲介者)M&A専門業者簡易評価禁止される広告・営業構造的な利益相反コンプライアンスチェック重要事項説明譲渡対価の分割払いほか20語

善管注意義務・忠実義務と職業倫理しなければならない

M&A専門業者は依頼者との契約に基づいて善管注意義務と忠実義務を負い、さらに契約上の義務に限られない職業倫理を守ることが求められます。

くわしい解説を読む

M&A専門業者(仲介者・FAとして中小M&Aを支援する民間業者)には、許可制・免許制や業界全体の法規制がなく、業務に特別な資格も要りません。それでも依頼者との契約に基づき、2つの義務を負います。善管注意義務は、依頼の本来の趣旨に照らし、善良な管理者の注意をもって仲介業務・FA業務を処理する義務です。忠実義務は、依頼者の利益を犠牲にして自分や第三者の利益を図ってはならない義務で、ガイドラインは善管注意義務に含めて扱います。加えて、業務の専門性、情報の非対称性(知識や候補先の情報が業者側に偏り、依頼者が業務の良し悪しを評価しにくいこと)、仲介の構造的な利益相反リスクから、契約上の義務に限られない職業倫理の遵守が求められます。

覚えておく事実

  • 仲介者は利益が対立し得る双方から依頼を受けるため、どちらの依頼者にも公平・公正でなければならず、一方を優先したり不当に害したりしてはならない。
  • 契約上の義務を負うかどうかにかかわらず、職業倫理として、依頼者の意思を尊重し利益を実現する対応が求められる。
  • 士業等専門家は法令で資格要件や善管注意義務等が明確にされているが、M&A専門業者にはそうした業界全体の法規制がない。
  • M&A専門業者の経済的利益はM&Aの成立と強く結びついており、成約が目的化して依頼者の真の利益につながらない成約が目指されるおそれが指摘されている。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「善管注意義務は法令に基づき、契約と関係なく一律に生じる」は誤り。ガイドラインは義務の根拠を依頼者との契約としている。
  • ひっかけに注意「職業倫理は契約上の義務の範囲に限られる」は誤り。契約上の義務に限られない職業倫理の遵守が求められる。
  • よく問われる点忠実義務の定義は「依頼者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ってはならない義務」。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.79、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.80、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.81

成約の目的化のおそれと支援の質の向上しなければならない

業者の利益とM&Aの成立が強く結びついているため成約自体が目的になるおそれがあり、仲介者・FAは知識・能力の向上と適正な業務遂行で支援の質を高める必要があります。

くわしい解説を読む

中小M&Aの支援には、マッチングの力、交渉の調整ノウハウ、財務・税務・法務の専門知識が欠かせないことが多くあります。支援経験や知見の乏しいM&A専門業者では、善管注意義務を果たすという点から、業務を適切に進められないおそれがあります。また、実態として業者の経済的利益とM&Aの成立が強く結びついているため、成約そのものが目的になり、依頼者の真の利益につながらない形での成約が目指されるおそれも指摘されています。さらに市場の拡大で新規参入が増え、経験や知見が十分でない人材が支援に携わるケースもあるとされます。そこでガイドラインは、仲介者・FAが「支援の質の確保及び向上」を図る必要があるとしています。

覚えておく事実

  • 支援の質を高める一助として、他の支援機関(特に士業等専門家)と積極的に連携することが望ましく、例えば助言の前提となる専門的事項を士業等専門家に確認する。
  • M&A専門業者の代表者は、知識・能力の向上と適正な業務遂行が不可欠と認識し、経営理念に反映するなどして社内外に発信し、それと整合する取組を行う必要がある。
  • 支援の質を高める取組は依頼者が支援機関を選ぶ参考になるため、公表するなどして依頼者等に伝えることが望ましいとされる。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点支援の質の確保・向上の柱は「知識・能力の向上」と「適正な業務遂行」の2つ。
  • よく問われる点成約の目的化のおそれの原因として挙げられているのは「業者の経済的利益とM&Aの成立の強い結びつき」。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.80、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.81

役員・従業員の適正な業務遂行の確保しなければならない

役員や従業員の支援業務も最終的な責任は会社が負うため、M&A専門業者はルールの整備、経験者との共同担当、違反の把握、苦情対応などの取組を行うべきとされます。

くわしい解説を読む

M&A専門業者で実際に依頼者を支援するのは役員や従業員です。その業務の最終的な責任はM&A専門業者が負うため、役員・従業員の倫理観を育て、適正な業務を確保する必要があります。ガイドラインは例えば次の取組を「行うべき」としています。①適正な業務の必要性を理解させ、仕組みを作る(ガイドラインを踏まえて業務規程・業務マニュアルにルールを書く、業務で使う書式を作る等)。②適した体制で支援する(経験や知識が十分でない者が担当する場合は、十分な者と一緒に業務を行わせ、その旨を社内規則等に定める等)。③善管注意義務や職業倫理に反する行為を把握し、対応する仕組みを整える。④依頼者からの苦情を受け付け、適切に対応する体制を整える。

覚えておく事実

  • 違反行為に対応する仕組みの例として、社内相談窓口の設置や、違反を懲戒事由として規定し懲戒権を適切に行使できる体制づくりが挙げられている。
  • 業務の一部を別の仲介者・FAや営業専門会社などに委託しても、M&A専門業者は委託業務の最終的な責任を免れず、委託先についての取組も行うべきとされる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「経験の浅い者にも成長のため単独で担当させる」は誤り。経験・知識が十分な者と一緒に業務を行わせ、社内規則等に定める。
  • 義務か・望ましいかここで挙げられた取組は「行うべきである」とされている。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.82、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.83

業務を外部に委託しても責任は残るしなければならない

業務の一部を他社に委託しても、M&A専門業者は委託業務の最終的な責任を免れないため、委託先の選定・情報の扱い・監督などの取組を行うべきとされます。

くわしい解説を読む

M&A専門業者は、業務の一部を第三者に任せることがあります。例えば、一部の業務を別の仲介者・FAに委託する、マッチングのための電話(架電)を営業専門の会社に頼む、といった場合です。ただし、依頼者が元の支援機関以外の者に直接DD(買収前の詳しい調査)を頼むような場合は、ここでいう委託に含まれません。委託しても最終的な責任は委託元に残るため、ガイドラインは例えば次の取組を「行うべき」としています。①業務内容に合った委託先を選ぶ。②委託時の情報の扱いを適切にし、依頼者に説明して了承を得る。③委託する業務を契約で明確にする。④委託先の業務や情報管理を監督・指導する。⑤委託業務の苦情は委託元が受け付けて対応する。

覚えておく事実

  • M&A専門業者が依頼者に秘密保持義務を負う情報を委託先に渡す場合は、委託先にも同様の秘密保持義務を負わせ、さらに第三者へ渡らないようにする。
  • 委託契約に、委託元が委託先の業務の実施状況を合理的に把握するための規定を盛り込むことが望ましいとされる。
  • 監督の例として、委託先管理の責任部署を明確にし、定期的又は必要に応じて業務の遂行状況を確認することが挙げられる。
  • 委託先の選定の例として、選定基準を定め、その基準に従って選ぶことが挙げられる。

試験ではここを押さえる

  • ひっかけに注意「業務を委託すれば、その業務の責任は委託先に移る」は誤り。委託元は最終的な責任を免れない。
  • よく問われる点委託先に秘密情報を渡すときは、同様の秘密保持義務を負わせ、情報の扱いを依頼者に説明して了承を得る。
  • 義務か・望ましいか委託先の実施状況を把握する規定は「望ましい」。選定・情報の扱い・監督などの取組は「行うべき」。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.82、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.83

意思決定を支援するときの2つの留意点しなければならない

仲介者・FAは、中小企業のM&Aの意思決定を支援する際、重要なメリット・デメリットを知り得る限り説明し、相談者の企業情報にも善管注意義務を負うと自覚することが必要です。

くわしい解説を読む

中小企業は通常、M&Aについて十分な知見がなく、自分だけでM&Aの手続を進める決断をするのは難しいものです。そのため仲介者・FAは、専門的な知見に基づいて中小企業に実践的な提案を行い、M&Aの意思決定を支援する必要があります。このときに留意すべき点として、ガイドラインは2つを挙げています。1つ目は、そのM&Aで想定される重要なメリットとデメリットを、知り得る限り相談者に明示的に説明することです。2つ目は、相談者の企業情報の取扱いについても、善管注意義務(善良な管理者の注意をもって業務を処理する義務)を負っていると自覚することです。

覚えておく事実

  • 意思決定の支援は、相談者に潜在的にM&Aを実施する意向があることが前提とされている。
  • 仲介者・FAが契約締結に向けて行う広告・営業も、中小企業の意思決定を適切に支援するため、少なくともガイドラインの規律を守って行う必要がある。
  • 広告・営業先から停止意思(M&Aの意向がない、契約しない、営業を受けたくない旨)を示されたら、拒まずにただちに広告・営業を停止しなければならない。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点説明するのは重要な「メリット・デメリット」の両方。メリットだけの説明では足りない。
  • ひっかけに注意「契約前の相談者の企業情報には善管注意義務は及ばない」は誤り。相談者の企業情報にも善管注意義務を負うと自覚する。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84

過剰な営業は不法行為責任のおそれしなければならない

広告・営業が、過去の対応や頻度からみて営業先の事業や経営者の生活に多大な支障を与えるほど過剰な場合、民法上の不法行為責任を負う可能性があります。

くわしい解説を読む

仲介者・FAが契約を結ぶために行う広告・営業には、職業倫理を守ることが求められます。ガイドラインはさらに、行き過ぎた営業が法的な責任につながりうる点にも触れています。過去の対応状況や営業の頻度などに照らして、営業先の中小企業の事業活動や経営者の生活に多大な支障を与えるような過剰なものである場合には、民法上の不法行為責任(故意や過失で他人の権利や利益を侵害した者が負う損害賠償責任)を負う可能性もあることに留意すべきとされています。情報提供窓口には、会社名を出さずに社長の自宅宛てに郵便物を度々送ったといった、不適切な営業の事例も寄せられています。

覚えておく事実

  • 広告・営業では、法的責任の問題とは別に、職業倫理の遵守が求められる。
  • 広告・営業先から停止意思を示されたら、仲介者・FAは拒まずにただちに停止し、その内容を組織的に記録・共有しなければならない。
  • 情報提供窓口には、社長への取次ぎを電話口の担当者に10分以上執拗に迫り、最後は一方的に電話を切ったという営業の事例も寄せられている。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点過剰な営業について挙げられているのは「民法上の不法行為責任」を負う可能性。
  • 義務か・望ましいか「責任を負う」と断定ではなく、「負う可能性もあることに留意すべき」という書き方。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84、中小M&Aガイドライン(第3版)概要資料 p.8、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.21

停止意思の3つの型と記録・共有の義務しなければならない

「M&Aはしない」「この業者とは契約しない」「営業を受けたくない」のどれか一つを示されたら、直ちに営業をやめ、内容を組織的に記録・共有しなければならないとされています。

くわしい解説を読む

M&Aを進めるかどうかの意思決定を支援する前提は、相談者に潜在的にでもM&Aを実施する意向があることです。そのため、営業先から次のいずれかの意思(停止意思)を示されたら、仲介者・FAはこれを拒んではならず、ただちに広告・営業を停止しなければなりません。①M&Aを実施する意向がない旨、②その仲介者・FAとは契約しない旨、③引き続き広告・営業を受けることを希望しない旨です。さらに、この停止を確実に実行できるよう、停止意思の内容を組織的に記録し、共有しなければなりません(例:情報提供窓口には、停止意思が社内ですぐ共有されず、別の担当者が再び電話をかけた事例が寄せられています)。

覚えておく事実

  • 停止意思を示した相手への再開には、慎重な検討と組織的な判断(明確な基準の下、一担当者限りでない手順で行い、記録して事後に検証できる判断)が必要。
  • 将来にわたって、又は一定期間、すべての広告・営業を明確に拒否した相手には、営業の再開は当然できない。
  • 仲介者・FAは、再開した後に改めて停止意思を示されたときも、ただちに広告・営業を停止しなければならない。

試験ではここを押さえる

  • よく問われる点停止意思は3つのうち「いずれか一つ」が示されれば足りる。3つ全部が示される必要はない。
  • ひっかけに注意「担当者個人の手帳に記録し、本人が営業を控えれば足りる」は誤り。組織的に記録し、共有しなければならない。
  • 義務か・望ましいかただちに停止すること、停止意思を組織的に記録・共有することは、いずれも「しなければならない」。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.85、第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2(2026/3/17) p.21

営業の再開には組織的な判断が必要しなければならない

停止意思を示した相手に営業を再開するには、慎重に検討したうえで組織的な判断による必要があります。すべての営業を明確に断った相手への再開は当然できません。

くわしい解説を読む

時間がたてば、営業先のM&Aに対する考えが変わる可能性もあります。そのためガイドラインは、停止意思を示した相手への再開を一律には禁じていません。ただし再開する場合は、慎重に検討したうえで「組織的な判断」による必要があります。組織的な判断とは、①明確化された基準のもとで、②一人の担当者だけで決めるのではなく組織的なプロセス(手順)を経て行う判断であって、③組織的に記録され、事後に検証できるものをいいます。担当者が自分だけの判断で再開することは認められません。一方、将来にわたって、又は一定の期間、すべての広告・営業を受けることを明確な形で拒否した相手への再開は、当然認められません。

覚えておく事実

  • 仲介者・FAは、再開した後に改めて停止意思を示された場合も、ただちに広告・営業を停止しなければならない。
  • 同じ定義の「組織的な判断」は、後で当事者間の争いになるおそれのある契約条項を提案するときや、不適切な譲り受け側に新たに支援するかを決めるときにも求められる。

試験ではここを押さえる

  • 義務か・望ましいか再開は「組織的な判断による必要がある」。すべての営業を明確に拒否した相手への再開は「当然不可」で、組織的な判断を経てもできない。
  • ひっかけに注意「担当者が慎重に検討すれば、その担当者の判断で再開できる」は誤り。一担当者限りでない組織的な判断が必要。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.84、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.97、中小M&Aガイドライン(第3版)本文 p.102

執筆:whyme編集部。条文は出典の表現を基本とし、一部を当社にて要約しています。